暁を越える 作:三玖
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「この花の名は、
硝子で作られた花の置物を手に、暁越はそう語り始めた。
「市場に出回ることがほとんどない、希少な品種だ。主な生息地は幽玄の谷の付近……奇しくも、この簪に飾られている魂魄晶と近い場所になる。というのも、この花は人の魂や怨念、それに近しいものを糧として花をつけるからだ。故に、生息地は自ずと死の概念が近い場所……正確にはこの世とあの世の境目になりやすい。他にも戦地や処刑場、あるいは何らかの怨念を以て生まれた死体の元に咲いた、という事例もあるみたいだな」
窓から差し込む日差しにそれを掲げながら、言葉を続ける。
「花をつける時期は夏から秋にかけて。その時期を過ぎると花だけがそのまま落ち、残った茎は硬質化し骨のように白くなる。つまり花弁は魂を集めるための器官に過ぎず、集めた魂は茎に蓄えられるわけだ。そして、この花の本質はその残された茎にある」
淡い紫に染められたその花弁の向こうには、既に緋王の元へと繋げられた門が透けていた。
「これは主に呪術の媒体……いわゆる呪具として用いられる。他の媒体を一切介さない、天然の呪力……呪術師にとって、そうした純度の高い呪力は非常に有用なものとなるからだ。具体的には、呪術の格が一つか二つは上がるだろう。……だが、そんな呪術師の都合など関係ない。これを彫った者も、きっと俺と同じように考えたはずだ」
すると暁越は一度、噛み締めるようにその置物を眺めた。
「先にも説明した通り、この植物は花より茎の方が重要視されている。故に、こうして花を象った造形物が出回ることは非常に少ない。これほどまでに美しく、精巧に造られたものとなると猶更だ。これを彫った者はおそらく、呪術的な価値や需要ではなく、この花が持つ美しさに魅せられたのだろう。……いいものだ」
そこまで述べたところで、暁越が開かれた門の向こうにいる緋王へと置物を手渡して。
「というわけで、こいつを家の玄関に置いておけ」
「ふざけるなよお前……!」
帰ってきたのは、ぴきぴきと顔を引きつらせる緋王からの、そんな言葉だった。
「こちとらようやく聖女をとっ捕まえた報告が聞けると思って、わざわざ門を繋げてやったというのに! ダラダラと土産物の自慢話を聞かせおって! なーにが『……いいものだ』じゃボケ! 聖女はどうした聖女は!」
「それについては、これから居場所を突き止めるところですわ。もうしばらくお待ちください」
「こっ……これから!? ちょっと待て貴様ら、昨日は何をしとった!?」
「……この土地についての理解を深めていた」
「美味しかったですね、あの発泡酒。普段嗜まないものでしたから、新鮮な味わいでしたわ」
「あ~~~あ! 呑んどる! 吞んどるわこのバカ共! この我が殺されるかもしれんというのに!」
肴は暁越の好みにより、地域特有の海鮮が中心であった。特に貝類が口に合ったように思う。
「お前ら頼むから我の言うことを聞け! 我が手勢の中で自由に動けるのは、今のところお前らしかおらんのじゃ! 特に聖女に関しての話は、外部に情報が漏れることを防ぐためにお前らだけにしか聞かせておらん! 心の底から不服ではあるが、我が軍の命運はお前らに委ねられとるんじゃよ!」
「まあ。緋王さまとあろうお方が、随分と追い詰められているご様子ですね」
「お前まじ帰ってきたら絶対ぶん殴るから覚悟せいよ」
なんて、ぎゃあぎゃあと言い合う游苑と緋王を他所に、暁越が蛇へと問いかける。
「……俺達しか自由に動けない、というのは本当か?」
「ああ、マジだよ。連中の侵攻を少しでも止めるために、ウチのほとんどが前線に出払ってる。一応、お前らのためでもあるんだぜ? 連中の意識をそっちに向けておいて、聖女を捕まえやすいようにしてやってるってワケ。つっても、今のところ気休め程度にしかなってないみたいだが」
