これを書く為にもう何回か1章見直してきました。
誤字報告などありがとうございます。
では、どうぞ…。
「ふぅ…、疲れた…」
あのあと、なんで姉御と呼ばれるに至ったのかについて、僕は皆から質問攻めにあっていた。
どこで関わりを持ったのかとか、どんな悪質な手段を使ったのか、人質をとってまで従えていたんじゃないかとか、先生からも質問が飛んできて、全部僕が降りかかる火の粉を払っただけで悪辣な手段は使っていない、と言う弁明を三十分ほど繰り返した事でやっと解放された。
「も〜、アキラちゃん、もうそんな悪い子達に関わっちゃダメだよ〜?」
「う…、解りました」
ホシノにペシペシと背中を叩かれ、釘を刺された事に少し狼狽えながら僕はそう返す。
「あ…あの…、助けてくれて有難うございます、貴方達がいなければ学園に迷惑をかけて仕舞う所でした……、あぅ…、抜け出してきたのにその上問題なんて起こして仕舞えば…うう、想像しただけでも…」
すると、ヒフミが少し申し訳なさそうに僕らの前に出てきて早口に感謝半分に謝り、先生は何事もなく終わった事に安堵している。
「えっと、ヒフミちゃん…、だっけ? トリニティのお嬢様が何でこんな物騒な所にいるの?」
「あはは……、それが、少し探し物をしてまして…。もう販売されていないので手に入らないのですが、ブラックマーケットで密かに取引されていると言う噂を聞きまして…」
「もしかして戦車?」
「それとも違法な火器?」
「もしかして…化学兵器?」
ヒフミが困り顔でそういうと、僕以外のアビドスの面々がぴくりと反応し、各々口々に物騒な兵器の名前の出す。まぁ、普通に考えたらこんな闇市で手に入れれる違法な物などいえばその辺が浮かぶだろうけどね…。
「えっ!? はっ…!? い、いいえ、そんな物ではなくて…、ペロロ様の限定グッズです」
「ぺ…ペロロ?」
「はい! これです!」
物騒な言葉に驚いたヒフミは、一転して元気な口調に変わると、持っていた重そうなバッグから一個の奇妙な掌より少し大きい縫いぐるみを取り出した。その縫いぐるみはどう見てもペンギンとも鶏ともつかぬ物体がアイスを口にぶち込まれて目ん玉や舌を出して窒息死しかけてる縫いぐるみで……、その全ての要素が何とも言えないキモカワイイさを醸し出している。
「ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定の縫いぐるみ! ね? 可愛いでしょう?」
「「「…」」」
一斉にセリカを筆頭にシロコ、ホシノが取り出されたそれを見て黙りこくった。皆、可愛いのか? これ? と少々訝しむ表情でその縫いぐるみを見ていた。だが、ノノミだけはそれを見て同志を発見したような喜びの目をしてヒフミに近づく。
「わぁ☆、モモフレンズですね! 私も大好きです! ペロロちゃん可愛いですよね〜、私、ミスター・ニコライさんが好きなんです」
「わかります! ニコライさんは哲学的な所がカッコよくて! あ! 私、買いました! ニコライさんの最近でた『善悪の彼方』を! もちろん初版で!」
同じモモフレンズとして意気投合したノノミがヒフミと手を取り合いながらオタクトークを繰り広げる。そのトークに皆は置いてけぼりにされ、一斉に困惑の表情をしながらその二人に目線を向ける。
「…いやぁ〜、おじさん何のことかさっぱりだなぁ〜…」
「ホシノ先輩、こう言うファンシー系にそもそも興味ないでしょ」
「うむ、最近の若い奴にはついて行けん」
「歳そんな離れてないでしょ…」
ホシノが見た目にそぐわぬ発言をしてセリカに突っ込まれる。すると、ふと何かの感覚が途切れる感触がホシノを襲い、少々の違和感を感じたホシノが周囲を見渡すと、少し不安そうな顔をして先生に向かって口を開く。
「先生、アキラちゃん何処に行ったの?」
…ふぅ、みんなの興味があの何とも言えないペロロ人形に持ってかれた隙に何とかバレずに抜け出せた。アビドスの皆から離れ、ビルとビルの間の裏路地に隠れた僕は、その場で少し安堵していた。
「ヤァ、アキラくんちゃん? この前振りだねぇ?」
ふと、後ろから人をおもちゃにする様な、飄々とした喋り方の何処か絶対癪に触る声が聞こえる。
振り向けば、長身で細身な元は綺麗な顔立ちの、まぁ美人と言える存在なのだが、ギラギラとした汚い笑みと手入れされていないボサボサのショートヘアーがその素材を全て台無しにしている。
「…一体こんな所に呼び出して、何が目的です? 主任」
「ギャハハ、ま、ちょっと用事があってね」
「…?」
用事? くだらん事なら帰るぞ?
