重装転生者はゲマトリアで何を思う。   作:焼け野原主任

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どうも、焼け野原主任です。

今回はシリアス…シリアス?です。

では…、どうぞ…。


『大人』と『子供』

 ブラックマーケットに建てられたとあるビルの一室。

 窓は全て遮光カーテンで覆われ、外は眩しい日差しがあると言うのに、このオフィスだけが夜の様に薄暗い、そのオフィスでは二人の人影が向き合っていた。

 

 片方はオフィスチェアに腰掛け、指先を組みながら相手を真っ直ぐに、かつ愉快そうに見据える、白くひび割れた頭の黒い人影こと、黒服。そしてそれに対峙しているホシノは、黒服からの見定めるような視線に吐き気を覚えながら、吐き捨てる様に口を開いた。

 

「それで、黒服の人……、今度は一体何の用なのさ?」

 

「クックック、まぁそう焦らずに……コーヒーでも、如何ですか?」

 

「……ここで頷くと思ってるの? もしかして、ふざけてるんじゃないだろうね?」

 

「いえいえ、滅相もない」

 

 黒服は肩を竦めながら、置かれたコーヒーカップを口へと運ぶ。いつも何処か飄々としており、場数を踏み、この様な事のに対して耐性のある余裕がある、張り詰めた空気を纏うホシノとは対照的に、この状況でもいつものペースを崩さずに不気味な空気を纏った人物、それが、今ホシノの目の前にいる黒服という人なのである。

 

「色々と状況が変わりましてね、再度、キヴォトス最高級の神秘であるホシノさんにご提案を……と思いまして」

 

「提案!? ふざけるな、それはもう……!!」

 

「どうか、落ち着いてください」

 

 私は声を荒げて食ってかかるが、黒服の大人の余裕……というものだろうか、を孕んだ言葉によって次の言葉が遮られる。彼は、ホシノを宥め、諭すようにゆっくりと言葉を続ける。

 

「……状況が変わった、というのは文字通り私共に予期せず、嬉しい誤算が生じた……、とでも言いましょう」

 

「…………」

 

 私は黒服の嬉しい誤算という言葉に妙な引っ掛かりと理解のできなさを覚えつつも、黙って話を聞く。

 

「ホシノさん、貴方がその身に宿す神秘はこのキヴォトスでも類を見ない程強力です、……ですが、貴方と同等、ないしはそれ以上の力を持つ存在……として準ずる存在が助力を申し出てくださいましてね」

 

「……そう、でも、ならなんで私を呼んだの?」

 

「クックック……、それはですね、その方が貴方の……」

 

 黒服の言葉が少し途切れる、組み合わされた手で隠された口元が歪むのが何となくわかった。一つ一つの動作、その全てが癪に障り思わず吐きそうな顔で悪態を吐くが、目の前の黒服はそれすら微笑ましいように受け入れ、私の中の苛立ちのボルテージがまた一段階上がった。

 

「ククッ……()()()()()()……なのですよ」

 

「________ックソ野郎!!」

 

 思わず、私は絶叫して目の前のデスクに手を思いっきり叩きつけた、黒服の側にあったカップが跳ね、中に入ったコーヒーが溢れ床に滴る。だが、目の前に座る黒服は微動だにせず、不気味さを醸し出していた。

 そして、叩きつけた後に私の頭の中にあったのは怒りと驚愕、そして、不審に隠れてじわりじわりと侵食する様にやってきた絶望である。

 

「……とはいえ、ホシノさんに興味が無くなったわけではありません、比較対象は多ければ多いほど良いのですから……。……そうですね、私のお気に入りの映画から、一つセリフを引用してみましょう」

 

「……待ちなよ、そのさ、私の友達って誰なのさ」

 

「クックック……、それは、今お答えできる話ではありません」

 

「……いいよ、黒服の人、どうせ私は信じないから」

 

 私がそう答えると、黒服はその口に不気味な笑みを浮かべながら背凭れへと寄りかかる、そのまま肘置きの上に肘を置いて手を組み、愉悦の表情で告げる。

 

「……そうですか、では、貴方に決して拒めないであろう提案を一つ、興味深い提案なので、どうかご清聴を……」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

