【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
午前中に支部長代理としての仕事を終わらせ、本来なら山梨の異界に潜る為の時間を非覚醒者装備の制作に使う。
とは言っても、岩手の製造班には独自装備を作る発想は期待出来ないので、必然的に岩手支部が狙うのは別の物になる。
「耐Gスーツですか」
「そうだ。お互いに覚醒者だから詳細は省くが、一般人が覚醒者の動きをしても死なない様にする為の物を作る。別にスーツに拘らなくても良い。エヴァのLCL*1みたいな物でも構わないしな」
「成る程。装備自体は他の支部に任せ、岩手支部はそちら方面に進めるんですね」
「たぶん装備本体は山梨の変態共がそれなりの形に仕上げると思うんだ。ただ、どう考えても一般人が使える物にはならない気がするんだよな」
試作品だから幾らかサイズダウンするだろうが、望遠鏡サイズの物を搭載した鎧を着て動けるなら、ソイツは間違いなく覚醒者だろう。
「セツニキせんせー!俺達もロボ作りたいです!」
「俺もガンダム作りたいです!」
「ライダースーツも良いよな!」
「体が闘争を求めてるんだ……!」
「基礎技術を山梨と合わせてからだ馬鹿野郎」
『『『うわーん!!』』』
「というかな?各地の支部が独自規格で作ってる疑惑があって、整備班が未来で死ぬ香りが漂ってるんだよ。岩手支部までそうするってんなら俺は山梨に帰るぞ」
「くぅ……!これは究極の二択!」
「岩手支部の事を思えば、ここでワガママは得策じゃ無いな……!」
「とっとと作って基礎技術を磨けば良いのでは?」
『『『それだ!』』』
そこで受け入れるから他の支部と違ってライセンス生産向きなんだよなぁ。これが他の支部なら勝手に作るぞ。場合によっては支部長が乗っかる事もある。
「あ、素材の指定ってあります?無ければ取り敢えず採算度外視で指定された性能目指しますけど」
「『マヨヒガ』の素材で作れたら嬉しい。もしくは岩手県内の異界素材だな。それが出来たら該当の異界を管理して、素材の安定供給の方に舵を切るつもりだ」
「石長比売様の素材は使っても平気ですか?」
「愛宕ネキのサマナー修行が終わり次第、分霊が滞在するから大丈夫だ。とはいえ高いから使うとしても少量で頼む」
「了解しました。──それじゃテメェら!!仕事の時間だぜ!!」
『『『応ッ!!』』』
あれ?お前らってそんなキャラだったのか?
頭の中に疑問符を浮かべてる間に製造班が動き出す。
「まずは耐衝撃、耐打属性の素材を試すぞ!該当する属性に耐性のある素材をありったけ持ってこい!!」
「親方ァ!【ガル】はどうしますかい!?」
「高機動時に恩恵がありそうだが後回しだッ!まずは素人でも簡単には想像出来る物を試すッ!」
「了解しやした!」
取り敢えず邪魔にならない所に移動して製造班の動きを眺める。
「取り敢えずイラスト班はイラスト上げんぞッ!ゲームでもアニメでも良いからありったけ書いて持ってこい!」
「趣味に走っても良いですかッ!」
「馬鹿野郎ッ!それは後だッ!まずは実用品を作るッ!遊ぶのはそれからだッ!」
「了解しやしたッ!」
「糸に出来そうな素材は糸にするぞッ!その後は裁縫班の仕事だッ!」
「応ッ!任せろッ!」
「石長比売の素材はどうする!?」
『『『様を付けろ馬鹿野郎がッ!セツニキさんの祀神だぞッ!!』』』
一人の製造班が殴られて宙を舞い、回復薬を投げ付けられて起き上がる。
「すいませんでしたッ!石長比売様の素材はどうしますかッ!?」
「取り敢えず小札にしておけッ!最悪スーツに張り付けるッ!」
「了解ッス!」
岩手支部、濃いな。山梨に負けてないんじゃないかコレ?というか役割分担もキッチリしてるし、監督する意味が無い。邪魔にならない所で適当に作り始めるか。
◇
多くの異界で見掛ける悪魔であるスライム。コイツは少し特殊で、他の悪魔と違い、
俺達が煩くなりそうだが、式神に降ろしている悪魔を普通に召喚して刈れば、望む性質の素材を採取するのは簡単なのだ。
とはいえショタオジや降霊出来る高位俺達を縛り付ける訳にも行かないので、岩手支部ではスライムが発生する異界が現れた場合、その異界のスライムの性質を調べている。
俺が現在霊的に加工しているスライムの素材もその内の一つ。特性は【物理耐性・極小】だ。
そのスライムゼリーの様な素材に『マヨヒガ』の主として現れる【衝撃吸収】持ち【ハーピィ】の羽根を糸に変えて浸透させる。
この作業を何度も繰り返して布に加工、そのままシャツを一枚作り上げる。サイズはLだ。高雄ネキに着せたら彼シャツになりそう──いや、胸が押し上げるから小さいかも知れない。
取り敢えず鑑定班の元に持ち込み【アナライズ】を頼む。
