遊戯王GX 竜統べる少女   作:レスキューベア

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矛盾点があったので訂正いたしました。
ご指摘ありがとうございます。


01.竜統べる少女

広大な会場を熱気と歓声が包み込む。

ついに今日、日本一のデュエリストを決める戦いがここで開催される。

歴史的瞬間をひと目みようと、日本中のあちこちから観客が集まった。

未だデュエルが始まってすらいないというのにも関わらず、会場のボルテージは最高潮であり、時折興奮のあまり叫びだす者さえ出始めた。

今か今かと観客たちが焦れる中、やたら華美なスーツを着た司会者がマイクと共にステージへと上がった。

 

『皆様!! 大変長らくお待たせいたしました!

これより、日本一のデュエリストを決める大会Japan Champion Ship、その決勝戦を開催いたします!』

 

司会者の宣言と共に、会場が歓声の爆音に包まれる。

その歓声にやや顔を顰めながら耳を抑えていた司会者は、観客が少し落ち着くのを見計らってマイクを取りなおした。

 

『では早速、JCSの本戦を勝ち抜き、この決勝戦の舞台へと上り詰めた二人のデュエリストにご登場いただきましょう!

西日本代表、光津 正輝選手!』

 

ライトに照らされた先には、観客の声援に手を振って応えながら舞台へと進む青年の姿があった。

整った顔立ちもさることながら、何よりも目につくのはライトの光に照らされ、より美しく輝く黄金の髪だ。どこかのモデル事務所にでも所属していてもおかしくないその容姿に、女性の観客の多くが黄色い歓声を上げた。

そんな観客たちの声援に笑顔で応えながらもなお、その眼にはこれから臨む決勝戦への闘志が滾っていた。

 

『東日本代表、冬木 亜梨子選手!』

 

先ほどの歓声を押しつぶすかのごとく、男性たちの野太い雄叫びが会場から上がった。

ポニーテールを揺らした栗色の髪の少女が、付き人らしい白髪の少年と共に登場した。堂々と腕組をし、対戦相手である正輝を睨みつけるようにしながらも、口元に浮かぶ笑みを隠してはいない。

 

「ようやくここまで来たわね」

 

しみじみと、噛みしめるように亜梨子がつぶやく。

ゆっくりと会場を見渡す。熱気に包まれた観客席、熱いほどの光を照りつけるライト、会場を盛り上げる司会者、そして再び対戦相手である正輝へと視点が戻った。

 

「たかだか日本一になるまでに長い時間がかかったわ」

「お嬢様。お嬢様以外の者であれば、それこそ何十年、いやその生涯を賭してなお、辿りつけないかもしれない場所に貴女はいるのですよ」

「シロは馬鹿ね! 努力さえすれば、誰だってチャンピオンになれるのよ。

────それを私が証明してあげるわ」

 

浮かべていた笑みをより深くする亜梨子に、シロと呼ばれた少年は静かに頭を垂れた。

 

「ご武運を祈っております、お嬢様」

「そんなもん祈らなくていいから、あんたは戦い終わった私のために紅茶を淹れる準備でもしてなさい。

心配しなくても、負けたりしないわ。負けるわけがない。だって、こんなにも楽しいんだもの!」

 

好きこそ物の上手なれ、とはよく言ったものだとシロは思う。何にも興味を示さず、笑顔さえ浮かべたことのなかった少女が、デュエルモンスターズに出会ってから一変した。勉強からも習い事からも逃げまわっていた少女が、デュエルモンスターズのこととなると眼の色が変わり、知識をみるみるうちに吸収し、デュエリストとしての強さを求めた。

その結果がいま、目の前にある。半端な努力ではなかった。数多くの強敵を下し、日本の頂点へと手をかけた。後はもう、登るだけだ。

しかし、日本の頂点を掴みとった彼女は、そこで満足しないだろう。やがては世界に、そして、全てのデュエリストの憧れ、最強のデュエリスト────デュエルキングに。

正輝の後ろを追いかけるようにして、亜梨子も決勝戦の舞台へと上がった。両者はそこで初めて対峙し、言葉を交わす。

 

