重装転生者はゲマトリアで何を思う。   作:焼け野原主任

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どうも、焼け野原主任です。

誤字脱字報告ありがとうございます。

さて、今回あたりからアビドス2章に入りますね…。

では、どうぞ…。


対立の狼煙

 キヴォトスの何処かにあるゲマトリアの本拠、そこの一角に拵えられた巨大な実験場。

 

 轟音が鳴り響き、錆びた金属同士が擦れ合うような甲高い音がその場に共鳴する。実験場には原型を留めない程に破壊された車に、何か大きな爪の様なもので中心が抉り取られたような状態の戦車が佇み、実験場の頑丈なコンクリートの壁は大穴が開き、中の鉄筋すら抉り取られている。

 

『アキラ、状態は?』

 

「最ッ高! こいつぁ素敵だ! 大好きだ!」

 

 僕は自分の右腕についた巨大な6連チェーンソーを振り回し、ドリルのような状態から広がった掌の様に変形させ、体の横に構え直し、目の前の仮想目標である戦車を掬い上げる様にかっ捌くと、錆びた金属同士が擦れ合う様な、悲鳴にも似た甲高い音を立てて目の前の戦車が一瞬でただの鉄塊へ様変わりする。

 

 先ほどから一時間以上使っているにも関わらず、劣る所を知らない凄まじい威力に僕はさらに興奮し、次なる目標に目を向けると……。

 

「……!?」

 

 バシュ__ウ……と、大きな排気音がグラインドブレードの排気口から鳴ると、先ほどまで元気に凶悪な音を鳴り響かせていたチェーンソー部分が止まり、うんともすんとも言わなくなる。

 

『ふむ……、限界稼働時間は一時間四十分三十四秒と……、これは、中々にいいデータが取れました。アキラ、戻ってください、ヴェンジェンスの整備をします』

 

「は〜い」

 

 黒服の声にのほほんとした声色で答え、試験場に置かれたエレベーターに足を乗せ、黒服のいる観察エリアに移動する。体に残る妙な倦怠感ゆえか、背負っているグラインドブレードが起動する前より少し重く感じる。

 

「お疲れ様です、アキラ。起動前と比べて調子はいかがですか?」

 

「ん……、ちょっと体が怠いかな、もしかして何か原因があったりする?」

 

「ああ、それは恐らくこの兵器の特性でしょう、この兵器は身体に宿る神秘を燃料として消費します。ですので、使用者の神秘によって威力が大きく変わるのです」

 

「ほえ〜……」

 

 黒服の話を僕は関心半分に聞く。その説明を聞いて、なんとなくグラインドブレードの内部の構造が気になるが、多分聞いても理解できないんだろうな……と自分の中で結論を出した。

 

「……そういえば黒服、今こうしてここに居るけどさ……、アビドスの皆にどうやってこのこと伝えよう?」

 

「このこと……、と言いますと?」

 

「この裏切りの事だよ」

 

 僕がそう言うと、黒服はその顔を喜悦に染め、それはそれは満足そうにその口元を歪めた。

 

「クックック……、それ既に手を打ってありますので……ご心配なく」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 同時刻、アビドス高等学校対策委員会室。

 

 怪我が完治し、あとついているのは傷口の保護代わりのガーゼぐらいの先生にいつも通り眠そうな、でも、なんだかどこか軽く、体が冷えするような表情のホシノ、いつも通りの笑顔を浮かべる事なく、代わりに不安そうな、表情のノノミ、そして、セリカはどこか納得のいかない神妙な面持ちに、そしてシロコはいつも通りの無表情だが、それでも何処か不安そうな表情が見て取れ、それを総括して見ているアヤネは少し望みを断たれた様な様子で、その皆の神妙な表情を見ている。一つ空いた席、畳まれていないそのパイプ椅子が寂しそうに、佇んでいる。

 

 ……そして、その視線の先にあるのは、一枚の開封された封筒と、十五枚ほどが束になったアビドスの所有する土地の権利書、特に、皆の視線は一枚の開封された茶封筒に注がれていた。

 

 その茶封筒には、『退学、転学書類一式』と、楷書体の文字が黒いペンで書かれていた。中身はその通り転学書類の一式であり、それには『茅場アキラ』と一言綴られている。

 

「……」

 

 チク……、タク……、と周期的な時計の音だけが木霊する。さして大きくも無いその音は、心なしかその場で凄まじく大きく聞こえているように思える。

 

「……ぇねぇ、これってさ……」

 

「退学届……ですよね?」

 

《"そうだね"》

 

 その場の皆の脳裏に浮かぶのは、彼女()が来てからの一ヶ月間の事。

 セリカは一緒にバイトをしたり、ノノミは柴関に行って一緒にラーメンを食べたり、シロコは一緒に訓練したり、アヤネは一緒に事務仕事や勉強をしたり、ホシノは一緒にダラけたり、眠そうにしてたら起こしてもらったり。

 先生はブラックマーケットに行って結果的にとはいえ銀行強盗をしたり、ヘルメット団と戦ったり……。短いようで長い、これからも続くと思っていた日常が、崩れてしまった。

 

「……アヤネちゃん、アキラちゃんと連絡は……取れるのかな?」

 

 ホシノの問いにアヤネは黙って首を横に振る。

 

「電話も、メールも、モモトークも、何を送っても返信は来ません……」

 

「……ごめん、おじさんちょっと外に出ててもいいかな〜?」

 

