最近何気に伸びてて嬉しい限りです。
では、どうぞ…。
ブラックマーケットの一角にある地上20階建ての高層ビル。この地では珍しく損壊の無い奇麗で真新しいビルの周囲にはブラックマーケットの治安維持組織であるマーケットガードが巡回しており、物々しさを醸し出している。
……そのビルの10階、黒服がいつもいる部屋の、黒いドアが目の前に映る。
三回ノックをすると、中から「どうぞ」と、黒服の声が聞こえて、僕はガチャリとドアを開けて中へと歩を進める。
……はぁ、面倒ごとかぁ……、前回、僕は主任はこういう時はふざけないと言ったが、面倒ごとを持ってこないわけではないんだよなぁ……。ま、何とかするか、こんな形でもゲマトリアだしね。
「失礼しま……す!?」
「来ましたか、アキラ」
「……遅かったな、主任。何を手間取っていた?」
「全くだ、理事が居るというのに貴様と言うモノは……」
「いやぁ~なんだかこの子がお仲間にご執心だったようで、ちょいと手間取りました」
僕が中に入ると、和かに出迎えるいつも通りの黒服の姿と、でっぷりと太った体にスーツを纏ったカイザーPMC理事が偉そうにステッキをもって応接間を兼ねている黒服の部屋のソファに座っていた……が、その後ろに質の良さそうな軍服を身にまとい、頑丈そうなブーツを履き、両手を背中の後ろで組んだロボット姿の体格の良さそうな人……人? まぁ……、つまり、カイザーPMCの司令官であり、これからカヤと内通したりシャーレを襲撃するジェネラルが居た。
彼は僕の疑問を孕んだ視線など意に介さず威風堂々とその場に直立し、その目に当たるであろう緑色のライトが煌々と光り、ギラリと主任を睨んでいるようにも見える。
ソファに座った太った理事の後ろにジェネラルが居るこの立ち位置では、テンプレのような悪の司令官とその副官に見えるその光景は、どうも滑稽な様にも思える。
この二人のこの見た目だけなら強そうだが実際ブルアカのストーリーを見るとジェネラルも割と間抜けなんだよな……、ま、愛嬌愛嬌。
「……さて、君は茅場アキラ……と言ったかな?」
「……はい、理事殿」
「黒服から君の活躍は聞いているよ。何でも、身長の倍ある大砲をまるで自分の手足の様に扱って君を襲う愚連隊を潰しまくってるそうじゃないか?」
「……誉め言葉として、受け取っておきましょう」
理事が僕に向けて皮肉っぽく、偉そうな口調でそう言い、僕はその言葉に感じる苛立ちを心の中に仕舞い込んで、少しだけ頭を下げる。
「君がくれた内情報告の資料、一通り目を通させてもらったが……、かなり興味深い報告だ」
「……」
「何処からとも無く、納入された新たな装備に新型の通信機器などの精密機器……、そして、『先生』、と言う存在の事もな」
「……はい」
理事は僕に顔を向け、アイラインを細めて、ステッキで一つオフィスのカーペットを突いて立ち上がる。ただ立つために体重をかけた様に見えるその一突きには理事の妙な苛立ちが込められている様に見え、その姿を見た主任の目が何かを察した様に少し細められる。
「全く有能なことだ、君の事に俄然興味が湧いたよ。どうだ? カイザーPMCに入るつもりはないかね?」
「……丁重にお断りさせていただきます」
いつだかの潜入任務の時のように理事に誘いをかけられたが、僕はすぐに断る。僕はカイザーではなくあくまでゲマトリアだ、裏切る……いや、寝返る事はしないさ。
……ま! アビドスは裏切るんですがね!!
