【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
ネタバレしちゃうのが怖いんですよねぇ。
『マヨヒガ』其の壱
「修羅勢舐めてたわ……まさかこんなアッサリ解決するなんてね」
異界攻略したその日の夜。愛宕ネキお手製の夕飯を御馳走になっていると、呆れた様にそう言われた。
「俺らとしては狩り場の道中と大差無かったしなぁ」
「状態異常系だったけど貫いて来る訳でも無いしな」
ジャンヌネキ達が会話している内にまめぶ汁を頂く。うん、美味い。
「山梨の異界については伝聞でしか知らないけど、そんなに地獄なの?」
「ん〜そうでも無い?むしろショタオジのお膝元だから無茶出来るし、難易度は高いけど危険度は低いよね?」
「俺らや他の修羅勢と普通に協力出来るしな。むしろ弱い奴を守る必要があるこっちのが辛くね?温泉も無いし」
次はきりせんしょに行くか、それとも野菜炒めに行くか。異界攻略の報酬として奮発してくれた前沢牛も捨てがたい。
「そこらへんはジュネスの建設待ちね。その為に纏め上げたんだし」
大変だったわ……と遠い目をする愛宕ネキを気にせず白米を摘まみ、口へ運ぶ。岩手らしい物という雑なリクエストに可能な限り答えてくれた夕食は、岩手北部の品も相まって中々豪華だ。
「っていうかセツニキ、会話しようよ!」
「俺は食べるのに忙しいから任せた」
「随分綺麗に食べてくれるわね。食べるのが好きなの?」
会話には答えず、すき昆布の煮物に箸を伸ばす。美味し!
「いや、それぐらいは喋ろうよ!」
「俺は食べるのに忙しいから任せた」
「BOTかよ!」
「何というか男友達のノリって感じね」
「まぁ、繋がりがそんな感じだからなー」
次は氷頭なますに行くか、うこぎのほろほろに行くか。それともご飯の上にみずたたきか。悩ましいな。
「あ、セツニキの代わりに答えておくけど、セツニキは食べるというより旅行中にしか食べられない物が好きだよ」
「地方遠征行くときは農林水産省の『うちの郷土料理』を眺めてるぐらいだしな」
「俺達が見た目通りじゃないのは分かってるけど、随分年寄り臭い趣味ね?」
「あれ?愛宕ネキは知らないん?セツニキ、前世百越えてるお爺ちゃんだよ?」
「そうなの!?」
くっ。細かく摘まんできたが、子供の身体だとそろそろ限界が近いな。最後はうす焼を軽く積まんで〆とするか。
「御馳走様でした」
「お些末様でした。どう?美味しかった?」
「美味かった。一働きした甲斐があったぜ」
「……素直に言われると結構照れるわね」
真っ直ぐ見詰めて言ってやると、愛宕ネキは少し照れた様に顔を背けた。
「激写して岩手民の俺達に自慢したら何個呪詛飛んでくるかな?」
「手料理を御馳走になったも忘れずにな?」
「累乗して凄い量になりそうだ」
「恥ずかしいからやめて」
美人の照れた顔は目の保養になるな、と思いつつ、席を立つ。
「あれ?セツニキ何処行くの?」
「食後の一服ついでに自販機でエメマン買ってくる」
「珈琲なら入れるわよ?」
「旅先で変わらぬ味を楽しむのも一興よ」
「あ、そんならついでに炭酸系よろしく」
「俺は地域限定の何か~」
「あいよ」
ひらひらと手を振って愛宕ネキ達と別れ、一人外へ。生憎の曇り空だが、それはそれで思い出になるだろう。
神社から出てすぐの所にある自販機でエメマンは買えた。炭酸──というかコーラもあった。だが地域限定の飲み物が無い。
仕方ないのではとむぎ茶で誤魔化すか──
「(一本)やらないか?」
「おいおい、そんな物を見せられたらホイホイ着いていっちまうぜ?」
先へ進むくそみそニキ*1に着いていき、近くの公園へ。そこのベンチで一本貰い、火を付ける。もちろん携帯灰皿は用意してあるぜ。
「つえーし辛いな。てか恩賜の煙草*2とか初めて見たんだが」
「知り合いから貰ってな。セツニキが愛煙家なのは知ってたから面倒事を頼む賄賂として持ってきた」
投げ渡された煙草ケースを受け取る。そこには高級感溢れる白の箱に黒字で『賜』の文字が。
「……ヤバイのか?」
「下手な奴に任せると
軽く吸って肺にいれ、空に向けて煙を吐き出す。下手すりゃ葉巻レベルだなコレ。
「岩手で会ったって事は『マヨヒガ』か」
「御名答。ついでに言えばメシア教に少しばかり弄られてるおまけ付きだ」
煙草を思いっきり吸い込んで、溜め息と共に吐き出す。一般人なら噎せる事間違い無しの
