【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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クリスマス特別編を書こうとして、この世界ってメシア居るんだよな……って気付いて断念。

おのれメシアめっ!


修羅共のオークション

 

 

「次は双子ニキ兄の杖に付いていた【全属性ブースタ+10%】だ。一万マッカから」

 

「二万!」

 

「四万!」

 

「八万!」

 

 

 そろそろ中盤だというのに次々入札の声が入る。俺達にとっては高額だろうが、修羅勢の視点だと物凄く安い。【全属性ブースタ10%】は本来百万を軽く超えるし、そもそも作るとしたら素材が、装備からスキルを抜くとしたら現物が落ちない。

 

 

「締めるぞ。三十二万七千マッカでエレマスネキだな」

 

「やったー!!」

 

「おめでとー大切にしてねー?」

 

「はいっ!ありがとうございます!」

 

 

 双子ニキ兄から直接『スキルカード』を受け取り、嬉しそうに胸に抱えて席に戻るエレマスネキ。

 

 名前の由来は全属性持ち(エレメンタルマスター)として良く掲示板で手を上げているから。原作の無い俺らは性癖や出来る事が名前の由来になる事が多いのだ。

 

 

「次は──お、本日の目玉だな。グラ爺産【貫く闘気】だ」

 

 

『『『うぉぉぉぉぉぉ!!』』』

 

 

 凄まじい盛り上がりを見せる会場を眺めながら、この『スキルカード』を作る為にひたすら狩りをした事を思い出す。

 

 俺達自身に『スキルカード』による【スキル】の追加は出来ないが、武器や防具には入れる事が出来る。

 

 今まで使っていた【スキル】以上の性能が落ちた(ドロップした)ら即座に帰還して落ちた装備からスキルを抜き取り、自身の装備に付けてきた【スキル】と入れ替え、さらに高い性能を求めて異界に旅立つ。基本的にこの繰り返しをしているのが〝修羅勢(俺ら)〟だ。

 

 だが【スキル】によってはそもそも悪魔が落とす装備品に付いて無い物も多く、そうなれば製造班に頼るしか無い。

 

 そんな時、俺らは製造班が指定した素材を集めに異界に潜るのだが……これがまぁ面倒臭く、そして出ない。

 

 毎日の様に異界に挑んでいる俺らが居るのにも関わらず、不足する素材というのは二通りの〝原因〟がある。

 

 一つは【ミタマ】の様な全く見掛けない悪魔が原材料の場合だ。これは物によっては俺達転生者を超える素材となる場合があり、製造班が常時募集中なぐらい貴重品だったりする。

 

 もう一つは世界樹の葉やらエルフの飲み薬やら神話や伝承の品だったり、性を知らないサキュバスの処女血やら女に振られた直後のインキュバスの絶望やらどんな物か何となくしか分からない困り物の素材達だ。

 

 エドニキ達製造班の〝転生者としての才能〟頼り故に曖昧な言葉で出力されるこれらは、手に入れる為には戦闘力では無く、文献の読み込みと試行錯誤の繰り返しを求められる。

 

 ちなみに今回の【貫く闘気】の素材は、スキル持ちの血、高レベルの闘神系や武神系の肉片、それらの素材の霊力に耐えられる霊木や霊草で作られたカード。そして──〝貫く意志〟。

 

 なんやねんそれと思うだろうが、本当にそれが素材なのだ。

 

 今回は【物理無効】持ち相手に一万ぐらいぶっ刺した槍を溶かして素材に変えた。知り合いならまだしも赤の他人の為にはやりたくない作業だった。

 

 

「はいはい、静かにしろ。これはグラ爺の後輩支援の一環だから近接型は落札しないで自分で頑張れ。式神に持たせたいならアリだが、出来れば俺ら優先な」

 

「あー……当然っちゃ当然か」

 

「【貫く闘気】は無理でも【貫通擊】ならすぐに覚えられるもんな」

 

「うちの式神も【貫通擊】覚えてるし、修羅系の近接型なら自然に使えね?」

 

「どうだろうな?情報出ちゃってるから後追い組には無いかも?」

 

 

 そりゃそうだろうな。覚える為には【物理無効】相手にフルバフで何度もごり押す時間や覚悟が必要だし。

 

 おっと、今は司会としてオークションを進めないとな。

 

 

「そんじゃ一万から──」

 

「あーセツニキ、ちょっと待ってくれ」

 

 

 おっさん臭い声で俺を止めたのは、頭にバンダナを巻いた渋い男*1。この男は双子スキー四天王が一人、双子ニキ(弟)。同じ双子なのに妹の方が優秀で、自分に自信の無い双子の姉の方が好きという中々気合いの入った性癖の持ち主だ。

 

 そんな彼だが、覚醒して得た最初のスキルが【逃走(トラフーリ)】という自身の望みとは正反対のスキルであり、さらには霊格を上げても状態異常系や斥候向けスキルばかりで同期に差をつけられ、俺達の心無い言葉に心が折れた時期もあった。

