【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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今話で終わり!感想やっと返せるぜ!


〝救世主〟

 

 

 霊符や呪符を撒きながら取り敢えず距離を取る。ついでに〝切り札〟も用意して袖に仕込む。

 

 俺がこんなにも警戒している理由は単純だ。

 

 

 ()()()()()()()()M()A()G()()()()()()()()()

 

 

 確実に殺した筈なんだがな。

 

 天使の遺体を中心に恐ろしいまでの霊圧が撒き散らされる。その中心は【ドミニオン】の腹部。すでに儀式として成立している様で、霊符を投げても弾かれる。

 

 

 メシア系、雌雄同体、天使、腹部。

 

 

 雌雄同体故に【処女懐妊】を術式無しで行える天使という肉体。【ドミニオン】か〝転生者〟のどちらかにガブリエルとの〝縁〟があり、それ故に【受胎告知】が可能な状況。

 

 産まれてくるのは〝救世主〟か。演劇で言えば複数の役を無理矢理二人でカバーしている強引な術式だが、たぶん死ぬ間際に〝転生者〟の才能が悪さをしたんだろうな。糞が。

 

 ただ黙ってみてるのもムカつくので、ありったけの呪符や霊符をばら蒔いて準備する。

 

 

 狙うは誕生後の一撃必殺。そっから先は流れだ。

 

 

 霊圧が一段と重くなる。もはや息苦しさを感じるそれは、敵の強大さをそのまま教えてくれる。

 

 

(推定は六十前後。出てくるのは〝救世〟の逸話持ちの悪魔に類似した存在の筈)

 

 

 悪魔大全かGoogle検索が欲しいな!切実に!

 

 

 無いもの強請りした所で問題解決には役立たないので、大人しく灰色の脳細胞を動かす。とはいえ〝救世〟の定義が曖昧過ぎる。

 

 世界を救った人間にしか資格が生まれないなら、これだけの霊圧を撒き散らしながら【スライム】が爆誕するだろう。

 

 何を持って救ったとするかによるが、世界から争いは消えていないし、人類は未だ悪魔に脅かされている。

 

 つまり、誰も世界を救えていないからこその今の世界な訳だ。

 

 これが一瞬でも世界を救ったで良いなら、ショタオジやカヲルニキ辺りが対象に入る。ガイア連合に所属してる奴等の中にも何人か居るだろう。出てきたら即逃げだな!クソゲーはやるもんでは無く、見て楽しむ物だ。

 

 さらに敷居を下げ、一国を救ったクラスで良いなら途端に対象の数は跳ね上がる。

 

 例えば日本人なら誰しもが知る織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三人は、日本の政治から宗教を切り離した偉人だ。明治維新の参加者達は世界でも唯一と言って良い無血革命の成功者となる。歴史に煩い人には無血革命じゃない!とか色々言われそうだが、国を割ったり、国土全部を巻き込んだ内乱に発展しなかった時点で無血革命だろう、と俺は個人的に思う。

 

 世界に目を向けて見ろ。革命の後に続く惨劇の惨さを、未だ収まらない内乱続きの国々を。

 

 ま、その流れから日本の歴史は世界大戦に続くので、正直〝救った〟と言えるか微妙だが。

 

 

 では、本題の産まれてくる〝救世主〟の話だ。

 

 

 神話や伝説で世界を〝救った〟と呼べる存在はほぼ居ない。大抵は世界を創り上げた or ご当地ヒーロー止まりだ。

 

 そして神話に残ってる様な世界を救った存在は、そもそもレベル六十程度では収まらない。

 

 素体となった〝転生者〟の原作知識を生かして歴代メガテンやペルソナ主人公が出てくる可能性もあるが、それなら他のゲームの主人公すら対象に入る。

 

 ぐだ男とか出てきたらどーするか。取り敢えず写真撮って掲示板に上げるかな。

 

 半ば諦め気味にその様な事を考えていると、ついに産まれるのか光が強くなってきた。

 

 同時に頭を切り替えて一斉掃射の構え。【マカラカーン】を貼られるより先に撃ち抜く。手応えが薄かったら撤退だな。

 

 さて、何が来るか──

 

 

「アハハ!やはり僕こそが〝救世主〟だったんだ!」

 

 

 喜びを隠しきれない〝転生者〟が両手を広げて天を仰ぐ。その隙に設置していた霊符や呪符を全て叩き込んで離脱。普通に再誕しただけかよ。お前には失望した*1ぜ。

 

 

「ふっ。無駄──って逃げるな!卑怯者!」

 

「じゃあな。生きてたらまた会おう」

 

 

 捨て台詞を吐いて強化魔法(バフ)を積んで逃走開始。どうやって処理しようかねぇ。

 

 

 

 

 頭の中にユーロビートを流しながら、全速力で異界を駆け抜ける。異界を覆っていた〝誰か〟の肉体はすでに無く、代わりに石長比売の封印された異界らしい大理石が俺の足音を響かせる。