《"……何でここ?"》

 

 ラーメン柴関前、雑居ビルの一階に位置するこの店の目の前に私はいた。

 なぜ私がここにいるのか? それはというと、ノノミから、「アキラちゃんからです☆」とアキラが出かける前に私にこんな手紙を渡してきたことに起因する。

 

《"「お昼にラーメン柴関に行ってみてください、面白いものが見れますよ」かぁ……"》

 

 この時間帯に行くのは別に構わない、今日は忙しくて朝ご飯を食べれなかったから、少し遅めの朝ご飯に丁度良い……、いや、ラーメンは丁度良くないけれど、手紙には柴関の餃子のクーポンが同封されていたので、まぁとりあえず行く事にした。

 

《"大将、席空いてます?"》

 

「ああ、おはよう先生、見ての通りだ、好きな所に座ってくれ」

 

 私が店のドアを開け、低めに手を上げて大将に挨拶をするとすぐ側の席に四人の人影が目に入る。四人とも見たことのある見た目で、アル、ムツキ、カヨコ、ハルカの便利屋の四人が席に座り、ラーメンを啜っていた。

 

「あら? 先生?」

 

「あ〜、先生じゃ〜ん」

 

《"おはよう、皆"》

 

 出入り口が見える席に座っていたアルが一番最初に私の存在に気づき、隣に座っていたムツキがそれに続いて声を上げる。私も挨拶を返すと、四人が座っていたテーブル席の近くを通ると、通路側に座っていたムツキが箸を置いて立ち上がり、私の腕を引く。

 

「ね〜、先生も一緒に食べようよ〜! アルちゃん良いよね?」

 

「うえ!? ええ、まぁ私は良いけれど……、先生はどうかしら?」

 

《"むしろお邪魔にならないなら是非ご一緒したいね"》

 

「お、お邪魔なんて……そんな……」

 

 私がそういうとハルカが首を横にふる、色々あったけれども、便利屋とシャーレの関係は悪いわけではないし、むしろ良い方だと私は思っているし、多分本当に悪いわけではないのだろう。

 

「あ、先生は私の隣で良いよね♡ あ、もしかしてカヨコちゃんとかの方がいい〜?」

 

《"そうだね……、アルとムツキの間がいいかな"》

 

「!?」

 

「んん〜、先生てば素直だね〜、 はい! どーぞ♡」

 

 私がそういうと、アルは啜っていたラーメンを軽く吹き出し、ムツキは嬉しそうな顔をして私の腕を引っ張ってアルの隣に座らせ、挟み込む様に座る。

 隣にアルは軽く咳き込みながら、私の方を見て視線を交錯させる。

 

《"や、アル"》

 

「……先生ってこんな人だったかしら?」

 

《"私はいつもこんなだけれど?"》

 

 そう言って私は肩をすくめる。そう、私はいつもこんな感じだ、性癖に正直に生き、股間という第二の脳が忠実に判断を下す。だけど生徒達にはそういうことはしないよ! 襲われたらひとたまりも無いかも知れないけどね! 

 でもね、アルちゃんはそういう事しないって信用してるから! 

 

「ふーん……そうなのね、わかったわ」

 

 隣にいるアルはその顔を赤くさせながら、それでも余裕を崩そうとせずラーメンに向き直り、ずるずると啜る。すると、ムツキがニヤニヤとした顔を私に向け、口を開く。

 

「んふふ〜、アルちゃんの隣に座りたいなんて、……良い趣味してるね先生〜?」

 

《"まぁ、アルみたいな可愛い子の隣に座りたくない男はいないよね"》

 

「ぶふぉっ!!」

 

 すると、アルが啜っていたラーメンを盛大に吹き出し、気道に入ったのかゲホゲホと凡そうら若き乙女が出してはいけない様な音をたてて咳込み、少々落ち着くと目尻に少しの涙を浮かべた顔で私を見る。

 

「ゲホッ……か……、可愛いってどういうことよ……? アウトローである私は可愛いとはほど遠い気がするけれど?」

 

