【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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美味しい話には裏があります。


ジュネス完成!愛宕ネキの帰還と密談。

 

 

 あれから幾つ月日を越えただろうか。ジュネスが完成して岩手支部として稼働し始め、待ち望んでいた愛宕ネキが岩手に帰還した。

 

 

「地獄を見たわ……ううん、地獄なんて言葉すら生温かったわ」

 

「お疲れ様。これは俺の奢りだから飲むと良い」

 

「くっ……!こんな安物でも嬉しいと思ってしまう自分が憎い!」

 

 

 手渡したエメマンを握り締めて歯噛みする愛宕ネキに生温い目を向ける。

 

 

「愛宕。私は貴女がヤンデレに成ってなくて良かったわ」

 

「修行を乗り越える為の心の支えにしていたのは事実よ。でも、その後の〝治療〟が、ね?」

 

「……セツニキさん。何やったんですか?」

 

「俺に持ってた愛情を消して、憎しみを受け止めただけだぞ」

 

 

 知らぬ間にレベル三十に到達していた愛宕ネキの模擬戦(憎しみ)は中々激しかった。最終的に愛宕ネキの足腰が使い物にならなくなるまで徹底的にやった。

 

 身体のありとあらゆる場所から体液*1を流す姿は中々扇情的だったなぁ。

 

 

「えっと、それじゃ愛宕はセツニキさんへの想いはもう無いの?」

 

「片想いに気付けない女の子って感じかしらね?心や意識には無いんだけど、身体は覚えてるって感じ?」

 

「それなら距離を取れば自然解消に向かうな。後遺症も無さそうだし、俺は引き継ぎして帰るぜ」

 

 

 山梨と行ったり来たりの生活はそれなりに楽しかったが、式神と旅行もしたい。異界に潜りたいし、異界に潜りたい。それと異界に行きたいし、後は異界に行きたいな。

 

 

「……サッパリし過ぎじゃない?」

 

「石長比売の分霊*2とメルコム*3の引き継ぎは終わった。周辺の瘴気を神社の裏山に固定した*4『マヨヒガ』に流れる様にして、出現する悪魔の強さを二十まで拡張したし、山梨からの命令だった非覚醒者向け装備の依頼も達成した。他に俺がやる事無くないか?」

 

「それはそうだけど……」

 

「愛着とか無いんですか?」

 

「何度も言ってるが、俺のメインは山梨だ。確かに他の支部より気にする程度の感情はあるが、山梨を越える程では無いな」

 

 

 というか良い加減、下層試験を受けたい。難関らしいが、突破した修羅勢が楽しそうで、ハブられてる気分になる。

 

 

「もし困った事があったら助けてくれる?」

 

「山梨が安泰だったらな──っと、そうだ。アメリカがキナ臭くなってきたら『マヨヒガ』との繋がりを切りに来るから、異界家電頼りの財政は危ないぞ」

 

「えっ?せっかく稼げるのに?」

 

「『マヨヒガ』経由で大天使送り込まれても良いなら放置するが?」

 

『『お願いします!』』

 

 

 分かれば良い。

 

 

「ま、異界家電から技術を抜けた分だけ他の支部よりマシだし、その技術を使って対応家電を作る分には問題無いからな。ゆっくり考えると良い」

 

「あのスーツも名家に高値で売れてるので、財政的には予想以上に早く健全になりそうなのが救いですね」

 

「戻ってきたら支部長としての仕事が大半済んでて、私はちょっと肩透かし気味だけどね」

 

「悪魔召喚士修行が最後の苦労だと言っただろ?」

 

「そうね。そう言ってたわね」

 

 

 ちなみに件のスーツだが、山梨のスケベ部&ミナミィネキがさらに改良を重ね、対魔忍スーツ並に薄くなった上位互換が新しく生まれた。

 

 その生産拠点とした指名された岩手製造班は、苦笑いしながらぴっちりスーツの生産に勤しんでいる。

 

 やはりエロは偉大だな。金になるし、技術も発展する。戦争と違って命の数も減らないし、むしろ増える事の方が多い。

 

 

「何時帰るか決まっているの?時間があるようならお別れ会でも開くんだけど」

 

「書類仕事の引き継ぎを終えて、愛宕ネキが大丈夫そうならすぐの予定だ。お別れ会はいらん。今生の別れって訳でも無いからな」

 

「ドライねぇ」

 

