平成剣客浪漫譚~剣術少女が未来を憂う   作:千里三月記

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第三の秘剣

(どうしよ~)

 

 上の空で一礼し、三歩歩いて蹲踞。立ち上がって、「構えてっ」構えて、「始めッ」の合図で竹刀を合わせる。これで安心して考えごとに集中できる。相手の足元を見て、接した竹刀から伝えられる振動に、相手の意図を読みながら、塚山千里は考えていた。

 

(とりあえず、笑って余裕は見せたけど、ナニ?あの必殺技。ヤバくない?マンガ?しかも全勝したし。アレ以上のインパクト・・・飯綱!?) 

 

 大変失礼な話だが、現在の千里に対戦相手のことなど頭にない。ただひたすら、どうすれば直樹の試合のインパクトを越えられるか・・・だけを考えていた。

 

―秘剣『纏飯綱(まといいづな)』、こんなところで使って良いものか?かりにも秘剣、秘密の剣である。しかし、直樹の『突き』のインパクトを越えるには、『纏飯綱(まといいづな)』で相手を叩き斬るくらいしか方法が・・・・。

 

というとき、相手の疾い飛び込み面。咄嗟にかわした千里だったが、思わず癖で足が出た。突進してきた相手の足に出足払い。勢いに乗った相手は、どこをどう間違ったのか、空中で一回転して背中から地面に落ちた。

 

 

 

 

 即座に「待て」が掛って、反則1回。確か反則2回であわせて一本、反則負けだ。とりあえず、コートの隅で、試合再開を待つ千里。立ち上がった相手の意識の確認、防具も外れたところはない。審判に中央に呼ばれて試合再開。

 合図と同時に突進してくる相手。最初に転ばせてしまった遠慮もあって、そのまま受けて、鍔迫り合い。千里の習った『真古流』では、基本鍔迫り合いは避けるものだ。もしなってしまったら、『(やわら)』を使って相手をいなす。投げ飛ばす。関節を決める。指の骨を折る。全部反則だ。一応、『鍔迫り(ツバゼマリ)』と言って、低い重心の移動と、鍛え抜かれた膂力で以って、鍔迫り合いのまま、相手を下に圧し潰す技もあるが、非力な千里には使えない。

 

(ぐっ!調子に乗ってッ)

 

 相手は、背中から落とされてムカついたんだろう。女子のなかでも小柄な千里をグイグイ押してくる。千里はすでに反則1回。場外にでたら、『場外反則1回』で、反則2回、1本負けになってしまう。円を描いて場外線から逃げる千里に、まわり込んで進行方向を塞ぐように相手は押してくる。しかも審判から見えないところで、柄を回して左フックを何発も叩きこんで来る。

最初に反則をしてしまった引け目から、大人しく我慢していた千里だったが、ついに我慢の限界。やってしまった。

 

―秘剣『龍翔閃(りゅうしょうせん)ッ!!!』

 

大きくのけ反り、宙を舞う相手。

 

相手の左フックを避けざま千里は、相手の下に潜り込む。そのまま蛙とびに柄で顎をカチ上げる。ご丁寧に防具の隙間から柄を差し入れ、直接喉に一撃。

 

「ぬえええええええいッ!!!!」

 

 そのまま沈みゆく相手の肩に右袈裟。

―実戦剣術では、丸く硬く、滑りやすい頭蓋骨を狙う面打ちなど行わない。相手の首元、頸動脈から中心に向けて、坊主の着ている袈裟の如く、斬り下ろす。剣術においての基本は『袈裟斬り』なのだ!!

 

ずばしッ!!

 

と、キャッチャーミットにおさまる速球のような音を立てる竹刀。

 

 

「へっ!!調子に乗りやァがって!!そのまま沈んでなあ!!!!」

 

 

思わず素が出てしまった千里。当然反則1回。あわせて一本。

 

 

現代に甦った古流剣術『真古流』

その、表舞台での第一戦は、不名誉な反則負けであった。

 

 

 

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