「なるほど……」
「それに、ついさっき九十九にも声がかかったところだ。流石にあいつが出るとなったら、連中の侵攻もだいぶ止められると思うが……現状を考えると、良くても五分ってところかもなあ」
「九十九で五分だと? ……奴を甘く見過ぎだ」
「我とて、あいつのことを過小評価しとるわけではないわ」
ふん、と鼻を鳴らしながら、緋王が暁越へと言葉を渡す。
「我が手勢の戦力は暁越、お前が誰よりも分かっておるはずだ。それこそ、此度のような規模の敵に苦戦するような腑抜け共ではないことも。だがしかし、現状は今お前らに話した通り。……我が手勢をいとも簡単に退ける連中の強さ、そこには何かしらの
「それが、我々の追う聖女ということですか?」
「確証があるわけではないが、何らかの手掛かりにはなるはずじゃ。仮に何の手掛かりにならずとも、連中の情報を少しでも得られればよい。とにかく、この戦いの鍵はその聖女にあると我は見ておる」
「なるほど」
つまり、その聖女を捕らえることができれば、敵軍の戦力の低下させ、その上で情報も引き抜くことができる。そして暁越にとっては、自らの不死を脱するための手掛かり得られるということらしい。
そこまで考えたところで、その聖女とやら、中々に都合が良すぎるのでは――と、暁越が嫌な予感を覚えたが、それを口にするよりも先に蛇が言葉を渡してきた。
「緋王サマ、そろそろお時間だぜ」
「む、もうそんな頃合いか。では、我はこれで……」
「待て、緋王」
振り返った緋王の背中に、暁越がそうやって声をかけると。
「この置物を、家の玄関に置いておけ」
「…………………………」
しばらくの沈黙のあと、緋王がぱし、とその置物を奪い取った。
「クソボケが……」
「あ、私たちの屋敷に寄られるなら、ついでにお布団も干しておいていただけますか? 出る前は時間が無くてできなかったものですから、よろしくお願いしますね」
「それと、以前こちらから頼んでおいた荷物も届いているはずだ。それの確認も頼む。おそらく中には書物が数冊入っているはずだ。確認したら、それを俺の部屋の本棚に並べておけ」
「お前ら我のこと何だと思っとる?」
緋王のその言葉を最後に、ゆらりと水面が揺らぐようにして門が閉じる。
後に残るのは、何の変哲もない一枚の姿見だけであった。
「では参りましょうか、暁越さま」
「……そうだな」
聖女についての違和感は確かに残っているが、今それについて言及したところで、どうせやることは変わらない。それに、その違和感をきっかけに不測の事態が起きたとしても、余程のことでもない限り、自分と游苑がいれば問題は無い。
ならば今はただ、緋王の言う通りに動くことが最良だろう。
「短い時間ではあったが、この街もこれで見納めだろうな」
「勿体ないですわね。もう少し、色々な場所を巡りたかったのですけど」
「……なら、最後に食事でも摂るか。時間も丁度いい頃合いだろう」
「ええ、是非ともそうしましょう」
頭に残る思考の靄を振り払いながら、暁越は游苑と共に部屋を後にした。
■
占術師の末裔である游苑は、紅色の瞳を持つ。
その瞳は占術師の血を色濃く引いている証拠であるが、游苑の瞳に宿る紅は歴代の占術師の誰よりも深く、鮮やかなものであった。その瞳は本来、占術に於ける精霊との交信のために用いられるものであるが――游苑の瞳はその枠組みを超え、精霊に限らず様々なものを
故に、本来であれば占術は精霊との交信・使役・操作という段階を必要とするが、游苑はそれを必要としない。彼女の瞳の特異性により、精霊たちは自ら惹きつけられ、彼女に使役されることを望むようになる。それに加え、彼女の瞳は精霊だけでなく、呪霊や式神――あるいはそれらに類さない"未知の何か"すら――も
