【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
これからも本作品を宜しくお願い致します。
現状の整理をしよう。俺の目的は石長比売の開放。その為の障害物は二つ。
一つはメシア教徒の施した〝封印〟だ。メシア式だから隔離系だと思うが、俺の手に負えるレベルなのかは不明。何処の術式も最上位は秘伝や一子相伝クラスなので、そもそも情報が無い事の方が多いのだ。
二つ目は俺達と同じ〝
ただハッキリ言わせて貰うと、コイツ自身は大したこと無い。修羅勢なら苦労する事もなく狩れるだろう。
問題なのはコイツの戦闘力では無く、〝ギミック〟に守られている事だ。
単純に異界ごと崩壊させて良いならすぐに終わるが、残念ながら今回は前世からの祀神に〝お願い〟されたので、簡単に終わらせる事を許さない。
面倒だな、と思うが、同時に一族の悲願に手が届いた事を喜ぶ自分が居るのも確か。
ショタオジとの約束もあるし、出来る限り頑張ってみますかね。
多少の細工を施した後に隠形術を最大出力で展開し、異界に突入。待ち構えている〝転生者〟の真横を素通りする。
この異界の形を簡単に例えるなら
式神を放つと〝転生者〟に気付かれるので、自らの足で被害者の
それら一つ一つに霊符を
この手間賃は全て石長比売に請求してやる。確かに前世の祀神だが、この世界の石長比売は一族が祀っていた女神では無いのだ。悪魔として扱う事に躊躇いはない。
祭神の為に働ける喜びと、悪魔として扱う事への抵抗の無さ。前世と今世が反発し合ってる気もするが、それら全てを〝俺〟として括る。
別に俺はメシア教徒ほどの狂信者では無いのだ。祭神の為ならこの命惜しくない等とは決して言えないし、むしろ
(……とはいえ面倒だな。
少しだけ悩み、まだ早いと我慢して作業に戻る。多くの虫型式神を犠牲にした事により、この異界の殆どの
普通に迎撃された虫も多く、閉じ込められ、なぶり殺された虫も居た。そんな厄介な罠の先にも被害者の魂は存在しているだろうから、それを確認するまでは無理も出来ない。
隠形中という事もあり、大きく溜め息を吐き出す事すら出来ずに進む。胃酸の湖、たぶん食道と思われる細い道、明らかに人間が本来持つ数から超過している歯が上下する口。その先を抜けたら今度は大きく脈動する心臓。
数も、形も、位置も、大きさも。
何もかもバラバラに組み換えられ、それでも
大切なのは、死ぬその時に笑えているかどうかだ。
身体を治す事はたぶん可能。記憶を弄る事も消す事も可能。本人が復讐を望むなら力を与える事だって出来る。ガイア連合山梨支部に所属してる連中は
金と素材さえ与えておけば、彼ら彼女らがどうとでもするだろう。
だから俺がやるべき事は、彼女らの為に〝魂の保護〟さえしっかりやれば良い。
悪魔こそ現れないが、環境自体が敵となって襲い掛かる異界を一人進んでいると、明らかにヤバい場所に着いた。
一見すると普通*3の大通りなのだが、バレ無い程度に霊視すると、周囲の瘴気を吸い込み、身体の栄養に変えている事が分かる。
原理的には【エナジードレイン】なのだが、身体の機能で考えると、この場所が
もはや見付かっても仕方ないと諦め、大きく溜め息を吐き出すと──
「漸く見付けましたよ」
──やはり〝
「こそこそと嗅ぎ回る手際は見事でしたが、油断しましたね」
「そうだな。もう何もかもが嫌になったぜ」
働く細胞達は何時もこんな仕事をしてるのかと思うと、もう少し身体を労りたくなるな。
「おや?潔く私に殺される覚悟でも出来ましたか?」
「お前程度に俺は殺せんよ」
言い切ったと同時に【縮地】で一気に大通りを駆け抜ける。やはり上下左右から俺を押し潰そうと蠢き出したが、すでに遥か後方の事。俺は大通りを抜け、その先に居た。──尤も〝転生者〟を振り切れなかったみたいだが。
「何処に逃げようとも無駄ですよ?ここは私の体内でもある。だから貴方が何処へ逃げようとも私にとっては一瞬で追い付ける場所でしか無い」
地面──いや、内臓から生える様に〝転生者〟が現れる。ついでにその手には雷を刃に変えた剣が。
