【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
俺が想像していた以上に岩手支部の製造班は優秀だったらしい。
「また面白いもんを作ったな」
「報告書にも書いてありますが、まずは現在の技術で何処まで小型化が出来るかを試してみました」
「やり方としては悪くない。もちろん、こんなのばかりでは困るが」
「承知しております」
炊飯器ぐらいの大きさだろうか。コイン一枚入れられる程度の穴が空いている正方形の物体は、マッカ一枚でアギ一発分に満たない霊的エネルギーを生み出す事が出来るらしい。
連投は不可。再使用時間は三十分。ハッキリ言ってゴミだが、発想は悪くない。
「連結して使える様にするか、エネルギー効率を上げるか。どちらを行うか知らないが、今の方向で改良してみてくれ」
「分かりました」
「ついでにこれを渡しておく」
手渡したのは世界各国のバッテリー関連の特許技術や科学系雑誌、論文の入ったUSBだ。あくまでも合法的に手に入る範囲で集めた物なので、製造班には物足りないかも知れない。
「これは……?」
「世界各国に〝親友〟が居るからな。その伝で集めた公開されてる技術だ。それと先に言っておくが、岩手支部がその情報を独占出来るのは一月の間だけだぞ。それ以降はネットに上げ、ガイア連合の製造班なら何時でも閲覧出来る様にする」
「岩手支部だけを助けるつもりは無いと?」
「もちろん。俺の優先順位は何時だって山梨が一番上だ」
「……分かりました。一月の間に出来る限りの改良をしてみます」
班長が一礼して部屋を出ていくのを見送り、試作品として献上された〝炊飯器〟を眺める。
「高雄ネキ、ちょっと実験手伝ってくれないか?」
「構いませんが……何をすれば宜しいですか?」
「軽く手を切って〝
「分かりました」
【ディア】の術式を適当な紙に書き、〝炊飯器〟の上に乗せる。その間に手持ちのナイフで傷を作った高雄ネキが手を翳したので〝炊飯器〟にマッカを投入。
「おお。治ってますね」
「三十分に一回、マッカ一枚で【ディア】が使える魔道具がなんと!今なら五百万で買えます!」
「名家に売れそうですね♪」
「売るなら霊符の下限を調べるか。鬼手に霊符持ってくるように伝えてくれ」
「ふふっ。わかりました」
すぐにスマホを取り出して連絡を取り始めた高雄ネキから視線を外し、支部長としての仕事に戻る。
県知事には政治系俺達であり、富豪俺達でもあった轟ニキ*1を押し込んだ。本人も中位覚醒者であり、周囲も覚醒者で固めてるので、闇召喚士がダース単位で攻めてきても相手にならない。お陰でこちらも気が楽だ。
彼には岩手県内の人口集約と、それに伴うインフラサービスの向上を掲げて貰っている。これは終末対策に結界を張るにしても、範囲が広くなり過ぎない様にする為だ。
というか岩手県の面積は北海道にこそ負けるものの国内第二位に位置している。人口は平成初期から二千年までの間、百四十万人を上下していた。
対して東京は平成十二年に千四百万人に到達している。
つまり、東京には岩手の約十倍人が居る。なのに土地の広さは東京の約七倍あるのだ。とてもじゃないが、岩手全土を守るのは現実的じゃない。
山林地帯や平地の少なさ等、比べるのがそもそも間違いという指摘は受け入れよう。だがどう考えても人口集約した方がインフラ的に楽になるし、福祉サービス等の向上も望める。──というのが建前で。
本当はガイア連合が後援している轟ニキを旗印として、ガイア連合は皆さんの為に頑張ったんだけど、邪魔されたので無理でしたと言い張る為だ。
終末の為に頑張ったんだけどなぁ!皆さんの反対がなぁ!!
終末後に助けられる命の数を考えれば、
To a thing to follow mercy. To a thing to resist the wrath of Heaven*2.
