【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
────岩手県奥州市のとある旅館の大広間。
「さて、まずは集まってくれた礼を言おう」
愛宕ネキや岩手の俺達が必死になって準備してくれたお陰で、二週間程度で消耗品の準備が終わった。
その後すぐに山梨の修羅勢に三十人限定で依頼を出し、ついでに弟子達も呼んで、ムラサキ達に輸送を頼んだ──のだが。
「まさか霊視ニキが『恐山』から出てくるとは思わなかったな」
「メシアを殴れてその上かなりの額のマッカも貰える。こんな依頼拒否る方が難しいだろ」
「それな」
「実際、三十人決めるのに模擬戦したし」
「だからこんな上位陣が揃ってるのか……」
奮発したのは間違いないが、だからと言ってこんなに上位陣が出てくるとは思わなかったな。……ま、戦力が頼りになるのは良いことだ。
「それじゃ作戦を説明する。配られた紙の一枚目を見てくれ」
一枚目に書かれているのは『マヨイガ』の伝承だ。
「メシア教に殆ど焚書されて〝この世界〟では余り伝承が残ってなかったから〝一族〟の収集していた伝承を全部書いておいた*1。まぁ、大体の流れは口頭で説明するから興味があれば読んでみろって感じだな」
「あの、セツニキさん?岩手支部にも寄贈をお願い出来ませんでしょうか?」
「別に良いぞ。っていうか必要ない俺達は岩手支部に渡してやれ」
『『『うぃ~』』』
「有難う御座います!」
たぶん支部の資料室担当と思われる俺達が嬉しそうにガッツポーズ。伝承が無いと現れる悪魔の予想も付かないからなぁ。
「って訳で、軽く説明するぞ。『マヨヒガ』は『遠野物語』で一躍有名になった〝迷い家〟とも呼ばれる怪異の一種で、出現場所は主に関東、東北だ。訪れた者に富をもたらす一方、欲深な者を連れて行くと門が開かない、または見付からないとされる事が多く、今回の異界にも面倒な事に適用されている事を確認した」
「囮としてセツニキの弟子達を連れていくけど、それはセーフなん?」
「岩手の名家に残っていた記録を元に地元俺達に協力して貰って確かめたんだが、『マヨヒガ』に一度も入っておらず、また位置を知らなければ二人──式神も合わせて四人でも迷い込める事は確認済みだ」
この実験の為に百人以上の俺達に岩手県内の山中を爆走させた。もちろん依頼料は支払ったが。
「へぇ、ちなみにセツニキは何でそんな事が出来ると思ってる?」
「元々はユートピア思想──所謂楽園はあるっていう思いからの派生だからな。たった一人しか入れない楽園は、楽園じゃなくて地獄だろ」
「確かに。せめて
回答に満足したのか質問した俺達が聞く体勢に戻る。
「さて、話を戻そうか。『マヨヒガ』は元々天国や楽園、桃源郷や理想郷、黄金郷の様な〝こんな場所があったら良いな〟という人の夢や理想が根幹にある異界だ。元々の制作者はたぶん日本の山神の誰かで、製作目的は〝信仰心〟を得る事。つまり日本人に対する〝飴〟だったんだが──」
「封印されて異界の管理が出来なくなり、その隙にメシア教に異界を乗っ取られ、
「嫁が『恐山』のイタコだけあって詳しいな」
「流石に勉強するさ」
霊視ニキと軽口を叩き合いながらも視線を俺達に向ける。
「ま、そういう事だ。だから異界の中は伝承にある和風家屋では無く、洋式の城になってるみたいだぞ」
「メシア教らしいというか何と言うか」
「何時も通り過ぎてもはや突っ込む気力もねぇよ」
「それな」
日本で起きる問題の大半がメシア教のせいだしな。次点で闇召喚士、大穴で〝アイツ〟だ。とは言っても、〝アイツ〟は一回ショタオジに叩かれてから日本に寄り付かなくなったらしいが。
一度手を叩き、喧騒を静める。やった後に俺らじゃない事に気付いたが、何故か静かになったのでヨシッ!
