重装転生者はゲマトリアで何を思う。   作:焼け野原主任

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どうも、焼け野原主任です。

誤字脱字報告ありがとうございます。

では…、どうぞ。


協力、利用、庇護

「……んぁ……」

 

 キヴォトスの何処かにあるであろうゲマトリアの本拠のその一室、傍から鳴り響くけたたましい音に、僕の意識は覚醒へと導かれる。

 音量調節のない、ベルがそのまま響くタイプの目覚まし時計を初めて使ってみたものの、割と……いや、かなりうるさい。それに高い所に置いてしまったせいで、上体を起こさないと止めれない。そして止めているうちに目が覚める……。

 うーん、自分でやってみたけど、二度寝ができないのは辛いなぁ……。

 そうして上体を起こして寝る前に置いた所へ手を伸ばすが、その手はなぜか空を切る。

 

 ……? あれ? 

 

 眠い手を這わせ、目覚まし時計を置いておいた筈の棚を漁るが、指先に触れる感覚は一つもない。

 

「おはようございます、アキラ」

 

 ふと、横合いから声が聞こえる。眠気が1000%こびり付いた顔で見れば、黒服は平然な顔をして喧しく叫び続ける目覚まし時計を持ちその場に佇んでいる。

 

「アキラくんちゃんおっはよぉ〜?」

 

 そして、その後ろからひょっこりと飄々とした喋り方で腹の立つ笑顔を浮かべた主任が顔を出す。なぜ貴様がここに居るんだ主任、はったおすぞ。僕が露骨に嫌そうな顔をすると、主任はいかにも芝居がかった仕草でやれやれと言わんばかりに首を振る。

 

「おはようございます、黒服、主任」

 

「あ~あ~、お姉さんアキラくんちゃんに嫌われちゃったぁ~、どうしよ黒服~?」

 

「クックック……、ほら、こう言ってますよ? アキラ」

 

 猫撫で声で主任が黒服に泣き付くような仕草を見せると、黒服は面白そうな、揶揄うような表情で僕に向けてそう云う。

 

「……うるさい」

 

 一言、僕はそう告げて眉を顰める。前世男で、今世も男の僕としてはなんだかんだ悪い物では無いが、なんと言うか主任にこう言うふうな対応されると少々腹が立つというか……解釈違い? なんだ。

 僕がそう言ってからそっぽを向くと、視界の端で主任がニヤリと不敵な笑みを浮かべ、またもや芝居がかった仕草でこちらに近づいてくる。

 

「アキラくんちゃ〜ん、なんだい? お姉さんが嫌いなのかい?」

 

「……」

 

 主任がしゃがみ込んでベッドの上で上体を起こしたままの僕に目線を合わせ、揶揄うようにそういうが、僕は変わらずそっぽを向いて黙りこくる。

 

「……ギャハハ! ま、早く起きなよ、せっかく早起きしたんだからさ?」

 

「……」

 

「どうしたんだい? そんなに黙って?」

 

 そりゃあ、黙るに決まっているだろう。だってさ、なんだかんだ顔が狂気的に歪むことはあれど顔立ちは美人で、それで体にフィットするように作られた軍服越しにも豊満さがわかる、乱暴で脅威的な胸囲を持つ主任がこちらにいるのだ。これを見て男なら黙らずにいられないだろう。というかなんか主任に顔赤くすると余計に揶揄われそうでやだ。

 

「クックック……、ではアキラ、私は外に行ってきますので、早めに着替えて来て下さい」

 

 そう言って黒服は何処か気まずそうに、しかし父親が自分の娘とその彼氏を見守る様な表情で僕の部屋から踵を返し、その部屋には僕と主任の二人が取り残された。

 

「じゃ、主任も外に____」

「じゃあ〜、着替えよっか」

 

 ……は? 

 そう云うや否や、主任は部屋に置かれたクローゼットから頑丈そうなチョッキ、白いシャツ、カイザーの軍服を短くした様な黒いジャケット、そして黒のズボンをそれぞれ一着ずつ取り出し、そして海軍服のような白いコートを取り出し、僕の目の前に持ってくる。

 

「はいこれ、君の新しい服」

 

「……?」

 

 ぽんぽんとクローゼットから出した服を差し出す主任に僕が怪訝そうな顔をすると、ふと主任が何かに気付き、途端にニヤけた表情になる。

 

「大丈夫大丈夫、俺は後ろ向いてるから、早く着替えなよ」

 

「___ッ! へぇあッ///!?」

 

 突然何を言い出したのかと思い、驚きの余り僕は思わず叫んでしまった。ちなみにその主任の顔を見てみれば、別になんとも思ってない様な、ニヤけた笑顔を向けている、なんだこいつ、頭ハナコですか? 

