平成剣客浪漫譚~剣術少女が未来を憂う   作:千里三月記

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初めて小説を書きます。
誤字、脱字、言い回しの間違い、感想等お待ちしております。

原作るろうに剣心としましたが、ずっと現代の話でタイムスリップとかもありません。

るろうに剣心を求めて来られた方には申し訳ございません。



真剣勝負

 道場には現在、3人の人間がいる。

親子だろうか?2m近い山のような爺さんと、そっくりな体格をした坊主頭の青年、そしてその青年と向かい合うようにして立つ、ポニーテールのチビ。

 

 

 

 

 結局のところ、刃が届かなければ、この勝負には勝てない。お互い構える得物は真剣。いつもなら、とりあえず飛び込んで相手の初動をみてから合わせて打つところなんだけれども、真剣であれば簡単にはいかない。リーチで劣る私は、どうしたって相手だけが打ち込める距離を越えなければ刃は届かない。

 

(どうする?仕掛けは完了。あとはタイミング。)

 

 相手を観察。

190cm近い身長。

私の胴まわりくらいはあるだろう太い腕。

いや、私のウェストが細いんだ。あんなもん、なんてことないね。

相手に呑まれそうな気持ちを奮い立たせる。

半眼で、私を突き抜けて遥か遠くを見つめる眼からも、私の眉間に向けられ、微動だにしない剣先からも、如何なる兆候も読み取れない。

 

(行くしかない、今しかない。) 

「しゃっ!」

と気合を入れると、反応して相手の体が微かに強張る。すぐには行かない。体が強張る瞬間、ハッと吐かれる息、それが反転して吸い込まれる、その瞬間、そう、

 

今! 

 

弾かれたように間境いを越え、飛び込む。

 

同時に横薙ぎに打ちこまれる、暴風のような相手の一撃。

 

飛び込みながら放った私の袈裟斬りは、相手にかすることもない。一歩で踏み込むには遠すぎる距離。私の刀の先が、木の床に食い込む。

 

『含み足』

 

袴に隠れた後ろ足を、それと気づかれないように前足の踵に近付けていた私の飛び込みは、相手の目算より遠くへ私の体を運んでくれた。そのまま床に刺さった刀を捨て、相手の横を駆け抜ける。

 

 

相手は、私が横をすり抜けて行ったことに反応したのか、それとも、私が床に突き立てた刀の刃が、ご丁寧にも自分の両手首の方向に向いていることに気づいたのか、

 

「ぐっ」

 

と呻いて刀を床に打ちつけて減速する。

 

 

正解、あのまま打ちこんでたら、両手首がサヨナラするところだからね。

だけれども、凄まじい力で撃ちこまれた刀は、半分ほどが床に埋まっている。

 

すり抜け、相手のほうに向きなおった私は、

 

踏み込みざま、

 

床に刺さった自分の刀を引き抜き、

 

まだ刀を床から抜こうとしている相手の無防備な後頭部に向かって、

 

 

「延髄、いただきぐあらばっ!???」

 

横あいからの突然の衝撃に、壁際まで吹っ飛ばされる。

 

「ちィ!!!」 

 

咄嗟に刀を杖に立ち上がろうとした私が認識するよりも早く、目の前にはおじいちゃんの顔。眉間に喰らわせられるでこぴん。

 

「ちィ!!っじゃないわああああ!!!」

 

怒号とともに喰らわせられる2発目。

 

同じ技を喰らうかと、超反応でかわす私の後頭部に、強烈な勢いで壁がぶつかる。

 

悶絶する私に、

 

「お前は兄を殺す気か?」

 

と無情な3発目が飛んできた。

 

 

~~~~~~~~~~~

 眼下に広がる一面の雲、雲、雲。そして、その切れ目から覗く太陽の光を反射し、輝く都会の街並み。あまりの威容に、千里は目を見開いた。

 

(・・・・すごい・・・・。)

 

―TVのなかではよく見ていたが、あの世界が実際に目の前にある。ひょっとして、ここもTVのなかの世界で、実はどこかからか、カメラで撮っているのではないだろうか?まわりの乗客たちも何やら芝居くさいし、そういえば、CAもまるでドラマの登場人物のような美人さんだ。もし、ドラマだとするなら、私の役はなんだろう?

 

 機内アナウンスが流れる。間もなく到着します。シートベルトを締めてください。指示に従う。そしてまた、窓の外をみる。

飛行機は、白い雲を突き抜け、空港に向けて降下していく。雲を抜け、東京の全容が明らかになる。

 

(へえ、東京にも田んぼってあるんだ?)

 

 着陸に向け、速度を落としていく飛行機。体に掛るGに席に抑えつけられながら、千里は、先日、壁にぶつけた頭の痛みを感じていた。

 

―昨日の勝利は、人類の歴史にも、科学の発展にも、世界平和にも、何の意味もない出来事ではあるが、私にとってはとても大きな勝利である。

 あの、兄から勝利したのだ。初めてのことだ。私が都会の高校に行くので、最後の勝負に手を抜いたのではないか?兄に確認しようかとも思ったが、あの落ち込みようは、演技ではないだろう。そもそも、あの不器用な兄にそんな器用なことができるとも思えない。あのあと、兄の首を本気で斬り落そうとしていたことについて、おじいちゃんから徹底的に叱責された。どうせ、これからこの大都会で、真剣を持つ機会なんてまずないのだし、最後なのだから少しくらい甘く見て欲しい、と、その時は思ったが、現在、あの勝負を思い出してみると手が震える。震える手を見つめながら考える。

 もし、祖父に止められずに、あの剣を振り下ろしていたらどうだろう?ひょっとして兄は反応して、逆に私が斬り殺されていたのではないか?一歩間違って、いや、殺すつもりで斬りかかったのだ。私は兄を斬り殺すところだった。そう、殺そうと剣を振るったのである。

 

 自分のやろうとしたことの重大さに自分の両肩を抱いてガタガタ震える。もう二度と真剣勝負は御免だ。

そう思っているのに、恐ろしさと同時に、下腹部に心地よい熱を感じたこと、自分の口角が吊りあがり、笑みの形になっていたことはどういうことだろうか?

 

 不意に来た着陸の衝撃に、思わず、「あっ」と変な声が漏れてしまう。

 

 

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