【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
考えうるありとあらゆる準備を済ませ、目の前の〝神に等しい人間〟に挑む。用意した霊符は全てオリジナル。
装備は中層で手に入るレア素材を含む全てを使い、古参製造班に作って貰った物*1だ。
投擲用のダーツ、カードも全て古参製造班製で、額としては高級式神何体分になるのだろうな。それを全て捨てるつもりで挑む。
山梨支部に張り出されている常設依頼。
──決闘!神主の試練!
自惚れを捨てるなら、これ以上の物は他に無い。
「いや~嬉しいね。最近は挑んでくれる人が居なくて暇してたんだ♪」
「俺も挑むなら勝てる算段が付いてからの予定だったんだがな?『マヨヒガ』で
トランプをカッターしながら答える。……『JOKER』か。当然だな。むしろこれ以外が出た方が困る。
「へぇ?」
「慢心するのは良くないよな、やっぱ。魂が錆び付く気がするわ」
続いてスライドシャッフル、ファローシャッフル、リフルシャッフル。……やっぱり『JOKER』だな。
「その為に挑むの?負けると分かっているのに?」
「那由多の果てだとしても、勝率があるなら賭けるのが────賭博師だぜ?」
「ふーん?それなら俺は勝率なんて存在しないと言うことを教えてあげないとね?」
構え一つ取らないショタオジを見て、舐めてるのかとキレられる奴は何人居るのだろうか。
もし居るとしたら、ソイツはかなりの大物だろう。ただ、対峙するだけで、龍に踏み潰される蟻の様な気持ちになる霊圧。呼吸をするだけで感じる、魂ごと焼ける痛み。
戦う前から敗北を受け入れそうになる魂を否定し、指にトランプを挟む。
大きく息を吸って、吐き出す。意識を切り替える。
「──行くぞ」
「何時でも」
その言葉を合図に全てのトランプを瞬時に投擲、一反木綿に
印を結んでトランプに仕込んだ術式を解放。発動する術式は──【浄化】だ。
「わお。レベル五十程度じゃ祓えるのか。それなら次だよ」
超高速域でも普通に聞こえるショタオジの言葉を聞き流しながら、取り出すのはダーツ。それをショタオジ目掛けて投擲。──が、防がれる。
現れたのは【フウキ】や【スイキ】等のショタオジの悪行罰示式神達。まだ何とかなる範囲だ。
【デカジャ】と【貫通】を付与したダーツを投げ、さらに地を這う様に〝黒〟のダーツを投擲する。
ダーツを危険と感じないのか、手で凪ぎ払い──バフを剥がした後に
その直後、乱心したかの様に鬼達が仲間割れを始めた。その隙を突いてさらに距離を詰める。
「へぇ【泣いた赤鬼】か。面白い術式だね」
一瞬で看破するの辞めろ。どんだけ術式隠蔽頑張ったと思ってるんだ。
「じゃ、次はコイツだ」
「呼ばれて飛び出てにゃにゃにゃにゃ~ん♪」
もはや俺の手に負えない領域に来たな。だが〝当たり〟を引いた。
袖を軽く振って霊符を放つ。容赦なく切り捨てられたそれは、周囲に
「この程度で私が──にゃん?」
かくり、と力の抜けたネコマタを蹴り飛ばしてさらに進む。霊符に仕込んだのは
全てがお前の為だけに作られた
ここからは小技を使っている暇が無い。なので、今のうちに準備を開始する。
袖から取り出したアイオライト*2、アクアマリン*3、インペリアルトパーズ*4、スフェーン*5、スピネル*6、ハーキマークォーツ*7等を纏めて砕き、バフを掛ける。
「それはちょっと厄介かな」
面倒臭さそうにたぶん【デカジャ】と思われる霊符をショタオジが投擲。
スフェーンの石言葉は文字通りの意味だ。流石に神ならぬ身において無限では無いし、ショタオジの雑な【デカジャ】で九割ぐらい効果時間を消されたが、それでも一発ブン殴るだけの時間は保つ。
「ん~来い。【オンギョウキ】」
「────ここに」
もはや何時現れたのかすら分からぬ速度で召喚されたオンギョウキが立ち塞がる。俺が気付いた時にはすでに
「……?手応えが無い?」
「…………へぇ、面白いね」
俺の身体が吹き飛び、辺りに【神変奇特酒】を撒き散らす。
「これは……!」
「【アギ】」