「楽しみだわ。あんたもそうでしょう、光津正輝」

「ああ、本当に。こんなにわくわくしているのは、生まれて初めてだ。

正直、こうして会うまでは舐めていたよ。最年少でJCSに出場したという話題性でメディアに持ち上げられ、有頂天になっているお嬢様なんかに負けるはずがない、ってね。

でも、今はわかる。底が知れないよ」

「生憎と、私も私自身の底なんて分かんないわ。デュエルをすればするだけ、強くなっていると実感できる。

そしていつかはデュエリストキングという頂にだって届いてみせる」

 

正輝は亜梨子の背後に、雄叫びを上げる竜たちの群れを幻視した。誇り高き竜たちが、亜梨子を主として認め、付き従っている。その主の行く道にいる敵を打ち砕かんと猛る。

そんな竜たちから正輝を守ろうと、神々しい力を持った光の化身たちが立ち塞がる。両者が睨み合い、何もないはずの空間に軋みが走った、その瞬間────

 

『それでは、デュエル開始です!』

 

「「決闘!!!!」」

 

正輝 LP:4000

亜梨子 LP:4000

 

「僕の先行、ドロー!

……僕は手札から、《トレード・イン》を発動!」

 

《トレード・イン》

通常魔法

手札からレベル8モンスター1体を捨てて発動できる。

デッキからカードを2枚ドローする。

 

「僕は《トレード・イン》の効果で手札の《堕天使スペルビア》を墓地に送る、そして2枚ドロー!

更にもう一枚の《トレード・イン》を発動!手札の《大天使クリスティア》を墓地に送って、2枚ドローする」

 

1ターン目から正輝は大きく手札交換をする。しかし、その狙いがただの手札交換ではないことを、亜梨子は理解していた。

 

「手札から、《ヘカテリス》を墓地に捨て、《ヘカテリス》の効果発動!

デッキから《神の居城-ヴァルハラ》を手札に加える!

そして《神の居城-ヴァルハラ》を発動!」

 

《神の居城-ヴァルハラ》

永続魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、

手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

「そのまま《神の居城-ヴァルハラ》の効果を発動!

手札から天使族モンスター一体をフィールド上に特殊召喚する……いでよ、大いなる女神!《アテナ》!!」

 

《アテナ》

星7/光属性/天使族/攻2600/守 800

1ターンに1度、「アテナ」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する

天使族モンスター1体を墓地へ送る事で、

「アテナ」以外の自分の墓地に存在する

天使族モンスター1体を選択して特殊召喚する。

フィールド上に天使族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、

相手ライフに600ポイントダメージを与える。

 

神々しい神槍と聖盾を持った女型の天使族モンスターがフィールドに降臨し、会場が沸いた。

1ターン目に大型モンスターの召喚を苦もなくやってのけた正輝に、しかしなお亜梨子の口元から笑みは剥がれない。

 

「どうしたの、このまま終了ではないでしょう。

この程度ではここまで勝ち上がっては来られない。さあ、本気を見せなさい!」

「やれやれ、気の強いお嬢様だ。

いいだろう、期待通り、見せてやる……

僕は手札から、《ジェルエンデュオ》を召喚!」

 

《ジェルエンデュオ》

星4/光属性/天使族/攻1700/守 0

このカードは戦闘では破壊されない。

このカードのコントローラーがダメージを受けた時、

フィールド上に表側表示で存在するこのカードを破壊する。

天使族・光属性モンスターを生贄召喚する場合、

このカードは2体分の生贄とする事ができる。

 

ファンシーな見た目の双子の天使がフィールドに召喚された瞬間、アテナが握る神槍に光が宿っていく。

 

「《ジェルエンデュオ》が召喚されたことにより、《アテナ》の効果発動!

相手のライフに600ポイントのダメージを与える!」

 

亜梨子 LP:4000→3400

 

神槍から放出された聖なる力を宿したエネルギーが、亜梨子の体に突き刺さった。

それを気にした様子も見せず、亜梨子は期待の目で正輝を見つめた。

 

「更に、《アテナ》の効果を発動!《ジェルエンデュオ》を墓地へ送ることで、墓地から《堕天使スペルビア》を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

《堕天使スペルビア》

星8/闇属性/天使族/攻2900/守2400

このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、

自分の墓地に存在する「堕天使スペルビア」以外の

天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 

「更に、特殊召喚された《堕天使スペルビア》の効果発動!墓地から《大天使クリスティア》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

