【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
日本という土地は広い様で狭く、大規模な降臨術式を行使出来る程の広さがある土地は滅多に無い。
正確に言えば、霊地として機能する程の平地が無い、が正しいか。
だからこそジュネス予定地なのだが、問題も無い訳では無い。
単純に五月蝿いのだ。土地神を名乗る悪魔や名家達が。
「貴様らガイア連合には感謝している。だが、この土地に縁の無い神を呼ぶだと?そんなの認められる訳が無いだろうッ!」
「然りッ!この土地で神を呼ぶならば我が祀神様でも良いでは無いかッ!」
「なんならこの俺が祓ってやろうか?もちろん貰う物は貰うがなッ!」
好き勝手喚く名家や悪魔の話を右から左に聞き流し、スマホのアプリを起動。
俺達の努力の結晶と言うべきか、前世のアプリが軒並み配信されてるのは笑うしか無い。
「聞いてるのかッ!?」
「うるせぇな。名家を名乗る闇召喚士と悪魔は黙れよ」
「なッ……!?」
「貴様ッ!我々を侮辱しているのかッ!?」
「侮辱?生き恥を晒してるお前らに侮辱される様な〝誇り〟は無いだろ」
「セツニキさんッ!それ以上は──」
知らぬ間に〝さん付け〟になった愛宕ネキを視線で黙らせ、自称名家と神を名乗る悪魔に視線を向ける。
「メシア教に他の霊能組織を売って生き残った名家の話をしてやろうか?それとも他の神を売って生き残った悪魔の話をしてやろうか?」
「な、何の事だ?我々は──」
「お前らが証拠を残さない様に動いてようが、俺の〝耳〟はメシアの中にもある。根切りの時の協力者の名前を、今この場所で、高らかに読み上げてやろうか?」
「……急用を思い出したので失礼する!!」
「わ、私も失礼します!」
「……チッ」
騒がしかった自称〝名家〟達が揃って席を立つのに目を向けず、そのままデイリーを終わらせていると、愛宕ネキに従う名家の一人が恐る恐る尋ねてきた。
「あの、セツニキ殿?今の話は本当なのですか?」
「お前らの理解の範疇を越えてるだろうが、ガイア連合には高位の占術者も居るし、【過去視】を行える者も居る。脳味噌さえあれば、情報を抜き出せる奴もな」
「そ、その様な事が……」
「魂の拷問だって行えるし、死後の行き先を決められる奴だって居るんだ。そんな高位能力者達が『マヨヒガ』に梃子摺っていると言えば、お前らの考えがどれだけ甘いか分かるか?」
「……申し訳ありません」
土地の守り手として誇りを持つ事は素晴らしい。だが、力量が伴わないならば、それは誇りではなく傲慢でしか無い。
「今ならまだ攻略を止められるが、お前らが『マヨヒガ』の攻略に失敗した場合、俺は岩手を地図から消すぞ?お前らにその覚悟はあるのか?」
「……申し訳ありません」
感情的に反論して、想定以上の事態だったから謝るしか出来ないのは理解している。それでも、その程度の覚悟で邪魔するなと言いたくもなる。
「現状が理解出来たなら大人しく愛宕ネキに従え。それすら出来ないなら霊能組織を辞めて市井に下れ。ハッキリ言って邪魔だ」
「…………ッ!失礼しますッ!」
質問してきた名家が席を立つ。これで呪詛でも飛ばしてくるなら認めてやれるが……精々陰口止まりだろうな。
「さて。この場に残った以上、お前達は愛宕ネキに、そしてガイア連合に従う覚悟があると見て良いな?無いならすぐに出ていけ。止めはしない」
一分だけ待ってみるが、特に動き無し。まぁ、こんなもんか。
「泥水を啜っても生き残る覚悟はある様だな。ならば、まずは今までこの地を守ってきた〝褒美〟を与えよう。愛宕ネキ、配ってやれ」
愛宕ネキが立ち上がり、一人一人に手渡しで数枚の紙を渡していく。俺が鞭、愛宕ネキが飴を与える印象を植え付ける事で、後の統治を楽にする種蒔きみたいなもんだ。