「嫌になる程メシア教の駝鳥共と〝緣〟があるな。他の俺達は闇召喚士や地方組織の事件なのに殆どメシアの後始末やってんだが」
「そういう星の下に生まれたんだろう」
「そんな星は砕け散ってしまえ」
苦笑いするくそみそニキにエメマンを投げ渡す。
「何処まで
「
「成る程。くそみそニキ、
「まさか
「良くそれでメシアの匂いを嗅ぎ付けたもんだ」
「セツニキは『マヨヒガ』の伝承について何処まで知っている?」
「一応、通説は抑えているぞ?」
「なら話は早いな。
「……そういう事か」
手持ちを一気に吸い切って、ほぼフィルターになった吸い殻を携帯灰皿に突っ込んでもみ消す。取り敢えず星祭のグループに『マヨヒガ』について調べるなって書いて──ついでに〝弟子〟達にも送るか。
「良し、取り敢えず初手はこんなもんだろ。メシア教の方はどうする?」
「出来ればそちらで頼みたい。俺はセツニキの仕事を引き継ぐつもりだ」
「浅間神社巡りと地均しか。修羅勢を引っこ抜くから辛くなるぞ?」
「終末前にショタオジが動く事になるよりマシさ」
「違いない」
その言葉を最後に立ち上がり、公園から出ていくつもりで一歩踏み出す──直前、くそみそニキに呼び止められた。
「セツニキ。最後に一つだけ聞かせてくれ。外法でしか救えない命が目の前にあったとして、セツニキならどうする?」
「助けるに決まってるだろ。
「……それが未来の為に犠牲にするつもりでも?」
「くそみそニキ。一つだけ言っておくぞ」
振り返りはしない。そして当人もすでに〝覚悟〟を決めている。だからこれは本当の意味で〝意味の無い会話〟でしかない。
「未来なんてたった一人の努力や犠牲で変えられるもんじゃないんだよ。ショタオジでさえ終末が来る世界を変えられないんだ。だから〝俺達〟は望む未来に向けて頑張ってんだろ?」
「……そうだな」
今度こそくそみそニキと別れる。帰りにエメマン買わないとな。
◇
「っつー訳で。愛宕ネキ、宿の手配宜しく」
「えっ?えっ?いや、待って頂戴。いきなり話が大きくなり過ぎて頭が追い付かないわ」
「セツニキ~俺達は~?」
「ジャンヌネキは引き続きサクヤの護衛、双子ニキは待機だな」
『『うぃ』』
「……何でそんなすぐに納得出来るの?」
『『俺らの頭はセツニキなのさ!』』
「どうしよう。修羅勢が一気に分かんなくなった……」
「愛宕ネキが難しく考えすぎなんだよ。俺らはガイア連合山梨支部の為に動く剣みたいなもんだ。それ以上でもそれ以下でも無い」
「私が岩手を守ろうとしてる様なもの?」
「その認識で大丈夫だ」
取り敢えず買ってきた飲み物を机の上に置く。愛宕ネキの分は紅茶花伝だ。
「俺から愛宕ネキに頼みたいのは三つだけだ。宿の手配と『マヨヒガ』の位置情報が載った書類の破棄。後は異界攻略の為の物資の手配」
「『マヨヒガ』について詳しいのね?」
「この国の神話、伝説、伝承についての通説はほぼ把握してるぞ。流石に一族の秘伝までは知らんが」
「……もしかして〝愛宕の術式〟についても詳しかったりする?」
「基礎的な物は知ってるな。独自発展した奴や奥義は知らん」
【鎮火】を主とする愛宕式は火炎弱点の俺には必須だったから、頑張って記憶から掘り起こしたぜ。
「セツニキ、岩手に定住しない?今なら名家の綺麗所でハーレム作れるわよ!!」
「女に困ってる俺達は居ないだろ」
式神居るし。
「はぁ~……そうよねぇ。ショタオジも何で人型式神なんてモノを作ったのよ……お陰で地方に俺達を留められないじゃない……」
ショタオジがガッツポーズする姿を幻視した。疲れてんのかな。
「ま、少なくとも『マヨヒガ』攻略まで俺らは来ると思うぞ。興味あるなら声掛ければ良い」
「私が欲しいのは愛宕の術式を知ってるセツニキなんだけど?」
「基礎でよけりゃ攻略の合間に書いてや──」
ガバッ!と愛宕ネキに抱き付かれる。
「本当!?嘘だったら許さないわよ!!」
「愛宕ネキ愛宕ネキ。セツニキが愛宕ネキの胸で溺れてるよ」
「えっ?────きゃぁっ!?」
慌てて離れ、胸を隠すように愛宕ネキが蹲る。
「これって俺が悪いのか?」
「むしろ愛宕ネキの胸で顔色一つ変えないセツニキは何なん?」
「ヒント:モルペコ族の式神」
「把握」
取り敢えず愛宕ネキが復帰するまでエメマンでも飲んでるか。
◇
俺達の中に一人は式神化された人が居るって思って書いてたらタツタネキに先を越されたというwww