「そんな訳で前段作戦に参加してくれる修羅勢に頼みたいのは、異界の滞在時間の確認とメシア教の秘匿拠点への強襲だ。たぶんここに居る三十人の中で『マヨヒガ』に入れるのは五組に満たないと思うから、突入に漏れた俺達は襲撃に回ってくれ」
「センセー!入る確率上げられないー?」
「運命力を上げましょう」
「糞ですわっ!」
「そんなもんあったら今頃主人公やってるんですわっ!!」
「あ、ちなみに運命力がありそうな霊視ニキは残念ながら待機になるぞ」
「ん?メシアを殴れるなら構わないが、何か理由はあるのか?」
「異界探知出来る奴から〝入口〟が逃げるんだよ。すでにうちの双子ニキが逃げられてる」
物凄い速度で離れて行ったと聞いた時は宇宙が見えたぜ。
「つまり、探知系切ってあるかどうか分からないまま岩手の山中をセツニキの弟子連れて走り回れと?」
「そうだぞ。しかも一度入って出た時点で再突入が許されない上に取り込まれる時は〝突然〟らしいから、大抵の奴が準備不足で奥まで探索出来てない。だから内部情報はほぼ無いと思ってくれ」
「かなり糞では?」
「じゃなきゃ修羅勢呼ばんぞ」
準備不足での戦闘経験なら山梨の修羅勢に勝てる俺達は居ない。というか基本的に場当たりな対応で切り抜けられない奴は死ぬ。
「報酬良いから覚悟してたけど、流石は大型異界だな」
「というか『マヨヒガ』がヤバイだけだぞ。『恐山』は環境がキツイだけで異界自体は普通だったし」
「『鳥取大砂漠地獄』や『羅生門』も似たような感じだな。少なくともこんな糞みたいな突入条件じゃないからいずれ攻略出来るんじゃないか?」
「流石S案件候補って事か」
また騒がしくなったので一拍。
「今回はあくまでもメシア教を叩く為の前段作戦だからな。異界の攻略は次の俺達に任せてくれ。参加者は一時間ごとにLILINのグループへ報告頼む。五組から返信が無くなった時点で異界に突入できたと判断。で、〝当たり〟を引けなかった俺達はその時点で探索を切り上げ、秘匿拠点周辺で待機。その後、適当な物品をパクった弟子を囮にして強襲。何か質問は?」
「セツニキの弟子がメシア拠点に連れて行かれる訳だけど、普通に放置で良いの?それとも接触した段階で手を出した方が良い?」
「一応レベル十五前後の奴を用意したし、一撃ぐらい余裕で耐えられる装備も貸してるから、手を出されるまで待機で頼む。向こうが先に手を出したっていう事実が欲しいんだ」
「りょ」
「さて、他に質問はあるか?無いなら二枚目に行くぞ」
一度間を取り、質問の時間を設けるが特に無さそうだな。
「二枚目は見ての通り、異界に現れる悪魔の情報なんだが──大体天使で、時々リビングアーマーとか城に居そうな奴ばかりだったみたいだな」
レベル十五から二五なので弱くは無いんだが……普通にパワーの発見報告があるから格落ちしてる様に見える。
「フライングソードはまだ良いとしてメイドゾンビってなんぞ?」
「お前、そりゃメイドのゾンビに決まってんだろ?」
「いや、そんな事分かってるわ!!」
「というか九割天使ならもはや天国では?」
「言いたいことは分かるが、メシア教以外には地獄だぞ?」
「というかこれ人選ミスったな。対天使に強い俺達を後半に回すべきだったか?」
「いや、回しても入れるかどうか不明だし、セツニキは強制排出される事を前提として考えてるっぽいぞ」
「あぁ、時々見掛ける制限時間が過ぎると出現レベル帯を超過した悪魔が出るギミックか」
「後は強制的に追い出される系だな」
「やっぱり『マヨヒガ』糞では?」
『『『それな!!』』』
それな。マジで糞だと思う。
「セツニキ~。これ滞在期間中の飯ってどうなるの?俺達持ち?」
「いや、三枚目を見てくれ。そこに支給予定の物資が書いてある」
「食料としての缶詰各種に霊薬にガイアカレーにキャンプセット。取り敢えず一週間分を全員に持たせて、外れ組は回収する代わりに岩手の高級ホテルその他の用意がある感じか」
「希望者には愛宕ネキお手製の郷土料理が振る舞われるらしいぞ」
「なんで?って思ったけど、岩手の掲示板荒れてるから愛宕ネキって人気者なのか」
「つまり岩手俺達の前で堪能して霊格上げ煽りに使えると」
「いや、普通に美味かったぞ?式神の料理みたいな磨き抜かれた感じじゃなくて、家庭料理の暖かさがあるっつーか」
「双子ニキの話聞いたら食べたくなったな。外れたら頼んでみるかな」
「家庭が糞だった俺達はお袋の味に飢えている……!」
「式神は嫁さんの味だからな」
騒がしくなる大広間の隅で顔を真っ赤に染めている愛宕ネキを眺めていると、俺達の一人から質問が上がった。
「セツニキ~、これ地方のハニトラ受けなきゃ駄目?」
「受ける必要は無いが、報告は上げて欲しい。
「ひゅ~つまり俺達は気軽に楽しんで、ハニトラされたらガイア連合の負担が減るって事ね、了解」
「そもそも
「俺達の
「二次元から引っ張り出した存在だから間違ってないのが笑う」
『『『それな!!』』』
何時も通りの空気になってきたので手を一度叩き、注目を集めつつ静める。
「それじゃ準備が出来た奴から岩手支部の俺達から支給品を受け取ってムラサキ達の元へ頼む。弟子達はすでに現地に居るからそこで合流な」
『『『うぇ~い』』』
さて、その間に次の準備をしないとな。