平成剣客浪漫譚~剣術少女が未来を憂う   作:千里三月記

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自己紹介

 「おい、直樹、入学式、見に行ったか?」

 

 

 

 呼ばれた彼、高鍋直樹(たかなべなおき)は、友人の声に迷惑そうに振り向く。

 

「なんだ?すげえ美人でもいたのかよ?」

 

おおそうだすんげえ美人でよお、と続く友人の声。進の女好きは小学生の時から変わらない。なんだよ、俺がそういうのに興味ねえって知ってんだろ?と、返す俺に、

 

「だけどよお、お前と同じクラスなんだよ。」

 

まあ、お前は部活に命掛けてっからなー、あと、翔子ちゃんもいるし、と、このバカ

 

「ば、ばかかおめえ、あいつとはそんなんじゃねえし!!!!」

 

即座に反論する俺に、そのまま追い越し、手をひらひらさせながらあいつは言った。

 

「ま、顔真っ赤にしながら言っても説得力ねーよー。まあ、できればその子と仲良くしといてよ。俺のためにね。」

 

そのあと、その女の名前を告げる友人。まあ、あいつが言うんなら相当なんだろ・・・興味はないと言いはしたが、流石に少しは興味を覚えた。

 

「ま、期待せずに確かめてやるよ。」

 

去って行く友人の背中に、独り言のように呟く。

 

 

 

 

 この私立試衛館高校では、中高一貫教育が採られていて、基本的に皆中学から一緒なため、大体顔なじみだ。だから、この最初の自己紹介は主に年間30名程度、1クラスに2~3名程度入ってくる高校入学組のために行われる。

 

 そいつは、塚山千里(つかやまちさと)、と名前を言った。

 

 目の大きさから考えて、脳みそ入るスペースあんのか?って心配になるくらいパッチリした目に、スッとした鼻、小さな唇。なるほど、進があんだけ言うわけだ。残念ながら一番前、ど真ん中、教卓と向かい合う位置に席が決まった俺は、腕組みしながらそいつを観察する。まあ、他の男子のガン見に照れて、俯いてもじもじしながら目を左右に高速で動かしているそいつは、身長が低い(150cmくらい?)こともあってか、可愛いとか可愛くないとかいう以前に、小動物みたいだ。と、いう印象だ。

 

 ちなみに、そいつのまつ毛が長すぎて、多分一番前じゃないと目線の動きまでは追えないだろう。

 そいつは、趣味は読書、映画鑑賞と無難なことを言った後に、入る部活は剣道だ、と言ってきた。 教室は、おおっ、という歓声と、ああ、という悲しげな声が入り混じった反応だ。

 基本私立で、スポーツ組と勉強組で別れたクラス分けをされるし、他の級友のメンツを見てもここは明らかにスポーツ組、しかも格闘関係が多いから、あり得ないことじゃない。

ああ、と悲しげな声を出した連中は、表向き学力差別はしてませんよ、と、この組にさせられた勉強組のものだろう。

 

 しかし、このなりでスポーツ推薦なのかね?人は見掛けによらねえなあ、と、自分のこと(167cm)も省みず独りごちる。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 現在、塚山千里は女子に囲まれている。

 

わあ、すごい、まつ毛長いねえ、お肌すべすべー、マスカラ?化粧水何使ってんの?

 

 友人には悪いが、俺はあの中に入って話しかける度胸もスキルもねえよ。

 

自己紹介も終わった休み時間、俺は塚山を観察していた。塚山の自己紹介のあと、なか・・・・なんとかってもう一人の高校編入組が自己紹介していたが、誰も聞いちゃいなかった。

 

 女子は、相変わらず塚山を囲んで質問攻めしている。その質問に相変わらず、俯いてごにょごにょ答える塚山。

一人の女子が、塚山の髪を触りながらこう言った。

 

「ほんと、髪(さらさらで)いいよねえ?」

 

 

「でしょ!?サムライみたいでかっこいいでしょ!!」

 

 

 え?

 

「え?」

 

「え?」

 

 

 やっと私に答えられる質問が来た、とばかりに顔を上げ、屹然と、でかい目をキラキラさせながら食らいついた塚山に、固まる女子達。周りの反応を見て、やべえ、なんかやらかしちまったのか?とびっくりした顔をした塚山。

 

訪れる沈黙に、

 

―今しかねえ。

 

「そうそう、ちょんまげみたいでかっこい」急に真っ暗になる視界。

 

 

「もお、あんまり女の子をじろじろみちゃ失礼だよ?」

 

と後ろから掛る声。

 

「おい、やめろよ翔子。」

 

「あれ、なんでわかったの?」

 

後ろから覆いかぶされた体を振り払う。

 

「声でわかるだろがよ?あと、こんなことするのおまえぐらいしかいねえよ!!」

(あと、後頭部に当たってた柔らかいものの感触でもな。)

 

後ろを振り向いて抗議する俺。何が可笑しいのか、へへへ、と笑いながら俯いた翔子。ほっといて正面を見ると、

 

場の注目が俺に集まっていた。

 

 呆然とこっちを見る女子、ちっ、と舌打つ男子。人前でイチャイチャしてんじゃねえよ、という目が痛い。

 塚山はでかい目をさらに見開いてびっくりした顔で固まっている。ほんとにこいつ目がでけえな。

 

場の空気に耐えられないと、直樹は即座に話題を元に戻す。

 

「そ、その髪型、不逞浪人みたいでまじかっけえよな!!」

 

「でしょ~~~。」

 

見開いた目をキュッと細めてニィっと笑った塚山。

 

 あまりの眩しさに場が固まった。多分、見てた男子の何人かはこれで塚山に惚れただろ。俺も正直、翔子が次をきりだしてくれなかったら危なかった。

 

「ろ、ろうに?えっと、塚山さんは剣道部行くんだよねえ?」

 

ああ、はい。

 

「私は寺本翔子(てらもとしょうこ)、こっちのちっちゃいのは高鍋直樹。どっちも中学から剣道部なの。」

 

こっちを見やる翔子に、

 

「お、おう、よろしくな、俺、高鍋直樹、でも俺、女子の方は詳しくねえけど、あんた推薦で入るくらいだから結構強いんだろうなあ。」

 

「え?私一般(入試)だよ?」

 

なんとなく差し出した手をガッと掴まれる。

 

握手して分かったことだけど、

 

 

 

 

こいつの手、

 

めちゃくちゃかてえ。

 

 

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