 ホシノはふと立ち上がり、少し憔悴した様子でふらふらと、足元のおぼつかない不安定な足取りで対策委員会の部屋を出る。

 

 ◇◇◇

 

「……ぅぅ」

 

 対策委員会室の隣の部屋、私がいつも昼寝をしてる部屋で私は静かに啜り泣いていた。あれ以降、簡単に涙は流さないと決めた筈なのに、私の瞳からこぼれ落ちるそれは、止まらない。

 

「……なんでだよぅ……アキラちゃぁん……」

 

 私は複雑な感情だった、彼の退転学届を見た時、彼がそのアビドスからの離反者である事が確定してしまった。実際、変な時期に転入してきたことを不審に思い、黒服の言葉で薄々気付いていたけれど、こうして彼の退転学届けによって、確信まで持ってかれてしまった。

 なんで、なんで寄りも寄って彼なのか、いや、誰が裏切り者でも嫌だけれど、あの時以上の喪失感を私は今、味わっている。

 

 目の前にある一丁のアサルトライフル、先生が来るまで彼が使っていた代物。弾薬も、弾倉もそのまま残され、これだけが時が止まった様にその場に佇んでいる。

 

「……」

 

 ふと、そのアサルトライフルを自分に抱き寄せる。昔からショットガンしか使った事の無かった私にとって、この手の銃は触ったことはほぼ無い。だけれどなんだろう、なぜだか……、これが、これだけが彼が転入してきた時からの日常として今現在も続いている、残っている様にすら思えた。

 

「……どうして……」

 

 どうして彼を守れなかった? 

 なぜ引き止めることができなかった? 

 もっと、もっと先輩として強かったら、頼り甲斐があったら彼はここに残ったのか? 

 

「……わからないよぉ……グズッ……ユ"メ"ゼンバイぃ……」

 

 私は一人、今はいない生徒会長の名を呟きながら、旧生徒会室で啜り泣いた。

 

 ◇◇◇

 

「……ブラックマーケットでも目撃情報はない、一体どうしたら……」

 

《"……?"》

 

 すると、先生が何かに気が付いた様に退転学の申請書類を手に取ると、一つの光明を見出したかのように、少しだけ、その口角が釣り上がる。

 

「……先生?」

 

《"とりあえず、この書類は私が預かってていいかな?"》

 

 先生はその一枚の書類を見て満足そうに、そして何か気味のいい様な雰囲気を醸し出しながらそういった。それに釣られてか、他の対策委員会のメンバーも少し元気になり、次なる話題へと話を進める。

 

「……では、次なる話題へと移らせていただきます」

 

「次の話題は、本来アビドスが持っている筈の土地が、カイザーインダストリーが所有していることになっているという事です」

 

 アヤネは先生のその喜色に背中を押されたように、ハキハキと口を開き、話を進める。

 

「先ほど見つけたこの土地の権利書に、この学校が歩んで来た歴史を照合すると……、カイザーの目的はお金ではなく、このアビドスの土地だという事になります」

 

「こんな寂れた砂漠を所有したところで、何か利益があるとは思えませんが……。少なくとも、どの様な方法であれ私達の自治区が侵犯されている事は明白です」

 

 アヤネはそこまで言い切ると、先生の方を一瞥し、先生が少し頷くとまた皆の前に向き直る。

 

「先生がゲヘナの風紀委員長から聞いた話によれば、カイザーコーポレーションがアビドス砂漠で何かを企んでいるらしいのです」

 

「……なんで、それをゲヘナの風紀委員長が知っているのでしょう?」

 

「それも……、わざわざ先生に伝えたの?」

 

 アヤネの発言にノノミが怪訝そうな顔をして呟けば、シロコも同じ様に疑問を呈す。だが、それを焦ったそうに見ていたセリカがついに我慢の限界を迎た様に椅子を蹴飛ばして立ち上がり、叫ぶ。

 

「ああもうっ!! そんなあーだこーだ難しいことを考えるより、今はやる事があるでしょ!! ここはアビドス、私達の自治区なの! なら、この目で直接確かめに行ったほうが早いじゃん!!」

 

 そう言ってセリカは、ガンラックに立て掛けていた自分のライフルを引っ手繰り、言葉を続ける。

 

「もしかしたら、アキラちゃんは私達より前にこの事に気付いて、迷惑をかけたく無いって意味合いでこの退転学届を出したのかもしれないじゃん!! だったら、そこに行けば会えるかもしれないじゃない!!」

 

 セリカの叫びに皆は目を合わせる、そうだ、確かにそうだ、ここで燻っているより実際に動いた方が何倍もわかりやすい。

 

「いや〜、セリカちゃん成長したね〜、おじさんは嬉しいよ〜」

 

 ふと、後ろから響く声、頭頂部に跳ねたピンクの髪を揺らし、小鳥遊ホシノがその場に立っていた。その手にはショットガンにシールドが抱えられ、その少し赤い目は満足そうに、希望を見出したようにセリカを見ている。

 

《"……じゃあ、アビドス対策委員会! 出動!"》

 

「「「「「おー!!」」」」」




お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はなんだかアビドスの皆が元気そうにしてますね!じゃあ皆、アビドスの中にあるカイザーの拠点に行こうか!

そしてホシノ、もっとも〜っと泣いちゃって♡

執筆の糧になるので感想と高評価ください(乞食)

では、また次回…。

曇るんだったら?

  • ホシノ
  • シロコ
  • 先生
  • 全部!
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