【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
出張先でネタを貰えるのも後続の特権だと思う。
────深夜二時半。宮城県のとある港。
「なんつーか俺らだけメガテンじゃなくて別ゲーやってないか?」
「ドラマや映画でありそうなシナリオだよな」
潮風を感じながら双子ニキ(弟)と煙草を吹かす。切っ掛けは占術においてショタオジと並ぶくそみそニキからのLILINだった。
内容を要約すると、今日の深夜三時頃、俺らの視線の先にある倉庫で、今より少し先の未来でガイア連合所属になる転生者が何者かに売られるとの結果が出たらしい。
念のためにショタオジに緊急事態と銘打ってLILINを送り、占術を行使して貰ったら間違いないという御墨付きを得た。
ガイア連合が誇る二人の占術で売られる結果が出るとか、どんだけ売られる運命なんだよと思ったのは内緒だ。
「セツニキ、来たぞ」
「片方は地元のヤクザ、もう片方は──やっぱりメシアかよ」
せめてカソックや天使は置いてこい。隠す気あんのか。
「締め上げた闇召喚士達の言葉は正しかったな」
「
覚醒直前の状態ならそういう事も普通に起こるが、メシア教にとって大事なのは
天使の生まれ変わりの可能性もあるし、聖女として担ぎ上げるのにも使える旗印だ。
そら本国から銃器を取り寄せて〝スジモノ〟に売るわな。どう考えても人身売買なんだが、どうせ異教の猿は人間じゃないからOKという理論だろ。おいおい鳩さんよ。お前の子供らが人身売買してんぞ。天罰落とせや。天罰。
──私は何時だって見守ってるよ?それに神が動くとロクな事にならないからね。手出しはしない様にしてるんだ。
「ッ!?」
声の聞こえた方に顔を向けると、
「どうした?セツニキ」
「全知全能の存在がその力を行使しない事は良い事だと思うか?それとも責任逃れだと思うか?双子ニキはどう思う?」
「話は全く分からんが〝良い事〟だと思うぞ?どんな問題もショタオジがやって来て解決、敵としてショタオジが出て来て壊滅の二通りしか無い人生は糞だろ」
「何だそのクソゲー。今の人生が素晴らしく感じるぞ」
「だから全知全能なんて存在は気軽に動くべきじゃないと思うわ。俺らの頭の上で過労死してるぐらいが丁度良い」
「確かに。もっと式神作らせないとな!」
双子ニキのお陰で頭を切り替えられたのは助かった。あんな存在を頭の片隅に置いて動くなんてやってらんねぇ。……とは言っても、そもそもやる気は下がりっぱなしなんだが。
「日本に居た高位術者を狩り尽くしたせいか、アイツらやってる事に対して緊張感が無さ過ぎだな。セツニキ、どうする?生放送でもしてやるか?」
「特大スクープ!世界最大宗教は人身売買組織だった!──百万再生ぐらい狙えるか?」
「サムネで釣り上げて口コミで広がればワンチャンいけるんじゃね?」
「良しやろうか。──って訳に行かないのが糞過ぎる」
「それな」
二人揃って二本目の煙草に火をつけて煙を吐き出す。くそみそニキ曰く、この場所でメシアに手を出すと大問題になるそうだ。正確には何処かの未来で何処かの支部の元から仲間が欠けるらしい。糞ですわ!
