七人で墓穴掘る(じゅじゅ✕幽白クロス)   作:墓守

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ゲートキーパー3

「家入 硝子の北海道入はならん」

 

 そう、決定が下された時、目の前が真っ暗になった。

 五条が満身創痍の状態で特級に捕まってるのを病院で発見されて、呪力が消えてもいいという棘。元から天与呪縛の真希が一足先に北海道に飛んで、狗巻家が荒野を追加調査して。既に『毒ガス』の影響はなさそうだという事になって、私が行く事を決めて。

 その特級呪霊は術師達の情報を得ていたという。

 自分の情報もそう。

 攻撃範囲はバカみたいに広くて五条がやられるほど。

 しかも、呪力を失うかもしれない。でもな。

 

「ごめんね。先生。私も問題児なんだ」

 

 今までの借りをフル動員して、どうにかその場所に行く。

 そう、呪専は夏油傑の居場所を、本当はずっと捕捉していた。

 

「夏油! いるのはわかってんだよ、手伝え!」

 

 囚われた状態で叫ぶ。教祖の服を着た夏油は、困り顔で私の目の前に来た。

 

「普通、一人で敵地に来るかな? それも大荷物を持ってさ。亡命かな?」

「五条を助けに行く、手伝え。空港も船も私を乗せてくれないんだ」

「硝子……」

 

 言葉を探す夏油に、理由をやる。

 

「お前、呪専だってどこだって、一生笑えなくなるぞ」

「……それは、嫌かな。嫌だ」

 

 そういう夏油にスラリとした美女がトランクを渡す。

 女の子達が、防寒具を二人分持ってきた。

 

「夏油様、一週間分のお荷物です」

「夏油様、夏油様の分のコートです」

「そっちの女の分も持ってきました!」

「夏油」

「はあ、行こうか、硝子。怒られても知らないよ」

「全部終わってから3人で叱られようぜ」

「嫌だよ。私は逃げるからね」

 

 そうして、夏油はいつも乗っていた飛行型の呪霊を出す。

 

「乗りな」

 

 私はそれに飛び乗った。

 北海道に着くと、呪詛師との戦闘が始まったという。

 五条悟の争奪戦だ。生徒が傷ついても、もう癒してやれないかもしれない。

 グッと歯を食いしばる。

 

「もっとスピード上げな」

 

 言って、夏油にしがみつく。広い背だ。頼りになる背中だった。かつては。

 

「わかってる」

 

 病院に着くと、京都校にいた男が呪詛師を踏み躙りながら手を振った。

 真希は非術師であろう犯罪者らしきものを縛り上げている。

 

「遅かったやん、硝子ちゃん。傑くん。看護服用意しといたで。意味があるかわからんけど、一応変装していこ」

「直哉」

「自分、すっごい早いから、隙を見つけて悟くん攫うくらい簡単やし」

 

 衝撃である。だがそれをおくびにも出さず、手早く礼を言い、看護服を受けとる。

 そのまま、呪詛師だの暴漢だのを片付けながら病室へと向かう。

 

 狗巻が、病室を守っていた。

 

「良くやった、狗巻棘」

 

 声を掛けて中へ。

 

 人と区別がつかない。

 ただコスプレした呪力が強い術師に見える男は、がっちりと五条を抱え込んでいた。そして、入ってきた私達に警戒を露わにする。その瞳には理知が宿っていた。

 これは駄目だと直感した。この呪霊はあまりにも強く、狡猾そうだ。

 

「しょ……こ」

 

 五条。目の包帯には痛々しく血が滲み、掠れた声は本当に具合が悪そうで。

 怯むな。私がなんとかするんだ。

 

「一人じゃ何人もの治療は無理だ。看護師も同行させろ」

【駄目だ、一人だ】

「そんなつれないこと言わんといて。治療行為しかせぇへんから」

【駄目だ、直哉強いだろ】

「自分の顔知っとるんか」

 

 どこまで情報をつかんでるんだ。内通者がいるのか。

 

「特級呪霊……!! 駄目だ、降伏の儀式が必要になる。悟を抱え込まれていては……」

 

 夏油が悔しそうにいう。

 そういう夏油からは、呪力が噴き出していた。

 術式をフルに使ってそれなら、本当に戦闘が必要なのだろう。

 五条を生かして取り戻したいなら、それは無理だが。

 

【前に出ろ、家入 硝子】

「硝子……」

「治療させるってことは殺すつもりはないだろ。まかせろ」

 

 力強く頷いて、荷物を持って前に出る。

 

 そして、私は闇に包まれ、異空間に転移していた。

 そこは不思議な空間だった。

 キャンプ用品やトイレと書かれた白い小さな部屋のようなものなどがゆったりと浮かんでいる。大量のゼリー飲料とスポーツドリンクがまとめて浮かんでいた。後は段ボール箱。

 そこに、毛布に身を包んで汗を流す女性。

 ベッドごと攫った五条から、呪霊はようやく離れた。

 