「そうか、残念だ。……行くぞ、ジェネラル、主任」
「了解です」
「あいあいさ〜」
コツコツとステッキを突きながら理事は出口の方へと歩き、それに「あいあいさ〜ではないぞ、主任」と主任を睨み付けたジェネラルがついていき主任がヘラヘラとしながらその二人の後ろを歩く。
「……そうだ、茅場アキラ」
「君が何をしたか、我々にはお見通しだ」
「……」
最後にそう言って、今僕が決めた理事、ジェネラル、主任のカイザーPMC三人衆はこの部屋から出ていった。ブラックマーケットの利権争いにどっぷりと関わり、兵器産業のみならずキヴォトスのインフラすら握っている連中。水面下で争っている企業の連中すら、カイザーグループが持つインフラ事業の所為でそう簡単に手出しが出来ないのも厄介極まる案件だ。
……企業の連中など、皆死ねばいい。子供を労働力として貪り食って、搾取するだけして用済みになったらポイなど胸糞極まる。
閉じられたドアを壊れそうなほど睨み付ける僕の後から、ふとギシギシと言う軋んだ音、ガコガコと何かが外れてはまた嵌るような音、お世辞にもいい音には言えない音が聞こえる。
「ふむふむ……、これが黒服の言っていた新たなメンバーか……」
「おわっ!?」
突然掛けられた声に驚きながら後ろを向くと、色の燻んだ藤色と黄土色の燕尾服に身を包んだ、一つの体にひび割れた双頭の木偶人形の美術家ことマエストロが僕を興味深そうに見ていた。
「マエストロ、アキ……、いや、スエズが驚いてますが?」
「ああこれは済まない、スエズくん、私はマエストロと言う。芸術家だ、これから宜しく頼もうじゃないか」
マエストロは軋んだ音を立てながら僕の前へ右手を差し出し、僕はその手を取って握手をする。触ってみれば見た目の通りその手はゴツゴツと硬く、ニスの様なコーティング剤が塗ってあるようで、削られた木の様な手触りはなく、ツルツルとしている。
「君が新たなメンバーですか、私はゴルコンダ、こちらが相棒のデカルコマニーです。無礼ながら背を向けた状態での挨拶となることをお許し下さい。私にはこれ以外の方法がありませんので……」
「そういうこったぁ!!」
遺影の様に胸に抱えられた男の黒い後ろ頭が写された写真、その中に入っているゴルコンダが挨拶をし、ステッキを持った首なしの茶色のコートの男性こと、デカルコマニーがクソデカボイスで相槌を入れる。
「失礼、彼はいつもこんな感じなのです」
「そういうこったぁ!!」
再びデカルコマニーがクソデカボイスで相槌を入れる、驚いた僕にゴルコンダが「すみません」と軽く謝った。割とこの二人は僕好きだよ。
「……さて、そろそろ皆の自己紹介も終わりましたので___」
「待ちなさい、私の紹介がまだでしょう?」
突如現れたナイスバディの赤い女性……
「先程から居ました、あら、こちらが例の新入り?」
そう言ってベアトリーチェが僕の側へと近寄り、少ししゃがみ込んでその赤い左手で僕の頭を撫で、そのまま僕の頬へとその手を流し、品定めする様な目つきで僕の顔をまじまじと見つめる。
「……貴方、綺麗な顔立ちをしてますわね」
「……」
ニヤリとベアトリーチェが笑みを浮かべると、乱杭歯が目に入り彼女自身は普通に微笑んでるつもりなのだろうが、その乱杭歯の所為で余計に不気味に見える。
だがそれ以上に眼前の胸のデカさがヤベェ、やはり性格はクズでも体は最高なんやな!
