重装転生者はゲマトリアで何を思う。   作:焼け野原主任

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どうも、焼け野原主任です。

こっちを疎かにはしたくない!なぜなら!ホシノを曇らせたいから!

では…、どうぞ。


決意が足りぬは踊る(戦う)に足らず

「はぁ……はぁ……!」

 

「……ふぅ」

 

「キッツイなぁもう……」

 

 アビドス砂漠、カイザーPMCの駐屯地内を爆速で走り回るレオパルトに五人のアビドス生が乗り、向かいくる歩兵やオートマタを撃滅し、歩兵では対処の出来ないメルカバ戦車や装甲車は先生がA.R.O.N.Aを使い、動かすレオパルトが難なく撃破する。

 十両に登るメルカバ戦車の残骸、大破した装甲車の数を数えるのは止め、歩兵やオートマタはもうとうに三桁は倒しているかもしれない。一両の戦車と歩兵五人の分隊が挙げた戦果としては畏怖すべき赫赫たる物だが、そもそも移動目的で使ったレオパルトは弾薬をかなり下ろしている為、そろそろ砲弾が底をつきそうになっている。

 それはアビドス全員の弾薬にも言える事で、ある程度の事を見越した先生が用意したそれぞれの銃に合った五百発近い弾薬も半分を切った。皆が皆、ギリギリで辛い状況だが、対照的に表情はまだ明るい。なぜなら、此処に居るであろう仲間(アキラ)を連れ戻すという、一縷の希望を捨てずにいれたから。

 

《"ホシノ! こっちで合ってるの?"》

 

「うん、合ってる」

 

 レオパルトの中から聞こえる先生の声に、ホシノはしっかりと断言する。彼女がもつたった一つの手掛かりを元にアビドスの皆は迫り来る邪魔なオートマタを破壊し、戦車は駐屯地内を走り抜け、バリケードや歩兵砲を轢き潰す。

 

「……」

 

 強行突破ではあるが、順調に進軍できているこの状況、そんな中ホシノだけは連れ出す事に少し不安を感じていたが、それに気付く事なく皆はお構い無しに突き進んでいく。

 

《"もうすぐ開けた場所に出るよ!"》

 

 先生の声に皆は正面を向く、すると、その先には訓練場だろうか、少しばかり開けた場所がある。皆を載せたレオパルトはそこに向かって走り、ホシノに流れ込む何かが段々と強まっていく。

 

「……!? 先生! 止まって!」

 

《"!? わかった! 皆! どこかに掴まって!"》

 

 先生が号令をかけ、ブレーキを起動させ開けた所に出た瞬間、凄まじい爆音と共に視界の全てが黄土色に染まり、止まった反動で体が前方に投げ出されそうになったが、それぞれ手すりなどを掴んでいたので投げ出されずに済んだ。

 

「きゃあっ!」

 

「!?」

 

「ん!」

 

「……ッ!?」

 

 砂煙が晴れ、皆が目の前を見るとメルカバ戦車が現れた。四両程のそのメルカバらの砲口は正確にレオパルトを狙っている事から、どうやら飛び出た瞬間に撃破したかった様だが、直前で止まった事で全ての砲弾は地面を抉るか、目の前を掠めるのみであった。

 ふと、後ろを振り向けば歩兵やオートマタの混成集団が後ろから追いかけてきている。

 前門のメルカバ、後門の歩兵、真横を見れば装甲車、気付けばアビドスの皆は完全に囲まれ、身動きを取れなくなっていた。

 

『アーアー! アビドスの皆ー! 聞こえるー!?』

 

 突然、全員が持つ通信端末にホログラムが映り、乱暴なハスキーボイスが耳を劈く。

 ホログラムに映ったその姿は、スタイルの良い身体を頑丈そうな戦闘服や防弾チョッキに包み。一眼で美人と判るであろうその顔は、他の要素がそれを悉く台無しにしている。

 隈のある少し細まった目は狂った様にギラリと輝き、整った顔立ちはニタニタと気味の悪い、悪寒が走る笑みを浮かべ、まさに文字通り狂人の様な印象をうける。

 

『先に言っとくけど、ここから先は通せないよ〜? 申し訳ないけどね!』

 

「……」

 

 人を小馬鹿にしたような、癪に障る喋り方を続ける目の前の女をホシノは軽く、だが鋭く睨み付ける。

 

『あー、突破してもいいよ別に、出来るもんならさ?』

 

 目の前の女は、そう言い残して通信を切った。

 すると、ノノミが少し時間を置いて、悩んだ様な仕草を解き、ホシノの方を向いて口を開く。

 

「……ホシノ先輩、行ってください」

 

「……へ?」

 

 一言、そう告げた。ノノミの特徴的な緑色の目が少し細められ、決意のこもった聞いたことの無いその声色は、彼女との付き合いが長いホシノですら、いや、ホシノだからこそ驚いたのだろう。先輩としての責任なのか、それとも、あの事件を多少は知っている彼女だからこそ、こう言ったのかはわからない。

 

「……ん、確かに、こう言う時は先輩が行くべき」

 

「そうね、なら、皆で先輩を送り届けるとしようじゃない!」

 

『ですね!』

 

 ノノミの言葉にアビドスの皆が賛同するが、当のホシノは鳩が豆鉄砲を食らった様な表情のまま、固まっている。

 

「え……えっと……、おじさんは……」

 

《"じゃあ、決まりだね"》

 

「うへ!? 先生!?」

 

