【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
新しく開いた異界は美味くなかったので、受注条件レベル十以上で派出所に回す事にした。
岩手の異界討伐はまず始めに鬼手一族が斥候役として動き、次に採取系【スキル】や式神を持つ俺達が異界の価値を判定、不味かったら戦闘系俺達が異界攻略する流れを作ったので、資源豊富な異界を勝手に攻略される事は余り無い*1。
低位俺達の手に余る様な不味い異界なら高雄ネキを派遣、それでも厳しいなら俺が出張る。将来的には俺の位置が愛宕ネキになる感じだな。
とはいえメシア産『マヨヒガ』を潰した以上、俺が出張る案件が早々起こる筈も無く、俺は装備の作成メインで動いていた。
「〝動力源〟はオカルトメインにしないとヤバイな。俺じゃなかったら死んでたぞ」
「むしろ何で生きてるんですか……」
呆れた顔をする班長に肩を竦めて見せる。
耐久度に関しては、スーツと耐衝熱ジェルの合わせ技で何とか人形が千切れないレベルの耐久力を得る事に成功した。
故に非覚醒者装備の製作は次のステップに進み、山梨の技術であの〝覚醒者専用装備〟を作成。装着してそのまま耐久試験に移行したのだが──
「まさか【フレイ】で爆発するとは」
「熱処理をしていても〝核熱の概念〟には勝てませんでしたね」
「【アギ】でも怪しいぞ。耐熱ジェル入りスーツは素材的に効果あったが、動力源は純機械製だし」
「という事はやはり?」
「装備を最低三十分動かせるエンジン、またはそれに類似するオカルト〝動力源〟の製作だな」
また金が飛ぶ。経理やってる高雄ネキが泣かないと良いが。
「〝貯金箱〟*2だとキツいですよね?」
「将来的に消費はマシになる*3とはいえ、マッカを湯水の如く使う設計だと
「岩手中の俺達に殺されそうだぁ」
「その前に二人に殺されると思うがな」
「確かに」
二人で苦笑いを浮かべた後、大きく溜め息を吐き出す。むしろ山梨は何で純機械製で〝動力源〟を作ったんだ。……もしかして耐久試験してない?
「凄く嫌な予感が頭を過ったんだが?」
「奇遇ですね。自分もです」
考えてみれば、ジュネス建築に駆り出されている製造班に余裕なんてある筈が無い。ロボ部は現行の技術を使ってロボを作ろうとしていて、それを非覚醒者装備にそのまま流用。その結果、〝動力源〟の問題に気付かずに資料を配布した流れな気がする。
「取り敢えず俺は支部長のグループに連絡を回してくる」
「自分達はこの場の後片付けをした後、〝動力源〟の設計に回ります」
「頼んだ」
取り敢えずダイビングスーツ型の耐久服を脱いで体を清める。それから代わりの作務衣を霊符から取り出して着替え、実験棟を後にする。
間に合えば良いんだが。
◇
幸いな事に〝鎧〟を爆破したのは岩手支部だけだった。というか、すでに好き勝手作っていて〝動力源〟すら規格統一じゃ無い事が判明した。
また守れなかった……!*4俺は無力だ……!
しかも山梨の製造班ですら機械派、オカルトでも動けば良い派、半霊半機派で分かれているらしく、非覚醒者装備に使う〝動力源〟の資料を請求したらたくさん来た。可笑しくないか?俺達は何を作っているんだ?
取り敢えずショタオジに連絡すると、こんな返事が返って来た。
『流石俺達』
『おい、笑い声聞こえんぞ』
『いや、だって絶対バラバラになると思ってたもん』
『……は?』
何でもショタオジとしては各支部に作って貰い、良さげな物を手直しして富豪俺達やその社員俺達に使うつもりだったらしい。
つまり、あれか?
