【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
余りにも無情な現実を受け止めきれなかったのだろうか。
倒れ込む愛宕ネキを途中で支え、広間の畳に優しく寝かせる。
「どうする!?総合板と修羅板に書かれたからもう何処まで拡散したか分からないぞ!!」
「落ち着け。慌てた所で何の解決にもなりゃしねぇよ」
「でもっ!!」
「安心しろ。
消音結界を展開。その後、懐からスマホを取り出し、連絡する。相手は──くそみそニキだ。
『もしもし?』
『俺だ。予言通り
『……気付いてたのか?』
『もちろん。そもそもくそみそニキが
占術というのは便利な様で不便な力だ。一度見てしまえば、その未来に向けて収束する様な〝流れ〟が出来てしまう。
それを誰よりも知っているくそみそニキが、不用心な動きで『マヨヒガ』周辺を彷徨く筈が無い。
にも関わらず、俺は
きっと、この後『マヨヒガ』を攻略する為の準備も終わってるのだろう。
でも、だからこそ──この場で問う。
『それでどうする?俺が解決するか?それともくそみそニキが解決するか?』
『待ってくれ。失敗したんじゃないのか?』
『失敗したぞ。でも、それだけだ。まだ
『霊格が上がって、色々〝観える〟様になって。最近では外れた事が無いぐらい占術には自信がある。セツニキはそれを覆す事が出来るのか?』
『見解の相違だな。くそみそニキの占術はすでに
未来を見た人間が責任を持って対処しなきゃいけないなんて義務は無い。止めたきゃ止めれば良いし、逃げたきゃ逃げれば良い。その結果、人類が滅びたとしても──人類の努力不足だったで終わる話だ。
『何時だって負けそうになったらちゃぶ台返しするもんだろ』
『……セツニキとは二度と同じ卓に座らねぇ』
『咲ネキ*1が許してくれると良いな』
その言葉を最後に通話を切る。さて、と。
「愛宕ネキ。一週間後に
「……ほんとうになんとかしてくれるの?」
「その為に俺はここに居るんだよ」
◇
その日の夜。不安と焦燥と疑念の渦巻く大広間。そこに集めた修羅勢や〝旅行者〟達の視線を一身に浴びながら、少しだけ高くなった舞台の上に座る。
「さて、何が聞きたい?」
「失敗する事が分かっていたって本当か?」
尋ねてきたのは〝旅行者〟の一人だ。
「どの様に失敗するかは俺にも分からなかった。わざと穴は作っておいたがな」
「穴?」
「不思議に思わなかったか?今回、俺は契約を使っていない。にも関わらず、位置を
「……つまり、今回の件は想定内だったのか?」
「いや?このまま終わることを祈っていたよ」
これは本心でもあるが、諦めていた事でもある。だが、その言葉も態度も気に入らなかったのだろう。
「さっきから黙って聞いていれば肝心な事を喋らねぇな!!お前は俺達を騙してたんだぞ!?少しは殊勝な態度を取ったらどうだ!!」
「そうだ!俺達の努力が無駄になったんだぞ!!」
その言葉を切っ掛けに、多くの修羅勢から罵詈雑言が飛ぶ。そんな熱くなる俺達を冷めた目で眺めながら、場が静まるのを待つ。
「で?言いたい事は済んだか?次に進むぞ?」
「テメェ……!」
「ハッキリ言っておくが、俺は依頼書に嘘を書いてないし、お前らが受ける様に手を回してもいない。さらに言えば、探索報酬をケチった覚えも無い。お前らは自分で依頼書を読んで、自分の意思で依頼を受けたんだ。その結果、自分の望んだ通りにならないからって俺に文句を言うのはお門違いだろ?」
「…………ッ!」
大型異界の攻略で活躍した奴は、基本的に有名になっている。その栄誉を得られるとでも勘違いしたのかね。
ハッキリ言えば、ここに居る奴等は俺も含めて運命力がくそみそニキ以下という事が証明されている。