しかしながら、游苑は自分の瞳についての特異性をほとんど理解していない。
幼少期から精霊は身近にいたし、使役などせずとも占術に必要な情報を教えてくれるし、何なら精霊たちは自ら自分に尽くしてくれる。精霊の使役もできない他の占術師を見ても、憐れむどころか理解すらできなかった。
そんな彼女を見たある占術師は、退屈そうに語った。
――つまるところ、人間も精霊も、顔の良い者の言うことには素直に従いやすいのだ、と。
「ほら、おまえたち。顔を見せなさい」
寂れた教会の聖堂、その中心で游苑がぱんぱん、と退屈そう手を叩く。
すると、それに応えるようにどこからともなく半透明の何かが、ぽつぽつと彼女を取り囲むように現れた。それに輪郭はなく、目や羽のような生態的な器官も存在しない。例えるなら蛍のような、ゆらゆらとした光の珠であった。
精霊。ある現象、あるいは存在によって生み出される、あらゆるな力の残滓。
それは占術師にとっては、自らの術の行使に必要不可欠な依り代であり。
游苑にとっては、いつでもどこでも呼べば出てくる小間使いであった。
「……これだけしかいませんの?」
やがて集まった数は十と少しほど。自らの周囲をふよふよと漂うそれらを見て、游苑は不満そうに言葉を漏らした。それに対し精霊たちは、その場をふよふよと揺れたり、彼女の周りで小さく跳ねたりしている。それはどこか申し訳なさそうに振る舞っているようにも、彼女の機嫌をなんとか取ろうとしているようにも見えた。
「見たところこの教会は、放棄されてから相当の時間が経過しているはずだ。精霊の数が少ないのも仕方のないことだろう。……むしろ、あんな杜撰な呼び方でよくこれだけの精霊を集められるものだな」
「お褒めに預かり光栄ですわ。ですが私としては、もう少し良い結果を期待していましたので、つい」
自分の周囲を漂う精霊をつんつんと指先で突きながら、游苑は小さく息をついた。
「例の聖女がこの街を発ったのが、一昨日のこと。ということは、少なくとも一週間のうちに聖女はここで祈祷を捧げたはずですわ。そして、それが嘘ではないことはこの子たちが証明してくれています。見たところこの子たちのうち、おおよそ半分はその祈祷による力の流れによって生まれたもので間違いありませんもの」
「……では、残りの半分は元々、この教会に残っていた精霊か」
「仰る通りです。ですが……だとしたら、少々おかしいと思いませんか? 例の聖女が祈りを捧げた際に生まれた精霊の数。そして、廃墟となったこの教会に元々残っていた精霊の数。それがほとんど同じだなんて」
「なるほど……」
祈祷。人の身では及ばない領域の術――いわゆる、奇跡を起こす儀式。
神代の残滓が残る土地において、神に通じる力を持つ者が祈りを捧げることによって、その祈りを実現させる大規模魔術。祈りを神に届かせることにより、そこから得られる莫大な魔力を用いて現実に干渉を引き起こす、学術的には現実改変の分野に脚を踏み入れているものである。
要は、「籤が当たってほしい」といった普遍的な神への祈りを何万、あるいは何億倍かしただけもの。祈りを捧げることによって神から莫大な魔力を引き出し、どれだけ当たる確率が低かろうが、その籤が強制的に当たるよう、現実、ひいては運命そのものを書き換える魔術である。
故に祈祷を行った場には強力な魔力の残滓が残り、その残滓からは大量の精霊が産まれる。
だが。
「……祈祷を行ったにしては、精霊の数が少なすぎる、か」
「考えられるのは、その聖女とやらの力が不十分だったか、あるいは祈祷そのものの規模が小さいものだったか、くらいでしょうか。いずれにせよ、ここで行われた祈祷では大した祝福も得られたなかったようですね」