同時に裏切ったら俺が出てくるという事を教え込む。視線だけで愛宕ネキを止めたのは、この場に居た全員が見た筈だ。そこから力関係を読み取れない様では政治力にすら期待出来んしな。
尤も、俺達ガイア連合所属者に上下関係は無いので、ハッタリでしか無いんだが。
『『『こ、これは……!』』』
視線で愛宕ネキに説明する様に指示を出す。飴を与えるのは愛宕ネキの仕事だ。
「こちらは
渡したのは、ガイア連合に従う事で得られるサービスの一覧と、貸し出される装備の一覧表。
そして──
提供したのは〝一族〟の知識のみで、山梨で得た知識は一切出していない。だから俺の権利の範疇という訳だな。
「俺達がお前達へ求める事は三つ。一つ目は俺達ガイア連合の代わりにこの地の政治家に話を通す事。二つ目は渡した紙を元に表の人間や手駒の闇召喚士達の〝血〟を取り込み、霊能組織を立て直す事。三つ目は──俺らの邪魔をするな。それだけだ」
一番弱い奴を基準にした殺気を飛ばす。地元俺達が天狗になる危険性はあるが、それを何とかするのは支部長の仕事だ。俺には関係無い。
「俺からは以上だ。質問が無ければ出ていけ」
何人か腰が抜けた奴も居る様だが、周りの奴等が肩を貸して出ていく。それを見送り、周囲から気配が消えたのを確認した後、この場に残った名家の一覧をちひろネキに送信。
「ちょっと可哀想ね。彼らも頑張っていたのに」
「岩手はガイア連合にとって重要な場所になるし、『マヨヒガ』の攻略がまだ終わってないからな。手を抜いたら失敗に繋がる事を考えれば、アイツらの〝誇り〟なんて知らん」
アイツらが一丸となって高位霊能者を逃がしていれば、俺達は楽が出来たと言わないだけ感謝して欲しい。
命の価値が平等だと言うなら、
「セツニキさんは人から恨まれる事が怖くないの?」
「恨まれるのを恐れて終末対策に不備が出る方が怖い。俺が恨まれるだけで対策が進むなら、世界中から恨まれても構わないぞ」
「……強いね」
「これが〝強さ〟かどうかは知らんがな」
怨み辛みが目に見えぬ物では無く、ダメージとして体感出来る様になった事が分岐点だったのだろう。
どれだけ恨まれ様が俺の【呪殺無効】を越えられない以上、取るに足らない物となった。
たぶん超越者の領域に足を踏み入れるってのはこういう事なんだろうな。
◇
降臨の日まで後三日に迫った日の午後。待ち望んでいた人間が到着した。
「久しぶりだな。活躍は聞いていたが、元気そうで何よりだ」
「あの時は世話になった。お陰さまで
「さよか。そりゃ良かった」
あの時はまだ霊格が低くて不安だったが、後遺症は特に無さそうだな。良かった良かった。
「このまま親交を深めたい所だが、お互い忙しい身だ。着いてきてくれ。──
「分かった」
スーツ姿の男とその仲間の
「お、セツニキじゃん。やっほ──そいつらは?」
「今から説明する」
一団を引き連れて舞台の上に上がると、即座に見たことの無い修羅勢から罵声が飛んだ。
「おい。なんで
「少し黙れや。これから説明するって言っただろ」
殺気を部屋の中に放ち、場を無理矢理静める。臨戦態勢に入れたのは三割未満か。修羅勢も多くなったな。
「まずは紹介からだな。彼は──そうだな。ブロントさんとでも呼んでくれ。ローマ正教会所属の
やはり〝騎士〟は黄金の鉄の塊で出来ていないとな。
「セツニキー?メシアじゃないのー?」
「アイツらと一緒にしてやるなよ。失礼だぞ」
「それも仕方ないさ。信じている主は同じだからな。それにメシア教徒達はそれだけの事を行っている。罵声は甘んじて受け入れるさ」
「お前らが良くても『マヨヒガ』攻略の為に手を組んで貰うんだ。こっちが困るんだよ」
