【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「案外出来る物ね」
周囲の色欲混じりの視線を胸に感じながら改札を抜け、自らの主に到着した事を知らせるメッセージを送る。
つい先日まで持った事すら無かった日本円を手渡され、たった一人で水戸市へと来る事が出来た事に軽く安堵の溜め息を吐いていると、目の前に〝餓鬼〟が三匹程現れた。
「おねーさん綺麗だね~良かったら俺達とお茶しない~?」
「奢るよ~?いっちゃん○○グループの息子だから金持ちだし~」
「おいおい。金持ちなのは俺じゃなくて親父だって~」
「No,thank you」
ナナシ曰く日本人のナンパは嫌悪感を見せながら英語で返せば大抵消えるらしい。
どうやら今回もそのパターンから外れなかった様で、あ~やらう~やら呻きながら三匹の〝餓鬼〟が人混みへと消えていく。
というかナナシの
「あの~セツニキの関係者の方ですか?」
知っている名前を尋ねてきた声の方へ顔を向けると、そこには三十代ぐらいのスーツ姿の女性が。確か合言葉は……
「ガイア連合山梨支部の
「よ、良かった!日本語通じた!」
「そやから言うたやん。この人で間違いあらへんって。ちゅうか前面に山梨と書かれたTシャツ姿で、背中に修羅なんて文字を背負ってるネタシャツ着るのなんてわし達関係者だけやん」
ちなみに下は普通にGパンよ。面倒だったし。
「てっきり
私の好感度が十ぐらい上がったわ。気分が良いから
「あっ!私達だけで盛り上がって御免なさい!こちらへどうぞ!」
デカデカと『ガイアグループ』と車体に書かれた黒塗りのワゴン車に乗り込む。外から中が見えない様に加工されているこの車は、どうやら茨城の派出所の社用車らしい。
「え、えっと、まずは何をすれば良いのかな?ご飯?お風呂?それとも全裸土下座?」
「主様。いきなりそないな事を言うたら引かれんで」
「仕方ないじゃん!
「こないな主で堪忍え?許してな」
「夫婦漫才を楽しんでるから問題無いわ」
「そっか~」
いずれ私もナナシと同じような会話を出来るのかしら?……想像つかないわね。
「え、えっとまずは自己紹介から?で合ってる?希」
「おうてんで」
「よし!えっと私はTS──通じる?」
「ええ。修羅勢にもたくさん居るもの。雌雄同体の人も居るわ」
「待ってぇ!!希助けて!!俺如きじゃガイア連合の深部に耐えられない!!」
「はいはいわかったわぁ。って事で私が引き継ぐで。主様は前世男、今世女の○○神社の跡取りや。で、うちはその式神。名前は──」
「ガイア連合では実名では無く、ハンドルネームで呼び合う文化じゃ無かったかしら?」
「そうなん?主様、主様のハンドルネームは何?」
「え、えーっと……じゃ梅昆布!梅昆布ネキで!」
それで良いのかしら。
「ちゅうわけで彼はうちの主の梅昆布ネキ。うちは希や」
「セリスよ。セツニキの嫁で今回の異界討伐の援軍になるわ」
良いわね。堂々と嫁と言える環境。気分が上がるわ。
「えっと、それじゃセリスさん。これから何処へ向かえば良いですか?」
「一番近い異界へお願いするわ。それと今回協力してくれる俺達でグループを作って頂戴」
「グループの件は了承しました。休憩無しで大丈夫なんですか?」
「鍛えてるもの」
一度異界に潜れば、三日三晩戦い続ける事も珍しい事では無いし。
「分かりました。希、手伝ってくれる俺達にメッセ送ってグループ登録よろしく」
「了解や。セリスはんも登録頼みます」
「分かったわ」
お互いに『LILIN』の登録を交わし、そのままグループトークで軽く挨拶。その後、待機中の俺達から異界の情報を報告して貰う。
「厄介のは二件程ね。それ以外は私で何とかなるわ」
「えっ」
「取り敢えず厄介なこことここの二つは支部へ報告を。こっちは不死系、もう一つは仲間割れ系のギミックだと思うから私一人では無理よ」
「分かりました。希、お願い」
「了解や。……こらうちの個人的な疑問なんやけど、なんでわかったん?」
「似た様なギミックを山梨で見たもの」
殺した敵がMAGに還らず、死体となって起き上がる〝BIOHAZARD〟と呼ばれる異界と、異界内に漂う胞子が寄生して仲間割れを引き起こす〝冬虫夏草〟。
どちらも山梨のレベル二十前後で一度は見掛けるギミックね。一度覚えてしまえば、ギミックから逆算して異界の主まで読めてしまうのが山梨の良いところであり、悪いところでもあるわ。
「ほえ~修羅勢って凄いんだなぁ」
「私程度で驚いていたら本物に会った時に驚くわよ?」
「そ、そうなんですか……」
脅すつもりは無かったのだけど。でも、レベル三十に漸く成れた私程度を修羅勢だと思うのは危ないわ。
〝本物〟達は本当の意味で人の姿をした修羅になっているし。
それからは特に会話も無く、暫くすると車が停車した。取り敢えず異界攻略用の装備*2に着替え、別にVIPという訳でも無いので自分で扉を開けて下車する。
「セリスさん今日は宜しくお願いします!」
「御期待に応えられる様に頑張るわ」
「え、ちょ──」
スタスタと異界に突入。……平原タイプね。大型の主や馬型の主が好む異界だけど、私達にとっては一番楽なタイプの異界よ。
取り敢えず霊符からグラ爺とジャンヌネキから頂いた『氷の剣』を二本取り出して腰に差す。昔は『アイスソード』と呼ばれていたらしいけど、その名はジャンヌネキの持つ大剣がほぼ占有しているとか何とか。
確か──【堕天使 クロケル*3】だったかしら?彼が私の持つ剣より上位の武器を落とすのよね。
余計な事を考えながらも〝鳥*4〟を飛ばし、視界を繋げる。
──見付けた。
「ちょ、ちょっとセリスさん!いきなり過ぎますよ!?」
「貴方はここで待ってて。すぐに終わらせるわ」
一歩で加速、二歩で最高速へ。その速度を維持したまま異界の主と思われる【バイコーン】に【突撃】する。
「……討伐完了」
念には念を入れて霊視で残留MAGを確認したけど、問題は無さそうね。次に行きましょう。
「セリスさん!」
「ここは終わったわ。次に行きましょう」
「……え?」
固まってる梅昆布ニキを置いて車に戻る。着替える必要は──無いわね。
「本当に異界が崩壊してるんだけど!?」
「ちょ、これが山梨の修羅勢の実力なの!?」
「凄いわぁ。これが上の力なんやね」
車の外が騒がしいけれど、気にせず【瞑想】して疲労を回復。……やっぱり回復が遅いわね。次からは異界の中でやろうかしら?
「あ、あのセリスさん?次はどちらへ……」
私が【瞑想】している内に落ち着いたのか、梅昆布ネキが運転席に乗り込んでいた。軽くスマホを確認するついでに待機中の俺達にも移動する様に指示を出す。
「偕楽園の異界は最後にして頂戴。それ以外は最短ルートでお願いね」
「分かりました」
動き出した車の揺れを感じながら再び【瞑想】を行う。出来るだけ早く処理して
◇