 僕は顔が赤くなりながらも主任を睨み付けるが、当の本人は全く意に介していない様である。この態度を見ると、何を言っても暖簾に腕押しだと結論付け、僕はそのまま着替えを続ける。

 よくよく考えてみれば、別に見られても恥ずかしい体じゃないし、逆に可愛いぐらいだからいいのか……? そう自分の中で納得し、着替えを終える。

 

 ちなみに服は僕のサイズにピッタリだった、こっわ、いつの間に採寸したんでしょうね、黒服さん。

 

「……着替え終わりましたよ、主任」

 

「O〜K〜、じゃ、これをどうぞ」

 

 着替え終わった僕が主任に声をかけると、主任が振り向いて懐から一つの黒い仮面を取り出す。その仮面は左目の目元から額に至るまでの右上側が全て欠け、口元にはナイフのように尖った歯を見せて笑う口が描かれている。その何処かグロテスクな印象を受ける仮面の右目目元には、黒服の顔のようにヒビ割れた模様が描かれている。

 

「これの効果なんだけど、神秘を撹乱して正体を隠す為の物でね、そう簡単にバレやしないよ」

 

「ほへ〜……」

 

 感心したように僕は呟く。この仮面で正体を隠して……、戦う訳かな? 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして、僕は朝ごはんを食べた後に、カイザーPMCのアビドス駐屯地に行く事になった。

 ま、目的はただ一つ、この時期にこの駐屯地に来るであろうホシノに会う事、ただそれだけ。

 ……何でホシノに会いたいのか? まー事実を突きつけに行きたいと言うか……、でも変に突きつけちゃ元のストーリーから離れちゃうからな〜、ホシノには軽く犠牲になって貰おう。

 

 そう思考しながらカイザーPMC駐屯地に設置された部屋の来客応対兼自分のくつろぎ用のソファで寝転んでいると、一人の大きな人影が目に入る。

 

「……おや、貴方ですか、理事」

 

「ああ、私だ」

 

 カイザーPMC理事は僕の部屋に入り、ドアを閉めた。見た所その手には数枚の書類が束ねられたファイルを持っている。

 

「……お茶、要りますか?」

 

「頂こう、少し長くなるかもしれんからな」

 

「……? では、こちらに」

 

 僕は理事の言葉に頷き、理事をソファに案内し、僕はソファから起き上がり、持ち込んだ電気ケトルを手に取って、その中に入っていたお湯を緑茶の茶葉が入った急須に入れ、それを湯呑みに注ぐ。……少し長くなるとはどういう事だ? 

 理事のその少し含みのある言葉に僕は少々違和感を覚えながら、理事の前に緑茶の入った湯呑みを置き、僕はその対面に座る。

 

「……ふむ、いい腕じゃないか」

 

「……それはどうも」

 

 僕が入れた緑茶に一つ口を付けた理事が感心したようにそう云いうと、アイラインを細め、座ったまま少し前屈みになって口を開く。

 

「さて……、本題に入る前にいくつか質問をしたいのだが……、いいかね?」

 

「……なんでしょう?」

 

「まず一つ、なぜ君はアビドスから黒服の元へと鞍替えをしたのか? 二つ、ならば何故ここ……つまりカイザーに協力しようと思ったのか?」

 

 理事が堰を切ったように矢継ぎ早に言葉を並べる、簡潔明瞭なその問いのそのどれもが言外に僕と黒服……、つまりゲマトリアに関連した事である辺り、恐らく黒服の弱点か……、それとも何かゲマトリアに関する有益な情報を聞き出そうとしているのが読み取れた。

 簡潔な質問には、簡潔に答えるべきと思い、僕は口を開く。

 

「面白そうだからです」

 

「……面白そう?」

 

「はい。……とはいえ、そもそもその前提から少し違っていて、僕は元々黒服の仲間であり、そこから小鳥遊ホシノ……、つまり暁のホルスを捕獲する事を目的として動いています。なので……、どちらかと言うと元鞘に収まったといいますか……、指示に従ったと言うべきか……まぁそんな所ですかね」

 

 僕がそこまで言うと、理事は細まったアイラインを少し緩め、残念そうにため息を吐きながら少しソファに凭れ掛かる。

 

「……当てが外れましたか?」

 

「……解っていたのかね?」

 

 腹づもりを突かれたであろう理事が無念そうに言う。

 

「まぁ何と無くはですがね」

 

「……はぁ……、まぁ、これでは隠しても意味は無いな。それで、二つ目の答えは?」

 

理事は

 

「それは……勘です」

 

「勘?」

 

 理事が怪訝そうに僕の言った事を復唱する、僕のその確信に近い言葉を聞いた理事は怪しそうに、しかしそう簡単に無碍にもできなそうな表情で答えた。

 そう、僕が辿ったメインストーリーという名の未来の物語、つまり現状では未来予知の様な、その確信に基づく断言。

 

「はい、勘です」

 

 そう、()()()()()()()()()()()()()()以外、確信に似たそれの真実は、わからない。




お読みいただきありがとうございます。

いや〜…、なんだかんだで三日ほど遅れちゃいましたね…。
本当にごめんなさい、私の代わりに鱗滝左近次と冨岡義勇が腹を切ってお詫びします。


では、また次回…。

曇るんだったら?

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