【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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磐長一族流の神楽

 

 

 しゃらん、しゃらんと鈴を鳴らし、淡い光を放つ小石で作られた道を進む。

 

 向かう先は大岩の前の舞座。その上に立ち、まずは北西に向けて、神楽鈴を振り下ろす。

 

 

『『『おぉ……!』』』

 

 

 しゃらんという音と共に水晶の柱が北西に現れた。次に北東、南西、南東に向けて振り、同様に水晶の柱を出現させる。

 

 そこで一度大岩に向けて一礼。そして神楽鈴を横に振り、ゆっくりと回る。

 

 神楽鈴に従う様に水晶から水晶へと光が伸び、繋がり、四方を囲む光の縄となる。

 

 これで神を現世に呼ぶための〝仕切り〟が出来た。

 

 続いて右袖から引き抜いた水晶製の扇を左手のみで開く。そのまま右手の神楽鈴と共に大岩に向けて、少しづつ横へ広げていく。

 

 そのまま思業式神化した雅楽器の音色に合わせて舞始める。

 

 磐長一族流の『神迎』に当たる儀式なのだが、これは我が〝一族〟らしい発想により、神を迎えるのでは無く、神が来たくなる様な舞を舞う事を真髄としている。

 

 どう考えても天宇受売命(アメノウズメ)の神話の一文にそっくりなのだが、そもそもが神楽の原型となった神話なので、歴史的には何も可笑しく無い上にちゃんと舞う意味もある。

 

 左手の扇から霊力を放ち、右手の神楽鈴で清めながら舞続ける。手の動き、足の動きの全てに意味がある。この舞の本質は──光の縄で区切った領域内の霊気の上昇。つまり、GPを一時的に上げて神が降臨出来る様にする為の儀式を一人で行っているのだ。

 

 ちなみに領域は区切ってあるので現世に影響は無い。その為の『純粋』で『無垢』なのに『完全』な水晶の柱、という訳だ。

 

 雅楽器の音色が少しづつ静かな音に変わる。舞も終盤、周囲の霊気は十分。完全に音色が止むまで舞続け、音色の終わりと共に余韻を残しながら舞うのを止める。

 

 そして扇を畳んで袖に仕舞い、神楽鈴を天へと掲げ、右に一回、左に一回鳴らし、深々と御辞儀する。

 

 

────気配の変化はすぐに起こった。

 

 

 急速に周囲の霊気が大岩の上に集まり、形となる。

 

 現れたのは褐色巨乳の巨女*1。まさか初代の理想で現界とはな。〝一族〟の事を忘れてなかったのか。

 

 

「心地好く、そして懐かしい良い舞でした。思わず惹かれて降りてしまいましたよ」

 

 

 返答はしない。神楽中、舞手は石の様に固く口を閉ざすのも磐長一族の仕来たりだ。瓊瓊杵尊の子孫()に不信感を持つ石長比売には千の言葉では無く、一の行動で示すのが一族の〝誇り〟。それを汚す様な真似は出来ない。

 

 

「ふふ、相変わらず喋りませんか。まぁ、良いでしょう。次の演目も特等席で楽しませて貰うとします」

 

 

 ふわりと浮き上がり、大岩上部の平らな面に置いた座布団の上に正座する石長比売。御神酒やら食事やらも用意してあるが、〝一族〟の記録では演目が終わるまでは口にしないらしい。

 

 これは瓊瓊杵尊の子孫が用意した物に不信感がある訳では無く、舞を()()に眺める石長比売流の様だ。

 

 取り敢えず俺の役目は終わったので、石長比売に一礼した後、鈴を鳴らしながら元来た道を戻る。

 

 この後は儀式の維持をしながら演目が終わるのを待ち、終わった後に興奮した神を鎮める為の『鎮の舞(しずめのまい)』を踊って『神送(かみおくり)』をするんだが……帰ってくれるのかね?

