第二章3話、書いてて楽しい時期になってまいりました…。
では、どうぞ…
「うへ〜、順調だね〜」
「ん、鹵獲した戦車がここで役に立つとは思わなかった」
地平線が見える程に広がった広大な砂漠、そこを一両のレオパルトが疾走している。
途中までアビドスの面々は列車で移動し、先生の指示で運び込んだ戦車に乗り換え、砂漠を疾走している。現在は車体前方の弾薬庫を空にし、ラックを外して狭い車内に先生含め五人が乗り込み、カイザーが悪巧みをしている所へと向かっている。通常の車であれば、タイヤが砂に埋まらない様にカスタマイズしたり、メンテナンスをする必要があるが、悪路を踏破し、どの様な地面でも通り抜けられる様にされた戦車ならば、砂塵の影響を考えずに移動ができる。
「アビドス砂漠……、ここが砂漠化する前から砂漠だったところ……」
「普段から危険なオートマタやドローンが徘徊しているので、皆さん戦車の中とはいえ注意して進んでください」
「りょうか〜い」
元々弾薬庫だった通信席に座ったホシノはアヤネの言葉に答える。先生は車長席に座り、ハッチから上半身を出して双眼鏡を周囲を確認し続け、先生の視界には、確かに周囲に白いオートマタや白いドローンが徘徊しているのが見えた。
《"ノノミ、12時方向にオートマタとドローンの混成集団、戦車を止めて"》
「はーい☆」
先生の指示にノノミがギアを操作し、ブレーキを踏む。先生の視線の先には砂塵に紛れ、キャラバンの様にこの広大な砂漠を進む集団が見えた。目的はなんなのか分からず、主人を失った機械が亡き主人の領を守り、歩いている様にも見える。定期的に周囲警戒をしている行動は、まさにその失った主人を探す様な仕草にも見え、ひどく哀愁を漂わせている。
「……大分、進んできたけれど本当に広いわね……、ここ」
「砂だらけの市街地に行った事はありましたが、ここから先は私も初めてです」
「いやぁ〜久しぶりだね〜、この景色も」
「先輩はここにきた事があるの?」
セリカが疑問符を浮かべ、ホシノにそう尋ねる。
「ま、昔の話だけどね〜……もう少し進めば、そこには何と、かつてアビドスの砂祭りが開かれていたオアシスが!」
「えっ!? オアシスが!?」
「うん、とはいえ、もう今は大体干上がっちゃったんだけどね〜、元々はそんじょそこらの湖より広くて、船も浮かべられるくらいだったらしいよ〜」
ホシノがカラカラと笑いながらそう答える。周囲を見ると、確かにそのオアシスらしい地形はあるが、オアシスそのもの物は影も形もない。船を浮かべられる程大規模な湖が沈んだとなると、どこか興味を惹かれる。
「ま、私が入学した頃にはもう既に無かったんだけどね」
『砂祭り……ですか、私も聞いた事があります、なんでもお祭り見たさに他の自治区からも人が来るとか……』
「そそ、砂漠化が進み始める何十年前の話だけどね〜」
「ふーん……、こんな砂漠で、そんな大規模なお祭りが……」
装填手席に座ったセリカはそう呟いて、防塵ゴーグルをつけた顔をハッチから出して、眼前に広がる黄金の砂漠を目に焼き付け、砂漠化の脅威という物を改めて思い知る。
かつてそれほど大規模な、今でいう晄輪大祭に匹敵するであろう祭りがここで行われていた。だったら、ここに大きな都市があったっておかしくは無い、だけれど今となってはそれらは見る影もなくなっている。