「だとしたら、緋王がここまで苦戦するはずがない。ましてや、あの九十九で五分と言わしめるような状況にはなっていないだろう。……俺からすれば、緋王があの女を過小評価しているとしか思えんが」
「……以前から思っていましたが、暁越さまは九十九様のことをたいそう気に入っておられますよね?」
「ああ。まず奴の扱う精霊統術。あれは独自の術式を用いた術で、他の精霊操作を主とする術に比べ精霊操作の精度が遥かに高く、故に希少価値も非常に高い。その上、奴は精霊における最高位の神霊を二騎も手中に納めている。……まだ若い美空であそこまで精霊統術を極めた者など、この長い歴史を見てもそうそう居ないだろう。叶うことなら、全力の奴と一度手を合わせてみたいものだ、が……」
珍しく饒舌になりながらそこまで語ったところで、ふと暁越は。
隣に立つ游苑が、不満そうに頬を膨らませていることに気がついた。
「わたくしの占術だって一応、門外不出の秘術ですのに」
「……そうだったな。今はお前を頼るとしよう、游苑」
「ふふっ、ありがとうございます。では、始めてしまいましょうか」
満足そうに笑う游苑が、そのまま懐から取り出した地図を大きく広げた。そのまま彼女が周囲の精霊を一瞥すると、精霊たちがひとりでに彼女の手元へと集まってゆく。そんな光景を見て、暁越はこれを占術と呼ぶにはいささか雑過ぎるのではないか、と思ったがそれを言葉にはしなかった。
やがて少しの時間も経たないうちに、小さな灯が地図の上へ宿る。
それはゆっくり動いたかと思うと、その軌跡を淡く残した。
「なるほど。おまえたちを生み出した存在は、ここから西に向かっているのですね?」
游苑の言葉に、精霊のうち半数がこくこくと上下に揺れる。
「西……目的地は、エラテルの港と見ていいだろうな」
「……連中、海路を使うつもりでしょうか? 緋王様の元へ向かうとなると、迂回する形になりますが」
「確かに海上であれば、緋王の手勢も撒けるだろう。戦闘を避けたいならその線もあり得るだろうが……今のところ、緋王より連中の方が優勢なことを考えると、何か別の目的があると考えた方がいいだろうな」
「別の目的となると、やはり祈祷のためでしょうか?」
「ああ。あの港にはここと同じように、神代の残滓が残っている地だ。荒れた海を鎮めた神の話が、伝承として古来より伝わっている。……祈祷を行うのに適している場所だろう」
そこまで暁越が話したところで、ふと游苑が気になって問いかける。
「随分とこの港町に詳しいご様子ですが……もしかして、以前立ち寄ったことが?」
「ああ。昔の……緋王と出会う前の話だ。船を乗り継いで旅をしていたとき、一度だけ。何のために訪れたのかすらも記憶にない……が、地酒が特に美味かったことは覚えている。肴は……港で獲れた魚の肝を、塩で数日間漬けて熟成させたものだった。あれと合わせるのがいい」
「まあ、そこまで暁越さまがお気に召すなんて。なんだか私も気になってまいりましたわ」
「……聖女を緋王に引き渡すのが先だ。そのあとなら、寄ってもいいだろう」
ともかく、と古い記憶に耽る思考を切り替えて、暁越が改めて口を開く。
「連中の次の目的地はエラテル港と見ていい。それがこの街での祈祷に失敗したため、改めてそこで祈祷をやり直すのか……あるいは、そうして訪れた街々で祈祷を行い、継続的に軍を強化するためか。……いずれにせよ、その聖女とやらを捕らえて吐かせてしまえばいいだけの話だが」
「では、これからどうされますか?」
「港付近の道なら、ある程度は土地勘も残っている。連中の進路の先で待つのがいいだろう。そのための足と、この教会で行われた祈祷と精霊の報告も合わせて、改めて蛇を呼び出すのが先決だが……」
そこで言葉を詰まらせた暁越の顔を、游苑が首を傾げながら覗き込んだ。
