【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「待ってくださいサクヤ様!貴方様に見捨てられたら我々は……!」
良い歳した中年男が二十にも満たない容姿のサクヤに土下座している。これで四件目。異能を失い、もはやサクヤに気付けすらしない浅間神社系列の神社には慈悲を与えていたが、ここは異能を持ちながらもメシアに本家を売った神社だ。慈悲は無いだろう。
「貴様達は私では無くメシアの鳥共に尻尾を振ったのであろう?ならば、貴様らはすでに私の信徒では無い。神社の看板を降ろし、教会でも立てれば良かろう」
サクヤが軽く腕を振るうと、境内に植えられた桜の樹が見るも無惨に枯れていく。さらに富士から繋がる霊脈から切り離し、神社として終わらせる。
もはやこの地に霊能者は現れない。現れたとしても、育つ土壌が無い。さらに言えば、今まで厚顔を晒して生きてきた〝ツケ〟の取り立てが起こるだろう。
闇召喚士か、悪魔か、それとも周辺の霊能組織か。
土地を殺されたんだ。下手すれば表社会からも罰せられる可能性がある。
「慈悲を……!慈悲を……!」
「セッツァー。征くぞ」
「へいへい」
先を行くサクヤの後ろを静かに歩く。周囲には隠形で隠した式神も居るし、外にはジャンヌネキと双子ニキ(弟)も居る。
会談中も霊圧で威嚇したし、馬鹿な真似は──
「ならば……望み通り貴様の首を持ってメシアに降ってやるわッッ!!」
「人生乙」
振り向きもしない。サクヤも止まらない。後ろから建物ごと吹き飛ぶ音がした。
『俺の【危険予知】が反応したから撃っちまったが良かったか?』
『双子ニキが動かなかったら俺が処理してたさ』
『まさか実力差を理解しないとは……』
『どうせ霊的知覚で感じる脅威を信じず、女と子供の二人だと思ったんだろ』
『
『レベル的に一か一未満だしな。うちの一族だったら本家を生かす為の肉盾になる覚悟があったと思うが、アイツらにある様に見えるか?』
『霊能組織としても落第って事か……』
周辺にそれなりに大きい霊能組織があったから、今までそこまでの覚悟を決める必要が無かったんだろうな。
全く……星霊神社の先代や香川を見習えよ。片や一族の『未来』の為にショタオジを繋ぎ、片や多くの犠牲を出しながらも銀時ニキ*1が来るまで悪魔狩りを続けてたんだぞ。
それぐらいの根性を見せてくれなければ、流石の俺も救いの手を差し出せない。
双子ニキが維持してくれていた念話を切り、周囲を警戒しながらサクヤの背中を守る。
「ふぃ〜疲れました。嫌な役目ですよねぇコレ」
乗り込んだ車の中で、へにゃんとサクヤが窓に体重を預けた。
「まぁ、ガイア連合の俺達が知ったら騒ぐな!」
「可哀想。助けてあげればいいじゃん。辺りかねぇ」
ジャンヌニキの言葉に双子ニキが車を発車しながら答える。ちなみに俺は助手席だ。煙草を吸うからな!
