【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「もう糞みたいな予感しかしねぇ……」
ぶよぶよしている、ピンクに近い
クトゥルフや沙耶の唄*1を思い出す異界を一人進む。
血管と思われる道を塞ぐ細い〝何か〟を切り捨て、膜の様な物を切り開き、生きたまま溶かされたと思われる人間の死体を放置して、漂う臭気を我慢して進んでいると、流石に違和感の方が強くなってきた。
これだけ〝濃い〟瘴気が出てるのに悪魔が出ないのだ。
「……まぁ、進むしか無いんだけどな」
後ろを振り返れば、異界への侵入者を逃がさない為だろうか。触手が幾重にも重なり、退路を塞いでいる。
一本、二本程度なら切り捨てるが、流石に百を越えられると切り捨てるのも面倒だ。
もう少し情報が無いと、逃げる判断すら下せない。
軽く溜め息を吐き出して再び足を動かしていると、開けた場所に出た。周囲が内臓色で無ければ湖と呼べたであろう光景は、漂う
胃酸の色は無色透明。まぁ、そういう事なのだろう。
近くに小枝でもあれば投げ入れるが、残念ながらここにはそんな物は存在していない。霊符やトランプはあるが、無駄遣い出来る様な場所じゃない。
取り敢えず落下したら危険という判断を下し、チラホラ見える肉の陸?の上を移動する。
「働く細胞になった気分になるが……その場合、俺は〝何の〟為に働くんだろうな」
俺が子供という事もあるが、大人でもジャンプしても手が届かない程度には天井が高く、そして内部は広い。
異界は製作過程で悪魔自身の知識か、周辺に存在している情報からベースとなる概念情報を引っ張りだし、それを元にして構築される物なので、少なくとも〝何か〟の生物の体内なのは間違いない。
配置や内部の造形的にこれだろうな、という当たりは付けてあるのだが、何と言うか
暫く陸地に沿って進んでいると、突然周囲の肉壁が震えだし、俺を池に落とそうと迫ってきた。
空には邪魔をする様に触手が編まれ、逃げ場は無い。どうやら俺の冒険はここで終わってしまった様だ。
◇
「ろくでもねーな」
異界の外で擬人式神の
(出てくる悪魔のレベルが分からなかったのが痛い。どの程度の式神を送るべきなのか検討がつかん)
こういう時は、だ。やはり鳥型。これに限る。
いそいそと呪文を唱え、核となる霊符に別の霊符を重ねていき、鳥の姿を作る。
そこに俺とのリンクを繋ぐ術を封じた霊符を張り付け、準備完了。行ってこい!ポッポ*2!
◇
俺はナンバーワン!
そんな事を考えながら飛行していると、四方八方から触手が伸びてきた。空からの侵入者は絶対許さないという確固たる意思を感じるが、それらを前へ、後ろへ、時に Alieron Roll を決め、時に Chandelle を決め、Slice back で速度を上げ、Immelman turn や Sprit S で避け続ける。怒首領蜂*3じゃねーぞ、この世界。
突っ込みながらも縦横無尽に飛び回り、先程の死亡地点を高速で駆け抜けると、今度は胃酸?弾の様な物が湖から放たれ始めた。
もはやこれまでか。次のポッポはアジョット*4となって戻ってくるでしょう。──そんな訳で搭載していた〝起爆符〟と共に散った。
◇
(侵入者へ足場を提供する事を代償にして対空性能を跳ね上げた異界か)
こういうタイプの主は個人の力量に溺れてるか、作ったギミックに自信のある奴が多いんだよな。
ポッポの尊き犠牲により判明した情報を先程までの情報と合わせて
まぁ、連絡が無いなら次を送り込むだけだ。
次はアジョットと言ったな。あれは嘘だ。
やはり戦いは数だよ兄貴!という訳で大小様々な飛べる虫を異界に放つ。今回の目玉はレベル二十相当のスピアー*5だ。流石にこのレベルまで来ると、触手を無理矢理引き千切り、強引に進む事が出来るな。