 

 

「待てっ!僕と戦え!」

 

「すでに戦ってやっただろうがッ!」

 

 

 叫びながらも足は止めない。ついでに残り少なくなってきた霊符をばら蒔いて足止め。頭文字Dのつもりで走っていたが、マリオカートになってる気がする。

 

 右へ左へ上へ下へ。時には壁や天井すら走り抜け、たぶん胃酸の湖の跡地と思われる大穴は霊符を足場が代わりに駆け抜ける。

 

 

「往生際の悪い奴だ!──【マハラギダイン】!」

 

「──っぶねぇ!殺す気か!」

 

「最初からそのつもりだ!【マハンマオン】!」

 

 

 後ろの通路全域を覆う火炎は結界で時間を稼いでから射程外まで走る。その後すぐに放たれた広域閃光(マハンマオン)は被弾時の衝撃を利用して加速に使う。……耐性抜かれたな。

 

 

(成る程ね。ショタオジが言ってたのはこういう事か)

 

 

 レベル上限は人によって違うけど、大体五十を越えた辺りから余り関係無くなるよ。

 

 ふとした雑談の時に言われたその言葉の意味が、その時の俺には分からなかったが──今なら理解が出来る。

 

 

 

──これが【権能】か。

 

 

 

 自身が出来る事は、全て出来る事。だから【耐性】なんて〝概念〟は意味が無い。

 

 剣で切ったら敵は死ぬ。炎で焼いたら燃える。氷を操るなら凍らせる事が出来るし、衝撃はそのまま相手を吹き飛ばせる。

 

 例え宇宙空間に投げ出されようとも、人の身体は()()出来る。ならば()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 思い込みとは違う。俺の周辺に漂うMAGが、俺の身体に宿る霊力が、俺が望む様に〝常識〟を改竄する。

 

 

──いや、この言い方は間違いだな。

 

 

 〝個〟として高められた〝()〟に〝常識〟が平伏す。たぶんこの方が喩え話として的確だ。……まぁ、現状では何の役にも立たないわけだが。

 

 考えが纏まった所で逃げる事に集中する。同時に新たな敵への考察を開始。

 

【貫通】が無くとも耐性を抜かれるのは、あの()()の霊格の高さが得意魔法を【権能】の領域まで押し上げてるからだろう。

 

 高位天使から生まれた事による【破魔】に対する絶対的な適正。故にアイツの【マハンマオン】は〝術〟である霊符では防げない。

 

 そして本人は新たに手に入れた力に溺れて気付いてないが、霊力の〝色〟が変わっている。【雷撃】から【火炎】に変化したそれは、そのままアイツの魂の変異──()()の変更を教えてくれる。

 

 

(高位天使で火炎使い。レベル六十前後なら【ソロネ】で確定だな)

 

 

 たぶん【火炎属性(マハラギダイン)】の方は霊符で防げる。そのまま【雷撃属性】だったら【権能】になっていただろうが、急激な霊力の変更により錬度を失ったと見るべき。一度試してみる必要はあるが、俺の〝経験()〟が防げると教えてくれている。

 

 そうこうしている内に漸く出口が見えてきた。その手前、やり合うには丁度いい広さの部屋で立ち止まる。

 

 

「ついに観念したのかい?」

 

「お前を殺す算段が付いただけだ」

 

 

 刀を構えるのと同時に俺の身体から()()()()()()()()()()()

 

 

「理解してしまえば簡単な事だったな。ムラサキの【アナライズ】には感謝しかねぇ」

 

 

 スキルの【権能】化には俺の様に理解する必要のあるタイプと、〝本能〟が理解しているタイプに分かれるのだろう。だから俺は自身が出来て()()の事が出来なかった。

 

 警戒した様に身構える【ソロネ】に説明する義理は無い。義務も無い。だから──一歩(縮地)で刀の間合いに敵を入れ、そのまま振り抜いた。

 

 

「疾い!馬鹿な!?奴の能力が上がった!?」

 

 

 辛うじて身を躱し、距離を取った悪魔が【アギラオ】クラスの火炎弾を連射して牽制。それを霊符(火炎吸収)で吸い込みながら近付き、再び刀を振る。

 

 

「ぐっ──!動きが全然違うッ!」

 

 

 翼を広げ、空へと逃げる悪魔に【ソウルドレイン】をダーツ型に変化させて連射。さらに奪った霊力をそのまま転用して悪魔の周囲にトランプ型の【ソウルドレイン】を設置。

 

 考えるまでも無く、今の俺が【権能】化出来る程に熟達し、()()()()()()()扱えるスキルは【ソウルドレイン】だ。【丸かじり】時代からずっと愛用してる【スキル】なんだ。今更、鍛錬する必要なんて無いぐらいには当たり前に使える。

 