《"言葉の通りだよ、アルは可愛いからそう言ってるんだ、ほら、怖い顔じゃなくてさ、笑顔だって似合うんだよ。満面の笑みで私に仕事の自慢をしてくれないかな?"》

 

「や、やめて〜!」

 

「うわ〜、先生すご、アルちゃんタジタジじゃん」

 

 真っ赤になって顔を俯かせるアルを見たムツキが驚いた様な表情になって私を見る。ふと隣を見ると、私に頭を下げながら隣に座っていたハルカが限界まで椅子の端へと寄ってみを縮ませているのが見えた。

 

「す、すみません、こんな私が隣でごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……」

 

 私はそんな譫言の様に呟くハルカの両頬を掴み、自分のすぐそばへと寄せる。

 

「うみゅ! しぇ、しぇんしぇ!?」

 

《"こらこら、そんなこと言っちゃいけないよ"》

 

「しぇんしぇ! ほほが、ほほがのびまふ!」

 

「あー、先生、生徒と交流するのもいいが、そろそろ注文してもらってもらわねぇと手持ち無沙汰になっちまう」

 

 私がハルカの頬をいじくり回していると、カウンターで先ほどまでの様子を見ていたであろう大将に呆れた様子で注文を促された。

 

《"ああ、すみません大将。なら、味噌ラーメンと餃子をお願いします"》

 

「あいよ!」

 

 注文を聞いた大将は気持ち良くそう答えると、厨房へと歩を進めてラーメンを作り始めた。すると、ムツキが我慢ならない表情をして。

 

「先生、私にもハルカちゃんみたいにムニュムニュして〜」

 

「ちょっとムツキ……」

 

《"はい、ほら"》

 

 身を乗り出して私の目の前に顔を突き出したムツキの頬を私がムニムニ(動詞)すると、ムツキは満足そうな顔をして、乗り出した身を席に戻す。そして、少し右に目を向けると、カヨコが羨ましそうな顔をしているのも見えた。

 

《"カヨコもしてあげようか?"》

 

「そ、そん何じゃないし……」

 

《"むにむに"》

 

「わひゃあっ!?」

 

 私が身を乗り出してカヨコの頬をつつくと、聞いた事も無い叫び声を上げてカヨコは飛び上がり、その白い顔を紅潮させて私を睨みつける。うーん、かわいいなこの娘。

 

「へいお待ち! 柴関味噌ラーメンと餃子だよ!」

 

「ありがとうございます、大将」

 

 運ばれてきた柴関味噌ラーメンと餃子、食欲を唆られる香りが鼻腔をくすぐる。

 ハルカがラーメンの続きを啜り、アルも口元を拭く。

 ……そして、いつも通りの食事を楽しもうとしていた時、私の目の前は光に包まれた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「……わかったよ、なら、これから金輪際、私達の仲間に手を出さないというのなら」

 

「ええ、わかりました()()()()は手を出さない事としましょう……クックック……」

 

 黒服に鋭い目つきで忠告する様に告げた後、ホシノはその部屋から出ていった。ドアが閉められた後、黒服は組んでいた手を解き、椅子を回転させて隣にあるドアの方を向く。

 

「……さて、どうでしょうか、アキラ」

 

「クヒヒ……ま、良いんじゃない? でも、そう簡単に存在を明かして良かったの?」

 

「クックック……、早々と存在を明かしておけば、彼女はこう思うでしょう……、『私が黒服と契約すれば、その娘は考え直すかも知れない』……と」

 

 黒服は、心底面白い様な様子で椅子に深く腰掛け、もたれ掛かる、まるで興味深い実験結果を見るマッドサイエンティストの様な雰囲気に僕は少し畏敬の念を抱く。

 

「全く……、アンタは悪い人だね」

 

「大元は貴方でしょう……? クックック……」

 

 黒服は満足そうに、しかし密かな驚愕を孕んだ言葉で僕にそう答えた。




お読みいただきありがとうございます。

さて…、ホシノおじさんがちょいちょい疑心暗鬼になってますね〜〜、どんどん疑って曇っちゃって下さいね〜。

では、また次回…。

曇るんだったら?

  • ホシノ
  • シロコ
  • 先生
  • 全部!
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