「実際のところどうなん?サクヤの対応ってアウトなの?」
「物凄く優しいぞ。
生きたままコンクリートなんて素人のやり口よ。
何故、赤ずきんのお祖母さんは狼の腹に石を詰めるなんて方法を知っていたのか。
それに気付いてしまった貴方はSAN値チェックだ。
「えげつねー……って思ったけど、別に磐長一族から抜けて一般人として生きる事は禁止してないんだっけ?」
「もちろん。今世は駄目だが、前世なら一神教を信仰しても良かったぞ。というか一族が厳しいのは石長比売を信仰すると誓っておきながら掟を破った奴だ」
「利益は欲しいけど信仰はやだ!は許せませんよねぇ」
「それを理解しない奴が多すぎるよなぁ」
サクヤと二人で溜め息を吐き出す。
「俺は無神教だからイマイチ理解出来ないんだけど、そんなに良いもん?信仰するってさ」
「前世だと〝名札〟とか〝自己紹介〟みたいなもんだったな」
「ん?何そのラインナップ」
「キリスト教で分かりやすく例えるなら、十戒を破る人間とは付き合いませんよっていう意思表示をしている人間って言えば分かるか?」
「あー十戒を破った時点で縁を切る人間ですって宣言してるのか」
「そうそう。神道はちょっと特殊でな。教義も教典も何も無いから先祖を敬い、自然を敬い、物を大切にして、人として正しく生きましょうがキリスト教で言う戒律になる。そこに祀神の主義主張が追加される感じだな」
「俺は神道を信仰していた……?」
ジャンヌネキが首を捻りながら呟く。まぁ、そんな印象になるよな。
「俺は人として正しく生きてないが、それ以外はちゃんと守ってるから不良祭司を名乗ってる訳だ。酒も煙草も女も賭博も殺しもやってるから口が裂けても
「マフィアかな?」
「うちの神社は神社本庁に登録してないからカルト集団だぞ」
「正規品ですら無いのは笑う」
「でも一族の歴史は古事記と同年代とかもはや詐欺だろ」
「昔の日本人は銀髪褐色巨乳美女の良さを理解出来ない愚か者しか居なかったからな……!」
『『昔の奴は
男三人(?)でゲラゲラ笑っていると、サクヤが呆れた様に会話に混じる。
「ちょっと皆さん?ここに乙女が居ますよ?」
「乙女は元信徒の散り際を無視して立ち去らないんだわ」
「双子ニキの【鷹の目】を貸して貰って覗いてたけど、冷たい感じが良かった!」
「あ、お前らだとそういう感じに受け取るんだな。俺視点だと精一杯冷たくしようと頑張ってる少女だったぞ」
「あー本職ならやり口が温すぎるか~」
「まぁ、甘い方がこっちも付き合い易いから助かるけどな。下手に高飛車の奴とか来られても困るっつーか」
「その点で言えばイワナガ様は不思議な感じだよね」
「御姉様が不思議?ですか?」
妹故に愛されてるから気付かないのか、それとも本当に気付いてないのか。ジャンヌネキの言葉に首を捻るサクヤの姿的にどちらもな気がする。
「距離を感じるけど温かく見守られてる気もするし、自分の事は話さないけど俺らの事を分かろうとしてくれるし、なんつーか不思議だよな」
「そんな感じだよね。あ、そういやセツニキ。イワナガ様大剣担いで異界に潜ってるらしいよ?さっき俺らが掲示板で盛り上がってた」
「あ~やっぱりやったか」
予想通りの動き過ぎて笑えるな。
「やっぱり?」
「イワナガって神話的にまぁ、チヤホヤされた経験の無い陰キャオタクの様なもんだからな。金を払ってホストで遊ぶけど、元々人と遊ぶ事も好きじゃないから嵌まらない人みたいな思考なんだよ」
「あ~根本的に人を信じられないからお金だけの関係で満足出来るタイプか」
「妹に劣等感があって、その妹が居るから尚更俺らがいずれ距離を取るとでも思ってるんだろ」
「だから異界で稼いで無理矢理利益を作ってるって訳か。何か納得」
「ちなみにガイア連合にもたらした利益ならすでにサクヤを越えてたりするぞ。サクヤはサクヤで地方霊能組織の延命に成功してるからそもそも比べるのが間違いだがな」
「御姉様の良さは〝
「あ~!成る程!だから神話に〝みにくい〟なんて言葉が残ったのか!」
「やべぇ!掲示板の俺らに自慢しよ!!」
興奮気味に叫んだ双子ニキに同調するかの様にジャンヌネキがスマホを弄り出す。これが日本語の面白さだよな。
「その御姉様の良さを最初から見抜いたセツニキさんの御先祖様は凄いお人ですよねぇ。どんな方だったんですか~?」
「一族の記録だと霊能力は一切無かったぞ。ただ死にかけた時に助けれてくれた女が巨乳の巨女で、彼女を馬鹿にされたから石長比売を担ぎ上げて異説をぶち上げた感じだな」
