今回、待ちに待った銀行襲撃回です。
では、どうぞ…。
「……遅いわね」
私、陸八魔アルはブラックマーケットの闇銀行で待ちぼうけを食らっていた。
なぜ、私はそんな所にいるのか、遡れば昨日の事になるけど……。
『……興味深い練習だった、それで、実戦はいつかね?』
電話先から聞こえる低い声、沈んでいた私の気をもっと沈ませる様な声色で、私の耳へと入っていき、えも言われぬ寒気と恐怖感に包まれる。
「えっ……、あの、あれが実戦で……」
『ん?』
「あ、いえ、なんでもありません。勿論実戦はまぁすぐにでもって感じで……」
『何時頃だ?』
電話先の声の覇気がより凄まって行く。
「えっと、はい……、一週間以内にはって感じです……」
私のその言葉に、銃のメンテナンスをしていたカヨコと、スマホを弄っていたムツキが驚きの顔で此方を向く。
『そうか、期待している』
「……ふふ、お任せください」
私は震える手でガチャリと受話器を置き、緊張をため息にのせて椅子に凭れ掛かる。さっきの一連の流れで数日分の寿命が縮んだ気分になった。
ムツキがいつも通りの揶揄う様な笑顔を向けているが、それでも心配する様子で話しかけてきた。
「やつれたねぇ、アルちゃん」
「……社長、一体どういう事……? まさか、またあの子達と戦うの?」
「……あのクライアントは、──私も良く知らないけど──大物なのよ。この依頼、失敗するわけにはいかないわ」
カヨコがまた彼女たちを刃を交える事に釈然としない様子で聞いてくる。だが、依頼してきた組織は聞いた話だとかなりの大口である、詳細は聞かなかったのでよく分からないが、そんな巨大な組織を相手にどうのこうの言われては、寒気の一つ確実にしてしまう。
私がその旨を話すと、カヨコは黙りこくった。
「でもさ、アビドスの連中思ったよりも強かったじゃん。シャーレの先生も居るんだから、そう簡単な事じゃ無いと思うけど?」
「お金だって使い果たしちゃったし、これからどうすんのさ?」
そう言ってムツキが取り出したのは今週一週間の収支報告書、これまで立派な事務所を手に入れたり、大量の各種装備を新調したりと身の丈に合わぬ事をして、こないだ傭兵を雇った事がさらなる決め手となり、まごう事なき赤字を示してるその報告書。
そう、私は依頼を達成した事による莫大な報酬が手に入る事を見込んで組み立てていた為、今回達成できなかった事で甚大なダメージを負ってしまったのだ。
「……わ、私がバイトでもしてきましょうか?」
「その稼ぎでまた傭兵を雇うんだったら、全員あと一年は働かなきゃだし、そもそもそれで良いならフリーターだよ」
ハルカが耐えかねた様にそう言ったが、難しい顔をしたカヨコにそう言われる。
「……アルちゃん、諦めて他の依頼を受けたら?」
「無理よ、この依頼のためにスケジュールを大幅に開けちゃったから当分新規の依頼は来ないわ」
「八方塞がり……って事ね」
「じゃあもうとりあえずこの事務所引き払ったら〜?」
「うるさい! 黙りなさい! ……一体どうしたら……」
ムツキの言葉に私は喰らいつく、会社に事務所は基本、これ大事! ……とはいえ、そうは言っても今現在お金がないのは事実、どうにも出来ない、こうなるんだったら銀行口座が風紀委員会に凍結される前に全額下ろしておけばよかったわ……。
……ん? 銀行?