「別に苦労したいって訳じゃないが、こうも相手が緩すぎるとやる気も無くなるよな」
「俺ら別に隠形使ってないし、会話も普通にしてるし、煙草も吸って存在感アピールしてるのに気付かれて無いもんな」
コンテナの上で胡座かいてるのに気付かれて無いんだぞ。可笑しいだろ。人身売買するならもう少し緊張感持てや。
「お、取引が成立したっぽいな。神父様が大金の入った鞄を机の上に置いて、ついでに鍵を渡してらぁ」
「俺の【透視*1】でも確認した。あの鍵は何処かのコンテナか何かの鍵か?」
「見た感じ銃器は手持ちに無いしな。ところでヤクザ側の商品は何処だ?」
「奥のコンテナは──白い粉だな。お、神父に紙を渡してる」
「式神の位置が悪くて俺じゃ見えんな。双子ニキ、見れるか?」
「ちょいと待ってくれ。──あーセツニキ、残念なお知らせです」
「おう?」
「監禁場所は別の所っぽいぞ。住所の書かれた紙だわ」
「了解。双子ニキはこのまま帰還して待機中のジャンヌネキ連れて襲撃宜しく」
「りょ」
【転移】で双子ニキが消えていくのを見送り、視線をコンテナに戻す。今回の事件は
白い粉を貰った所で役に立たないし、銃器でも掻っ払うしか無いんだが、サクヤの霊木が安く使える関係上、和弓やクロスボウの方が数倍強い星祭では銃は趣味でしか無い。……エドニキ、高く買ってくれねーかなぁ。
「────────」
「──────」
明らかにヤクザな顔と女に困った事が無さそうな優男が笑みを浮かべながら握手を交わし、そのまま別れる。メシア教が完全に立ち去ったら行動開始だな。
◇
「それで、その後はどうしたんですか~?」
日付変わって翌日。事件の後、宮城派出所で一泊して、再び東北支部を目指している車内でサクヤが聞いてきた。
「コンテナ一杯に輸入する程
「流石本職。容赦無いねぇ」
「あの量なら万単位の人生を狂わせるのに十分な量だったしな。因果応報だろ」
そもそも布団の上で死にたいなら手を黒く染めるなで終わる話だ。法律は弱者を守ってくれないが、法律を守らない者は死に方すら選べないのが世の真理だろう。
「あの時の自分の判断を褒めるべきですかね~これは~?」
「ん?サクヤちゃんはセツニキを敵に回した事あるの?」
「いえいえ~見捨てられそうになったので拝み倒しました!」
「ふはっ!セツニキ酷ぇ!」
「いや、当時はガイア連合無かったし、メシアに目をつけられてまでサクヤを囲う意味も余裕も無かったんだよ」
「だから見捨てられない様にお酒作り頑張りましたよう!!」
「あれ?実はやってる事イワナガ様と同じじゃね?」
「まぁ、似た者姉妹って事なんだろ」
見捨てられない様に利益を持ってくる辺り、流石は悪魔だと思う。俺達は利益を施されると罪悪感を感じて情が湧くからな。
その後、暫く四人で雑談していると、ジャンヌネキが思い出したかの様に質問を口にした。
「ところで今更なんだけど、東北支部って何処に立つの?」
「イタコの里や宮城県も立つらしいが、俺達がこれから行くのは岩手県だな。場所としては隣接三県が近い南西部になる、らしい」
「何でそんな所に?」
「大型異界の『マヨヒガ』対策だ。富山の『犬鳴村』や青森の『恐山』の様な、土地に〝型〟が出来たせいで壊しても甦る異界管理の為だな」
ちなみに南西部になった理由の一つは、青森にイタコの里があるから北側には要らないんじゃない?という話があったからだそうだ。
東北地方の北側俺達はプレゼン能力で霊視ニキに負けちまったな。
「そういやジュネス発起人の銀時ニキは香川の『スーパーうどんマウンテン』の担当になったんだっけ」
「『鬼ヶ島』も香川の女木島だから呉支部と連携して当たるんじゃないか?鳥取の『鳥取大砂漠地獄』や京都の『羅生門』も担当探してるらしいぞ。『印巣枡』は根願寺が担当しろと言いたい」
名前からして嫌な予感しかしねぇ。
「というかガイア連合としては根願寺が頑張ってる裏で、終末後にもファミチキ食べられる様に頑張ろうぜ!って動きをする予定だったんだよね?」
「個人個人の目標は違うが、組織としてはそうだな」
正確に言えば、終末後にも人の文明を維持しよう!だった気もする。いや、ファミチキが正解で、人の文明云々は外向きの綺麗なスローガンだったか?
「俺達ってどんだけ根願寺に期待してたんだろうね?ライドウ生きてても無理じゃない?」
「ライドウがショタオジ以上で、根願寺の大僧正がカヲルニキクラスなら行ける気がしないか?」
「それってあり得るの?」
「二人が現実に居る以上可能だぞ!どんな過酷な運命に襲われるか知らんが」
「巻き込まれて俺ら全滅しそう」
「それな」
運命力が足りないからなぁ。
◇
運命力が高すぎても低すぎても駄目ってイメージが釣り合う天秤になる不具合