闇に堕ち、漆黒の体となった堕天使が、復活の咆哮を上げる。

その咆哮に導かれるように、墓地に眠る大天使が姿を現した。

 

《大天使クリスティア》

星8/光属性/天使族/攻2800/守2300

自分の墓地に存在する天使族モンスターが4体のみの場合、

このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

この効果で特殊召喚に成功した時、

自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を手札に加える。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

お互いにモンスターを特殊召喚する事はできない。

このカードがフィールド上から墓地へ送られる場合、

墓地へは行かず持ち主のデッキの一番上に戻る。

 

真紅の翼と聖なる鎧を持つ大天使が、その翼を大きくはためかせ、ステージを舞う。

アテナの神槍に、新たに召喚された二体の天使のエネルギーが宿る。

 

「《アテナ》の効果で、特殊召喚された《堕天使スペルビア》、《大天使クリスティア》一体につき600ポイントのダメージを受けてもらう」

 

亜梨子 LP:3400→2800→2200

 

「僕はリバースカードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

正輝 LP:4000

手札 1枚

場 《アテナ》 攻2600/守 800

  《堕天使スペルビア》 攻2900/守2400

  《大天使クリスティア》 攻2800/守2300

 

  《神の居城-ヴァルハラ》

  伏せ 2

 

「君のデッキはドラゴンデッキだったはずだ。ドラゴンデッキは僕の天使デッキと同様、様々なカードの効果によって本来生贄が必要な上級モンスターを特殊召喚するデッキ。

しかし、僕のフィールドには《大天使クリスティア》が存在している。このカードが存在している限り、お互いのプレイヤーはいかなる方法であってもモンスターを特殊召喚できない」

 

そう、これが正輝の亜梨子対策。正輝はプロとして優秀な成績を収めたデュエリストだ。例え相手を舐めていたとしても、その相手への対策を抜かることはない。

それは亜梨子も分かっていた。天使使いの彼が自分に対して、《大天使クリスティア》を召喚するプランをとることは読めていた。最善の方法は《大天使クリスティア》をフィールドに召喚される前にゲームを決めてしまうことであったが、先行1ターン目から召喚されたのであればどうしようもない。

 

怒涛の最上級天使モンスターの大量召喚に、会場は息を飲んだ。

先行のプレイヤーは攻撃することができない。しかし、亜梨子の手札にこの状況を打破できるカードがなければ、次の正輝のターンに天使たちの総攻撃を受けてしまうことだろう。

試合が始まる前に亜梨子を応援していた観客たちは、皆沈んだ顔をしていた。そしてそれは亜梨子も同じ────ではなかった。

 

「っ!?」

 

亜梨子の表情を見て、正輝は思わず息を飲んだ。

亜梨子は、笑っていた。この状況を見て、諦めからの笑いではなく、今が愛おしいと、心の底から楽しそうに笑っていた。

 

「それでこそ、この日本一を決める最後の相手に相応しいわ」

 

亜梨子の手がデッキに伸びる。ドローするその瞬間、デッキに眠る竜たちの雄叫びが会場内に轟いた。

 

『うわっ!?』 『な、なんだいまの……?』 『さ、さぁ……』

 

掴みとったカードを見て、亜梨子は笑みを深くした。

このまま終わるなんて、自分自身と、そしていままで共に戦ってきたデッキに示しがつかない。

 

「さぁ、反撃開始よ!

手札から、速攻魔法発動、《月の書》。

対象は《大天使クリスティア》!」

 

《月の書》

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。

 

大天使クリスティアの頭上に、巨大な青い本が出現した。その本は急速に落下しながらクリスティアを押しつぶそうとする。

《大天使クリスティア》の特殊召喚を封じる効果は永続効果であり、自身がフィールドから離れる、もしくは裏側表示になってしまえばその効果は適用されなくなる。

つまりこの《月の書》が通れば、亜梨子は特殊召喚が可能になるのだ。もちろん、それを軽々と許すほど正輝も甘くはない。

 

「俺はリバースカード、速攻魔法《禁じられた聖槍》を発動する!