 【煩悩即菩提】や【色即是空】は正直微妙。俺自身が寺関係のスキルに忌避感を抱いてるからか、永遠に【スキル】止まりでも不思議じゃない。まぁ、【貫通】乗せて撃てば良いだけなんだが。

 

 

「くそ!くそッ!何なんだよお前は!?いきなり強くなるなんて可笑しいだろ!?」

 

 

 逃げる途中でトランプに触れ、墜落した悪魔が地面を叩いて吠える。()()()ならそう思うんだろうな。──馬鹿馬鹿しい。

 

 

「急に手に入れた?馬鹿言うなよ。俺のこの力は、この糞みたいな世界に転生してきてからずっと鍛練し続けて得た力だ。お前の様に()()()手に入れた力とは違う」

 

 

 ガイア連合に所属する奴等にもロクデナシは多い。〝素材〟にしたい奴等も一杯居る。だが幹部勢や地方に根付いた俺達、俺らを含む修羅勢を見れば、誰も彼もが終末に向けて努力している。それを疑う方が失礼だ。

 

 【権能】を理解出来た今だからこそ断言出来る。ショタオジを筆頭とした〝運命に愛され勢〟と呼ばれる、過酷な運命に立ち向かってきた者(物語の主人公)達の凄さを。

 

 ショタオジのS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)は、それが可能になるぐらい【火炎属性】に習熟した──()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 カヲルニキの【ラグナロク】も同じだろう。

 

 彼らと違って俺は安全保証された場所を最短で駆け上がっただけだ。ここまで来たことこそ誇るが、彼ら以上だと自惚れる事は無い。出来る訳が無い。

 

 

「さて、これで終わりだ」

 

 

 大理石で出来た床が俺の足音を響かせる。ゆっくりと。だが確実に距離を詰める。

 

 

「ヒッ!──い、嫌だッ!死にたくないッ!」

 

 

 何度も転びそうになりながら、悪魔が〝出口〟を目指して逃げる。それを異界から追い出すように後を追う。

 

 

「は、はははッ!そうだッ!僕はこんな所で死ぬ人間じゃないッ!もっと強くなって必ず復讐してやるからな!お前の顔は覚えたぞッ!」

 

 

 出口に辿り着いて安堵したのだろうか。わざわざ俺の方に振り向いて()()()()()を残してきた。

 

 ここまで来ると流石に哀れだな。だからせめてもの情けとして──

 

 

「そうか。()()()()()()()()()

 

 

 この戦いの勝者として、叶うことの無い言葉を返す。

 

 

「ッ!その上から目線がムカつくんだよッ!絶対に復讐してやるからな!お前の目の前でお前の守りたい奴等を一人残らず犯してやる!魂すら砕けるぐらいに拷問してやる!安心して眠れる事の無い様に四六時中襲ってやる!僕に歯向かった事を後悔しろッ!」

 

 

 捨て台詞を吐いて、悪魔が異界の〝外〟へ抜け出す。──それが()()となった。

 

 

「ぁ……?ぎぃ……?■■■■ァァァ!?」

 

 

 大気に全身を引き裂かれる様にMAGに還っていく身体。その想像を絶する──魂を引き裂かれる痛みに耐えきれず、口から漏れでる言葉にならない悲鳴。

 

 GPこそ上昇傾向にあるが、未だ高レベルの悪魔が当たり前の様に出歩ける程のMAGが大気中には存在していない。

 

 だから異界の外で【スキル】を使うと基本的に著しく減衰するし、霊格が低ければそもそも発動すらしない。

 

 

──だから、この末路は必然だった。

 

 

 【処女懐妊】で悪魔から生まれた存在が()()と呼べる筈が無い。人間と悪魔のハーフならともかく、悪魔の子は悪魔。それが自然の摂理。

 

 そして悪魔は〝概念生物〟であり、存在にはMAGが必要。その必要な物が存在しない場所*2に出れば、ご覧の通りだ。

 

 悪魔の構成MAGが完全に大気に還ったのを確認。念の為に霊視で見て、残留MAGが無い事も確認した。

 

 ふと思ったが、霊視ニキの【霊視】って【権能】だよな。

 

 モニターに映る炎を魂という形で認識している俺と、()()()()()()()()01(プログラム)が見える霊視ニキ。明らかに見えてる物が違う。

 

 その内【魂砕波】とか使いだしそうだ。見えてるなら砕けるだろうし。

 

 

「……あ。自由に利用出来る〝転生者〟の素材取り逃した」

 

 

 こんな機会が無ければ好き勝手弄くれる素材なんて手に入らないのに……勿体無い。

 

 とはいえ漸くここに来た本題を進める事が出来るんだ。今は意識を切り替えなきゃな。

*1
普通に英雄クラスやゲームの主人公に会えると思ってた

*2
多くの霊能組織が行っている様に異界からMAGが漏れない様に結界を張っていた。突入前の細工がコレ




作者の中では高位悪魔が低いGPで現界するとこうなるイメージ
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