七人で墓穴掘る(じゅじゅ✕幽白クロス)   作:墓守

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ドクター3

 

 禅院甚爾は正装をして、当主の目の前で這いつくばっていた。

 

「神谷先生は、俺の天与呪縛を外してくれた人なんだ! 初めての対人戦で加減がわからなかっただけだし、そもそもこうなったのは恵を助けるため。どうか、家の力を貸して欲しい! 当主様が術式の力を大事に思うのならば!」

「は、都合のいいことだな?」

「俺、医者になるの諦めて、呪術師になります。だから、かみやせんせーを助けてください……!」

 

 親子揃っての土下座に、当主はため息をつく。

 

「口添えはしよう。ただし、お前達が家へ戻るのはもちろんのこと、その神谷医師にもこれからは呪術師の仕事もしてもらうぞ」

 

 親子はふぅぅと息を吐く。

 そうして、禅院家は全力で神谷保護に動いた。

 

 

 

 

 

 

「ここは……うっ 頭が痛い」

「だろうね。脳内麻薬の分泌過多だよ。後は頭の使いすぎ」

 

 たしなめるように、怪しい目隠しの男が言う。

 

「君は……? あっ 誘拐犯! 恵くんは!!」

「あの子は両親がちゃんと迎えに来たよ。誘拐犯も君と一緒に捕縛された」

「私は正当防衛ですが」

 

 そこの所、間違えないで欲しい。

 

「倒れて入院した50人余りの人に対しても、同じことを言うのかな? ま、そいつらは皆問題行動を起こしてたみたいだけどねー」

「ああ……そう言えば。対人は初めてだったから、タガが外れてしまったようですね」

「初めて、ねぇ。今までそれだけの力を持ってよく隠れおおせたものだよね」

「目覚めるのが遅かったですからね。とは言え、殺しはしてないですよ」

「本当に? 動物虐待とかしてない?」

「するわけないじゃないですか! ペットは飼えませんが、動物は好きなんです!」

「七人で墓を掘ったりしない?」

「うるさいですね! 幽遊白書と私は、信じられないでしょうけど無関係です!」

 

 ぷりぷりと怒っていると、ぷはっと笑う。

 

「本当、酷い偶然だよね。でも君、これから一生監視生活だから。その能力はあまりにも危険すぎる。しばらくは高専の敷地内からも出ないでもらうよ。君に設備は必要ないでしょ」

「仕事があるんですけど」

「君、すぐ治しちゃうから患者持ってないでしょ。それに、これはかなりの温情ある決定なんだよ。君が今まで築いてきた人脈に感謝するんだね。特に禅院家が君の後ろ盾になるから」

 

 まあ、秘匿死刑も覚悟していたからな。うーん、でもこれは厳しい。

 そこで、黒髪の子が悩んだ表情をしているのに気づく。この子が夏油くんかな? メロンパン入れの。

 

「何か、聞きたいことがありそうだけど」

「ドクター神谷。やはり、医師だから貴方は人に支持されるのだろうか」

「どういうことかな?」

「私は、非呪術師が呪術師を迫害しているのを見てきました。でも、貴方のためなら、非呪術師達も揃って頭を下げる」

「それは、単にプレゼンの失敗じゃないかな」

「プレゼンの失敗?」

「理解してほしいなら、理解してもらうよう、努力しないと駄目だよ。敵にならないこと。利になること。格好いいこと。この3つが大事だよ」

「必要ですか、3つ目?」

「最重要じゃないか! よくわからずともなんとなく格好良ければそれで許されるんだよ」

「許されますかね?」

「私は許すね! 可愛いは正義って言うだろう?」

 

 胸を張ると、夏油くんはくすりと笑った。

 

「先生。これからよろしくおねがいします」

「うん。……うん? いや、よろしくと言ってもだね。やっぱり病院に戻るわけには?」

「安心してください。仕事はいっぱいありますよ」

「嫌な予感がする……」

 

 

 ということで、私は高専で保険医として働くこととなった。

 本当に危ない状態だったらしく、甚爾さんたちが再会した時、安堵のあまりへたり込んでいた。ありがとう。すまんね。

 

 それと、真希ちゃんという子供の治療について相談された。

甚爾さんの例で治るけど弱くなることがわかっているので、じっくり考えろと真希ちゃんを説得していた。

 

