七人で墓穴掘る(じゅじゅ✕幽白クロス)   作:墓守

14 / 69
ここ好き、感想ありがとうございます。
最後ちょっとブラックになってしまってすみません。


ゲームマスター(塊魂Ver)おまけ

「僕にはわかる。偽装されているけど、生得領域……でかいな」

 

 五条は領域を感じて立ち止まった。

 そして、迷う。

 

 駅に誘い込まれているのかと思ったが、どうやら生得領域の中心は違うからだ。

 

「誘い込むならわかりやすくしろよ……」

 

 それとも、罠が稚拙だったか。

 ひとまず、駅の構内の呪力の気配を優先する。

 

 中に入るという所で、伊地知が追いかけてきた。

 

「五条さん!! 大変です!!!」

「さらに大変な事があるの? まあ言ってみて」

「これは罠です!!」

「逆に罠じゃなきゃなんなんだよ」

「こちらに資料が!!」

「多っ そういうのは事前に用意しろよ」

 

 そうして、ぱらぱらっと資料を見る。

 

「……へぇ」

 

 そして、五条は口角を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相手の作戦が先に丸裸になった事で、効率的に配備できた。

 タッチの差だった。

 恐らく予知の術式を持つだろう少年は、渋谷事変を単身止めようと家を飛び出したらしい。

 呪専に殴り込んできた父親が持ってきてくれたノートに、詳細な時系列の出来事が載っていた。

 虎杖は五条と一緒。向こうの目的が指を飲ませる事なら、一番に守るべきは虎杖。

 伏黒とは離して、真希の未来での犯罪についてはひとまず隠蔽。面談が必要だね。たまには先生らしい事をしないと。とは五条の言葉である。

 そのことにひとまず安堵した。

 

 五条の話によると、認識阻害の効果を持つ生得術式が広がっているらしい。

 それが気にかかると五条は告げていた。

 

 五条は特級呪霊や特級呪詛師にかかりきりである。

 

 故に、少年の保護は七海が行うこととなった。

 今回の事件を明らかにした少年の重要度は高い。

 恐ろしい事に、ノートには特級呪霊の群れを祓う計画もあったようだ。

 どうやら、他の術式を持つ人間と、2人がかりで事態に対処しているらしいが、小学生でそれは無茶が過ぎるというものだ。ものを知らないとは恐ろしい。

 

「しかし、認識阻害ですか……。計画書ですとこの辺りにいるはず。しかし、この辺りの呪霊は少ないですね」

 

 どうやって対処したものか。

 警戒しながら歩く七海は、間違っても油断していなかった。

 ちゃんと周囲を警戒していた。

 でも。それに気づけなかった。

 いきなり気づいて、七海は恐怖に一瞬体を固まらせた。

 その恐怖は自分のものではなく、術式に付与されたものだとすぐに気づいた。

 とにかく逃げたくなるのだ。

 

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。

 

 特徴的な歌を歌いながら、どでかい球を転がす小さな少年。

 

 球は呪霊で出来ており、ピクピクと引っ付いた呪霊が蠢いている。

 

 球の先に、特級呪霊が!

 呪霊達は気付き慌てるが、巨大な球に飲み込まれていく。

 その様子に、七海はあっけに取られた。

 

 ゴロゴロゴロゴロ。

 

「でやっ」

 

 ペカー。

 

 そして、少年が気合一発。呪霊の球は光り輝いて、宇宙へと昇っていく。

 

 そして、少年が自分の背の三分の一ほどの球を出した。

 少年の姿は消えた。

 

 なるほど、認識阻害。もはや少年がどこにいるかもわからない。

 

「球を星にした瞬間に補足するしかないですね……」

 

 これは五条さんに匹敵するかもしれない。もしかしなくても呪霊操術に特攻なのでは?

 

 でもまさか、一晩中探し回る羽目になるとは思わない七海であった。

 

 

 

 明け方。ようやく、菓子パンを食べる子供を見つけた。

 一晩中走り回っていた。恐ろしいガッツである。

 

「ふぅ。……よし。行くか」

 

 立とうとして、膝がガクガクさせている。

 

「……はぁ、はぁ」

 

 必死に立ちあがろうとする少年に、七海は胸を打たれた。

 

「はぁ、はぁ」

 

 涙が滲ませ息を切らせ、汗だくの体を動かそうとする少年に、手を伸ばした。

 

「君はよく頑張りました。後は、大人の私たちに任せてはもらえますか?」

 

 ぼんやりした少年の顔。早く休ませなくては、危ないかもしれない。

 でもまずは自己紹介だ。

 

「……?」

「私は、七海建人と言います。君の名前は?」

「ゲーム、マスター。五条、悟は? 封印、されちゃった? そうなら、俺がやらないと。呪霊操術、俺ならなんとか出来るかもだし」

 

 本名を告げることもせず、真っ白な顔でひたすら立とうとする。

 