ベアトリーチェの綺麗な体に見惚れていると、後ろから伸びてきたマエストロの腕が僕を引っ張る。
「おっと、仲間に引き入れるのはやめたまえよ? ああスエズ、この何時も怒りすぎて自分の体さえ真っ赤になった芸術をわからない更年期まっさかりのおば……ン"ン! ベアトリーチェの事は無視していいぞ」
「そういうk「デカルコマニー! しーっ!」」
マエストロが憚る事無くベアトリーチェに聞こえる声で僕にそう言い、デカルコマニーがそれに勢いよく相槌を入れようとした所でゴルコンダに制止される。
「貴方達ィ……どこまでこの私を侮辱すれば気が済むのでェ……!?」
怒りで今にもベアトリーチェが、マエストロに一発蹴りでも入れそうな空気になると、僕がその当人であるベアトリーチェの方を向く。
「あ、あの……ベアトリーチェ、と言うのですか? これから宜しくお願いします」
「……少し、頭に血が登りすぎた様ですね。ええ、宜しくお願いします、スエズ。私の事はベアトリーチェお姉様かお姉ちゃんとお呼びなさい」
お姉ちゃんと言う年齢ではないだろ……とマエストロが言うとベアトリーチェの扇子がマエストロの顔面にすっ飛んできた。
「は、はい……わかりました、……ベアトリーチェお姉ちゃん?」
僕が言われた通りにお姉ちゃんと付け加えて呼ぶと、目の前のベアトリーチェが足の先から頭のてっぺんまで何かの衝撃がゾクゾクと駆け抜けるような様子を見せた。
……まさかベアおばってそう言う趣味……?
「……そんな訳で、我々はゲマトリアの一員として、貴方を歓迎しますよ。スエズ……いや、茅場アキラ」
「はい、こちらこそ、宜しくお願いします」
その後も腹に一物抱えた人間……、人間? まぁ人たちと一緒に、少々和やかなムードで話していると、黒服が自前と思しきノートパソコンの画面を見て、僕の方を向いた。
「……アキラ、そろそろ、お仲間さんの方に戻られては?」
「そう……、ですね、では、僕はこれで」
黒服の言葉に僕はそそくさとブラックマンバを担ぎ、装備をととのえて黒服の部屋から出た。理由どう繕うかな……、戦車の情報集めてた、とかでいっか。
◇◇◇
茅場アキラが退出した部屋の中、一人が抜けたことによる少しの沈黙を破る様にマエストロが軋んだ音を立てながら黒服の方を向く。
「……彼女……いや、彼がお前の言うキヴォトス最高級の神秘の一人か?」
「ええ、マエストロ、お気に召しませんでしたか?」
喉奥でくつくつと黒服は笑い、組んでいた腕から片手をヒラリとさせると、マエストロは軋んだ音を立てて肩をすくめ両手を横へと持っていく。
「いやいやそんな事は無い、逆に彼は美しい、あの様な女の様な見目をしてその実男とは……、まさに芸術の様では無いか」
マエストロが体を仰け反らせるギシギシと言う軋んだ音が彼の笑い声の様にその部屋に響く。その音にベアトリーチェが顔を顰め、ばさりと扇子を開く。
「……いいでしょう、とくと見させていただきます。あの木偶が言う事よりまだ建設的ですから」
「宣戦布告とみなすぞ? その言葉」
「まぁまぁお二人とも落ち着きましょう、我々は利害の一致で偶然協力しているに過ぎません。多少の合う合わないは目を瞑るべきでしょう」
ベアトリーチェの挑発にマエストロが乗ると、ゴルコンダがそれを手慣れた様子で諌め、デカルコマニーが「そういうこったぁ!」と勢いよく相槌を入れる。
「クックック……、まぁ、我々は目先の事に気を取られ過ぎてはいけません、いつか来る災厄の為に行動しているのですから」
「そういこったぁ!!」
黒服の言葉にデカルコマニーが相槌を入れ、他の三人──ベアトリーチェは少々別のことを抱えている様だが……──も同意の意を示し、アキラが出ていったドアの方を見つめる。
「さて、我々はあなたのことを応援してますよ?茅場アキラ」
お読みいただきありがとうございます。
なぜにジェネラル出したかと言いますとね、一応あれでもPMCの司令官なのでこう言う時には出てくるかなぁと思いましたので。
ちなみにベアトリーチェはアキラが男である事を知っています。なんでそんな興奮するんでしょうね。
では、また次回…
曇るんだったら?
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ホシノ
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シロコ
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先生
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全部!