『別に真面目に作る必要は無かったと?』
『いや、真面目に作って欲しかったよ?だけど出来るとも思ってなかったかな?』
機械と霊的な物って相性悪いし、と言葉を切るショタオジ。……ほう。
『岩手支部から提出するのはスケベ部の亜種にするわ。一瞬で終わるしな』
『待って。セツニキには富豪俺達からのお願いがあるんだってば!』
『非覚醒者でも雑魚悪魔相手なら耐えられるスーツ作ったからそれで我慢しろや』
『え、待って。マジで?』
『マジだぞ。理論上は極地でも生命活動に影響は無い。身体能力自体には関与しないから、なぶり殺されるだけだけどな』
『データ頂戴?』
溜め息と共にムラサキを呼び出し、執務室(仮)へ。そこで製作工程や実験データの書かれた書類を纏めて封筒に入れて配達を頼む。
『見た目は悪いけど、効果は凄いね』
『元々はスーツと外装の間にジェルを仕込む予定だったんだよ。作る意味が失せたけどな!』
『このまま作っても良いんだよ?』
『それは他の支部に任す』
それだけ言って通話を切る。値段の割に霊装としては最下級だし、生産は中止かねぇ。
────後日、繊維の中にジェルを仕込んだ改良品が、原作再現好きが製作していた〝デモニカ〟のスーツ部分として採用された。完成品は相変わらず非覚醒者には使えない重さの様だが、それを岩手支部と共同で山梨に提出。これで俺の仕事は全部終わったぜ。
◇
悪魔召喚士の修行は簡単な物では無い。俺らや古参修羅勢は定期的に来たレベルカンストの余暇に受けていたが、何人かは半年近く掛かった記憶がある。
まぁ、つまり、だ。
「現段階で愛宕ネキが卒業出来る見込みが無いから、高雄ネキが代わりに富豪俺達と地元説明会に参加宜しく。これ、覚えなきゃいけない資料と答弁のカンペな」
扶桑ネキや名家に根回しを頼んだので、質疑応答すら出来レースだが。最近、ガイア連合を目の敵にしてる一般企業や〝裏〟の奴等が人員を送り込んでくるみたいだが、司会はこちらが手配している。何時までも手を上げ続けるが良い。お前らには質問する権利すら無いぜ。
「それは構いませんが……悪魔召喚士の修行ってそんな厳しいんですか?」
「ただ召喚するだけなら手軽なんだよ。ほら、在野にも闇召喚士がたくさん居るだろ?」
「契約を結ぶのが厳しいと?」
「高位悪魔なら別だが、それも基本的に簡単だ」
契約書にサインする、させるだけで済むし。
「では、愛宕は何に引っ掛かってるんです?」
「んー、それ以外の全部?ショタオジとしてはそもそも悪魔召喚士にしたくないから厳しい修行より
悪魔と契約した結果、一時の幸せの代わりに未来永劫苦しみ続ける人間の一生を経験出来る〝アレ〟は、ショタオジが納得出来るまで繰り返されるから中々の地獄を見る。
精神崩壊による逃避は許されないし、ショタオジ立ち会いの元で無ければ悪魔と契約する事が
その後は契約書の作成と悪魔に契約を飲ませる為の実戦を繰り返し、重箱の隅を突く様な方法で希望者を地獄に送り返し、再び心を折りに行く。
それを乗り越えたらおめでとう!君は今日から悪魔召喚士だ!とはならない。
第三の心折りポイントとして、自分の親しい人や愛しい人達が
ここを越えたらついに悪魔召喚士だ!とは
第四の心折りポイントとして古今東西の言語で書かれた契約書に加え、書く直前で文字が切り替わる詐欺紛いな手法、契約書に全く見えないのに持った瞬間、契約
例えば、わん!という文字が書かれた契約書があるとする。普通に読めば犬の鳴き声かな?という文だが、犬悪魔言語に直すと『魂の権利を一切合切放棄して、私は貴方に従属します』となったりする。流石にこれは極端な例だが
ここを越えれば、後は悪魔合体やスキル入れ替え等の実戦的な訓練になるのだが、ここまで辿り着けた俺達は本当に僅か。
力や知識を追い求める秋雨ニキはともかく、エロ一点突破で辿り着けたミナミィネキの可笑しさが分かるだろう?
「岩手を守る為とはいえそんな地獄に愛宕を送り込んで、ついでに名家の俺達も投げ込むつもりなんですか?」
「他人の命を背負うなら必要な事だ。名家の連中に関しては
「……それって名家の俺達は関係無いのでは?」
「家を捨ててない以上、同罪だろ。俺達や身近な家族だけなら、山梨に行けば終末後も安全なんだから」
山梨はいいぞぅ!式神遠征させてるだけで生きていけるし、食べ物も美味い!これは血の繋がりなんて捨てて山梨に行くしか無いな!……ってならないのが、人間の面白さだ。
「ま、愛宕ネキなら時間は掛かっても越えられるだろう。岩手を守りたいって意思は本物っぽいしな」
「性格変わってたりしません?」
「ちょっと俺とのLILINに依存気味なのが気になるが、まぁ、大丈夫だろ」
「見せて貰っても?」
「構わないぞ」
ロックを解除してLILINを開き、愛宕ネキとのトークを開いてスマホを渡す。
「これ、手遅れでは?愛宕が病んでる気がするんですけど!?」
「大丈夫だろ。前世で同じぐらいの奴は一杯居たし」
「セツニキさん、前世の死因って痴情のもつれだったりしません?」
「残念ながら老衰だな。というかな?メンタルケア*5の仕事をしてる人間ならこれぐらい依存される事は結構あるんだよ。それを上手く持ち直させるまでが仕事だからな。この程度なら気にしたこと無いぞ」
「ちなみにセツニキさんが不味いと思った方はどんな感じです?」
「いきなり飼って欲しいと言って全裸で犬のフリを始めた奴が居たな。流石に立て直すのに苦労したぜ」
銀時ニキは全裸土下座に足舐めだから、それの下位互換だな。
「……愛宕の立て直しは絶対にお願いしますね。私は親友がそんな姿になる所を見たくないです」
「安心しろって。もしそんな事態になっても今世は裏技が使えるから楽に治せるぞ」
「絶対ですからね!!」
心配性だなぁ、高雄ネキは。
◇
でも、悪魔召喚士になる事を諦めさせる為にこれぐらいやると思ってる。