今回からアルちゃんが曇ってちょっとだけカッコ良くなります。
では…、どうぞ。
「〜♪」
柴関ラーメン店内、先程まで意気投合し、仲良く話していた制服姿の彼女らが退店してからと言うもの、私は少し鼻歌混じりにラーメンを啜っていた。
「アルちゃん、機嫌良さそうだね〜」
「勿論よ! だってあんな良い人達が居たもの」
「…………」
揶揄い半分な顔をしたムツキにそう聞かれて私は当たり前でしょ、と言う風に返す。
けれども、自分が座っているテーブルのから二人の姿を見ると、カヨコは何だかため息を吐いてこちらを一瞥してから苦い顔をして頭を抱えていて、対照的にムツキは何だかいつも以上に上機嫌な顔に何だか心底面白そうな笑顔をしている。
「……どうしたの?」
「……とりあえず、コレを食べ切ってから続きを話そう」
私がカヨコにそう聞くと、カヨコはこちらを一瞥してから少しため息を吐き、箸を手に取って取り皿に取られたラーメンを啜り始めた。
◇◇◇
「ふぅ……結構ボリューミーだったわね……」
「……ざっと十人前は有ったからね、ふぅ……」
数十分ほどの時間をかけ私達は何とか目の前の山を食べ切って満腹になって物理的にボッテリと膨らんだ腹をさする。と言うか私やカヨコよりもハルカやムツキがたくさん食べているのに全くお腹が膨らんでいないのはなんで? 本当に不思議すぎるわ……。
「まぁそれはそれとして、話の続きだけどさ……っつ、ちょっと待って……んっ、ふぅ」
カヨコがコホンと軽く咳払いをして続きを話そうとすると、先程まで食べていたラーメンが詰まったような嗚咽をして、一瞬話が途切れるが一呼吸置いてからまた話し始めた。
「社長、さっきの制服姿の連中……気付かない?」
「……制服? 何の事かしら?」
カヨコは何を言っているのだろうか、さっきの優しい人達に気が付く? 一体どう言うことかしら、私は全く気付かないし、あの制服に心当たりなど全くない。カヨコの問いにそう私が未だに何が何だかわからない顔をしていると、カヨコがはぁぁぁぁと机に項垂れて頭だけ上げて私の方を真面目と呆れの入り混じった顔で見て、口を開く。
「……アビドスだよ、あいつら」
「……あびどす?」
カヨコの言葉が不意に私の頭の中で反復される。あびどす……? あびどすって何だっけ……? なんか何処かで聞いたような……。
……あびどす
…………アビどす
…………アビドス
私の脳内でその四文字が反復され続け、ついに全ての文字が変換されきると私の思考が一つに結ばれた。
………………アビドス高等学校!!??
そう、クライアントから依頼された「襲撃目標」の名前に結びついたのである。
「ななな、なっ、何ですってーーーーーッ!?」
「あははっ! アルちゃんの反応おもしろーい!」
「はぁ……、本当に気付いてなかったのか……」
その結論に思わず白目を向いて絶叫してしまい、ムツキはお腹を抱えてケラケラと笑い、すぐそこのカヨコは漸く気付いたかと呆れた顔をする。とはいえ、私のその絶叫を聞いた三人は直ぐに立ち上がって600円を机の上に叩きつけ、外に出る。
「と、と言うことは、さっきのは私たちのターゲットだったんですよね? な、なら今すぐにでもわた、私が始末してきましょうか?」
吃音気味にハルカがオロオロとしながらも物騒なことを言ってショットガンを抱えた、ハルカはこう言う時は何だかちゃんとドライなのだが、対照的に私は、さっきまで談笑していた相手が敵だと知ってしまい、ショックの余り足から腰にかけて力が抜け、その場にへたり込んで頭を抱えてしまった。
「どうしたのアルちゃん? 仕事するよ? ほら、準備準備」
「バイトの皆が定位置についたって、後は私たちが準備完了して命令するだけ」
私はこう言うときにハルカのようにドライになれない、カヨコの様に割り切れない、ムツキの様に忘れる事もできない。ああ何でこうなるのだろう、さっき迄親しい友人の様に話していた相手がまさか敵だったなんて。ああ何故! 何故!
「ほ……、本当に……? 今からあの子達と戦うの……?」
「あはは〜、心優しいアルちゃんにはこれはちょっとキツイかもね〜」
「情け無用、お金さえくれれば何でもする。がウチのモットーじゃなかったの? 社長」
「あっ……」
どうして? どうして何で? 何で自分の発言までこうも牙を剥くの? ゲヘナの人たちは傲慢、我儘、自己中心、利己的、自分本意で他人を慮ってくれるような人は本当に少なかった。今の便利屋の皆だって、ある意味その中であぶれながら生きてきた人達の集まり。だからこそ、私達は良い友人の様に語り合うことができて、笑い合うことが出来た。そして、その便利屋のメンツ以外で初めて、彼女達は自分達に優しく接してくれた。
……そんな相手に今から襲撃を仕掛ける? ご飯代が無かった自分達に、善意だけで、見返りを求めず彼女達は大盛りのラーメンを自分たちに恵んでくれた。…………でもその資金が足りない原因だって、皮肉な事にそんな彼女達を襲撃する為に取り揃えた戦力の為に使いすぎてしまった。……何で、何でそんな善人の様な彼女達に牙を剥かなきゃならないの? 何で? 何で? 何で? 何で?