___いつか、私たちが住む校舎もこうなるのだろうか?
そう思うとひどく胸が痛む、この砂漠を見ていると、そんな焦燥が余計に強くなる気がし、逃げる様に頭を下げてハッチを閉める。
ふと、一陣の風が吹きすさび、大量の砂ボコリが舞い上がる。すぐに先生は車内に入り、ペリスコープから外を覗く。すると、目の前には砂嵐となりつつあるそれが近付いていた。
ノノミは直ぐに搭載されていた熱線映像装置を起動し、周波を遠赤外線に変えて砂嵐を突き進む。戦車の装甲板に砂埃がぶつかり、カツカツと小気味いい音が車内に響く。
「おぉ〜、ノノミちゃんチャレンジャーだねぇ〜」
「はい! セリカちゃんが言ってましたから!」
「ちょっ! それとこれは関係ないでしょ!」
ノノミが笑顔でそう云えば、セリカが恥ずかしそう、しかし満更でもない表情でそう叫ぶ。戦車で砂嵐を切り抜け、砂嵐から少し離れて車両を止め、皆が車外に出てラジエーターについた砂をできる限り落とす作業に入る。
『……っ!? 皆さん、前方に何かあります!!』
『砂ボコリで姿はまだはっきりと見えませんが……、巨大な都市……、いえ工場……? あるいは駐屯地……? とっ、とにかく、物凄い大きな施設のようなものが……』
するとアヤネが鬼気迫る表情でそう云えば、ホシノが驚いた表情になって尋ねる。
「……え!? こんな誰もいない砂漠に!? こっちからは、何も無いオアシスの跡地しか見えないけど……」
まさか……という表情でホシノはレオパルトの車内に入り、砲手の席に座って照準器を覗き込む。
地中に埋まっていた都市の残骸が露出したのだろうか、そう思って望遠を最大にして見れば、随分と綺麗な高低差の、統制して建造されたであろう建築物が見える。
周囲には城壁の様に黒い壁が立ち並んでいる様にも見え、まるで要塞の様な、嘗てここには無かった形状の都市がある。
「うん、こっちでも確認したけど……」
『……とにかく、肉眼で確認できる位置まで近づいて見て下さい』
◇◇◇
「……」
「何よ……これ……」
建造物へ近付くにつれ、だんだんと全貌が見えてくる。戦車で近くまで移動すると、所々に電波塔の様な大型掘削機が聳え立ち、内部には倉庫や兵舎らしき物が規則正しく立ち並び、各所に大量のメルカバ戦車にデザートカラーの軍用トラックが配置され、その全てがその黒い外壁に囲まれていた。
砂漠のど真ん中に現れたこの建造物群、アビドスの皆が預かり知らぬ所でこんな物が立てられていた事に驚愕する。
「……すごいね……この張り巡らされてる有刺鉄線と外壁、数キロ先まである……」
「かなり大規模な施設ですね……石油ボーリング施設の様にも思えますが……何でしょう?」
車外に出たノノミ達が単純に規模に驚愕している中、ホシノはその外壁を注視し、静かに口を開く。
「___こんなの、昔はなかった……」
……少なくとも、私がアビドスの生徒会として活動していた二年前、ここに足を運んだ当時は無く、ただの更地であった。つまり、この施設は最近建造されたということ、それも……、去年ぐらい。
実際、警戒の目を盗み易いこんな所にこんな大規模な施設を作るのは難しくはない、だが、こんな所に建造物を作る組織があるという事……。
そこまで思考を進めると、それを遮るように連続して銃声が鳴り響き、銃弾は戦車の塗装を剥ぎ、地面の砂を抉って巻き上げる。
「うひゃぁ!? 何々!?」
「銃撃!?」
咄嗟に全員が戦車の裏に身を隠したり、車内に入って銃弾をやり過ごす。シロコが遮蔽の影から覗くと、比較的外見の整ったオートマタの集団がこちらに銃を向けているのが見える。
「ちょっ……! 確かに無断で入ったけど、別に悪いことしてたわけじゃ……!?」
「警告も無しに、いきなり発砲ですか!」
『前方から正体不明の戦力が攻撃を仕掛けています! 数は十前後! 全てオートマタです!』
「…………うへ、歓迎の挨拶なら、返してあげた方が良いかもね〜」
銃を突きつけられて発砲された以上、平和的解決は望めないし、警告なしの発砲……つまり、ここを知ったものは生かして返さない、そういう事だろう。
ホシノはそう思い、オートマタの集団の奥に見える、一人の人影に目をやる。その小さな体にアンバランスなほど、いや、それを差し引いても異常な程大きな物を背負っている人影を注視した。
「……じゃ、行こっか!」
この前まで切れていた、体のどこかが動くような変で、しかし温かい感覚も今は生きている。
ギチリと音がするぐらい、私は愛銃のグリップを強く握りしめ、決意する。
___逃がさない、絶対に、取り戻す。
お読みいただきありがとうございます。
さて、鹵獲したレオパルトの伏線はここです、なんだかんだ回収できてよかった。
最後でホシノが発見した人影って誰でしょうね?いやー誰なんでしょうね?
では、また次回…。
曇るんだったら?
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ホシノ
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シロコ
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先生
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全部!