七人で墓穴掘る(じゅじゅ✕幽白クロス) 作:墓守
私が助けた甚爾さんだが、私が助けたことで離婚の危機となってしまった。
禪院家に帰ったほうがいいと奥さんは主張するのだ。
奥さんのその言葉に、甚爾さんは却って家を捨てる決意を完全に固めた。
今は、見えないふりを継続しつつ、フリーの呪術師をしているらしい。
雨降って地固まると言うか、通り魔にあったこともあり、今は病院の清掃員をしている。
一応、いろんな道を示しつつ、恵くんの意思で未来を選ばせるということだ。
伏黒くんと五条さんの出会いを歪めてしまった事になるが、ここはもう現実なのだ。なるようになるだろう。原作知識はもはや役に立たない。
「しかし、弱くなるとは予想外だったな……」
甚爾さんの言うことには、体が重いし五感も鈍ったし、散々らしい。術に不慣れなことを差し引いても、ぶっちゃけ前の方が強かったとのことだ。
天与呪縛は、パラメーターを-50、+100するようなものなのかもしれない。結局総合力では落ちるわけだ。
でも、甚爾さんは晴れ晴れとした顔をしていた。
なんでも、得てみたら大したことはないけど、得て見ないとわからないことはあるらしい。確かに、呪力のある人が呪力のない人に呪力なんて良くないよ、と言われても納得できるはずがあるまい。
「すみません、戻すのは難しいと思います」
「気にしないでくれ、先生。感謝しているし、これはこれで良かったんだ。でないと俺は、ずっと何かを憎まずにはいられなかったから」
その腕の中には、安心しきった顔の恵くん。
うん、これで良かったと思う。
甚爾さんが近場の呪霊退治を安めの価格で請負い、むしろここが俺のテリトリー! などと呪術師を追い出し始めたのは、隠れ蓑として役立っているのか逆なのか。
ただ、今まで病院を守っていた術士を甚爾さんということにして、上手いことスカウトをいなしてくれたらしいので、そこは感謝している。
院長先生がシャットアウトするのは限界に来ていたらしいから。
とにかく、伏黒一家と私はそれなりに仲良く付き合い出した。
恵くんは「将来、かみやセンセーみたいにかみやすぺしゃるする!」と言ってくれているハイパー可愛い子供である。良き。私は褒めてくれる人が大好きだ。よって、クリスマスや誕生日に贈り物をするまでの仲になっていた。最も、そんな人は病院の同僚、元患者とかなりの人数に渡るのだが。私の誕生日にはお祝いカードが山と来る。ありがたいことである。
そんなある日、甚爾さんが泡を食って連絡をしてきた。
『恵が誘拐された!』
あ”あ”?
私は即座に街を病原蟲で覆う。
『先生!?』
「恵くんの残穢を探します……見つけた」
恵くんが怪我をしている。切れそう。切れてる。
私は当然の行動として、病原蟲で車を覆って事故らせた。ごめん、恵くん! あとで治療するから!
よろめいて出てくる犯人を病原蟲がめった刺しにする。
『先生っ これ……!? 街を覆ってるのか!?』
「今から言う住所に向かってください。これから私も向かいます。急いで!」
ついでに犯罪者や呪霊をチクっとしながら現場へ急行する。都合がいいことに、病院の近くだった。私は窓から飛び出す。
「ホワチャアアアアアア!!」
脳内麻薬で脳を浸し、リミッターを解除し、病原蟲を足場にして、現場に急行。跳躍。
外科医の体力舐めんなよぉ!
「かみやせんせー!」
「な、この領域の持ち主か!?」
「病専契約呪術師!」
こいつら、原作で子供をさらって触媒にしてた奴らだ。
「ケケケケケケケ! 私のテリトリーで、いい度胸ですね……?」
相手の攻撃に腕を持っていかれる。その代わり、こちらもバッサリ切ってやった。
自分の腕は拾って即座に治療。
脳内麻薬のおかげで、初めての対人戦闘だが極めて冷静である。
「ケケケケケケケケ! 新薬の実験台にしてやります!!」
極めて冷静である。
『先生! テリトリー引っ込めろって! これはやばい……!!』
「ケケケケケケケケケ!!」
極めて冷静である。
そして、私は気がつけば呪符に拘束されて奇妙な檻の中にいた。
何故だ。