もし運命力があるならくそみそニキの占術結果を越え、すでに攻略完了の宴をしていた筈だしな。
「セツニキ。ちょいと質問なんだけど、どうやってここから攻略するつもりなん?ガイア連合の面子の大半は使えないけど?」
何時も通りの声色で尋ねてきたのは、依頼終了後も滞在していた京四郎ニキだ。
「俺としては修羅勢を名乗るなら知っておいて欲しかったんだが、異界の主が異界に突入制限を掛ける場合、その多くは地脈を利用した土地に対する〝呪詛〟なんだ。つまり、やろうと思えば
「待て。それなら何で最初からそうしなかった?」
今度は黙って聞いていた山梨修羅勢から質問が飛んできた。
「先程も言ったが、失敗する事は分かっていても、何処で失敗するかが分からなかったからだ。高位陰陽師の占術で〝失敗〟すると出た以上、どれ程上手く行っても一度は
「ちなみに最悪の想定を聞いても?」
「俺の想定だと異界の主──たぶん大天使が死に際に地脈を利用して、天使の暴走召喚ぐらいはやると思っていたぞ」
「その場合の被害範囲は?」
「『マヨヒガ』の伝承通り、東北と関東一帯の山から無限に天使が沸き続け、GPの上昇と共に全国に広がっただろう。もちろん、終わる頃には日本の地脈が完全に死ぬおまけ付きで、そのまま終末が来る可能性は十分あった」
想定以上だったのか五月蝿くなる修羅達。俺としてはS案件候補だと言ったにも関わらず、想定が甘いとしか言えんな。
「セツニキ。今はまだ大丈夫なんだな?」
今度は緊急事態に駆け付けてくれた男鹿ニキだ。他の俺らも集まってるし、山梨修羅勢の大半が来てくれてるっぽいな。
「大丈夫というかそれが起こる可能性自体が無くなったから安心して良いぞ。すでに占術は的中してるんだ。後はその後の処理をするだけだ」
「可能性自体が無くなったとは?」
「元々そうならない様に地脈に仕込みを入れていたんだよ。ただ、それすら運命に負けて失敗しそうだったからな。今回失敗した以上、間違いなく正常に作動するから起こらないと断言出来る訳だ」
「頭が痛くなるな」
「高位の占術ってのはそういうもんだ。だから素人が下手にやって外れを引いた時が一番酷いぞ。何をやっても失敗する糞みたいな事になるからな」
TRPGで例えるなら十回ダイスを振るまで自動ファンブル状態になる。ダイスを十個振るまででは無く、十回だ。戦闘中なら生きてられないし、クトゥルフなら何の情報も得られないままクライマックスだろうな。
「さて、他に質問は?」
「あの、【浄化】の権能?持ちの人が必要なんですよね?それって誰がやるんですか?」
確か彼女は──あぁ、セリスの言ってた梅昆布ネキか。
「俺と星祭と愛宕ネキ達で『石長比売』を降臨させるつもりだ。興味があったら見ていくが良い」
「こうりん──?こ、降臨ッ!?」
「各地の神社に残ってる〝一族〟の伝承は間違っちゃいないが、正しくも無いんだよ。俺ら神道の切り札は何時だって〝神降ろし〟だぞ」
同時に戦前の霊能組織が『マヨヒガ』を管理出来ていた理由でもある。少し考えてみれば当然なんだが、『マヨヒガ』の歴史は第二次世界大戦より古い。
一度入ったら二度目が無いなんて糞みたいな仕様を何とかするなら土地ごと祓うしか無く、山神達が呼ばれたら見事なマッチポンプの完成だ。
「さて、他に質問は?──無いみたいだな。一週間後、ジュネス予定地で『石長比売』を呼ぶ。その後『マヨヒガ』を攻略するから暇なら参加してくれると嬉しい」
それだけ言って大広間の舞台から降り、借りている部屋に戻る。一息付く間も無くスマホを取り出し、
来てくれたらラッキー程度だが、はてさてどうなる事やら。
◇