重装転生者はゲマトリアで何を思う。   作:焼け野原主任

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どうも、焼け野原主任です。

今回でやっとホシノ曇らせ回ですね。(なのに割と難産です)

では…、どうぞ…。


決別、別離

「ア……キラ……、ちゃん?」

 

 私は口を半開きにして目の前の人影を注視する。

 

「はい、貴方の後輩、茅場アキラですよ?」

 

 そう、目の前には私の後輩である茅場アキラが立っている。いつものアビドスの制服ではなく、黒いスーツの様な服に白いジャケット、片腕には身の丈以上は有りそうな6連の巨大なチェーンソーを取り付け、左目のところが空いたグロテスクな見た目の黒い仮面を被っている。

 多分、そう簡単に彼だとはわからないだろう、……だけど、彼としか繋がらない私のパスは、これまでにない程強く繋がっている。……つまり彼だ、目の前に佇む人影は彼だと、確信する。

 その確信が私に凄まじい程の安心感を齎し、私がそこ迄纏っていた刺す様な緊張感のベールは消え失せた。

 

「……?」

 

 黙り込んだ私を見た彼が怪訝そうに小首を傾げ、仮面を外す。

 

「うへ……いや、おじさん安心したよ、こうして会えて」

 

「先輩こそ、どうやら元気そうで何よりです」

 

 私は彼に心配と安堵の言葉を投げかけた、彼はそれに落ち着いた様子で答えた。

 ……違う、私が聞きたいのはこの事じゃない。

 

「……それでさ、この前の怪我、大丈夫だったの?」

 

「はい、まぁ……治りましたから、先生は、大丈夫だったんです?」

 

「……まぁ……ね、今は普通に回復してるよ」

 

 この前の怪我の事を心配すれば、彼は大丈夫だと返し、先生は大丈夫だったかと聞いてきた。当たり前だ、先生は私たちと違ってキヴォトスの人ではない、銃弾1発で簡単に致命傷になる体だから。

 ……違う、この話でもない。私は彼を連れ戻す為にここに来たのに……。心の中に蟠るこの感情は、まだまだ私の口からは出て来ず、虚しさと焦燥感がより一層強くなる。

 

「……あは……あはは……、いや、うん」

 

「……どうして、ここに居るんですか? 先輩?」

 

「それは事情を話せば長くなるんだけど……ね」

 

 

 ふと、後ろからエンジン音が聞こえる、先ほどのメルカバ戦車ではない、レオパルトのエンジン音が聞こえる。続いてみんなの声、ノノミちゃん、セリカちゃん、シロコちゃん……そして、先生の声が。追いついたのだ、先程の大群を全部始末して私を追いかけ、そして追いついたのだ。

 

「あー……、皆、来ちゃいましたね、先輩」

 

 私の目の前にいる彼が、一つ落胆した様な表情で勿体なさそうに語る。その残骸の上に立つ哀愁ある立ち姿は何処か幻想的に見え、戦乙女の様な、だがそれでも死神の様にも感じられる。

 

「まぁ……、わかってると思いますけど、裏切り者は僕ですよ、先輩」

 

 彼はいった、少し勿体ぶりながら、それでも優しい口調で、なんの気に無しに言った。ああそうだ、私はわかっている、いや、というか確信していた。だから、そこまでの衝撃はない、無いんだ、無い筈なんだ……。

 ……しかし、そんな覚悟とは裏腹に、私の意識はハンマーで殴られた様な衝撃に打ちのめされそうであった。

 

「……うん、わかってる」

 

 重い唇を開き、辛さを隠した声でそう答える。だが、それでも、それでも私は聞かなきゃならない。思い出したくも無いあの記憶、そして、失いかけた私の信念(呪い)の為に。

 私の真後ろで戦車が止まる、戦車に騎乗していた皆が目の前の彼の姿を見る。

 

「アキラ……?」

 

 その一言だけが、聞こえた、驚きに満ちた声だった。彼は目の前の皆に優しく、まるで天使の様に微笑みかけた。その微笑みが、なんだか私の深い所を抉る様に掻っ攫い、極上の食事の様に食い散らかしている様で。

 

「あ〜……、一応言っておくけど、変な事をしたらこれ(グラインドブレード)で切り裂くからね?」

 

 彼は重そうなその凶悪な6連のチェーンソーを持ち上げ、屈託のない笑顔で告げる。その言葉だけで、他の皆も彼の正体を察するに至っただろう。

 

 でも、まだ信じられない。

 何処かにまだ希望があるんじゃないかと。

 何かの齟齬が起きているんじゃないかと。

 

 ___ある筈の無い、無意味な希望を抱き、薄々気付いている現実から目を背ける。

 

 

「……アキラ、どうしてここに?」

 

 皆が呆気に取られて居るうちに、先生が聞く。

 

「……どうして……、ですか、まぁ……理由なんて教えるギリも無いじゃないんでしょうか?」

 