聞こえてきたのは火炎属性の低位魔法。だがショタオジの得意属性は伊達では無く、太陽その物が飛んできて、周囲に撒いた【神変奇特酒】を気化を越え、蒸発を越え、
その隙を突いて前へ進む。俺が耐えられた種は〝愛宕式〟の鎮火術式を億枚多重起動したお陰だ。だが直ぐに背後からオンギョウキが迫り、俺が百人単位で消し飛びそうな一撃を放った。
「ぬっ──!?」
「ぐふっ!?」
「残念。後一歩だったね」
正面に突如して出現した人型の炎。S.O.Fだと笑いながら名付けていたそれが、俺を焼き付くす。──直前、
「死ねやショタオジィィィィィッ!!」
「わお」
覚えてる人間は少ないかも知れないが、
今回はそれを利用して、S.O.Fの操作権を刹那に近い時間だが奪った。そして即座に暴走させる。
異界が崩壊しない事が不思議な程の大爆発が起こり、熱波が存在する全てを溶かし尽くす。
俺の意識が消える直前、聞こえてきたのは──
「今のは危なかったよ」
──ここまでやって届かなかった頂きからの声だった。
◇
「お疲れ様~いや~久々に楽しかった!」
蘇生され、全裸で蘇った俺の前には良い笑顔をしたショタオジが。取り敢えず待機させていたムラサキから下着と作務衣を受け取り、着替えながら返事を返す。
「殺れるとは思ってなかったが、まさか服を汚す事すら出来ないとはな」
「結構危なかったよ?最後の一撃を当てる為に仕込まれていた【緊縛】の霊符には気付かなかったし」
「レジストされたけどな」
「流石に俺には効かなかったけど、【フウキ】ぐらいになら通ったでしょ。で、あれってどうやったの?直前までマジで気付かなかったんだけど?」
「異界の座標、毎回同じところに作るの辞めた方が良いぞ?お陰で仕込み放題だった」
「……まさか
「それだけで気付くの辞めろや」
俺が仕込んだのはアトロポス*8とウルズ*9の術式を〝一族〟の形式に纏めた物。
効果としては過去に発動した術式を同じ座標に【必中】込みで発動させる術となっている。ポケモンで例えるなら〝みらいよち〟だな。
「オンギョウキを避けた術式は?」
「そっちはアイオライトの宝石魔術だな。効果としては目標に向かって正しく前進してる限り、遮る物を全て無視だ。ただこれ、想像以上に糞でな?ハッキリ言って一発芸だぞ」
「というと?」
「走ってる時にほんの少しでもズレたら効果を失う。真っ直ぐ走る努力を積み重ね無いと使えないから、純魔導師だと使えない術式だ」
「オンギョウキの一撃を無視出来る程の無敵性なのに?」
「実はあの一撃で効果時間削り切られてて、二度目を撃たれたら避けられなかった」
だから【神変奇特酒】を撒いて、ほんの僅かな時間でも稼ぐ為に必死だった。
「厄介な術式だと思うけどなぁ。あ、【泣いた赤鬼】も見事だったよ?対鬼の術式は多いけど、童話のは初めて見たし」
「むしろ何でアレ見破れたんだよ。隠蔽の為にどれだけ俺が苦労したと……!」
月に闇に姿隠しに神隠し。古今東西の術式集めて隠蔽した物を全て【看破】された俺のこの怒りは何処にぶつければ良いんだ。
「まぁまぁ。あ、そういやクリアしたら何か欲しい物でもあったの?電話くれれば相手したのに依頼で来たから驚いたよ」
「いや?本当に慢心を消す為に受けただけだ。それに依頼ならショタオジを長時間拘束しても問題無いしな」
拘束したいなら俺と同じ様に依頼を受ければ良いだけだ。鍛え方が足りないと地獄を見るだろうが。
「律儀だねぇ」
「俺は気にしないが、セリス達の機嫌が悪くなるんだよ」
自壊覚悟で俺達を襲いそうなぐらいに。
「あ~成る程。それは確かに困るね」
「ま、だから依頼という形を取った訳だ。さて、着替え終わったし、俺は帰る。次に会うのは──下層試験の時か?」
「そういえばまだだったんだっけ?」
「岩手と山梨を往復してたからな」
「資格、渡しても良いよ?」
ショタオジのその言葉に首を横に振る。
「特別扱いは周りが煩い。正面から越えてやるさ」
「そっか。それじゃ依頼が来たら気合い入れて作らないとね」
それは楽しみだ。本当に。
◇
今のは危なかったよ(無慈悲)