対象はもちろん《大天使クリスティア》!」

 

《禁じられた聖槍》

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は800ポイントダウンし、

このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

大天使クリスティアの体に聖なる槍が突き刺さる。苦悶の声を上げるクリスティアだが、その体を神秘の光が覆った。

これにより《大天使クリスティア》は攻撃力が下がる代わりに、月の書の効果を受けなくなった。攻撃力が800ポイント下がったとはいえ、その攻撃力は2000。特殊召喚を封じられた状況で易々と突破できる数値ではない。

 

「まだよ!速攻魔法、《禁じられた聖杯》!

対象はまたまた《大天使クリスティア》!」

 

《禁じられた聖杯》

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は

400ポイントアップし、効果は無効化される。

 

神秘の雫が注がれた杯を飲み干したクリスティアは、力を得るものの、天罰が下る。それは自身の能力を無効化されてしまう呪いであった。

正輝は悔しげな表情をしながらも、残るリバースカードを禁じられた聖杯に発動することをしなかった。

 

デュエルモンスターズには、チェーン順というものが存在している。一番はじめに発動したものがチェーン1、それに対して発動したものがチェーン2、またそれに~、といったように、どんどんチェーンというものは長くなっていく。

そして、その鎖が途切れた瞬間、途切れた部分から逆順処理が始まるのだ。つまりこの場合、

《月の書》チェーン1→《禁じられた聖槍》チェーン2→《禁じられた聖杯》チェーン3 となる。《禁じられた聖杯》の効果でチェーンが途切れているため、逆順処理で《禁じられた聖杯》の効果から適用されていく。

まず、《禁じられた聖杯》の効果でクリスティアの攻撃力が400ポイントアップし、効果が無効化される。次に、《禁じられた聖槍》の効果で攻撃力が800下がり、このカード以外の魔法罠の効果をクリスティアが受けなくなる。しかし、《禁じられた聖槍》の効果の処理前にすでに《禁じられた聖杯》の効果が適用されているので、すでに適用されてしまった《禁じられた聖杯》の効果を無効にすることはできない。最後に《月の書》の効果でクリスティアが裏側守備表示となるのだが、《禁じられた聖槍》の魔法・罠カードの効果を受けなくなる効果が適用されているため、クリスティアは裏側守備表示にはならない。

つまり最終的に、クリスティアの攻撃力は元々の数値から400ポイント上がり、さらにそこから800ポイントを差し引いた2400となる。ちなみにクリスティアの効果は無効化されており、このターン魔法・罠カードの効果を受けない。

長くなってしまったが、チェーンの処理はデュエルモンスターズにおいては基本にして重要な点でもある。

 

「これでクリスティアの効果は無効化されたわ!

私は手札から永続魔法、《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動!

融合デッキから、《F・G・D》を見せるわ。

《未来融合-フューチャー・フュージョン》の効果で《F・G・D》の融合素材となるドラゴン族モンスター5体を墓地へ送る!

私が墓地に送るモンスターは《焔征竜-ブラスター》、《瀑征竜-タイダル》、《嵐征竜-テンペスト》、《巌征竜-レドックス》、《エクリプス・ワイバーン》の5体!」

 

《未来融合-フューチャー・フュージョン》

自分のエクストラデッキの融合モンスター1体をお互いに確認し、

決められた融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送る。

発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に、確認した融合モンスター1体を

融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。

そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 

正輝は亜梨子に気づかれないよう、冷や汗を流した。

ここから押し寄せるドラゴンたちの脅威を知っているからだ。最悪、このターンで自分のライフポイントを全て持って行かれかねないと、残る唯一のリバースカードを発動するタイミングを伺う。

 

「墓地に送られた《エクリプス・ワイバーン》の効果発動!

デッキからレベル7以上の光、または闇属性のドラゴン族モンスターをゲームから除外する!

