人類の敵を拾ったんだが。   作:ファッ?!

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第四戦 閑話休題

 

 

 

怒涛の一日であったが、昨晩は全く寝ていなかったこともあって肉体的にも身体的にもきついものがあった。

が、依然としてバイトのシフトは入っているので自転車を漕いでバイトへ向かったのである。

 

と言うのに厄介な客だったりトラブルだったりで追い討ちされてぼろぼろであった。

なぜ今日に限って厄介クレームがくるのか。

発注ミスが発見されたのか。

 

正直キレそうではあったが必死に今日見かけた猫やら癒されるものやらで耐える。

た、耐えねば…ッ!

 

 

接客中はずっと笑顔絶えず。親しげに日常生活を行う戦艦棲姫の姿を妄想して耐えた。(土台無理な話ではあるが)

 

ようやっとタイムカードを切る頃にはさらに心身共に疲弊した俺の面をバイト仲間に心配されながらも、なんとか店裏のドアから退勤。

徐に液晶端末を開き、通知の来ていたバイトのグループチャットを除くと非常に心配した文言でオーナーからしっかり休むように、と連絡が来ていた。

気遣いが、染みる。

 

…さらに重く感じる自転車で漕ぎ出す。あたりはもう闇い。薄汚れた路地を行き、ちょっとした商店街を抜ければすぐに田舎道になり、いつもの海に瀕した浜沿いの道に出る。

今まさに夏盛りというこの時期の夜は冷えたアスファルトの匂いと月光で満たされていてとても気持ちがいい。

ちょうど戦艦棲姫を拾ったのも特に変化のないこんな感じの夜だった。

 

彼女拾ったのが昨日のこととは思えないほど時間が経ったように感じる。どうもこの話題になるとニヤケが止まらない。

気のせいかもしれないが徐々に帰路へ自転車を漕ぐスピードは速くなっていた。

 

ーーーーーーーー

 

 

夜風を受けて疾走していると、月明かりに照らされて浜に人影が映る。

 

もしや、と思い自転車を止め近寄ると、やはり戦艦棲姫だった。

なぜこんなところにいるのだろう、とも思ったが、やはり海に帰属意識があるのだろうか。

水面にもう一つ月を浮かべる海、反射した月光が辺りを照らす。幻想的な光景、まるでそこにいるのが自然の一部だというような彼女の後ろ姿。

 

あまりにも完成された画に一瞬声が詰まる。俺は

まるで初対面のような緊張で彼女に声をかけた。

 

「よう、何してんだ?」

「…アラ」

 

ーーーーーーーー

 

二人揃って浜の砂がざらつくのも厭わずに、浜に座り込んでいた。

 

…長らく静寂が続いていたが、戦艦棲姫が口を開いた

 

 

「貴方、個体名ハ在ルノカシラ。」

「個体名?まあ人間なんじゃないのか?」

 

と、無難に答えると、戦艦棲姫はそのよくわからない表情で「違う」と訴えかけてくる。

 

「む、となると名前か。」

「人間ハソウ認識シテルノネ。」

 

なんだか無表情の彼女の言いたいことがなんとなく無会話でも掴めているような気がして嬉しい。

 

「そういや教えてなかったか?俺の名前はウメハラ タケヒト、ってんだ。まあ、よろしく。」

 

再度自己紹介をするようでなんだか気恥ずかしく思う。

 

顔を赤らめて彼女を直視できない俺とは対してに彼女は飄々としているのか、どうでもいいのか、そんなよくわからない顔をしていた。

 

 

「コレカラ貴方ヲウメハラタケヒト、ト呼ブワ。」

 

「なげえから梅原かタケヒトかどっちかでいいよ。」

 

「ナラ、タケヒト、ト呼ブワ」

 

「いきなり女の子から名前呼びとは俺は幸せもんかね?」

 

 

何気今世初かもしれない。

 

…会話が途切れた。

再び静寂が場を支配する。

潮騒が疲れた体に響く。

 

だんだん、心地いい…

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

男と女が座っていたが、男の方はいつのまにかうつらうつらとして女の方の肩を支えに眠ってしまった。

女は少しだけ意識がそちらに向いたが、またその双眸は虚に水面を見つめていた。

 

 

ふと

 

艤装展開(昏き海より)

女がそうポツリ、と呟いた直後、波間寄せるだけであった月照らす水面は徐々に盛り上がり、やがてそこから巨大な何かが現世に陰を落とした。

 

其れは、じゃぶじゃぶ、じゃぶじゃぶと海をかき分けて浜へ進む。

意志を持って、座ったままに彼女へと。

 

やがてその全容が月に照らされて明らかになる。

 

大きく開いた顎門のような機構、肥大した剛腕、肩には砲台を載せて機械性を含んだ歪な生命を思わせる、冒涜的な巨躯。

 

おどろおどろしく海水を滴らせ、まるで、「いつものように」、と黒き爪の剛腕を女へと、その掌を差し出した。

 

女は嬉しそうだった。女はたしかにその顔に微笑を浮かばせていた。

が、女は己の手をトン、と押すように剛腕に触れた。

 

醜い巨躯は逆再生のようにそのまま海面へと戻っていく。

 

ーーー再びあたりに静寂が満ちた時、女は隣の男を見た。

 

 

男は眠ったままだった。

 

また女は虚に水面を見続けていた。

確かな変化を添えて。

 

 

 

 

 

 




一話目を友人に見せたら、文が固すぎるとのことで最近はこう読みやすいというかなんというか、な文になるように心がけてます。たしかにはじまりがアレだと読み続けたいな〜って人は減るかもですね

主人公の名前は便宜上必要なだけなので適当です()

話の割合

  • 日常、コメディ
  • 不穏さ、シリアルさ
  • 展開が素早い群像劇
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