 

 

 

 

 本来なら大岩に座って観覧する役目だったイワナガの隣で磐長一族の神楽舞を観覧する。

 

 演目名は『石長比売』だ。瓊瓊杵尊に送り返され、迎えに来た父親にこの地に止まる事を宣言し、同じ様な女が二度と現れぬ様に縁結びを始める話を舞で表現する。

 

 女手一つで大地を耕し、稲作を始める舞に合わせ、MAGを使って黄金の穂並みを再現したり、主となる舞手にスポットライトを当てたり色々忙しい。

 

 最終的に一人の女が石長比売に祈り、石長比売がその女と意中の相手との緣を結んで終わる。

 

 そして再び俺の出番なのだが──神楽鈴を手に持ち、再び大岩の前の舞台に立った俺に石長比売が声を掛けた。

 

 

「良い神楽でした。久方ぶりに楽しめましたよ」

 

「そりゃ良かった。苦労した甲斐があったってもんだ」

 

「『鎮の舞』を舞う必要はありませんよ。そして『神送』も」

 

「帰るつもりは無いと?」

 

「あれは元々楽しみ過ぎた神を無理矢理送り返す儀式でしょう?私には帰る意思がありますからね」

 

「さよか」

 

 

 篝火が揺れる。程よく冷たい風が心地好い。

 

 

「まずはこの地の〝汚れ〟を貴方の望み通り取り除きましょう」

 

 

 石長比売が右手を軽く上げた。()()()()()()()俺の霊的知覚を越える範囲の地脈がメシア色から無色に変わる。……これが〝神〟の権能か。

 

 

「ついでに貴方が目に掛けている女子(おなご)の神社の裏手に異界を固定しておきました。あくまでも一時的な物なので、再び現れた場合は相応の対価を求めます」

 

「助かる」

 

 

 視線で観覧していた修羅勢に指示を出すと、即座に姿を消した。ブロントさん達も着いて行ったし、『マヨヒガ』はこれで終わりだな。

 

 

「さて、ここからは悪魔らしく交渉と行きましょうか。分霊のこの地での現界を認めて貰えるならば、私はこの地の地脈を管理しましょう」

 

「この地の神を解放した時、その地位を捨てる事に同意出来るのか?」

 

「ええ、構いませんよ。その代わり副祭神として祀られる神社で衣食住と多少の娯楽、そして主祭神に行く〝信仰心〟の一割を献上して貰いましょうか。もちろん私への〝信仰心〟とは別に」

 

 

 愛宕ネキに視線で答えを聞くと、軽く頷いた。

 

 

「衣食住と娯楽、それに〝信仰心〟に関しては了解した。但し衣食住と娯楽に関しては上限を設けさせて貰うぞ」

 

「当然ですね」

 

 

 お互いの望みを言い合い、間を探る。お互いに納得出来る範囲になったらそれを契約書に書き込み、ついでに反乱防止の為の文言を盛り込んで、愛宕ネキにサインさせる。

 

 

「では、私は帰ります。分霊をお願いしますね」

 

 

 その一言を最後に膨大な量のMAGが天に還る。そして完全に帰った後、MAGで作り出した水晶の柱が割れ、光となって世界に還った。……何気に御神酒と料理も持って行ったな。

 

 

「ふむ、これが現世か。これから宜しく頼むぞ」

 

 

 見た目はそのままだが、先程とは雰囲気も感じる霊力も違うイワナガヒメが軽く頭を下げる。感じる霊力的にレベルは十前後。霊質的に──【オニ】辺りか?

 

 見た目相応とも言えるし、〝一族〟の独自解釈が実った結果な気もする。

 

 霊格が上がれば【ヤクシニー】辺りになった後、豊穣神になりそうな気もするぜ。──とはいえ、だ。

 

 

「お前の契約者はまだ未熟でな。修行を終えるまでは封印させて貰うぞ」

 

「了解した」

 

 

 封魔用の巻物を広げ、イワナガヒメ(マーベルの姿)を封印。

 

 

「さて、愛宕ネキ。これで逃げ道は無くなったぞ」

 

「頑張ります……」

 

 

 愛宕ネキの修行が終わるまでは岩手支部に滞在しなきゃ駄目か。ムラサキ達と旅行に行けるのは何時になるやら。

 

 

*1
マーベルのストーム




明日の更新でマヨヒガは終わりです。

明日の後書きに感想返しを兼ねたこんな物語になった作者の考えを書いておきましたので、気になる方は読んでみると良いかも?
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