デッキから《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を除外!」

 

ひと通りの処理が終わった後、亜梨子はしばし考える。正輝のフィールドに伏せられた一枚のリバースカード。

 

(召喚反応系の罠カード……《奈落の落とし穴》ならまだ被害は少ない。けれど、《激流葬》だった場合、禁じられた聖槍の効果を受けたクリスティアが場に残ってしまう。けれど、それでもまだこの手札なら大丈夫。一番最悪なのは、攻撃反応系の罠カード……《聖なるバリア-ミラーフォース》)

 

ドラゴン族モンスターは攻撃力や展開能力こそ高いものの、魔法や罠カードに対する耐性は低い。

博打を打って負けました、ではお話にならないと、亜梨子は気を引き締めた。

 

「私は墓地の《焔征竜-ブラスター》の効果を発動!墓地の《エクリプス・ワイバーン》と《嵐征竜-テンペスト》を除外して特殊召喚!」

 

《焔征竜-ブラスター》

星7/炎属性/ドラゴン族/攻2800/守1800

自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族

または炎属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。

このカードを手札・墓地から特殊召喚する。

特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。

また、このカードと炎属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、

フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

このカードが除外された場合、

デッキからドラゴン族・炎属性モンスター1体を手札に加える事ができる。

「焔征竜-ブラスター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

炎を司る竜がマグマの中から出現した。

その体はマグマよりも熱いのであろう、周囲の岩が溶けていく。

 

「更に除外された《エクリプス・ワイバーン》と《嵐征竜-テンペスト》の効果を発動!

《エクリプス・ワイバーン》の効果で除外されていた《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を手札に加え、《嵐征竜-テンペスト》の効果でデッキから同属性・ドラゴン族モンスターを手札に加える!デッキから《嵐征竜テンペスト》を手札に!」

 

これがドラゴン族デッキの……いや、征竜と呼ばれるカードたちの恐れられる所以である。手札・墓地にドラゴン属さえいれば何度でも蘇り、さらにそのリソース先まで自分で調達してしまう。

 

正輝 LP:4000

手札 1枚

場 《アテナ》 攻2600/守 800

  《堕天使スペルビア》 攻2900/守2400

  《大天使クリスティア》 攻2800→攻2400/守2300

 

  《神の居城-ヴァルハラ》

  伏せ 1

 

亜梨子 LP:2200

手札 5枚

場 《焔征竜-ブラスター》 攻5000/守5000

 

  《未来融合-フューチャーフュージョン》

 

観客たちはみな立ち上がり、デュエルを固唾を飲んで見守っていた。

絶望的と思われた状況を覆した亜梨子、そのタクティクスに言葉を失っていた。

 

「《焔征竜-ブラスター》で《大天使クリスティア》を攻撃!」

 

「罠カードオープン!《聖なるパリア-ミラーフォース》!」

 

《聖なるバリア-ミラーフォース》

相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 

ブラスターは跳ね返ってきた自らの炎に焼かれ、地に伏した。

 

 

「それじゃあバトル終了、墓地の《巌征竜-レドックス》の効果を発動するわ。

手札の《嵐征竜-テンペスト》と墓地の《瀑征竜タイダル》をゲームから除外し、《巌征竜レドックス》を特殊召喚!」

 

巨岩を割り、中から重厚な鎧を纏った地のドラゴンが姿を見せる。

 

 

星7/地属性/ドラゴン族/攻1600/守3000

自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族

または地属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。

このカードを手札・墓地から特殊召喚する。

特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。

また、このカードと地属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、

自分の墓地のモンスター1体を選択して特殊召喚する。

このカードが除外された場合、

デッキからドラゴン族・地属性モンスター1体を手札に加える事ができる。

「巌征竜-レドックス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

「除外された《瀑征竜-タイダル》の効果を発動!デッキから《瀑征竜-タイダル》を手札に加えるわ!

更に、場の《巌征竜-レドックス》をゲームから除外し、手札から《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を特殊召喚!」

 

《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》

星10/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2400

このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するドラゴン族モンスター1体を

ゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札または自分の墓地から

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」以外の

ドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。

 

「《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》の効果発動! 墓地から《焔征竜-ブラスター》を攻撃表示で特殊召喚!

