【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
ショタオジ自身が山梨以外は駄目だと思ったら予想以上に生き残ったねって言ってるんで、それがそのまま主人公の危機感として設定してます。
セリスが式神として生まれてから一週間が経った。その間にも次々と多くの〝嫁〟が生まれ、俺らと共に異界へ消えていく。
こういう時、マッカと素材をガイア連合に配給している地位が役に立つ。掲示板で優先ズルいだのレベルが高いからって横暴だの非覚醒者にも無料で配れ等と好き勝手言われてるが、正直、覚醒さえしてくれるなら全額嫁代俺持ちでも構わないんだよな。
嫁を毎日一人孤独に異界へ投げ込んでくれるなら、だが。
目の前の【餓鬼】をセリスが切り捨てる。ドロップした霊草を拾うと、無表情のまま屈んで俺に渡して来たので褒めるついでに頭を撫でる。
日に日にガイア連合はもちろん、山梨全体が終末に向けて整備されている。俺もギルニキに表社会で運営していた会社を全て
飼っていたペットは今頃星祭で褐色肌の異国情緒溢れる巫女をやっているだろう。霊格上限の低さを何とか出来れば、俺達では無くアイツらに投資する──いや、これアリか?
「…………?」
「何でもない。次の敵がそろそろ来るから頼むぞ」
こくり、と頷いたセリスが見えてきた【コダマ】に向かって走り出す。最初から
星祭で拾える武具の能力をコスプレ製造班*1が作ったナイト♀装備に移しただけなのだ。
だから【コダマ】が相手でもそこそこ苦戦する。──とは言っても、空を飛べなくなっただけで、ショタオジ謹製の式神な事に変わり無い。
「────!」
「■■──!」
声にならない断末魔を上げて【コダマ】が光に変わる。今回はドロップ無しだ。心なしかしょんぼりした様子でトコトコとこちらに歩いてくる。
「まだ踏み込みから切り込む流れに若干の淀みがある。次はそこを意識しろ」
こくり、と頷き、周囲を見渡すセリスを眺めながら、先程の思い付きをさらに進める。
大前提として覚醒さえしていれば、式神の
つまり、燃費が物凄く良い。
ムラサキ、アイ、オオマチ、レティ*2、セリスの五人を運用していても何の問題も無い程度には。
成長タイプは基本的に万能型だが、そこは憑依させる雑霊の傾向を尖らせる事でどうにでもなる。
問題なのは現地人の霊格の低さによる式神の霊格上昇限界だけ。
「デモニカの開発……は終末フラグか。式神に使うハートの器*3を人間に移植すれば何とかなるか?」
まるで改造人間だな。感情的に許さない俺達も多そうだし、やるなら極秘か。
「…………?」
「あぁ、今の流れは良かったぞ。次からは動きを繋げる事を意識しろ」
考える事を一旦やめ、セリスにアドバイス。【マルチタスク】も上手くなっちまったなぁ。
「…………?」
「分かりやすく見せてやるよ」
セリスから剣と盾を借り受け、適当に【気配察知】すると、ここから百メートルぐらい先で悪魔の反応を感じた。──【餓鬼】か。つくづく長い付き合いだな。
「行くぞ」
一歩で百メートルを詰め、左の盾で
ゲームとは違い、敵の体勢さえ崩せれば【渾身剣】は必中だ。まぁ、敵が【シールドバッシュ】ですでに死んでいたから手応えの無い無駄打ちだったが。
「この動きに拘る必要は無いが、同格が相手なら動きの止まった方の負けだ。動きを繋げる事を意識して、止めは外したら死ぬつもりで撃て」
「…………?」
「神楽もそうなんだが、ミナミィネキからダンスを習うのも良いぞ。繋がった動きってのはダンスに通じるもんがあるからな」
「…………」
「まぁ、まだ一週間なんだ。今すぐ俺の力になりたいって気持ちは嬉しいが、お前の後輩の為に暫く頼むわ」
こくり、と頷いたセリスに装備を返す。『スキルカード』を突っ込めばすぐ解決する問題に、時間を掛けて教育する意味があるのか、と問われれば、微妙だと答えるだろう。
だが〝出来る〟と〝出来ない〟の差は大きい。
もし降ろした雑霊とは全く違う系統の【スキル】を覚えられるとしたら、その時はコイツらが式神では無く、新たに生まれた人種となった証拠となる。
終末後なら人と魂を交えた妊娠も可能だろうし、これからの未来はファンタジー宜しく美形のエルフや獣耳が増えるのか。胸が熱くなるな。
セリスを眺めながらそんな事を考えていると、突然、セリスが教えた覚えの無い技を使い始めた。
まだまだ【スキル】にもなっていない未熟な技だが、性能的に言えば【吸龍擊*4】とでも言うべきか。
この世界がFFだったら【エンハンス・ドレイン】やら【ドレイン剣】やら【闇の剣】やら呼ばれた気がするな。