「御大層な武器を握って偉そうにしてるところ悪いが、こっちはお前なんて相手にしてる暇はねぇんだよ。だから──ここで沈んどけ」
呪符をばら蒔き、ダートに変えて発射。四方八方から襲い掛からせ、ついでに【ムド】を霧状に変えてばら蒔く。
「なんだその【スキル】はっ!くっ、この程度で──この私が止まるとでもっ!?」
【
「その程度で随分と必死だな。その見た目は飾りか?」
言葉に対する応答は刃だった。軽く下がって避けながら、呪文と共に呪符から【呪怨刀】を生成。そのまま切り返す。
「さっきから何なんだお前は!私は知らない!そんな【スキル】を知らないぞ!」
「無学だな。まぁ、取り敢えず死んどけ」
ここで止めを刺すつもりで刀を振るうが、やはり途中で〝前世の俺〟が俺の動きを止める。頭では理解していても、心は祀神の言葉を忘れられないらしい。
「ッ──隙ありッ!」
「ねぇよ、そんなもん」
必殺の雷剣をムラサキ達にコツコツ作らせた【念動】の霊符で無理矢理身体を動かして回避。そのまま【感知妨害*4】効果付きの煙玉を地面に投げ付けて即隠形。もちろん煙幕に紛れてさらに式神を追加した。
「糞っ!出てこい卑怯者!」
辺り一面に【
勝利条件を満たすまで無敵の敵とかマトモにやり合う訳無いだろうが。
◇
厄介な罠がある度に〝転生者〟と交戦する事、数十回。漸く式神達が〝仕事〟の終わりを報告してきた。
虫達では突破出来なかったエリアは俺自身が向かい、そのついでに〝転生者〟の相手をした訳だが、終わりが見えてきた事に安堵の溜め息を吐き出す。
「……やっと観念しましたか。安心してください。痛みも感じさせずに殺して差し上げますよ」
「まるでタケノコだな。生えすぎだろ」
「ッ────!」
怒りと共に振り下ろされた雷剣を【呪怨刀】で受け流し、距離を取る。軽く周囲を見渡せば、墓標の様に地面から生えている人の姿が。ついでに石長比売を封印していると思われる巨大な結界も見える。
やっと中心部か、と思ったのも束の間。この場所が人間の何処の部位で、目の前の〝転生者〟が何をしていたかの【目星】に成功してしまった。
「お前らメシア教徒も現界してる天使達も本当に糞だな。人間の命を何だと思ってやがる」
「……仕方の無い事なんですよ。人間が終末を乗り越える為には必要な犠牲なんです」
「へぇ?随分と御大層な目的をお持ちな事で。で、俺も終末対策にお前の命が欲しいんだが死んでくれるか?コイツらの様に
「ッ…………」
すぐに返答をしないという事はそういう事なんだろう。
「終末が来た後に〝救世主〟が降臨するなら終末を早めれば良い。そんな天使達に対してお前が出した答えが〝コレ〟ならお前はやはりメシアの糞天使だよ」
「黙れッ!」
「男は〝種〟以外の部分は処理して身体を維持する栄養に。女は卵を産む〝鶏〟として使う。生まれてきた赤子も同じ様にしていけば、ねずみ講の様に加速していく仕組み。必要なのは〝数〟だけで〝命〟じゃない。成る程、そりゃそうだよな?」
「黙れ黙れ黙れ黙れェェ────!」
乱雑に振るわれる雷剣を受け流し、逆に切り落とす。そのまま〝転生者〟を蹴り飛ばして元の位置へ戻す。グラ爺と何度斬り合ったと思ってんだ。この程度じゃ温すぎる。
「終末後に〝救世主〟が生まれるなら、その間に
「そ、そうだ!だからこそ僕は──」
「馬鹿か、お前は」
漸く分かった。メシア教に対する怒りの原点が。
「信じる神が居て、仮にも神職を名乗っている癖に」
初めは石長比売を封印したからだと思っていた。
「それを信じると口にしながら」
次に母親を殺した事件を引き起こしたからだと考えた。
「その教えを自ら否定して」
最後に日本各地に残る惨状を見た故に。
「それでも主の為?世界の為?」
──どれも間違ってない。だが違う。
「ふざけるのもいい加減にしろよ。キリスト教の異端者共が」
俺がメシア教に苛ついてるのは──コイツらが自身を〝異端者〟だと理解していないからだ。
新春特別編を書こうとして書けなかったので通常営業という(笑)