ここまで来て失敗はしたくない。どれだけ金を注ぎ込んだと思ってるんだ。
「まずは彼らの境遇と何故呼んだかの説明をする。質問があるなら説明後に頼む」
修羅勢が静かになるのを少し待つ。図書館探検隊の面子は呼んだ理由をすでに把握したのか、視線を手持ちの本に戻した。何処に居ても変わらねぇなぁアイツら。
「先程も説明したが、ブロントさんはローマ正教会所属のテンプルナイトだ。主な仕事は世界各地で行われてるメシア教徒の暴走を止める事。これは教皇からの命で最優先任務となっているんだが、残念ながら天使に【洗脳】されたり、改造されている事も多い。だからブロントさん以外は信じるなよ」
とは言っても、俺達はカトリックというだけで警戒するから問題無いと思うが。
「後ろに居るブロントさんの仲間は同じ任務を受けていたテンプルナイトだったり、天使を憎み、剣を取った被害者達だ。霊視ニキ以上の殺意を抱いてると思ってくれて良い。仲良くしろとは言わんが、せめて『マヨヒガ』攻略中は手を組んでくれ」
さて、ここからが面倒だ。俺の懸念が伝わってくれると良いんだが。
「今回、俺が彼らを呼んだのは『マヨヒガ』のギミック解除の為だ。図書館探検隊が抜いてくれた情報の〝至聖三者〟は四文字、キリスト、聖霊の事を示しているんだが、〝讃えよ〟というのは図書館探索隊と会議した結果、特に捻りも無く文字通りの意味だと判断した。つまり、俺達だけで攻略する場合、俺達の中の誰かが四文字を、キリストを、聖霊を讃える必要があった」
『『『流石セツニキ!ナイス判断!』』』
古参達から称賛の声が上がる。新人修羅達は戸惑ってる辺り分かりやすい。とはいえまだ話すことはあるので、軽く手を上げて静める。
「一応、信徒以外の称賛を認めない、または偽りの信仰心に対する罰則があるとも踏んでいる。だから
……大体六割は理解してくれたか。残り四割は分かった〝フリ〟だな。
「そういう訳で、攻略当日はブロントさん達に北、西、東のギミックを担当して貰い、解き終わったら南で待機しているお前らが中心部に突入、異界の主をボコる流れとなる。何か質問は?」
「はいっ!ギミックの場所に意味あるの?後、護衛に何人か回した方が良い?」
「日本の〝至聖三者〟は一番上に四文字、左にキリスト、右に聖霊の配置で描かれる事が多い。少なくとも日本にある異界なら、この条件から外れる事は無い。護衛については──」
視線をブロントさんに向けると、軽く首を横に振った。
「不要だそうだ。【アナライズ】持ちは気付いてるだろうが、ブロントさんのレベルは三十八。しかも、対天使なら俺達より強いかも知れんから期待して良いぞ」
「え、どういう事?」
「国内の過激派を狩る事を条件に、俺がコイツらの活動や被害者の治療を支援してるからな。その関係で対天使の経験値は俺達以上の筈だ」
「その代わり異界攻略の経験は活動拠点からの依頼のみなので、そちらは皆様にお任せ致します」
ここで今まで黙っていたグラ爺が動き出した。
「セツニキの考えも、貴殿の立場も分かった。だが貴殿達が幾らキリスト教徒だと名乗ろうとも、儂らの中から懸念は消えまい。──しかしな?儂らは〝修羅〟の名を背負っておる。故に手合わせすれば、貴殿の剣に嘘が無いか分かると思うとる」
「グラ爺、本音は?」
「テンプルナイトの正規の剣技を見れる機会を逃しとうない。それに敵なら切り捨てるだけじゃ。儂らは頭を動かすより、そちらの方が早くて分かりやすいじゃろ」
『『『それな!!』』』
「……何時もこうなのか?」
「分かりやすくて良い馬鹿ばっかりだろ?」
「ふふっ。確かにな」
さて、俺はこれから愛宕ネキに場所の申請して、結界を張らないとな。
◇
んー……!やっぱり黙っておこう