誤字脱字報告ありがとうございます。
では…どうぞ…。
「一体どう言うことよこれは!」
セリカの絶叫が委員会室に響く、その手には、ブラックマーケットの闇銀行から押収した現金の集金記録が握られていた。
「……セリカさん、あの金塊の入ったバックの事ですか? あれなら僕が責任持って銀行に置いてきますから……」
「違わないけど違うわよ! これよ! これ! ちゃんと見なさいよ!」
またもやセリカが叫びながら手に持っていた集金記録を机に叩きつける、その記録用紙には集金の担当者の名前に、集金の日付にルートが記載され、アビドスが欲しがっていた証拠を声無く物語っていた。
僕をのぞいて、記録用紙を見る皆の目は厳しい、シロコが紙面を指先でなぞり淡々とした口調で、しかし重苦しく告げる。
「現金輸送車の集金記録にはアビドスから七百八十八万円集金したって書いてある、だから、私達の所に現金輸送車で間違いない…………、けれど、その後すぐにカタカタヘルメット団に"任務補助金五〇〇万支援"と書いてある……」
「それって……つまり……」
「そう! そうなのよ! 私達のお金が、ヘルメット団に横流しされてたって事なの!!!」
怒り心頭とばかりにセリカが机を叩き、アヤネが何かに気が付いたように口を開く。
「任務補助金……、つまり、ヘルメット団の背後にいるのはカイザー……ローン?」
「理解できません……、学校が倒産したら、貸し付けたお金だって回収できないでしょうに……」
「……ふーん」
ノノミが理解できない表情になり、ホシノが腕を組んだまま唸る。これにて決定的な程に証拠は揃った、ヘルメット団を、次には便利屋までもを用いアビドスに手を出していたのはカイザーローン。
アビドスから回収した利息をヘルメット団に横流しし、武器弾薬諸々を揃えさせる、企業なら高級な軍用戦車だって支援できるだろうし、それを整備するメカニックなど大量にいる。確かに、ヘルメット団単独では難しい事もカイザーレベルの大企業が関わっていると分かれば面白い程に謎が解ける。
「……どう考えても、カイザーローン単独じゃありません、絶対に本社の息が掛かってると思います」
「……私達の稼いだお金をヘルメット団に渡して、一体何の得があるって言うのよ!! 襲撃にリソースを割かれて、返済が滞るだけじゃないの! 期間を引き延ばして、どうにか利息を巻き上げてやろうって言う魂胆!?」
「_____……いえ」
怒りで興奮するセリカを引き止める様に、ヒフミが何とも言えない沈痛な表情で口を開く。
「だったら、そんな回りくどい事をする迄も無く利息の上乗せなど他にも方法があります、話を聞く限りではカイザーはアビドスから回収した以上の金額のお金を注ぎ込んでいる様に思えます。なら、全体で見れば赤字、企業である限り、理由がそれでは意味がないのです」
「……つまり、ヒフミちゃんはそれ意外に理由があると思うの?」
「はい、それは……、アビドスが持つ、《何か》、と言う事になるでしょう……」
ヒフミは重苦しく、そう一言だけ告げた。
◇◇◇
「皆さん、ありがとうございました」
アビドスの校門前、日が暮れる前にトリニティに帰る事になったヒフミをアビドスの皆+先生は見送っていた。ヒフミが礼儀正しく深くお辞儀をすると、ノノミが少々申し訳なさそうな表情になる。
「色々な事に巻き込んでしまって御免なさい、ヒフミさん」
「あ、あはは……」
「ま、今度こっちから遊びに行くからそん時はよろしく〜」
「あ、はいっ! 勿論です!」
ホシノの言葉にヒフミが元気に答える。そういえば、トリニティには美味しいアイス屋があるそうな……、今度行ってみようかな。
「まだ詳しい事は明らかになっていませんが……これはカイザーコーポレーションが、犯罪者や反社会勢力と何かしら関連があるという証左です、戻ったらこの事実をティーパーティーに報告します! ……それと、アビドスさんの現在の状況についても……」
「……、まぁ、ティーパーティーはもう知ってると思うけどね〜」
「えっ? それはどういう……」
ヒフミがふんすと鼻を鳴らしてそう意気込んで答えると、ホシノが頬をぽりぽりと掻きながらバツが悪そうに答える。
「トリニティ程の規模の首脳部ならさ、もうそんな事とっくのとうに把握してると思うしさ、ヒフミちゃんいつだか言ってたでしょ? ティーパーティーが既に目を光らせてるって……、さ」
「__ぅあっ……」
「ヒフミちゃんは純真でいい子だね、でもさ、世の中そんなに甘くないんだ」
棘の含まれたホシノの言葉にヒフミは息を詰まらせ、少しハッとした様な、そして鈍色の曇天の様に暗い表情になる。良い子というのは本心だろうけど、アビドスの現状を考えれば、その支援を受けるわけには行かないのだ、なぜか?