「転移で何時でも来れるから、むしろお別れ会なんて開かれた方が来にくくなるぞ?」

 

「それもそっか」

 

 

 地方から東京に出ていく時、派手に見送られて帰りづらくなると良く聞いた。本質的にはそれと同じだな。

 

 それから暫く雑談していると、スマホのアラームが鳴った。

 

 

「休憩は終わりだな。午後も頑張るか」

 

『『おー』』

 

 

 気の抜けた返事と右手を上げた二人の胸がぽよんと揺れる。やはり大きいは正義だな。大は小を兼ねるが、小は大を兼ねられない事が証明されたぜ。

 

 

 

 

──同日深夜、盛岡市。

 

 

「つー訳で、俺は一週間後ぐらいに山梨へ帰る」

 

「この面子で開かれる会合も今日までか。寂しくなるな」

 

「ま、後は儂ら老いぼれの仕事じゃの。ここまで御膳立てして貰ったのだ。上手くやるさ」

 

「嬢ちゃん達には終末後も綺麗なままで居て欲しいからな」

 

「違いない」

 

 

 優しい色合いの光がグラスに入ったウィスキーを甘く照らす。からんと氷が転がる音を楽しんだ後、軽く喉を潤した。……良い味だ。

 

 

「非覚醒者用の装備はこれから先も開発が続けられると思う。終末後の事を考えれば、拠点防衛の為に必須だろうしな」

 

「ならば導入するタイミングの見極めが大事か。後手に回り、数が揃わないのでは意味が無い」

 

「中に入れる兵士はどうする?」

 

「ガイア連合の警備部門に投げ入れるしかなかろ。出来れば警察や自衛隊とも連携したいが……」

 

「治安が良くなったとはいえ警察の仕事は無くなってはおらん。それに自衛隊に近付き過ぎるのも問題じゃろ」

 

 

 老人達の会議を眺めながら煙草に火を着ける。吐き出した煙で青眼の白龍を作って遊んでいると、視線が何故か集まった。

 

 

「セツニキ。お主、多芸過ぎじゃろ」

 

「今度は真紅眼の黒龍か。器用だな」

 

「昔はここまでの物は作れなかったがな。前世で取った杵柄って奴だ」

 

「他には何が出来る?」

 

「んー……」

 

 

 再び煙草を吸って、大きく吐き出した煙を操る。

 

 

「おお!ブラマジガール!」

 

「霊力操作か?」

 

「一度吸って体内に取り込んだ煙を吐き出してるからな。必然的に俺の霊力も混ざるんだよ」

 

 

 故に煙々羅を呼ぶための触媒に使える訳だが。

 

 

「私も老後の趣味は術式研究にするかねぇ。セツニキを見てると楽しそうで困る」

 

「それは良い。『恐山』の若返りの水や式神移植もあるから肉体的な問題は無いに等しい。俺達で集まれば、面白い物も出来るだろうしな」

 

「儂はやはりロボを作りたいの。今は無理じゃが、愛宕ネキ達に任せられる様になったら作ってみたい物がある」

 

「やりたい事は全部やれば良いだろ。その為に頑張ってる訳だしな」

 

『『『違いない!』』』

 

 

 吸い終わった煙草を消し、ウィスキーで渇いた喉を潤した後、摘まみとして用意された乾物を口に含む。

 

 真の酒飲みはお摘まみにも煩いが、酔う為に飲む俺達*5には縁遠い話だ。好きな物を食べ、飲み、遊ぶだけの仕事はしてきたつもりだ。誰にも文句は言わせない。

 

 

「そういえば岩手に居た暴力団はどうした?」

 

「〝実験〟に使った。お陰で欲しいデータは集まったから俺らと遊ぶ予定だ」

 

「前世だと彼らは恐怖の対象だったんだがな。今ではキーキー吠える不細工な猿にしか思えない」

 

「闇召喚士達も同じだな。実力差が分からぬ事が哀れよ」

 

「油断するなよ。俺達は所詮運命に〝愛されなかった〟人間だ。何時ムービーシーンで殺されるモブになっても可笑しくない」

 

「分かっておる。故に儂らは今でも山梨の異界に潜っておるのだから」

 

「……そうだな。口癖みたいなもんだ。許せ」

 

 

 ウィスキーを飲み干して新しくグラスに注ぐ。俺達の中には霊格が上がるに連れて顕著になる、人間を辞めていく感覚を忌避する者達が居る。

 

