【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
『いや、駄目に決まってんじゃん?確かに安全な覚醒方法だけどさぁ』
事務系俺達を送り出してから暫く。ショタオジから連絡があり、呆れた声でそう言われた。
『良い案だと思ったんだがなぁ』
『確かに方法としては悪くないよ?でも、安全な修行ですら嫌がる俺達が耐えられると思う?』
『自分の息子に素直なら余裕じゃないか?』
『え、待って。根性で耐えてたんじゃないの?』
『エロだぞ。アイツが耐えてた理由』
思業式神や悪魔を召喚していると、やはり大気中のMAGが一時的に上がってしまう。今回は比較的高レベルな俺が意図的に圧力を掛けた*1という事もあり、非覚醒者には脂汗が流れる程の重圧となっていた。
そんな
高めに設定していたエアコンのアシストにより、ほんのり汗ばんだ高雄ネキが上着を脱ぎ、今まで固く守られていた
『──って訳で、根性ある訳じゃないぞ』
『俺達って何でそう簡単に俺の予想の斜め上を行くのかなぁ!』
『〝俺達〟だぞ?』
『嫌な説得力!』
その一番上はお前なんだが。
『まぁ、取り敢えず手紙で言ってたセツニキの案は却下だよ。ちゃんと作って?』
『岩手支部が何と言うか秀才の集まりでなぁ。突き抜けた天才が居ないから、正直言えばライセンス生産向きなんだよ』
『零から何かを産み出すのに向いてないのか~』
『向いてる奴はソロ気質だろうしな』
ちなみに俺の最近のお気に入りは【メギド】系の爆弾*2だ。
敵の数が多かったら取り敢えず投げておけば役に立つアイテムで、シエラ婆と二人で買い占めたのは記憶に新しい。
自傷ダメージ?我ら、ドレイン持ちぞ。
『セツニキが零から産み出すのは駄目なの?』
『それでも良いんだが、俺は山梨優先だからな。いずれ消える人間に頼りきりも不味いだろ』
『ドライだねぇ』
『というか、これぐらいは自分達で出来なきゃ終末後に〝奴隷落ち〟するぞ。それはお前も嫌だろ?』
『……確かにそれは困るね』
困った時の甘言程、人の心に差し込める言葉は無い。俺達なら最低限の
だが〝悪魔〟相手にそんな甘い話が通る訳が無い。メシア教が世界中でやってる事が、とても可愛らしいレベルの扱いになる事だって普通に起こり得る。
『セツニキの懸念は分かったよ。でも、岩手支部がある程度の成果を上げたら期待して良いんだよね?』
『すでに案はあるし、やろうと思えばすぐに出来上がる。ただ、ショタオジが期待してる非覚醒者用の装備にはどう頑張ってもならんな』
『今、聞いても平気?』
『ちょっと待ってくれ。結界貼る』
適当に霊符をばら蒔いて消音結界を貼る。
『要は悪魔を視認出来て、悪魔を倒せるだけの火力があって、非覚醒者俺達に命の危険がなけりゃ良いんだろ?だったら〝人形使い〟の術式を利用して【デビルサーチ】特化の簡易式神と視覚同調、後は銃でもボウガンでも使って撃ち抜けば良い。雑魚悪魔を捕縛する必要こそあるが、非覚醒者なら見ただけでも霊障を受けるだろうし、鍛練にはなるだろ』
『簡易式神と同調は危なくない?非覚醒者な訳だし』
『ショタオジが立ち会ってる時のみにすれば良い』
そこまでの過保護が許されるのは、貢献度がずば抜けてる富豪俺達ぐらいだが。他は式神待ちの俺達が許さないと思う。
『……うん。それならギリギリ納得出来るかな』
『そこまでしてギリギリなのか』
どんだけ過保護なんだ。いや、富豪俺達に過保護になる分には全然構わないが。──っと、そうだ。
『銃が必要なら売れるぞ』
『何で持ってるのお爺ちゃん』
『ヤクザからパクったまま売り払うのを忘れてただけだ』
まさかこんな所で役立つとは。偶然なのか、くそみそニキの予知が凄いのか。果たしてどちらなのかねぇ。
『んー、分かった。全部買い取るよ』
『んじゃムラサキに持っていかせるわ。代金は俺とジャンヌネキと双子ニキによろしく』
『双子ニキは兄?弟?』
『弟の方だ』
『了解~じゃ、また何かあったらよろしく☆』
『ういうい』