「……僕が説明しましょう、アビドスの廃校寸前の現状を考えると、トリニティやゲヘナの様なマンモス校からの干渉を上手く制御するだけの力がないんですよ。つまり、サポートするという名目で裏で悪さされてもこちらは気付く事が出来ない……、即ち、こちらにパニックが起き得るという事です」
「アキラちゃんその通り、うーん花丸あげちゃおうね〜」
「そ、そう……ですよね、その可能性も無くは無い……ですよね……、難しいです、政治って」
「で、ですが二人とも悲観的に考えすぎではないでしょうか……、もしかしたら本当に助けてくれるかもしれませんし……」
アヤネがヒフミをフォローする様に声をかけるが、まだまだヒフミには曇ってほしいのでそんなフォロー知ったことではない。
「うへ、私は人の好意を素直に受け取れない、汚れたおじさんになっちゃったからね〜」
「……僕は、事実を述べただけです、アヤネさん」
「……万が一、をさ、スルーしちゃったからアビドスはこんなになっちゃったんだ」
「……」
その場に走る数秒の短い、しかしその場所だけが曇った様な深い沈黙。全員が暗い表情をしている中、その沈黙を突き破るようにノノミが喋り始めた。
「本当に、今日一日色々なことがありましたよね……」
「そうだね、凄く楽しかった」
「……楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」
違うぞセリカ、僕も楽しかった。そしてヒフミとアビドス皆の曇らせご馳走様です。
「あ、あはは……、結構危ない事もありましたけれど、トリニティじゃ出来ない事ばかりだったので新鮮でした」
「よっ! 天下のファウスト様!」
「そ、その呼び名はやめてください!」
「皆さん……、ヒフミさんが困っていますから、この辺にしてあげてください……」
銀行強盗の主犯に仕立て上げられては洒落にならないとヒフミはブンブンと首を横にふる。
「とっ、とにかく! これからも大変だとは思いますが頑張ってください! 応援してます!」
そう言って、ヒフミはアビドスから離れていく、その背中は時折こちらに振り向きながら手を振り、僕らも振りかえす。確かに、色々なことがあったけれど、……少し、アビドスが前進した日ではあっただろう。
……その前進は、いつか無駄になるだろうけどね。
「うへ〜、じゃ、解散!」
◇◇◇
「アッキッラちゃ〜ん!」
翌日の朝、僕が諸用でブラックマーケットへと向かおうと廊下を闇銀行から奪った金塊の詰まったバッグを持って歩いていた所、後ろからホシノに抱きつかれた。
僕やホシノとノノミ以外は、皆この時間帯はバイトに行っているので、いつも通り今いるのは代わりの僕と、今お腹辺りに抱きついているホシノ、そしてノノミと先生が今ここにいる。
「……どうしたんですかホシノ先輩」
「いんやぁ〜、なんかアキラちゃんが出かける準備を整えてたから何処に行くのかな〜って」
「特に、言うほどの所でもありませんよ」
「……もしかしてさ、ブラックマーケット?」
ホシノの言葉に僕は驚く、僕の表情が返答となり、当たったと察したホシノはにへらと頬を緩ませるかと思いきや、抱きついていた腕を離し、至って真面目な、そして不安そうな表情を僕に向ける。
「……何しにいくの?」
「……この金塊を返しに行くだけです、ただ、それだけ」
「嘘じゃ……ないよね?」
「はい、誓って」
「……そうなんだ……、そうか……まぁそうだよねうへ、わかったよ〜、じゃ、私も一緒に行ってもいいかな?」
ホシノが小さな声で何か自分に言い聞かせるような語気で何か呟いた後、ニコリと微笑んで僕に向かってそういった。
「……ま、いいですけど……」
◇◇◇
「うへ、ならおっけ〜、一緒に行こっか!」
私は目の前の赤い目の彼女……ううん、彼に向かってそう言った、彼の手には金塊の詰まったバッグが握られ、その背中には大きな大砲が背負われている。
そんな彼は口ではこう告げた、「闇銀行から奪った金塊を返しに行く」と、でも私にとってはアビドスを助ける為にカイザーと戦いに行く、そんな危ない橋を自分一人で渡ろうとしているそう言う風に何となく見えた。
でも、そんな事私が許さない、責任を負うのは彼一人だけであってはいけない、少なくとも、私が一緒にその危ない橋を渡ってあげなければ彼が救われない。……いや、彼にはまだ未来がある、責任を背負うのは私一人でいい。彼が責任を背負う必要はない、危険に晒されるのは私だけでいい。
だからこそ、私は、私は彼の為にもアビドスの皆の為にも、早く、この事を解決しなければならない。
そう思うと、私はつくづく無力感に苛まれる、私がもう少し、もう少しでも強かったら、アビドスをこんな状況から脱せれたかもしれない。なら、私はこの身を持って皆を救いに行かなければならないんだ。
「お待ちしておりました、暁のホルス……いえ、小鳥遊ホシノさん」
「その名はもう捨てたよ、黒服の人」
皆が笑い合える日常を、続かせるために。
お読みいただきありがとうございます。
さて、今回の最後あたりのホシノのあの歪んだ自己犠牲は本当にいいですね。やはり、ホシノは可愛いですね。
そんな彼女が裏切られたらどんな気持ちになるんでしょうね〜?その時流れた涙の味は実に、実に素晴らしい極上の味がするんでしょうねぇ〜〜〜。
んん〜…、愉☆悦
では、また次回
曇るんだったら?
-
ホシノ
-
シロコ
-
先生
-
全部!