「【衝撃耐性・中】と【物理耐性・極小】が付いてますね。普通に売れるのでは?」
「俺が作れても意味無いだろう。お前らが作れなきゃな。それより、これなら一般人が耐えられると思うか?」
「実験棟のカカシに着せてトラック*2で跳ねてみます?俺達の作品も完成したらやる予定だったので準備出来てますよ?」
「頼めるか?」
「了解しました。──おう、俺だ。セツニキさんの作品の実験を頼む。……は?最優先に決まってんだろ?すでに完成度が俺達とは違うからな。俺達のは後回しだ。……おう、分かれば良い。お待たせしました。案内は必要ですか?」
「……いや、大丈夫だ」
何というか社会人のオフの姿を見た気分になるな。口調も態度も違い過ぎだろ。
この場に居ても仕方ないので実験棟へ向かい、作品を待機していた俺達に渡す。細かい説明は省くが、俺のシャツでは不十分だった。
「シャツは無傷だが、人形は死んだな」
「わざと霊能関係無しにした人形ですからね」
実験台となった四百二十号は吹き飛ばされて壁に叩き付けられ、壁とトラックの間に挟まれて粉々に散った。人間だったらスプラッタだな。
「逆に言えば、
「目安が分かったのは嬉しいですね。これで俺達の方向性もある程度見えました」
「取り敢えずヘルメット込みでライダースーツを購入だな。ついでにダイビングスーツも取り寄せるか」
「全身保護は必須みたいですから助かります」
実験棟の班長とその様な言葉を交わし、一旦派出所を出る。ガイアグループに研究用のスーツを発注する為だ。
本当に今更な話だが、奥州派出所と神社は別の場所にある。とは言っても、歩いてすぐの場所にあるので余り関係無いが。
帰宅途中にエメマンを買っていると、異界の開いた霊的振動を感知した。場所は──ここから西。駒ヶ岳辺りか。
スマホを取り出して岩手のグループに駒ヶ岳付近に異界が開いた事を通達。手の空いてる者の中で最も高レベルの俺達に異界入口に結界杭*3を刺してくる様に頼む。
危険度判定して、依頼書作って、県内の派出所に貼り出して。今日の製造はここまでだな。後は製造班に任せよう。
◇
せっかく異界が開いたので、扶桑ネキ含むレベル五以上の鬼手一族を招集する。ついでに斥候系俺達もだ。
「すでに式神を飛ばして内部の情報は抜いてあるが、良い機会だからお前らにも異界攻略の〝正しいやり方〟を教えておく」
適当な霊符をばら撒き、鳥や犬等の式神を構築。それを異界に放つ。
「まずはガイア連合基準でレベル一の式神を放つ。俺は一人で行っているが、お前らが一人に拘る必要は無い。大切なのはガイア連合の役に立つ事であって、糞拭く紙にもならない〝誇り〟は捨てろ」
名家の中から集められたという優越感で浮かれていたので釘を刺す。斥候系俺達の生温い視線に気付けや。
他にも色々言いたい事はあるが、グッと堪えて続きを口にする。俺達を待たせてるしな。
「こいつらの役目は悪魔の強さの確認だ。時間経過、もしくは悪魔と一戦したら帰って来る様に設定して、帰って来なかったから放つ式神のレベルを上げる。基本はこの繰り返しだ」
この異界の悪魔は一から五程度。主は七だった。だから時間が来ても帰ってこないのは想定通りだ。
「時間だな。帰って来ないって事はここは〝本物*4〟の異界であり、普段お前らが祓ってる瘴気や悪霊とは比べ物にならない存在が居る事になる。……面倒だなって思ったな?その油断を突くのが悪魔だぞ」
視線を向けた先には驚きの表情をした名家の若い奴が。
俺達なら
覚醒したばかりのひよこが力に溺れ、異界の洗礼を受けるのもこの業界だ。とはいえ見捨てるのも忍びない。……仕方ないか。
「本当はもう少し後にするつもりだったが、分かりやすく見せてやる」
霊符を四枚空に投げ、犬型の式神を召喚する。
「コイツらのレベルは五。お前らと同等、もしくは少し弱いくらいだ。それを放つ」
勢い良く異界に飛び込むワンコ達。戻ってきたのは五分後だった。──
「敵が望み通りの出現数になる訳が無いし、お前らは視界の外を知る術も無い。必然的に死角から襲われれば、この式神の様になる。死にたくなかったら覚えておけ」
それだけ言って式神を送還。手を一度叩いて空気を入れ替え、再び鬼手一族と俺達の方へ視線を移す。
「斥候役は敵に見付からずに情報を抜くのが仕事だ。ここは出現数が多いから鍛練に丁度良い。俺達は異界の主までの地図の作成と出現する敵を俺に報告。鬼手一族はこのまま異界に式神を送り込め。──始めろ」
ゾロゾロと異界に消えていく俺達を見送り、座禅を組んで霊符に霊力を込める名家に指導していく。
支部の正式稼働と同時に保険業を始めたいが、まだ時期尚早だな。怪我ばかりされると赤字になるし。
◇
こんだけ頑張って指導してもロバなんだよなぁって思うと、銀時ニキの凄さがよく分かる。