「いっくん……お腹減った……。ゼリー以外の物が食べたい……なんとかトイレは行けたけど……二日も留守にするなんて酷い……おかゆ食べたいよう……それ誰?」

【話せるようになったか、よかった。家入 硝子。蛍の容体も見てくれ。五条悟の後でいい】

「わかった」

 

 ちょっとやりにくかったけど、点滴を二人分。

 毛布やカイロを持ってきてよかった。

 でももっと暖かくしてあげたい。

 

【私はちょっとキャンプ地で温かいお粥を作ってくる。五条悟と蛍を頼んだぞ】

 

 そうして空間に穴を開け、顔を覗かせて引き戻すと慌てて空間を閉じる。

 

【キャンプ地に調査が入っている。もう少し遠くで作ってくる】

 

 蛍はどんな女性なのだろう? 特級呪霊を使役しているのだろうか。

 完全に手なづけているように見える。いや、それどころじゃないな。こんな寒い所に五条を置いて置けない。せめて発電機と電気毛布は欲しい。おかゆの内容にも口出ししたい。消化が良く、栄養のあるものでないと。

 

「待った。必要な物をメモするから、ついでに新田に持って来させてくれ。伊地知は寝込んでる。私にさせてくれるなら、料理も私がする」

【伊地知が? 風邪でも引いたのか?】

「五条と同じ症状だ。目は出血してないがな」

【そうか。どこまで奇病は広がっている】

「お前が原因だろ」

【だってあれだけ距離を置けば大丈夫だと思うだろう】

「何をしたんだよ、何を今の所27人が症状を訴えている」

 

 まさか、まさかと思いつつも問い詰める。

 何も考えずただただミスったとか言わないよね?

 

「……いっくん。ま、さか……まさか、だよね?」

【蛍、そのまさかだ。この人は事態収集に東京からやってきた医者だ】

「えええええ!!!! げえええええええ!!!」

 

 蛍は盛大に吐いた。

 

【大丈夫か、蛍! 具合の悪いのに叫ぶな】

「だ、って……私達、犯罪者!? になっちゃったってことよね!? 誰にも迷惑かけずに幽遊白書ごっこして遊んでただけなのに!」

 

 今なんて言った?

 

【そしてベッドにお倒れになっている方は日本の防衛戦と呼ばれる偉いお方だ】

「大変じゃん!!!」

【大変なんだ。どうしよう】

「わああああ!げえええええええ!」

【蛍、大丈夫か】

 

 頭がクラクラする。

 こいつら、こいつらっ 悪気なくやらかしただけって事か!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭痛い……つまり。この幽遊白書でやってた通り、魔界の穴とやらを開けて見たら本当に開いて、そこから広がった空気に当てられて体調を崩した者が続出したと。……どうしてくれんの? 五条が失明したら、どう責任とるの? 呪力だってそうだよ。取り返しつかないよ? 五条が最終防衛戦なんだから、日本が滅んだら責任取れるの?」

 

 プルプル震えて土下座する二人に言い募る。

 

「も、もう駄目なんだ……私達、殺されちゃうんだ……」

【すまない、蛍……】

「ううん、私こそごめんね。私が言い出した事だし……ああ、最後に仙水さんといっくんのラブラブが見たかった……」

【そういえば、めちゃくちゃイケメンの仙水似の子が助けに来てた】

「マジで!?」

【五条の為ならなんでもしてくれそう】

「今なんでもするって言った!?」

 

 

 おい待て。

 

 

「待て。お前ら、私が悪かったから待て」

「どうせ殺されちゃうなら、もういっそ悪堕ちしちゃっても……」

【最後に欲望を叶えてから死にたい】

 

「待てって、おとなしく自首しろ!」

 

 ああもう、追い詰めすぎた!!

 

「み、ず」

「大丈夫か、五条」

 

 慌てて布を濡らして五条の口に含ませる。

 

「しょ、がない、ここ、で、様子見、しか、ない、でしょ」

「五条……」

「テリトリ……っていうの? 目覚めちゃう、かもよ?」

「はあ。とにかく、治療に専念しないとか……」

「ごめんね、硝子」

「いい。謝るな」

 

 とりあえず五条の治療をして、新田に色々持って来させ、材料をとにかく細かく刻んで入れて食材たっぷりの卵がゆを五条に食べさせる。仕方ないので蛍にも。

 荒野で料理している間に、事情を書いたメールも送った。返信も来た。

 

『実はさ、私も直哉も、悟を見てると卵が孵る瞬間を見るような、ざわざわした感じがしたんだよ。直哉は、悟が呪霊にさせられるんじゃないかって心配してる。その特級呪霊、術式使うの初めてって事だよね? 可能性はないとも言えない。とにかく術式を解けないか聞いてみて。悟を助けられるんなら、ラブラブでもなんでもしてあげるからさ』

 

 深く深くため息をつく。病人がすぐそばにいるから、タバコも吸えねぇでやんの。

 

 それから二日後。

 

 渋谷で、五条悟を呼べと叫ぶ民衆が帳に閉じ込められる事件が起きた。

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