《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》と《焔征竜-ブラスター》を生贄に捧げ、現われろ!《ラビー・ドラゴン》!」

 

《ラビー・ドラゴン》

星8/光属性/ドラゴン族/攻2950/守2900

通常モンスター

 

兎のような風貌をした、一見変わったドラゴンがフィールドに召喚された。

しかし、見た目とは裏腹に、攻撃力こそあの伝説の《青眼の白龍》に一歩及ばないものの、守備力を含めたステータスで見れば極めて優秀なカードである。

 

「私はカードを2枚セットし、ターンエンド」

 

 

正輝 LP:4000

手札 1枚

場 《アテナ》 攻2600/守 800

  《堕天使スペルビア》 攻2900/守2400

  《大天使クリスティア》 攻2800/守2300

 

  《神の居城-ヴァルハラ》

  伏せ なし

 

亜梨子 LP:2200

手札 1枚

場 《ラビー・ドラゴン》 攻2950/守2900

 

  《未来融合-フューチャーフュージョン》

  伏せ 2

 

「僕のターン、ドローッ!」

 

ドローしたカードを見て、表情が和らぐ。

《次元幽閉》。攻撃してきたモンスターをゲームから除外する罠カードだ。

 

(これで次のターン、攻撃してきた《ラビードラゴン》を《次元幽閉》で除外すれば、勝てる……!)

 

「僕はこのままカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

 

(僕のフィールドにはクリスティア。こいつを倒さない限り、彼女の手札と墓地にいる征竜たちは召喚できない。ラビー・ドラゴンで戦闘破壊を狙ってくるだろうが、そこに次元幽閉を当てればチェックメイトだ)

 

亜梨子が口元を小さく歪めた、その瞬間、正輝の背筋に悪寒が走った。

 

「エンドフェイズ時、罠カード発動!《強制脱出装置》!

《大天使クリスティア》を手札に戻してもらうわ!」

 

「《大天使クリスティア》が……!」

 

怪しげな装置に固定されたクリスティアは、眼にも止まらぬ速さで射出され、正輝の手札に戻っていった。

これで亜梨子はドラゴンたちを召喚する術を取り戻したのだ。

 

(あぶなかった……次元幽閉を引いていなければ負けていた。だが、運は僕に味方したようだな。

冬木 亜梨子……このデュエル、僕が勝つ!)

 

「私のターン、ドロー!

……私は手札から、死者蘇生を発動!墓地より甦れ!《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》!」

 

全身を金属で覆われた黒竜が、復活の雄叫びを上げた。それに呼応するように、《ラビー・ドラゴン》も歓喜の叫び声を上げる。

 

「《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》の効果を発動! 墓地から《焔征竜-ブラスター》を特殊召喚!」

 

光、闇、炎の三体の最上級ドラゴンモンスターがフィールドに集い、立ち塞がる天使たちを睨んだ。

 

 

 

正輝 LP:5000

手札 2枚

場 《アテナ》 攻2600/守 800

  《堕天使スペルビア》 攻2900/守2400

  

  《神の居城-ヴァルハラ》

  伏せ 1

 

亜梨子 LP:2200

手札 1枚

場 《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》 攻2800/守2400

  《焔征竜-ブラスター》 攻2800/守1800

  《ラビー・ドラゴン》 攻2950/守2900

 

  《未来融合-フューチャーフュージョン》

  伏せ 1

 

「バトルよ! 《焔征竜-ブラスター》でアテナに攻撃!」

 

正輝LP4000→3800

 

「くっ……!」

 

「続けて、《ラビー・ドラゴン》で《堕天使スペルビア》に攻撃!」

 

「罠カード発動!《次元幽閉》!!」

 

正輝は亜梨子の伏せカードを見ながら、祈るようにして次元幽閉を発動した。あれが万が一、神の宣告のようなカウンター罠だった場合は負けである。

亜梨子はすこし硬直し────ラビー・ドラゴンを除外ゾーンに送った。

 

(勝った……!)

 

勝利を確信した正輝。そんな正輝に、亜梨子は極めて落ち着いた様子で話しかけた。

 

「本当に楽しかったわ。こんなデュエル、なかなかないもの」

「……そうだね。負けるかと思ってヒヤヒヤしたよ。でも今日は僕の勝「私の勝ちね」……は?」

 

亜梨子は静かに伏せていたカードを表に返す。本当に楽しかったと、にこにことした笑みを浮かべて。

 

「さっきのカードが、《聖なるバリア-ミラーフォース》だったなら負けてたわね。《次元幽閉》で助かったわ。

────本当に、楽しかったわ。またデュエルしましょうね」

 

《異次元からの帰還》

ライフポイントを半分払って発動できる。

ゲームから除外されている自分のモンスターを

可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。

 

 

 

────今この時、日本チャンピオンが決定した。

 

 

 

 

 

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