全てを守るつもりの優しい子供達は知らなくていい、薄汚い大人達の、見捨てる為の言い訳作り。
本来なら俺と手駒でやるつもりだったが、政治家俺達や富豪俺達、そして治安を守る警察俺達は見事な嗅覚で嗅ぎ付けた。だからこそ、巻き込むことにした。轟ニキを上に担ぎ上げたのはその一環だ。そして次の一手として、岩手県内の犯罪者共を警察俺達の手柄にする為に根刮ぎ刈り取った。
そのお陰で県内の治安が向上し、轟ニキの支持率が上がったのは笑うしか無い。
この後の流れとしては、災害に強い街作りを謳いながらジュネスを最低でも後二つ誘致する。一つは盛岡八幡宮のある盛岡市。もう一つは恐山支部への霊道確保の為に久慈市を予定している。そこまで来たら、後はジュネスを中心に区画整理やインフラ整備をするだけだ。もちろん、イワナガ製の素材は紛れ込ませる。
ガイア連合や富豪俺達の金を使わず、岩手市民の税金で行うので、これには富豪俺達もニッコリ。──いずれ岩手県の県税は高くなるが。
とはいえそれを行うのはまだまだ先だ。今は轟ニキの地盤固めの時期であり、他の俺達が上に行くまでの潜伏期間。焦って計画が失敗に終わるのは宜しくないしな。
「扶桑ネキ*3が直接来るそうです」
「いや、当主が直接動いたら駄目だろ」
軽く見られるぞ。
「霊能組織としてはセツニキさんとの繋がりの方が大切では?」
「それなら愛宕ネキか高雄ネキを落とすべきじゃないか?」
「私達、同級生なので今更なんですよね」
「愛宕ネキと高雄ネキと扶桑ネキが同級生……?」
男子は前屈みになりながら学園生活を送らなきゃ駄目そうな学校だな。胸囲が脅威過ぎる。
「言いたい事は分かりますけど、私も愛宕も学生時代はこんなに大きくなかったですよ?このサイズになったのは覚醒してから暫く後です」
「扶桑ネキは違うのか?」
「扶桑ネキは今と変わらずですね。昔から未亡人みたいな雰囲気を醸し出してました。後、運が悪かったです」
「原作と容姿は関係無い筈なんだがな。俺とかセッツァーなのに神道者だし」
「私と愛宕は微妙に原作に近いですよ?高級式神は自動で敵を迎撃してくれる艤装ですし」
「また何でそんな物を?」
「ガイア連合の名前が安価で決まる前に覚醒したとはいえ、それまでは普通の一般人でしたからね。私自身は回避に集中して、攻撃や索敵は自動でやって欲しかったんですよ」
「……成る程。確かに理に適ってるな」
スケベ部の作り上げた覚醒方法に似てる気もする──いや、だからこそのパワードスーツなのか。
ってことは、作成に必要な物が見えてきたな。
「セツニキさん?」
「あぁ、悪い。少し考え事してた」
「何を考えてたんですか?私で役に立てます?」
「今はまだ大丈夫だ。もう少し方針が固まったら頼むかも知れん」
「分かりました。その時になったら言ってくださいね。予定を空けておきますから」
「おう、頼むわ」
会話の終わりと共に部屋の扉がノックされた。
「空いてるぞ」
「失礼します」
やって来たのは霊符の束を抱えた扶桑ネキだ。岩手俺達が語ってたように確かに未亡人に見えるな。
「適当な所に置いてくれ」
「あ、それじゃこちらに」
「分かりました」
高雄ネキが空いてる机に案内する。
「鬼手一族はどうだ?」
「セツニキ様から頂いた術式を子供の様に弄ってますね。今のところは特に問題は起きてません」
「お前に舐めた態度取る奴が居たら気軽に言えよ?絞めてやるから」
偶然*4とはいえ名家俺達を当主にしたのは俺だ。その俺の決定に逆らうという事は、俺に逆らう意志があると判断されても文句は言わせない。
「その時は宜しくお願いします。……その心配は無さそうですけど」
「そうなんですか?愛宕がジュネスを誘致する際はかなり五月蝿かった記憶がありますけど」
「岩手中の名家が何とか保持していた術式よりも、セツニキ様から頂いた術式の方が上ですからね。それでセツニキ様の実力が分からない様なら
ニッコリと微笑む扶桑ネキに高雄ネキが少しだけ距離を取る。
「扶桑、ちょっと変わった?」
「覚醒した時に気付いたんですよ。神主さんやセツニキ様ですら終末を危険視してるのに、私はちょっと考えが甘かったなと」
「あ~……成る程。確かにガイア連合の上位陣ですら根本的に対処する事を諦めてるものね。それを考えれば、名家を名乗る霊能組織に配慮してもって感じ?」
「ですね。死に物狂いでガイア連合のお役に立たないと、見捨てられても文句は言えないかな、って思ってます」
「良い覚悟だ。その様子なら俺達の計画を知らせても問題無さそうだな」
「計画?ですか?」
不思議そうに首を捻る扶桑ネキに霊符を一枚渡す。
「人が居ない所で読め。読み終わったら燃やすのを忘れずに。警察対策で顔合わせはしない。が、俺達には掲示板があるからな」
「セツニキさん。私の分は無いんですか?」
「高雄ネキと愛宕ネキは知らない事が大事だ。もしバレた時、ガイア連合は被害者の立場に居る必要がある」
「……むぅ。仲間外れにされてる気分です」
実際してるんだが、敢えて言わない。その代わりに別の言葉を口にする。
「役割分担って奴だぞ。アングラ系は俺と扶桑ネキ。表の顔は愛宕ネキと高雄ネキ。もし問題が起きたら、俺達を切る事によって被害を最小限に抑える必要がある」
「納得はしませんが、分かりました」
「まぁ、そんな事は万が一にも起こらないけどな。フィクサーやってる俺の年齢を考えてみろ」
「……子供ですね」
「確かに、子供ですね」
「こんな子供がフィクサーやってるって誰が信じるんだよって話だ。だから気にするだけ無駄だぞ?」
「分かりました。もう気にしません」
納得した様に頷いた高雄ネキを見て、バレない様に溜め息を吐き出す。扶桑ネキに渡した資料は最終的にジュネスを誘致し、霊道を確保する事しか書いていない。
二人──愛宕ネキも含めて三人には綺麗なままで居て欲しいからな。それが岩手政治家俺達と富豪俺達、そして警察俺達の総意だ。
地元を捨てて山梨に行けば好きに暮らせる実力者が、故郷を守る為に頑張ってるのだ。
薄汚い大人が
故郷を守る俺達(子供)の代わりに手を汚す俺達(大人)も居る筈という妄想。