「…………!」
「■■──!」
吸い付くされて消えた【コダマ】の居た場所を眺め、セリスが肩を落とす。そういや教えてなかったな。
「ドロップは散らした悪魔の霊力が固まった物だから、俺ら【
「…………!?」
相変わらずの無表情だが今のは分かりやすいな。ガビーンかなんですって!?かうそ……だろ……!のどれかだろ。
見た目的には真ん中だが、喋れる様になるまでシュレーディンガーの猫状態を楽しむとしよう。
◇
昼時という事もあり、一度異界の外へ出る。【浄化】の霊符でセリスの身体や装備品を綺麗にした後、ドロップ品の入った鞄を大事そうに抱えるセリスに紙を渡し、製造班の元へ行くように指示を出す。
「飯は製造班の誰かと食べてくれ。俺はこのまま異界に戻る。どうせ検査とかするだろうし、後で迎えにいくから終わったら待ってろ」
「…………?」
「まだお前には早い。人間の生態や社会を学ぶのは今みたいな余裕がある時にしか出来ないからな。見て、聞いて、触れて、様々な人や物から学ぶと良い」
コクりと頷き、手をひらひら振った後に製造班の元へ向かうセリスを見えなくなるまで見送る。その後ろをニヤついた笑みで追う俺達の姿が。
「厳しいねセツニキ」
「子育てに正解は無いからな。悪意を知らない子供は騙されて生きるしか無く、悪意しか知らない子供は幸せを得る事は出来ず。灰色じゃない、黒と白の混じりあった世界で育てるのが良いってのは経験で何となくわかってるんだがな。何を持って白として、何を持って黒とするかが俺の主観になる以上、俺以外と触れ合う事も大切だろ」
「その結果、彼女の精神が病むかもよ?」
「ショタオジ。良いことを教えてやろう」
気付いてないのか、それとも気付いてない〝フリ〟なのか。たぶん後者だろうが、敢えて言ってやろう。
「クールな見た目に反して無垢な中身が俺らやその嫁達に受けててな?──ほら」
「うわぁ……」
少し【気配探知】すれば分かるぐらい、休憩中と思われる俺らやその嫁がセリスの後を追う男を警戒している。愛されてるようで何よりだ。
「製造班は大抵依頼者の望んだ嫁や婿にする為に『スキルカード』を差した後に引き渡すからな。あの状態はかなり〝レア〟らしく、ツボにハマった奴が多いぞ?」
「何というか俺らも本当に俺達だね」
「ベルフェゴールに【変化S】と【擬態S】のスキルカードを作って貰う為にマッカ稼ぎをやるぐらいにはな」
ちなみに一枚五百万マッカだ。嫁一人で複数人分の姿になれるから、二体目の式神の順番を待てない俺らが頑張っている。
「あれってレア素材必要だけど、彼らの潜れる階層だと落ちなくない?」
「本霊の覚えがめでたいからその代金込みで作ってくれるぞ?」
何せ向こうは〝魔界〟在住だ。素材を狩るのに苦労はしないだろう。
「順調にベルフェゴールの手が伸びてるけど大丈夫?」
「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら大丈夫じゃないが、ベルフェゴール達も俺らを学んでるからな。馬鹿みたいな無茶を本霊込みで言わないし、ルキフグスと並んで現状で勝ち組だからなぁ」
「やっぱり式神を愛せば愛すだけ、ベルフェゴールにもMAGが流れるか~」
「極僅かだけどな。掲示板もそうだが、利便性に感謝したら製作者に流れるのは避けようが無いぞ。ルキフグスに至っては造幣局だし、俺達がマッカを使う以上、どうしようも出来ないな。ま、取り立てで他の悪魔から〝畏怖〟も稼いでるから
「俺的には不満だけど、そのお陰で楽になってるからなぁ……複雑過ぎる」
現状でも嫁貯金が無い奴等が依頼や異界に潜る様になったし、将来的には心折れた奴等が生活の為に嫁を出稼ぎに派遣するだろう。
俺としては一部の俺達を除けば現状に満足だ。俺達に過保護なショタオジは悪魔の力を借りる事に否定的な分、心配で仕方ないだろうが。
「ま、俺達は知らんが俺らの事は出来る限り何とかするさ。それよりショタオジ」
「ん?何?」
「ネコマタが構って欲しそうな目で見てるから暇なら相手してやれ」
そわそわ待ってるネコマタを見たネコマタニキが悶える姿は教育に悪い。……何気に式神がネコマタでは無く武器型*5なんだな。惚れたのはショタオジのネコマタであって、他のネコマタは好きだけど違うとか言いそうだ。
「ん~分かった。んじゃまたねセツニキ」
「礼は言わないにゃ!」
「はいはい、またな」
二人が【転移】で消えるのを見送り、人の少ない方に移動して煙草に火を付ける。
あのネコマタを前にして童貞を貫けるとか、アイツは