僕がギロリと主任を睨むと、薄ら笑いをしながら主任は両手をひらひらさせ、まぁまぁとこちらを宥める。
「着いてきなよ、黒服の旦那と理事が呼んでるもんだから」
「…はぁ?」
主任から伝えられた招集の言葉に、頭の上にハテナマークを浮かばせながら、僕は主任の後をついていく。こう言う時、主任はくだらない事はしないし、別に上からの招集を捏造する様なバカでもない。
認めがたいが、こればっかりは主任の信用できる所だ。
「…そういえば主任、僕、あなたの名前聞いた事が無いんですけど」
「ん…、ああ、俺の名前…ね」
移動中、僕がふとそう聞くと主任が意味深な面持ちに変わり、名乗るのを渋る。
「ずっと主任って呼ぶのもなんかヤですし、教えてくれてもいいんじゃないんです?」
「…月島トウト」
主任の口からその名前らしき音が聞こえた、いや、名前を言っているんだ、だが、ノイズが走った様にその声は言葉として聞き取れない。まるで何かに邪魔されるように声にノイズが入り、言葉として、声として聞き取れない。
「…は?」
「…ま、やっぱそうなるよね〜…、そう言うこと、まぁ気にしない気にしない。名前が分かんないからって、別に何の問題もないでしょ?」
「…まぁ…、そうですけど」
…名前が言えない、か、ほうほうなるほどそう言うことか……。
「ちなみになぜ言えないのかとか分かります?」
「俺に聞かれても、分かる話じゃあ無いなぁ。それこそ、アキラくんちゃんが従う黒服にでも聞いてみたらいいんじゃない?」
主任が僕の剣幕に少々たじろぎ、困惑の表情で後ろ頭をガリガリと荒っぽくかき回す。ほう、天下の主任もそんな表情するんですね~? 主任のそんな反応に少し新鮮味を感じ、その後もいくつか質問をしていると主任が逃げる様に小走りにある一つの建物へと向かう。
「っと、到着だ」
途中からだんだんと見慣れた道へとブラックマーケット郊外、そこは、黒服が居を構えるビルであった。
「………」
「はいはいそうやって帰ろうとしない~…、何か不都合でも?」
「…ありありのありですよ、今から…」
今から貴方達の計画を潰す一助をする…、なんて言えたことではない。
「別に、あの子達の方に行っちゃってもいいんだよ~? アキラ君ちゃん? 君がどう動こうが、こっちにはあんまし関係無いんだからさ」
「…つまり、僕が行動を起こす必要は無い…と?」
「ぶっちゃけて言えばね。今回協力してるのだって利害の一致だし、黒服の旦那はこっちを手足として利用してるだけだしね~」
そういって気を取り直した主任はゲラゲラと気狂いの如く笑う。一見キチガイの狂人にしか見えないが──実際そうなんだけど…──これでも主任は頭が悪い訳ではなく、逆にいい方に分類されるのがこれまたなんとなく腹立つ案件だ。
「ま、とりあえず来なよ。何かあるかもしれないしね」
「…わかりました、主任」
「OK~、聞き分けの良い奴女の子…いや男の娘はお姉さん大好きだよ~?」
「ぶっ叩きますよ?」
僕はへらへらとウザったい演技で僕をからかう主任をギラリと睨みつけるが、当の主任はそれすら可愛く思う様に僕を見てゲラゲラと笑う。
…恐らく、主任は僕の事をただの年下の後輩くらいの程度にしか見ていないんだろうが、此方としては前世のゲームの影響で戦闘を喜々として行い、享楽の一種として同士討ちもいとわない狂人のイメージが先行している。前世のアイツとは違うが、ただどうしてもそのイメージがぬぐえない。
そんな主任を尻目に、僕はビルの中へと入る。内部はいつも通りの少しばかり明るいエントランス、待合者向けのソファには誰も座っておらず、周囲が少々明るいのもあって妙な不気味さを醸し出している。僕はエレベーターのボタンを押す、少しするとエレベーターの上の表示が今僕らがいる1階を示し、目の前のドアが開く。
「…ま、行きましょうか」
長く、そして短い、裏切りの狂言芝居の序幕が開かれた。
お読みいただきありがとうございます。
…はい、何だかちょっと不穏になってきましたね。
というか何とか今日は午前九時に投稿できた…、よかったよかった。
では、また次回。
曇るんだったら?
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ホシノ
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シロコ
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先生
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全部!