送り込んだ虫達の探索によって手元の巻物に全体図が浮かび上がってきた。完成図が予想通りならメシア教は本当にロクでも無い事をしている。
目的は……まぁ〝救世主〟関連なんだろうが。
本人は否定するだろうが、個人的にメシア教徒の信じる〝救世主〟がショタオジを越えられるとは思えない。
百歩譲って原作主人公クラスの才能を持っていたとしても、ショタオジを越えられるのか?と考えると、どうしても首を傾げてしまう。
何せスライムでレベルカンストが不可能な世界なのだ。ショタオジと同等レベルになる為の獲物すら足りないだろう。
(いや、だから鳩は終末の後に〝救世主〟が生まれるって言ったのか)
あくまでも
つまり、メシア教徒がやってる事は
ショタオジすら生まれた時はまだ人間の範疇から出てないんだぞ。〝救世主〟と呼ばれるだけの力を持った子供が制御能力無しにいきなり生まれたら、速攻で大気中の霊気が上昇して竜脈が活性化、GPが上がって世界は魔界に落ちるだろうが。
それともあれか?〝救世主〟と書いて〝戦犯〟とでも読むのか?馬鹿らしい。
「……ん?」
スピアーとの接続が突然切れた。腹部に走る
メシア教に関係する悪魔から絞り込むなら【天使 ヴァーチャー】辺りか。【大天使 ガブリエル】も候補だが、流石にあれクラスが居たら雰囲気で分かる。
取り敢えずこの情報も送信。するとすぐにスマホに着信が。すぐにこの場を離れて結界を張り、電話に出る。
『もしもしセツニキ?大丈夫?生きてる?』
『送り込んだ式神が二十レベルの奴までやられたがな。本体は何とも無いぞ』
『そっか、良かった』
安堵の溜め息がスマホ越しに聞こえてきた。俺よりも過酷な〝運命〟に愛されている癖に他人の心配とは……カヲルニキは優しいな。
とはいえお互い忙しい身だ。こちらから話を振る事にしよう。
『それよりそっちはどうだ?何か見付かったか?』
『手掛かりの様な物は見付けたからそこから探ってみるつもり。そっちは?』
『送った画像の通りだな。大本はメシアで間違いないが、オカルトだけじゃなく機械による生命維持に頼ってた。そんな技術をメシアに提供する勢力が〝アイツ〟しか思い当たらなくてな』
『その予想は間違ってないと思う。僕の方で〝アイツ〟の分霊がメシア教に潜り込んだのは確認出来てるから。ただ、現在の居場所がわからないんだよね』
『その情報はショタオジに上げたか?』
『もちろん。それで占術を使って貰って手掛かりを見付けた感じ』
『なるほどね』
となると、これからはメシア教が機械技術を使ってくるのか。糞みたいな事になりそうだ。
『取り敢えず、俺の方でこの異界を攻略してみるが……失敗したら後始末は頼む』
『了解。出来ればそんな事は無い方が良いんだけどね』
『とは言っても──いや、待った。ペルソナって幾つか種類あったよな?』
『ガイア連合で確認済みなのは僕の様に超常の力を持ったもう一人の自分を具現化させるタイプと、深いトラウマがシャドウ化して、それを受け入れ、飼い慣らせた人間の二タイプかな?前者は
『俺自身に無くても『ペルソナ適正』を式神に与えられれば何とかなるだろ?』
『本気?──って言いたいけどセツニキだしなぁ。ハム子ネキが喜びそう』
『ま、生きて帰れたらだけどな。〝アイツ〟が出てきたら最低限の置き土産はしておくぜ』
『異界攻略を止めるって訳にはやっぱり行かない?』
申し訳なさそうな声で聞いてきたカヲルニキにハッキリと断言する。
『この場所でやられた以上、無視出来ないんだよな』
スマホの通話を切り、ポケットに仕舞う。──前に修羅用の掲示板にメシア教が機械を使う可能性があるからと注意喚起だけ投げ込む。
これで良し。異界攻略に戻るとしますかね。
主人公の異界攻略はキョウジさんレベル43です。
本殿に居ながら深層を押さえ込んでるショタオジはこんな形なのかなぁって妄想もありますが(笑)