 先生の言葉など意にも介さず、興味無さそうにさらりと彼はそう述べる。

 まるで……、まるで私が1番言いたい事を言わせる為に、それこそ、私がこれから言う事以外は興味ないかの様に聞き流している。

 

 それが恐怖だった、言いたくなかった、直視していなかった現実が、全てさめざめと私の目の前に見せつけられる様な気がして。

 

「……で、ホシノ先輩……僕に言いたいことがあるんじゃ無いの……? 言ってよ……?」

 

 それでも、なせだか何処か哀しそうな顔で、私の言葉を待つ様に彼は告げた。それが私には彼が誰かからの救済を望む声に聞こえて、そう勘違いして、ハッと、決意の目で私は彼を直視し、口を開く。

 

 その時彼に騙されていた事を、気付かずに。

 

「アキラちゃん」

 

「なんです?」

 

 

 

 

 

「……帰ろう? アビドスに……さ、皆、待ってるんだから」

 

 

 

 

 

 

「……ハハッ……クハハ…………ギャーハッハッハッハッハッハ!!!」

 

 そう告げた時、彼は我慢が限界を迎えた様に凄まじく笑い出した。

 

「あー、おっかし! この後に及んでまだそんな事考えてたの!?」

 

「______何を、言っているの?」

 

 ふと、私の口から声が出た。

 怒りにも失望にも憎悪にも殺意にも何にも似つかぬ奇妙な感情の乗った声が。

 

「いやーチョロいね先輩もさ! ちょっと優しくしてさ、あたかも僕が帰る事を望んでいる様に語れば! そんな事容赦なく言っちゃって!」

 

「……ま、これ以上先輩と呼ぶ必要もないですね。もうこのわざとらし〜い学園生活を続ける必要がないのですから……、でしょう? ()()()()()()!」

 

 途轍もなく強く、それこそ叫ぶ様に、そして吐き捨てる様に彼は私の名前を告げる。ヒラリと彼は私の前に降り立ち、私の耳元で呟く。

 

「あの時から仲直りできないまま先輩を失って……」

 

 なんで君がそれを知っている? 

 

「それなのにまだアビドスに固執して、ついに後輩を手に入れたかと思ったら……、後輩に信頼されず裏切られて、貴方は一体……」

 

 まて、止めろ、その先を言うな、言うんじゃない! 言わないで! 

 

「何を誇りに持てるんです?」

 

 その言葉を聞いた私は突如として膝から崩れ落ちた、体を支えていた何かが壊れる、糸の切れた操り人形の様に私は力無くその場にへたり込んだ。その姿を見た、目の前の彼の顔は喜悦に歪んでいる。

 とても嬉しそうで、とても愉しそうなその表情、今まで見たことのない邪悪な笑顔。

 

「ねぇ……先輩、多分貴方は僕の事を仲間……って、思っていたんでしょうけど」

 

 そう、私はそう思っていた。

 

「でもね……」

 

 でもね? 

 

 

 

 

「……それは貴方の、エゴ(我儘)なんですよ」

 

 キッパリと、そして爽やかにそう言い放った。

 

「その我儘……今もユメ先輩に後悔の念があるのは、その所為じゃありませんか? 自分の我儘で先輩としての理想像を押し付け、いつもどこか呑気で余裕があった彼女の事が嫌いだった……、そして、失って初めて、その先輩の強さに気がついた。そう、呑気でいるのは正しい事なんだって」

 

 まるでわかった様な口振りで彼はそう言葉を続け、髪の毛をまとめていた紐をとり、私の目の前へと顔を近づける。

 

「___!!! ____!!!」

 

 誰かの叫びが聞こえる、だが、そのまるで太陽の様に赤い、爛々とした彼の目に引き込まれていた私にその叫びは言葉として耳に入らず、ただ私は目の前のどこか温かみのあるその顔にしか、意識が向かない。

 

「あー…ま、でも、それなりには楽しかったですよ…」

 

 

 

 

「先輩との、お仲間ごっこ」

 

 

 

 

《"____アキラぁ!!!"》

 

 先生の怒号が聞こえる、やっぱり、先生は叫んでいたみたいだ…。でも、もう間に合わない。

 

「……いつかの責任、とってくださいよ……」

 

「……!?」

 

 突如として息が苦しくなる、何かの異物感が口の中を襲う、何かに口の中をかき混ぜられ、なんとも言えない背徳的な快感が脳に伝わる。

 

「……フフッ、じゃあさよなら。小鳥遊ホシノ、また何処かで……」

 

 その時、私の髪は彼と同じような髪型に結ばれていた。

 気がついた時、彼の姿は見えなくなっていた。




お読みいただきありがとうございます。

さて、最後、ホシノはアキラくんちゃんに何をされたって?そりゃあまぁナニをされちゃいましたね。

あーあ、ホシノ先輩責任取らされちゃったね〜…。

では、次回から決別しちゃったアキラとホシノ、これからが、本番ですね。

曇るんだったら?

  • ホシノ
  • シロコ
  • 先生
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