 俺に言わせれば無駄な心配だ。ショタオジが人間である以上、俺達程度の霊格が与える影響なんて微々たるもんで、大半は本人の自覚してなかった気質だろう。

 

 その心配をするのは、ショタオジ以上の霊格になってからが本番だ。それまでの心配は杞憂に過ぎない。

 

 見上げられる山があるのは分かりやすくて良いな。目指すべき場所も、人間の限界も見えるから、踏み込む事を躊躇う必要が無い。

 

 気分を入れ替える為に新しい煙草に火を着け、煙を吐き出す。期待した様な視線を向けられたので、煙を少し弄り、遊ぶ。

 

 

「Emヒグルミか。やってない人間には分からない凶悪なカードだな」

 

「ミラー以外は相手にならないんだったか?」

 

「最速で禁止カードになった事の方が有名じゃないか?」

 

 

 前世の話題でワイワイ盛り上がり、その間に今後の方針を話し合い、また下らない事で盛り上がる。

 

 最終的にボトルを一人二本空けた段階でお開きだ。適当に【浄化】を放ち、匂いを消す。

 

 

「やはり終末後に酔う為にも酒作りは必須か」

 

「設備投資自体は構わないが、作り手がおらんのが問題よの」

 

「【酒造】スキルを式神に突っ込むにしても、儂らが側に張り付けん」

 

「名家に仕事として割り振るしか無いだろ。ただ、名家の俺達は愛宕ネキと入れ替わりで修行に行ったから、音頭取れる奴が居ないのが問題だな」

 

「むぅ、今すぐは厳しいか」

 

「セツニキは終末後の嗜好品についてはどうするつもりなのだ?」

 

「星祭で酒造の神でもあるサクヤが酒を作ってるし、タバコの栽培はアイがタバコ神社の主祭神である宇迦之御魂神(ウカノミタマノオオカミ)の分霊スライム入りだからな。個人で楽しむ分は確保してるぞ」

 

「相変わらず卒がない……」

 

「本当はブラジルのカンドンブレ*6に豊穣の神が居たら珈琲豆の神として引っ張りたかったんだがな。俺の浅い知識じゃ無理だった。ベトナムは大乗仏教だし、コロンビアは主にローマカトリックだから論外、インドネシアは外部の人間に知る手段が殆んど無い。で、諦めた」

 

「日本には居ないのか?」

 

「日本一有名な学問の神様だぞ☆」

 

「……わお」

 

 

 流石に嗜好品の為に危ない橋は渡れない。そもそもショタオジから許可が降りなさそうだし。

 

 

「ま、コツコツやっていくしか無いだろ。終末後の快適な未来の為にな」

 

「やれやれ。まだまだ老体を扱き使わねばならんか」

 

「若返る訳にもいかんしのぅ」

 

「動ける内は大丈夫だ。動けなくなってからが老人の本番だぞ」

 

「……実感が籠ってるな」

 

「前世は老人だったからな」

 

 

 その言葉を最後にムラサキ達を呼び、大人達を自宅へ送る。最後にムラサキに【転移】をして貰って自室へ。

 

 適当にシャワーを浴びてそのまま布団へ。期待してる様だが、まだ焦らす。では、お休みなさい。

 

 

*1
血液を含む

*2
現在、現世を満喫中。現世のルールに無知なので基本的に地脈を管理しながら愛宕ネキの神社で対戦ゲーを遊んでいる。

*3
コツコツ地獄の給与係として数字の強さを見せ付け、無事に契約続行を勝ち取った。給料は岩手支部の他の事務方と同じぐらいだが、本人としても本霊としても勝ち組になりそうなガイア連合と繋がりが出来たので満足。

*4
石長比売に月額を支払う代わりに固定する様に契約を交わした。愛宕ネキの悪魔召喚士としての初仕事はコレ

*5
覚醒者なので酔えない

*6
ブラジルの民間信仰。




欲に溺れるとクトゥルフが流れ込むトラップだったりしました。


追記

感想貰ったのでここにも。

煙草の神は古事記だとノヅチノカミなのは知ってるんですが、あの神って独神(両性)なので、宇迦之御魂神の豊穣+スキルカード+アイ自身の権能で強引に作ってます。

元々は俺達運搬用の一反木綿なので、警戒心に潜り込む為に女性の色を濃くする為ですね。

カオ転三次書いてると一般性癖を忘れる……!
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