女衆の方に伝わっていた口伝と恋文的にそこまで間違って無いと思う。精々多少の美化がある程度だろう。
「それで良く一族を平成の終わりまで繋いでこれたね?いや、馬鹿にする訳じゃないんだけどさ」
「〝穢れ〟〝
「あ~!高位霊能者を不細工と感じる価値観だからこそ、セツニキの先祖の元に高位霊能者の嫁が集まったのか!」
「霊格上げで手に入る雰囲気は非覚醒者には本能的な忌避感に繋がりますからねぇ。御先祖様は選り取り見取りだったんじゃ無いですか~?」
「ま、そういう事だな。そして御先祖様は霊能者としてはロバどころか牛だったが、人間社会で生きる能力はずば抜けて高かったんだ。分かりやすく言えば金儲けが得意だった」
そしてその〝血〟は一族に受け継がれ、息子に託してきた。アイツは俺より金稼ぎが上手いからな。信仰心も悪くないし、一族を纏められるだろう。
「セツニキの商才の原典が意外な所から発覚したな」
「いや、人間でサラブレッド作り上げてた一族だし、さもありなんというか何というか」
「ま、すでに滅んだけどな。……この世界の磐長一族は戦災孤児を私財ばら蒔いて救ってる最中にメシア教に襲われて、孤児を守って全滅したらしい」
これは神道系俺達が教えてくれた情報だ。初めて知った時、少し異界攻略を休んで墓参りに行ったんだが……まぁ、愛されていたんだなと分かる墓だった。
「日本の高位霊能者の大半はライドウの様に民間人の命を盾に取られて自害させられたり、わざと異界から悪魔を外に出して駆け付けた霊能者に不意打ち決めたり、嘘の情報で危険な異界に呼び出して謀殺したり、誰かを守って死ぬ事が多かったみたいだな。で、今回の仲間を〝売った〟分家に話が戻る訳だ」
「サクヤちゃん今からでも殺しに行かない?俺なら瞬殺よ?」
「セツニキが物凄く優しいって言った意味が良く分かるな。俺でもムラハチするぞそれ」
「彼らへの〝罰〟は終末と共に下りますから~皆様が手を汚す必要はありませんよ~?」
「それはそうだけどさ~俺もライドウなんで死んでんの!?とか思ってたけど、セツニキの一族の話を聞いたらお前……漢や!としか思えないんだけど!」
「だよな。俺達の大半は霊能組織について詳しく無いけど、側に詳しい人が居たらライドウへの印象が凄く変わる」
「その詳しく知ってしまった
窓から霊符を投げ捨て、結界を張る。飛んできたのは【ハマ】か。
「レベル十のエンジェルが三体と銃器で武装した過激派多数。どうする?」
「双子ニキはサクヤの護衛、ジャンヌネキはここに置いていくから後で走って合流な」
「セツニキは?」
「情報流した分家の始末だ」
ジャンヌネキと二人で走行中の車から飛び降り、敵へ向かって駆け出す。式神と同調出来るのは視覚だけじゃない。聴覚も出来るんだ。
「何処へ行こうと無駄だ!ここはすでに──」
何かを叫んでいた男が〝二つ〟裂かれる。切り裂いたジャンヌネキの手元には〝アイスソード〟が。
「俺さ、別にメシア教だから殺すって程の想いは無いし、興味も無かったんだけどな?あの話を聞いてお前らを生かすとか有り得ないだろ」
大剣が白い冷気を纏いながら輝き始める。俺はそれを見て、全力で脇道の森に飛び込んだ。
「う、撃てッ!この人数なら殺せるッ!」
「殺せる?アンタら程度じゃムリムリ」
構え、放たれる弾丸の嵐。その全てを〝氷鱗〟を模した小さな盾で全て防ぐ。
「じゃ、サヨナラ」
ジャンヌネキが大剣を一振りすると、
凍らせた訳じゃない。
これがジャンヌネキの【氷結攻撃】の権能。効果としては石化の亜種を貫通込みで放つだけなのだが、七代目〝アイスソード〟に宿る【広域化(氷結)】のスキルを乗せると、ご覧の通り広域虐殺スキルと化す。
実は【広域化】を乗せた時は【氷結吸収】や【無効】で防げるが、逆に剣の届く距離でスキルを使わないなら
パッシブ系の権能は本当にコントロールが難しい。俺も戦闘の意思を持った時点で【タルンダ】を纏とっちまうし。
それを完全に制御してるショタオジやカヲルニキは本当に超越者だよなぁ。
「じゃ、俺は合流するね」
「おう。次の神社でまた会おう」
ジャンヌネキと別れ、ギンを呼び出して来た道を逆戻り。……大気中のMAGが低くても権能なら減衰しないのか。掲示板に上げておいた方が良いな。要らん事故を引き起こしそうだ。
順調にインフレしていってるけど、神も悪魔もショタオジもこれ以上の存在として書けるから作者的には楽だったり。