そんな事をしたら、他のゲヘナ生と一緒になる。自己中心で傲慢な、人の風上にもおけない連中と一緒になってしまう!!
自分の積み上げてきたこれ迄が全て土台から崩れていく、何が正しいのか、何が間違っているのか。何で、そんな道徳心の欠片も無い事をしなければならないのか。
「う……、嘘でしょ? あの子達が? あの優しい人たちがアビドスなの? そんな……、何と言う運命の悪戯……」
私はその場にがっくりと項垂れ、終いには自分の顔を両手で顔を覆った、涙を流した顔を隠したいのか、それとも残酷な事をしようとしている自分を隠したいのか、
……あるいはその両方か。
「これ……、完全に参っているね……」
「まぁ仕方ないんじゃな〜い? あれだけ意気投合して、学校の復興頑張ってる〜なんて言っちゃってさ?」
「今からやろうとしてる事はその真逆だけれどね」
地面に這い蹲る私をカヨコは見下ろし肩をすくめ、ムツキはいつも通りケラケラと笑っている。
…………一社長が、こんな様でいいのか? アウトローになると決めたのに、こんな事で子供の様に蹲って、悩んで、泣いていて良いのか?
いや、良くない……、のかもしれない。うん、良くないんだ、なら。私はちゃんとしなきゃ!
「くっ……、ぐうぅぅぅ……駄目よ、ここままじゃ駄目よ陸八魔アル! 一企業の長として!」
私はアウトローだと自分自身に言い聞かせ、まだ残っているうしろめたさや罪悪感ゆえに重くなっている足を動かし、頬をペシペシと叩いて何とか立ち上がった。
「行くわよ!! バイトを集めて!!」
そんな吹けば崩れる虚仮の意気で自分を奮起させ、目の前のメンバーに号令をかけて私はバイト達が待機している場所へと向かう。心の何処かでアウトローである事を恨んで。
そして、先ほどのラーメン店から少し離れた所にある私が雇われ達の待機場所にしていた廃ビルに到着し、集合場所にしていた一室へと向かって立て付けの悪い金属製のドアを開けると、待機していたバイト達が一斉にこっちを向く。
「なんだよ〜、遅かったじゃん」
工事現場で被る様なヘルメットをそれで目が見えるのか、と言うほど目深に被ったリーダー的人物がポーカーをしている手を止め、ニタニタと笑いながらコチラに向く。
「少し野暮用よ、準備はいいわね?」
「ええそりゃ勿論、廃校寸前の学校を落とすのは砂の城をバズーカで叩き壊す様なもんだ」
「……フッ、まぁいいわ。……それで、よろしくお願いしますね? 主任?」
私は傭兵の方を一瞥し、その奥の方にいる軍隊の幹部が着る様な制服の上に不釣り合いな防弾チョッキに身を包んだ、頭頂部に短く跳ねた寝癖を付けたボサボサの短い髪に、人当たりの悪そうなギラついた笑顔を浮かべるすらりと背ののびた……と言っても、私とそこまで変わらない身長の女に目線を向ける。
「ま、頼まれたからにはやるしかないしね。十分働かせてもらいますよ? 社長?」
「……」
女にしては低い声……と言っても、ハスキーボイスと言うより女らしくも無い寧ろ男の様な印象を受ける声が飄々とした喋り方で私の耳に入る。……貴方本当に女なんでしょうね?
「……いいわ、わざわざカイザーから来て頂いたんですからそれなりに期待しておくわよ」
「ギャハハ! 了解了解〜」
狂った様な笑い声をして了承した彼女を一瞥し、私がその部屋の出入り口の方へと向かうと、ハルカ、カヨコ、ムツキの三人に、私の雇った傭兵達とその傭兵に偽装されたカイザーグループの兵士、そして主任がついてくる。
「出動〜!」
「はぁ……」
「アル様……私、頑張りますから……。とりあえず! ぶっ潰しちゃいましょう!!」
「さぁ、行きましょう。アビドス高校を襲撃するのよ!」
お読みいただきありがとうございます!
さてさて、最後の最後で色々と明かしました。
◇主任てだーれ?
主任とは、まぁあれです、ACVの主任です。愛してるんだぁ、君たちをぉ!で有名な主任です。ある程度(当社比)マイルドにした主任です。
◇なぜ結成?
わざとです、なぜなら戦闘がないからです。気にするな!
では、また次回。
茅場君に使ってほしい兵器
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四連装機関砲
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大型レールガン
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18連装ミサイルランチャー
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155mm榴弾砲FH70
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六連装超大型チェーンソー
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ブースター付き柱
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主任砲
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マルチプルパルス
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ヒュージミサイル
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ヒュージブレード