 ホシノがしどろもどろに口を開けば、レオパルトの車内にいる先生が、一言だけ告げ、手元のシッテムの箱を操作し始める。

 

《“皆! ホシノを援護するよ!!”》

 

 

 ホシノを一人、アキラを連れ戻す為に送る。これは、この時には明らかに、失策だったのをその時のアビドスと先生は、知らなかった。

 

 ◇◇◇

 

『アキラくんちゃんゴッメ〜ン、ちびっ子が一人そっちに行っちゃったわ!』

 

 無線先から気楽な、どこか苛立ちを覚える声が聞こえる。ちびっ子……、多分、ホシノの事だろう。

 

「わかりました、主任、貴方はそのまま他を足止めしててください」

 

『ギャハハ! オ~ケ~イ』

 

 そう言って、主任の返答を聞いた僕は無線を切る。

 ……さて、そろそろ動く時だね……、フフフ……、ああ、実に面白くなってきたなぁ……! 最高だ……! イイ!! 実に良い!! 

 胸がすく様な爽快感と、まるで口当たりの優しいワインを飲んだような陶酔と恍惚が入り混じった凄まじい甘美な愉悦の海に浸りながら、僕は口元を悪辣そうに、そして愉しそうに綻ばせる。

 

 ククク……さぁ、麗しき彼女を出迎えに行くとしよう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ……」

 

 私、小鳥遊ホシノは走っていた。芋虫が素早く這い回る様に体を駆け抜ける焦燥感が私の足を動かし、たった一つの手がかりを手繰り、一心不乱に走り抜ける。

 道中、カイザーのオートマタに遭遇するが雑魚に構っていられる暇も無いのでショットガンで吹き飛ばし、リロード中はシールドで殴り飛ばす。とは言え、それでも数発は喰らうのだが、そこまでダメージにもなっていないので治療するまでもなく歩みを進める。

 とにかく、戦車や装甲車がまだ出て来ないのは運がいいとしか言いようがない。頑張れば倒せない事も無いが、相応に時間を食うし、何より装備も心許ない、もし出会したら基本逃げて、撒く事が出来なかったらもうその時はその時で考えよう。

 

「……待っててね……、アキラちゃん……」

 

 パスは私を導く様に段々と強くなっていき、それに比例して私の焦燥感も強くなり、歩みはより早くなっていく。遭遇する道中の雑魚を蹴散らし、一目散に駆けていくと、一つの大きな道に出た。

 すると、突如として側方から銃弾が飛んでくるが、すでに盾を展開していた私は盾の陰に隠れ、銃弾の雨から身を隠す。

 

 縦から少し覗くと、PMCのオートマタが四人ほど、少しショットガンでは遠い距離で銃を構えてこちらに射撃している。見た感じでは全員が分隊支援火器らしき物を持っており、絶えず弾幕をこちらに張っている。

 

「はぁ……、面倒な奴らだなぁ……」

 

 ボソリと呟きながら私はショットガンの弾を数発抜き、代わりにスラグ弾を装填する。中距離にでもなれば普通の散弾では威力が落ちるが、スラグ弾であれば中距離の目標も狙える。

 

 盾の横からショットガンを出し、すぐに四人のオートマタに狙いを付けて撃ち放つ。全てが胸部や頭部に着弾し、煙を吐いてその場に崩れ落ちた。

 ……が、目の前から履帯が地面を抉る音と、獣が這い寄る様に唸りをあげるエンジン音が聞こえる。

 

「構わないでよ……、急いでるんだから」

 

 目の前に出て来たのは一両の戦車、砲口はこちらに指向され、今でも撃てるぞ……という威圧感を醸し出している。

 ……あーあ、さっきまで運が良いかと思ってたけど、まぁ流石にここまで続かないよね〜……、ごめんねアキラちゃん、先輩ここまでみたいだわ〜。

 そう思い、半ば諦めたようにスラグ弾を込め、目の前の戦車に銃口を向ける。

 

「ごめんね……みん___」

 

 その時、目の前が一瞬にして光り輝いた。眩しさの余り私は目を瞑り、耳を塞ぐ。急激な爆圧と衝撃、耳を塞いでも脳に響くような轟音が轟き、余波によって周りのテントが吹き飛ばされる。

 瞑っていた目を恐る恐る開けば、目の前にあった砲口はなく、砲身は根本の方から異様な角度に曲がり、天を仰いでいる。いや、それ以上に車体も、先ほどの荘厳な姿は見る影も無い程に破壊されている、弾薬庫に誘爆した訳でも無い、……それこそ、何かに一撃で叩き潰された様な異様な、見た事の無い破壊のされ方をしていた。

 

「大丈夫でした?」

 

 ふと、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「いや〜……、まさか、ここまで来てくれるなんて思ってもいませんでしたよ」

 

 ゆったりと、言葉一つ一つを噛み締めるように残骸から這い出てきた人影がそう言う。

 その人影に、私の体はびくりと硬直し、心臓の鼓動、肺の動き、脳の思考が全て時が止まった様になり、その挙げられた頭は私の目には酷くゆっくりに見えた。

 

「茅場アキラです、数日ぶりですね、先輩」

 

 黒い仮面をつけたその人影は、嬉しそうにそういった。




お読みいただきありがとうございます!

さて、やっと愛しのアキラと出逢いましたね、ホシノさん。
でも、その子ゲマトリアなんですよ〜…まぁ、わかってるかもしれませんがね。

さて、次回、ホシノ曇る!デュエルスタンバイ!

では、また次回…。

曇るんだったら?

  • ホシノ
  • シロコ
  • 先生
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