 

 そんな彼を奮起させ、俺ら修羅勢の斥候役で頂点に立つ切っ掛けとなったのが──やる夫ニキだ。

 

 与えられた才能に中指を突き立て、決して運命に屈しないと言わんばかりの彼に感銘を受けて立ち上がり、双子ニキは奮起した。

 

 その結果、兄と共に取り敢えず投げ込んでおけば物凄く便利な存在となったのが双子ニキ(弟)という男だ。

 

 ちなみにやる夫ニキへの支援を匿名で続けている人間の一人であり、同じ事をやってる修羅勢は双子ニキ(弟)以外にもたくさん居る。

 

 本人は気付いてないかも知れないが、あの人が居るからこそ、ガイア連合は屋台骨が揺らがない気がするんだよな。──っと、仕事仕事。

 

 

「どうした?双子ニキ」

 

「〝御客様〟がそれ一枚必要なんだってよ」

 

「みんな、横入りごめんね」

 

 

 場を譲る様に双子ニキが脇へ避けると、その後ろからカヲルニキが謝りながら出てきた。

 

 

「例の〝アイツ〟対策か?」

 

「うん。僕自身も鍛練してるけど、今回はちょっと時間が無さそうだからショタオジに相談したんだ。そしたらここに案内されてね?」

 

「おっけー、持ってけ」

 

 

 【貫く闘気】の『スキルカード』を飛ばす。それを戸惑いながら受け取ったカヲルニキが何か言う前に畳み掛ける。

 

 

「俺らはやる夫ニキが信頼してるペルソナ使いには無償で働く事にしてんだ。何せ俺らじゃ何も出来ない奴相手に少数で戦ってる訳だしな」

 

「俺らは仲間でワイワイ出来るし、責任も頭数で割れるからな。大将が言ってる事に文句を言う奴はいねーから安心して持ってきな」

 

「そうだぜ、カヲルニキ!ついでに仲間の分も持ってけよ!」

 

 

 ワイワイガヤガヤ要らない『スキルカード』を押し付ける俺ら。

 

 

「みんな……ありがとう。あ、マッカぐらいは──」

 

「いらんいらん。どうせ儂らの血肉程度で幾らでも作れる物じゃ。それより、そちらは頼んだぞ?」

 

「……はい。任せてください」

 

 

 深々と頭を下げるカヲルニキが多数の『スキルカード』を持って立ち去る。さて、主催者としてこのまま終わらせるのもアレだし、立て直すか。

 

 

「さて、このままじゃカヲルニキの心に〝凝り〟を残しちまうからな。それは〝俺ら〟にとっても良くない。だから後輩の為に秘蔵の『スキルカード』をオークションに出すぜ」

 

 

 懐から一枚の『スキルカード』を取り出す。ただそれだけで場が静かになった。

 

 

「このカードはちょいと特別でな?俺らなら誰もが欲しくなる〝とあるスキル〟が入ってる」

 

「セツニキ……まさか……!」

 

 

 修羅勢なら誰もが夢見たスキル。これを作る為にどれだけの素材を塵に変えた事か。

 

 

「俺はこの場に『カードハント』をセット!さぁ!オークションの開始だ!」

 

 

『『『うぉぉぉぉぉぉぉ!!』』』

 

 

 この歓声がカヲルニキの元まで届けば良いが。

 

 

 

 

「しっかしセツニキ、よくあんな『スキルカード』を用意してたな」

 

 

 オークションも終わり、片付けを終えた後、せっかくだからと打ち上げも兼ねて星祭神社の近くにある焼肉屋へ。広々とした座敷席で肉をつついていると、双子ニキ(弟)が話の種を投げてきた。

 

 

「主催者だしな。最初は本当にお下がりや処分品だけでやるつもりだったから、盛り上がりに欠けたら出そうかな、と」

 

「相変わらずそつがないねぇ」

 

 

 そう言いつつ肉とご飯を口に運び、ビールで流し込む双子ニキ。良いなぁ、外だからソフトドリンク(ソフドリ)だぞ俺。

 

 

「でも、あの時はまさかセツニキの『カードハント』が盛り上げ役になるとは思わなかったね」

 

「ああいう所がやる夫ニキの凄さだよな」

 

 

 他の俺らが語っている通り、俺の『カードハント』は盛り上げ役になった。何故なら──

 

 

「やる夫ニキが何時もお世話になってるからって『カードハント』と『宝探し』を()()()()も持ってきてくれるとはなぁ」

 

 

 やる夫ニキは俺らと違って片腕が吹き飛んでも笑いながら戦い続ける様な(人間)じゃない。にも関わらず、あの量の『カード』を作ってくれたのだ。

 

 痛かっただろう。怖かっただろう。それでも〝お礼〟の為に耐えてくれた末に出来たあの『カード』は、もちろん俺ら史上で最高額が付いた。

 

 その売り上げは全て〝やる夫募金〟に寄付され、ショタオジを筆頭とした奴等が巧くやる夫ニキの為に使ってくれると思う。着服した奴は──地獄すら生温いかもな。

 