「いいえ。連絡が間に合い、五条さんは封印されずに済みました。貴方が通報してくれたんですね。助かりました。貴方も病院へ。親御さんが心配していますよ」

「でも、呪霊がまだ。なんとか特級呪霊を巻き込まないと。漏瑚とか、真人とか、俺が頑張らないと」

 

 意識高い系の子供である。でもそれを笑えない。だって特級呪霊をダース単位で巻き込んでいるから。

 

「その二体は既に祓われています。もう、心配する必要はありません。君は勝ったんですよ」

 

 七海は確かにみた。真人がなすすべもなく巻き込まれる様も、漏瑚がダッシュする塊に跳ね飛ばされて巻き込まれる様も、星となって打ち上げられる様も。

 ついでに宿儺の指も処分できて、報告された五条は笑いが止まらないようだった。

 

「勝った……」

 

 ボロボロと涙が溢れる。

 

「俺、死ななくていいってこと? 宿儺に、殺されなくても……」

「ええ。もう大丈夫。さあ、術式の解除を」

 

 何か、宿儺と因縁のある子だったのだろうか?

 気を失った子を、そっと抱き上げ、撤収した。

 

 来ないと思った夜明けの光が、道を照らし出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー。この子の術式もセンスも凄いね!」

「随分と変わった術式でしたが」

 

 七海が子供の保護をすると、五条も顔を出した。

 

「この子の術式はゲームマスター! テレビゲームの実体化だよ。多分、縛りもいくつも結んでいると思うけど、それでも今日見たのはこの子の力の一端だけかなー」

「つまり、ゲームの数だけ術式がある、ということですか?」

「そこまで上手い話はないだろうけどね。いやー! 僕の後ろから世代の波が来ちゃったかなー! 将来有望どころか、今現在で特級と言っていいかな! ……僕はこの子に色々と聞かないといけないことがあるから、休憩がてら看病しとくよ。任せて」

 

 この子の持つ情報は、呪術界に大きな影響を与える。

 特に夏油のことは、五条が1人で聞きたいだろう。

 

「相手は子供です。手加減を」

「わかってるよ」

 

 その後、天沼は無事家に帰された。

 

 ぶっちゃけ、大規模な政変で呪術界に構っている暇がなかったのである。

 メロンパンは海外にも術師の情報を売っており、スカウトや誘拐の問題も出てきた。他にも様々な問題があり、ようやく手続きが終わり、天沼の保護に迎えた時には、アメリカの研究所の人間がスカウトしている所だった。間一髪である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、後日談。

 

「天沼 月人は危険すぎる!! 秘匿死刑にせよ!!」

「正気ですか?」

 

 恐怖に顔を歪めると思われた天沼は呆れた顔をした。

 

「はぁー。大人ってほんっとーに馬鹿ばっか」

「なんだと!?」

「あのさ。俺に勝てると思ってんの? ゲーマーでもないくせに」

 

 テリトリーが広がる、その瞬間! 老人達の首が飛んだ。

 

「五条さん!」

「俺がしたのに。五条さんが殺すとヤバいんじゃないの? 大人のジジョーとか」

「だからだよ。こいつらは僕が粛清した。子供にこんな事までさせるわけにはいかないでしょ」

「五条さん……天沼くん。見てはいけません」

 

 強がっていても震える天沼に、五条と七海は密かに安堵する。

 2人は知っていた。天沼が、大人って馬鹿だから俺が支配しちゃおう的な計画を立てていた事を。そして、こいつのテリトリーに一度巻き込まれたら呪力勝負ではなく暴力を振るうことすら許されず、ゲーム勝負に強制的になることを。

 塊魂のゲーム中。天沼を襲おうとした呪霊がいなかったわけがない。全ての攻撃が、『ゲーム進行を阻害する』として排除されただけだ。

 血を見せることで、天沼の暴走に冷や水を浴びせる事ができた。

 今が教育のチャンスである。

 

「五条さん、新しい総監部の長として、すぐに決済してもらいたい仕事があります!」

 

 伊地知が書類の山を大量に持ってくる。天沼はそれに引いた。

 

「天沼くん。あなたはまだ子供です。今すぐ大人の世界に入る必要はないんです。そんな事より一緒に新作ゲームでもしませんか?」

「ん! いいよ!!」

 

 にぱぁ! と笑う天沼。

 力を持ったクソガキ、天沼への教育は、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 直、天沼が暴走するよりは、ということで五条の粛清は普通に受け入れられた。

 総監部はドス黒い黒寄りのまだ実行してないだけのグレーだったので仕方ない。

 誰だってポッとでのクソガキゲーマーより、名家で実績があって子供を庇って泥を被ってくれる人がトップの方がいいのだ。ここまでよく耐えたとみんなが思っている。天沼を止められるのは五条だけだ、なんとかしてくれとも思っている。がんばれ五条がんばれ。

 

「五条さーん! 仕方ないから、宿儺退治俺がやってやんよー❤️」

 

 クソガキの教育はまだ始まったばかりである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。