1話
目が覚めたら、生前やっていたゲームの世界にいた。
異世界転生とかに憧れがないわけではないが、自分がその立場になるとは誰も思わない。というか、なりたいわけがない。
社畜として働き、仕事終わりに酒と煙草を充てに愚痴を吐く。そんな、なんでもない日々を過ごして死ぬだけの人生を送るはずだった俺にとって、「美少女版GTA」と呼ばれたゲームの世界に来ても恐怖でしかなかった。正直、転生特典みたいなコレがなければ今の今まで生きてはこれなかった。
学園都市キヴォトス
連邦生徒会を中心都市、大人ではなく学生が自治区を統治している珍しい都市。
自由と混沌を掲げる「ゲヘナ」
博愛と信仰を是とする「トリニティ」
千年難題の解明を題とし近年台頭した「ミレニアム」
学園都市では名前を知らない者はいない三大学園を筆頭に多くの学園が存在し、銃声が日夜、響き渡る。争いが絶えない都市。多くの学生が日々を謳歌し、すきとおるような青い日々を過ごしている。
しかし、それはこの都市の表の顔にすぎない。各学園が自治区を持っているが制御しきれているわけではない。力が弱く、取りこぼされる者は少なくない。
学園からは守られず、周囲から迫害を受け、捻じれ・染まる。彼女たちに救いはなく、消費されごみのように捨てられる。あるいは、誰にも知られることなく、この世から消えていく。
「はぁ…、はぁ…」
道の隅を見れば、倒れこみ息を荒くしている奴がいる。小汚く、骨と皮しかないような体で、ヘイローにもヒビが見える。救いが無ければ、彼女は今日か明日には犬の餌にでもなって消えているだろう。
「た、たす…ゖ…て……」
目が合った。俺に手を伸ばし、助けを求めてくる。見て見ぬ振りをすれば良い。面戸事は御免だし、こんな光景はキヴォトスでは多々、目にする光景だ。少女の横を通り過ぎようとした。
「なぁ。お前、居場所がないなら俺と来ないか」
気が付けば俺はそいつの手を取っていた。理由は分からない。普段の俺なら、こんなことはしない。
だが、「運命」を感じた。何かが変わる。俺と世界の歯車が、ガッチリと噛み合い動き出すような感覚。
「あぃ、…が……」
差し出した手を取られた、少女は安心したのか意識を手放した。
さて、今日から楽しくなりそうだ。
連邦捜査本部シャーレ
失踪した連邦生徒会長が呼び寄せた先生を起点とし、あらゆる規約・法律による規則や罰則を免れる超法規的機関。キヴォトスに暮らす全ての生徒の相談に応じ、同時に所属や学籍のよらず不特定多数の生徒を所属させられる。
また、先生の指揮能力は異次元レベルに高く、先程起きていた七囚人「災厄の狐」狐坂ワカモ率いる不良集団が起こしたシャーレのオフィス襲撃をその場にいた4名の生徒と共に見事解決してみせた。
シッテムの箱のメインOSであるアロナの協力のもと、サンクトゥムタワーの管理を取り戻し、一連の騒動を納めシャーレの案内と説明を受けた先生は、周囲の安全を連邦生徒会が確保したことを協力してくれた、
ミレニアム学園所属 早瀬ユウカ
トリニティ総合学園所属 守月スズミ
トリニティ総合学園所属 羽川ハスミ
ゲヘナ学園所属 火宮チナツ
4人の生徒に伝える。
「みんなお疲れ様。みんなのおかげで無事にシャーレを取り戻せた、ありがとう。」
「ええ。サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ」
シャーレ前で、警戒に当たっていたユウカが告げ、連絡していた端末から目を離すし頷く。
「ワカモは自治区に逃走したようですが、すぐ捕まることでしょう。私たちはここまで。あとは、担当者に任せます」
「お疲れ様でした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」
「大袈裟だよ」
「ふふ、そうですかね」
恥ずかしそうに先生がそう返答すると、ハスミが微笑みながら答える。実際、この件はキヴォトス内に瞬く間に広がることになる。シャーレの、先生の名はすぐに広がり各学園の上層部に目を付けられることとなる。
「ここでお別れですが、近いうちに是非、トリニティ総合学園に立ち寄ってください。先生」
「その際はトリニティ自警団の方にも是非」
「私も、風紀委員会に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃったときはぜひ訪ねてください」
「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?先生、では、また」
「うん。今度、時間が出来しだいお礼に行かせてもらうね。その時はよろしく」
ハスミとスズミが自分の学園を先生に強くアピールし、チナツやユウカがそれに負けじとアピールする。それに対して、先生が優しげな声で返答し和やかなムードで解散しようとしていた。
「おや、もう終わっていたのか。少し出遅れた程度と思っていたが中々やるな」
「手助けの必要はなかったわけか」
突如、解散しようとしていた者たちの背後から話しかける声がした。
「っ?!」
全員が、振り返ったがそこには誰もいない。
「おいおい、何処を見てるんだ?俺は目の前にいるだろ」
元々、見ていたほうに視線を戻した。そこには、1人の少年が独特なポーズで立っていた。少女たちは言いようのない不安感に襲われる。先生は心地の良く、長年探していた友人に出会ったような感覚に襲われていた。
「初めましてだな、先生。今日は先生に用があってここに来たんだ」
「そうなんだ。いったい何の用かな?」
「そんなに警戒されると傷つくな。まぁ、良いか」
怯える少女たちを背中で隠すように移動し、先生は少年に返答した。少年はそんな様子を見て、不敵に笑いながらこう答える。
「先生、俺と友達にならないか?」