「どうされました? 何か気になることでも?」
「……そうだな。もう一つ明らかにしたいことがある。頼めるか?」
「ええ。私にできることなら、何でも仰ってくださいな」
頷いた游苑に応えるように、暁越は地図の上に宿った灯を指で示した。
「聖女がここに訪れたのなら、軍の連中も何人かこの場に居合わせたはずだ。そいつらの過去の足取りを知りたい。今の段階で分かる範囲で構わん。どうだ、できそうか?」
「もちろんですわ。ほら、おまえたち。追加の仕事ですよ」
游苑がそうやって呼びかけると、精霊がこくこくとまた上下に揺れる。
やがて地図の上に、先ほど灯された軌跡とはまた別の、新たな軌跡が浮かび上がった。
その数は。
「……ふたつ?」
「やはりか」
首を傾げる游苑の隣で、暁越が静かに呟いた。
「連中は事前に軍全体をいくつかの部隊に分けて動いていたみたいだな。そしてこの街で行われたのは、そのうちの二つの部隊の合流と、再編成……それぞれの部隊の人員をある程度入れ替え、また二つの部隊に別れて街を発ったのだろうな。そして、連中はこうした部隊の合流と再編成を、各地点で同時に、かつ多発的に行っているはずだ。そうすることで、奴らにとって重要な人物である聖女が、現在どの地点にいるのかを悟られないようにしたのだろう。……蛇の読みは当たっていたな」
「では、このことも蛇様にお伝えしますか?」
「そうだな。尤も、奴も薄々そのことには気づいているのだろうが……この情報と、緋王の手勢がやられた地点の情報を合わせれば、連中の全体的な動きがより明らかになるはずだ。おそらく連中の参謀も、俺達がまさかここまで全体の動きを知り得るとは思っていないだろう」
そこまで語ると、ふと暁越は游苑の方に改めて向き直って。
「……お前を頼りにして正解だった。よくやった、游苑」
「ふふっ、お褒めに預かり光栄ですわ」
渡された言葉に恭しく頭を下げる游苑だったが、その耳はぴこぴこと忙しなく揺れている。もう隠し通すのも無理なのだから、素直に喜べばいいものを――と暁越は思ったが、それも今更なので口には出さなかった。
などと考えに耽けていると、ふと暁越の視界を精霊のうちの一つがゆっくりと横切った。何の気も無しにそれを目で追うと、そこには揺れ続ける游苑の耳を面白がっているのか、周りを浮く精霊たちがふよふよと彼女の元に集まっていく光景が見える。
そうして耳の先に精霊が触れようとした瞬間、游苑はそれをぱし、と手で弾いて。
「まったく……身の程を弁えなさい、おまえたち。私の耳と尻尾に触れていいのは暁越さまだけですのよ? おまえたちは用済みなのですから、さっさと消えればいいものを……いつまでそうしているつもりですか?」
「……聖女の居場所が分かったのは、彼らの手伝いもある。少しは労わってやったらどうだ」
「こんな木っ端どもに労わりなんて必要ありません! ほら、いいかげん散った散った!」
ばたばたと半ば暴れるように精霊たちを振り払いながら、游苑が答えた。
――本来、精霊とは呼び寄せるだけでも複雑な術式と多量の魔力を必要とする存在である。
力の残滓を抽出し、それを形として顕現させる。それは云わば透明な墨を用いた筆の軌跡だけで書かれたものを読み取るのと等しい行為であり、並大抵の魔術師には成し得ないものである。
それを、あまつさえあんな適当に手を叩くだけで呼び寄せ、ましてや自分から使役させる游苑は、他の精霊使役を主とする術の使い手からすれば、羨望を通り越して嫉妬の対象となり得るほど。
だが、そんな彼女も彼女で、やはり色々と苦労しているらしい。
もう! としぶとく残り続ける精霊たちに口を尖らせる游苑を見て、暁越はそう思った。
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