 さて、高専の仕事と言っても、生徒数が少ないから仕事が少ないかと思ったら、呪霊に襲われた一般人の治療があるという。

 

「神谷医師、出勤です! 繰り返します、神谷医師、出勤です!」

 

 補助監督が無線に向かってがなり立て、病原蟲注意報が発令される。

 今日の天気は病原蟲です。なんてね。

 

 僕のやり口は、超長距離からテリトリーを拡げ、病原蟲でめった刺しにして病死を待つ、それが効かない相手なら詳細を報告して夏油くんや五条くんに出勤してもらうシステムである。ついでにそこらのテリトリー内の呪霊を一掃する。

 場合によっては弱らせるだけにして、夏油くんに呪霊を食べさせる。

 その後、ゆうゆうと現場に到着して、被害者たちの治療を行う。

 ハイになってしまうので、脳内麻薬の分泌は禁止、近接戦闘も訓練以外はしない。

 

「これよりオペを行う……!!」

 

 治せる部分はサラッと治して、車へと乗り込む。テリトリー解除。

 

「神谷医師、オペ終了です! 神谷医師、オペ終了です!」

 

 補助監督が無線で警報を解除して、お仕事終了。

 ただし、この処置を行う際は私は爆弾付きの首輪と補助監督と呪術師の監視がつけられる。やらせといて酷いんじゃないかな?

 気のせいかな、五条くんより最終兵器感が凄い……。彼のほうが強いよ?

 

 高専に帰ると、夏油くんにジュースをおごり、私もジュースを飲む。頭を使った私にも、ゲロを吹いた雑巾味の呪霊を食べた夏油くんにも、パンチの効いた甘みが必要だ。

 

「君が早くから高専に来てくれていたら、灰原は死ななかったんだけどね。……ごめん」

 

 そう、ポツリと本日の監視役の夏油くんが言う。そう言われてもね。

 原作よりも遅れているけど、やっぱり原作通りに悪堕ちするんじゃない、この子?

 

「君がどんな道を行こうが……それこそ、呪術師以外皆殺しだー! とかしようが、私にはどうしようもない。君のほうが強いし、君の選択だからね」

「いや、そんな事は一言も言ってないよね? 私はそんな事考えて……」

 

 そう言って、ため息を吐いた。

 

「少し、正直、ほんの少しだけ、考えてた。呪術師だけが矢面に立つのは間違っていると」

「どう考えても、下手に秘匿するより、呪術師をヒーローとしてプロデュースして情報操作するほうがお互い、楽だと思うんだけどね。呪術師って名前が悪い。名前だけでも変えてみたら?」

「名前だけでも、ですか?」

「正義の味方って名乗ってみなよ。人助けを楽しめよ。自分に酔えよ」

「それは……。確かに、ドクター神谷はそうしてますし、実際人に感謝されてますけど……」

 

 微妙そうな顔をする夏油。

 

「君は、呪術師を止める気はないのかな? しんどいならやめてしまえばいいのに」

 

 それにも微妙そうな顔をする夏油。

 

「別に、私みたいに他の仕事をして、片手間にボランティア感覚で周囲の呪霊を払うだけでも、十分人のためにはなると思うけど」

「……けど」

「君は不器用だね」

 

 ああ、でも。恵くんは、夏油くんに懐いているんだよなぁ。ミミナナちゃんたちもいるし。

 

「何にせよ、君を慕ってくれている幼い子どもたちの事を考えなさい。確かにこのまますり潰させるわけにはいかないけど、犯罪者にしてもどのみち殺されてしまうよ。そうそう、それで思い出した。メロンパンと言われる呪詛師が君の体を狙っているようだから、軽率に殺されないようにね? 彼はどうやら、上層部や特級呪霊と組んでるらしいから」

 

 私はの身終わったジュースの空き缶をゴミ箱に捨てて立ち上がる。

 

「え!?」

「私には慕ってくれる子達がいっぱいいるからね。情報も入りやすいんだ。自分の偽物が、自分の体で、自分の可愛い妹分たちを殺すのは、きっとしんどいよ。疲れたから、今日はもう寝るよ」

 

 いつも翻弄されてばかりだから、たまには意趣返しもいいだろう。

 

 深夜、任務から帰還して夏油に事情を聞いた五条に叩き起こされることも知らず、私は熟睡した。すやぁ。

 

 

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