 

「やる夫ニキ本人はこんなもんでごめんおって恥ずかしそうにしてたけど、あれが本心だから凄いよねぇ」

 

「俺らにとっちゃ嫁式神よりレアなのにな」

 

「そういやセツニキはどうやって作ったん?別にスキル持ちの力を借りた訳じゃ無いんでしょ?」

 

「あー俺の修行場の四階ってレベル四十代の悪魔が出るんだけどな?ちらほら高位神の分霊も混じってくるのよ」

 

「ふむふむ。それで?」

 

「その中に個人的に激レア悪魔の〝カオス〟の分霊が居るんだが、そいつのドロップ品をエドニキクラスに託して、適当な装備にして貰うと高位付与効果(エンチャント)がランダムで付くんだ」

 

「それで当たりを引いたと?」

 

 

 こくりと首を縦に振って肉を口に運ぶ。……ビール飲みてぇなぁ。

 

 

「まじかー。ここに来てガチャが来るのか」

 

「オレ、カオス、タオス。オボエタ」

 

「すでに魂にインプットされたわ」

 

 

 俺らならそうなるよな。

 

 

「実際、どれくらいの頻度で見掛けて、どれくらいの強さなのじゃ?」

 

「儂も気になるのう」

 

「僕も気になる」

 

「敵としては強いが、俺らにとっては雑魚かもな。あれだ、ショタオジが作った【二代目モト師匠】まんまと言えば伝わるか?」

 

「何もかもランダムかー」

 

「厄介だが確かに経験済みじゃのう」

 

「出会う頻度は本当に謎だな。一日粘って零だったのに、次の日には数十分で十匹ぐらい見掛けた事もあるし」

 

「幸運持ちは効果ありそう?」

 

「ある時はあるし、逆にマイナスに働く時もありそう」

 

「正にカオスだな」

 

 

 それな。全く同じ事を狩ってた時に考えてたわ。

 

 

「ま、何にせよ楽しみが多くて何よりだぜ!」

 

「それな!流石に霊格は上がり難くなって来たけど、逆に付与効果厳選に力を注ぎ込めるようになったし」

 

「俺が最強派、嫁を最強に派、伝説の武具を越える派。俺らは三つの派閥に別れていた……!」

 

「修羅勢な以上、結局全部やるんだけどな」

 

「草」

 

 

 ワイワイ盛り上がる俺らに断りを入れ、ついでに現時点での会計を終えて店を出る。懐から取り出した煙草を咥えて火を探していると、隣から〝火〟が差し出された。

 

 

「さんきゅ、カヲルニキ」

 

「これぐらいはね。……今日、日本を飛び立つよ」

 

「そっか。寂しくなるな」

 

 

 空に向かって煙を吐き出す。俺が来た頃とはだいぶ変わってしまった街並みに何かを感じるのは歳かねぇ。

 

 

「セツニキはさ、何で俺達(ペルソナ使い)にここまでしてくれるの?他の俺らが反感を持たない様に誘導してくれたり、普通じゃ考えられない様な規模の支援をしてくれたりさ」

 

「俺が戦争従事者だったって話は?」

 

「何処かで聞いた事ぐらいは」

 

「ん、それならだいぶ省けるな。簡単に言っちまえば、俺は若い奴らに戦いを託すのが嫌なんだよ。死ぬなら自分からって〝あの戦争〟の頃から思ってて、当時は今みたいな力も無くて」

 

 

 俺みたいな奴の盾になって異国で散った英霊(馬鹿)共の亡骸を見送る度に、今みたいな力を持っている自分を夢想した。そしていざ手に入れてみれば、今度は〝違う力〟が戦いの参加券とか笑えるよな。

 

 大きく煙草を吸って、煙と共に深く淀んだ感情を吐き出す。戦場では悩みを引き摺る奴から死んでいった。だからこそ手に入れた頭をリセットする為の手段(喫煙)。あるいは自己洗脳か。

 

 

「ま、だからこそ俺に出来る範囲で若い奴らに託すしか無い分野に支援してる訳だ。他の俺らも厳しい戦闘を経験してるから、お前らの辛さも理解してるしな。お前らが頑張ってる限り、俺らはお前らの味方だよ」

 

「……ふふ。頼もしいね」

 

 

 何かを言い掛けてそれを飲み込み、素直にお礼を口に出来る辺り良い子だよな、やっぱり。

 

 

「それじゃそろそろ行くよ」

 

「おう。風邪引かない様にな」

 

「気を付けるよ」

 

 

 カヲルニキが一人、都会に成り掛けの山梨の夜に消えていく。それを見送った後、煙草を灰皿に捨てて俺も帰宅した。

*1
ヴァルキリープロファイルのバドラック




焼き肉大好きなのに大人になると胃もたれ怖くて食べられなくなるんですよねぇ。

若い読者の方々は今のうちに楽しむべきですよ!
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