通話を切ってそのままムラサキを召喚。銃と銃弾の入った霊符を渡すと、そのまま転移──する直前、何かを思い出したかの様に振り向いた。
「そういえば主様。私達も【権能】を手に入れましたよ」
ピンッ!と弾かれたコインがくるくる宙を舞う。そこへトランプが
「ちょっとムラサキ、ジャッジメントですのって言ってくれ」
「?はい。ジャッジメントですの」
元ネタを知らないからか素のまま言われた。これは布教するべきか、それともこれはこれで楽しむべきか。悩ましい。
◇
人間が俺以外誰も居なくなった部屋で、一人寂しく書類仕事を進める。
世の中の大半の仕事はそうなんだが、実は立ち上げが一番忙しい。時代を進めたお陰で大店法は前倒しで廃案になったからマシとはいえ、今度は大規模小売店舗立地法*3が立ち塞がる。詳しく書くと山梨に帰りたくなるので省くが、単純に説明すると書類を一杯作って都道府県に提出。警察に対して騒音や道路交通への対策を書類と共に説明、地元の商店街等に向けて説明会を開く必要があったり、とにかく糞みたいに忙しい。
いや、これが普通の建設なら富豪俺達の管轄だけで済んだのだ。幹部勢が十九支部同時に建てるとかいう頭のおかしい方針*4を固めたせいで、そこらへんの経験のある俺達は全員駆り出され、厳しい修行を鼻で笑える様な状況に陥っている。
岩手はもちろん、俺と十に満たない富豪俺達、そして無数のガイアグループ所属の俺達が現在進行系で地獄への道を進んでいる。
俺が担当しているのは各種書類の作成だけ*5だが、地域の住民に対する説明と答弁は愛宕ネキが行う為、予想される質問や反発に対する回答書を同時進行で制作しなければならない。
それだけでも面倒なのに、支部長代理としての仕事も沸いてくる。──そう、こんな風に。
『要件は?』
スマホが鳴った瞬間、修羅勢の瞬発力*6で通話状態に。無駄な会話は要らないと伝えてある為、返事はすぐだった。
『B案件です』
『了解。
スマホの通信を辿って位置を特定。そして【
『目標、沈黙しました』
『場所は宮古市の派出所か。十分で行く』
『お待ちしております』
少し出ると書き置きを残し、窓から
予想より少し早く着いた俺をすでに待っていた俺達が出迎える。そのまま
「こいつらの身元は?」
「岩手県全域で活動してるヤクザのチンピラですね。名家から提出された資料*7はここに」
手渡された資料を受け取り、パラパラと捲りながら考える。……警察俺達に恩を売るべきか、それとも見せしめに惨たらしく処分するか。どちらが後に繋がるかな。
思考の海に潜っていると、再びスマホが鳴った。どうやら今日は考える暇も無いらしい。
『俺だ』
『セツニキ、すまん。C案件だ』
『了解。対象の名前を教えてくれ』
『岩手県の政治の首領と呼ばれる◯◯という八十近い爺さんだ。どうやら自分が関係しない所でジュネス計画を進められた事に御立腹の様でな。推し進めた政治家俺達が絡まれている』
『そいつなら無視して大丈夫だ。汚職の証拠を揃えて伝のある特捜部に提出してあるから、後二、三日もすればブタ箱に入る』
『敏腕の弁護士が居るらしいが大丈夫か?』
『御自慢の弁護士はヤクザと繋がりがあってな。密会してる所を写真取った*8し、税務署に報告してない収入の裏も取れた。すぐに警察俺達が動くから問題ない』
『了解、俺達にも伝えておく』
通話を切り、舐めた真似してくれたヤクザの対処に思考を戻す。先に警察の〝掃除〟をしておいて良かったな。俺の言う事を聞くなら多少の悪事は見逃してやるが、歯向かう馬鹿は汚職の証拠と共に豚箱送りだ。警察に居る俺達を転勤させて上に据えても良いから対処が楽で良い。
ジュネス計画を円滑に進めてくれるなら、出世に必要な手柄など幾らでもくれてやる。昭和の残り香は日本全国にあるのだ。前世の記憶と照らし合わせれば、豚共が何処で何をやっているかなんて手に取る様に分かる。
「……良し、決めた。纏めて〝神隠し〟する。お前は通常業務に戻れ。後は俺の仕事だ」
「分かりました」
一番上から下まで纏めて岩手から
◇
つまり茶番
ジュネス誘致した人達にはこんな苦労がありました。
支部長なんてやるもんじゃねぇな……!