その言葉に、私の頭の中にある一つの案が浮かんだ。
「……融資を受けるわ」
「は? アルちゃんブラリス入りしてるでしょ」
ムツキから辛辣な言葉が飛んでくる、確かにブラックリスト入りしている私は
だけど……。
「表じゃなくて、
そうして、今私達はブラックマーケットの闇銀行の中に待たされている。六時間前に受付に行って「少々お待ちください」とだけ言われ、整理券をもらってから現在六時間が経過している。
「お待たせしました、お客様」
いつまで待たせる気よ! と、喉から盛大な声が出かけるが、それをグッと堪える。だが、プルプルと震えるその肩は隠しきれない怒りを表している。
「……本当に、待たせてもらったわね」
「……融資の審査に、なんでこんな半日も時間がかかるんでしょうね? 私たちの前に、だ〜れも待ってる人は居なさそうだったけど? そして、ほら」
怒りで目元がヒクつくのを隠すのを諦め、声に有らんばかりの怒気を孕ませて目の前の銀行員に静かに怒りをぶつけ、私は自分の後ろに指を刺す。その指を刺した先には便利屋の皆が待合の為に設置されたソファで寝転び、すぅすぅと寝息を立てている。
「私の連れは飽きて寝ちゃったじゃない?」
「私共の内々の事情でして、ご了承ください」
そんな私の怒りなど意に解さぬ涼しい表情で目の前の審査官は手元のタブレット端末を弄り、ソファにねる便利屋の面々をゴミを見る様な表情で一瞥した。
「当行の助けが必要でしたら、辛抱強くお待ちいただくことも必要かと。そしてお連れの方、そこでお休みになられては困ります、セキュリティ、あの浮浪……いえ、お客様を起こして差し上げなさい」
「ほら、起きた起きた!」
そう言って目の前の行員が指を鳴らすと、フルフェイスヘルメットに防弾チョッキを着た完全装備のガードがカヨコ、ムツキ、ハルカの三人を荒っぽく肩を揺すって起こす。
「むにゃ……おわ! 何々?」
「…………ん?」
「ああっ! す……、すみません! 居眠りしててすみません!」
無理やり眠りから引き戻された三人は突然の事に目を白黒させ、その姿を見ていた私は、ここが本当に銀行なのかと俄かに信じられない感情を抱いた。
「さて、ではご一緒に確認させていただきます、陸八魔アル様、ゲヘナ学園の2年生でいらっしゃいますね? ……現在便利屋68の社長……となっておりますが、この会社ペーパーカンパニーでは? 書類上では財政が破綻していると書かれていますが」
「ちゃんと稼いでいるわよ! まだ依頼料を回収出来ていないだけで……」
「はぁ……左様ですか。では、従業員の方、四名のみとありますが室長に課長、そして平社員……、単なる肩書きの無駄遣いでは? 会社ごっこをしておられるので?」
「肩書はしっかりしておいた方がいいし……」
「……そして、事務所の賃貸料が高すぎます。もっと身の丈に合った運営というものがあると思うのですが?」
「ちゃ、ちゃんとしたオフィスの方が……仕事も……」
だんだんとしどろもどろになって行く私の姿を見た行員の目が段々と厳しく、細くなって行くのが見える。
「……アル様、率直に申し上げ察せていただきますがこれでは融資は難しいですね。より堅実な職についてみては如何でしょう? 日雇いや期間工など、手っ取り早く始められる物であればこちらでもご紹介できますが?」
「んな……!」
便利屋を解散しろとも取れるその言葉に私は怒った。先程のからのこの行員の上っ面だけ丁寧に繕った無礼な態度に腹は立っていたが、その人を舐め腐った態度にそろそろ我慢の限界を迎えそうになる。……もうここで大暴れして銀行の金をぶん取ってしまおうかしらとも思い、銃を手繰り寄せるが、ふとその手を止める。
よく考えてみれば、仮にここからお金を持ち出せたとしてもここから抜け出せるのかと言う問題が存在する。周りを見れば玄関周辺に2名、カウンター近くに2名、奥に1名そして私たちを起こしに来た3名の計8名。流石にここにも詰め所みたいなモノがあるだろうから実際は多分それ以上入ると見ていい。
……でも、見た目だけで実際大した事のない連中なのかも、私たち4人で暴れればもしかしたら……。そう私は考えたが、よくよく考えてみればもし脱せたとしてもその後のリスクを考えると得策じゃない、裏社会に生きるものとして、ブラックマーケットを敵に回すのは如何にも気が進まない。
……はぁ……、情けないものね、好きに生き、好きに戦い、やがて理不尽に死ぬ、そんなハードボイルドなアウトローになると決めたのにこのザマ、もしかして向いてないのかしら___?
私がそう失意の念に囚われていた時、ふと首筋がザワザワと騒いだ。……私の第六感が告げている、今から何かがあると。その私の体が警鐘を感じ取った刹那、バツンという音と共に目の前が真っ暗になった。
「な、何事です!? 停電!?」
行員が叫んだ後、爆竹を大量に連ねて破裂させた様な凄まじい連鎖的な破裂音が響き、続いてダイナマイトが炸裂した様な先程の破裂音とは比べ物にならない程の爆発音が数発轟く。
「銃声!?」
「なんだ! 爆弾か!?」
「うわっ! ギャァァァ!!」
「いっ、一体何が!」
そこら中に銃声と爆発音が鳴り響き、それに続いて絶叫、悲鳴、そしてドサリと何かが倒れる音がする。10秒だか20秒だかの短い時間の停電の内にそれはずっと聞こえていた。
そして、その停電が終わった頃、銀行の玄関の前に6人の人影が見えた、大型の武器を持った二人が両翼を固め、そこから伸びる様に自動小銃系を持った3人が入り、真ん中には盾を構え、その上にショットガンを乗せた全員覆面姿の集団が現れた。
「「「「覆面水着団! 見参!」」」」
お読みいただきありがとうございます。
???「アビドスメンバーがほぼ出てないやん、如何してくれんのこれ?」
作者「すみません、なんでもするんで許してください」
???「ん?今なんでもするって?」
いやまじですみません、次回は暴れ回ります。多分。
では、また次回
曇るんだったら?
-
ホシノ
-
シロコ
-
先生
-
全部!