★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)   作:埴輪庭

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後書きにまとめてありますが

惑星リスト(本編にない挿絵も掲載中)
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も新しく作成しました。


口利き

 

 ◆

 

 話を少し巻き戻す。君は端末を取り出して、アロンソに通話要求を送っていた。

 

 ・

 ・

 ・

 

「よう、アロンソ。ちょっと相談があるんだけどよ。いや金じゃねえよ。まあでも金みたいなもんか。ちょっと仕事がねえか聞きたくってさ。え? ヤク? いやいやそれはもう売らねえって。カチコミもパスだ。……おいおい、俺は喧嘩とヤクの売買しかできねえわけじゃねえぞ。いやまあ他に何ができるかって言われると困るけどな。それに仕事ってのは俺じゃなくて、ザッパーの……ああ、そう、俺の知りあい。知り合い? ダチ……元カノ……うーん? まあいいやそういうのは。ザッパーの仕事なんだよ。そうそう、メタノイドの。暗殺……いや、そうじゃない。出来ればよ、殺しは無しで頼みたいんだ。彼女は優しいからな、実はもう人殺しはしたくないそうなんだよ。うん、心を入れ替えたんだ。そうだな、色々あったってことだ。……ほう? いい話がある? マジかよ、じゃあ明日にでも顔出すわ。おう、じゃあな」

 

 通話を切った君は端末をポケットにねじ込んだ。ザッパーがこちらを見ている。

 

「いくつか仕事があるみたいだ。今ちょうどアッチが物騒な感じなんだとよ。勿論殺しはなしって条件もつけておいた」

 

 ザッパーが口を開いた。

 

「本当に?」

 

「本当だよ。今聞いてた通りだ」

 

「ありがとうございます……ケージ」

 

『ケージ。補足ですが、アロンソ氏の言う「いい話」の具体的内容は現時点で不明です。明日の面談時に詳細を確認することを推奨します』

 

「だな。あいつも悪い奴じゃねえと思うんだが──」

 

『ケージ。補足ですが、アロンソ氏は公開されている前科だけでも七犯となっています。()()()で間違いありません』

 

「……おう」

 

 ◆

 

 翌日、君はザッパーを連れてアロンソの事務所を訪ねた。

 

「よう」

 

 革張りのソファに足を組んだアロンソが顎を上げた。四十手前の彫りの深い顔に薄笑いを貼りつけている。昨日の通話で話は通っているから前置きは要らない。

 

「こっちが例の?」

 

 アロンソの視線が君の背後のザッパーを捉えた。

 

 ──イカれた暗殺者を(スケ)にするたぁ、こいつも大概だな

 

 そんな事を思うアロンソ。まあ無理はない。全盛期のザッパーは呼吸するように人を殺していた。キリング・メタルだとかザ・ブレイドだとか、妙齢の女に名付けるにはやや不穏なニックネームは幾つもある。

 

「で、仕事はあるんだよな?」

 

「ああ。まあその前にだ、ルード・ファミリーは知ってるよな?」

 

「名前くらいは」

 

 ルード・ファミリー。ゴッチ・ファミリーと同じくC66の下層を根城にする犯罪組織だ。規模はゴッチより小さいが近ごろ急速に膨張しているらしい。

 

「うちのトップとルード側がちょいとやり合っていてね。一触即発だ。鉄砲玉を送り込まれる可能性がある。で──うちの幹部を護衛してほしいんだよ。ヤバそうな日だけでいい。常駐しろとは言わない」

 

 アロンソの指が膝の上で拍子を刻んでいる。

 

「もし鉄砲玉が来ても殺す必要はない。むしろ殺されると困る。情報が欲しいんだよ。ルードの内部事情がな。末端の鉄砲玉でもなんでも、知ってる事を洗いざらい話してもらう。死体は何も喋らないからな」

 

 なるほど。護衛というよりは捕獲だ。鉄砲玉が来たら生け捕りにしてアロンソの前に差し出す。後は煮るなり焼くなりお好きにどうぞという寸法である。メタノイドの戦闘力を制圧と捕縛に使えというのは包丁で缶詰を開けるような贅沢だが、ザッパーにとっては鼻歌混じりの簡単な仕事だ。

 

「報酬は?」

 

 君が尋ねると、アロンソは指を何本か立てた。

 

「おいおい、単位も言ってくれねえとな」

 

「ちっ……万だよ。万。厭だねえ疑り深くって」

 

「自慢じゃねえが元詐欺師だぜ俺ァ」

 

 そう、君は誉無き元詐欺師である。しかも内容はといえばカスのような保険契約を馬鹿に結ばせるしょうもないものだ。要するに、ろくでなし。

 

 とはいえ報酬は良い。君はザッパーを振り返った。

 

「殺さなくていいのならやります」

 

「じゃあ話はまとまったな」

 

 アロンソが立ち上がり手を差し出す。君はその手を握った。ザッパーは握手をしない。メタノイドにとって、アースタイプの体液──汗だのなんだのはそのメタルな皮膚を錆びさせてしまう。

 

「ちなみに護衛する幹部ってのは誰なんだ」

 

「俺だよ」

 

 アロンソは事もなげに言った。

 

「……アンタかよ」

 

「まあ俺もそれなりの立場ってことだ」

 

 にやりと笑う。なるほど報酬が張るわけだと君は納得する。

 

「じゃあ条件を二つ足す」

 

 アロンソの笑みが僅かに固まった。

 

「刺客を一人捕えるたびに追加報酬。捕獲ボーナスだ。彼女の殺し屋時代の逸話は知ってるだろ? まさにプロってやつだ。殺して殺して殺しまくってきた。だからこそ、捕獲ってのは中々大変だったりするんだ。アンタも手加減の難しさってのは知ってるだろ?」

 

「分かった分かった。いくらだ」

 

「一人あたり五千」

 

「三千」

 

「四千」

 

「……まあいいだろう」

 

 アロンソの指が膝を叩いた。

 

「もう一つ。もし護衛が失敗しても彼女を恨まないでくれ」

 

 アロンソの顔から笑みが消えた。

 

「兄さん。普通は護衛が失敗したら落とし前つけるもんなんだがね」

 

「おいおい、あんたの伝手で彼女より腕が立つ護衛なんているのかい?」

 

 アロンソは答えなかった。

 

「それにな、護衛ってのは絶対じゃない。ザッパーがいて駄目だったなら誰がいたって駄目だったってことだろ。そこで責任を問われちゃ受ける側がやってらんねえ」

 

「……」

 

「ミラに一部始終を録画させる。もし万が一のことがあっても映像が残る。それで文句のつけようがない仕事をしたかどうかは分かるはずだ。だから責任は問わないと今ここで言ってくれ。部下の兄ちゃんたちにも言い含めておいてくれよ?」

 

『録画機能は常時稼働可能です。改竄防止のタイムスタンプも付与します』

 

 ミラが肩口から補足した。アロンソは金属球体を一瞥してからザッパーに目をやり、最後に君を見た。

 

「……分かったよ。護衛の失敗に関しては責任を問わない。それでいいか?」

 

「十分だ」

 

「じゃあ段取りは追って連絡する。ケージ経由でいいな?」

 

「おうよ」

 

 ええかっこしいとはまさに君の代名詞。首尾よく元カノにいいところを見せる事ができた君は、ほっと胸をなでおろした。

 

 

 

 




『設定資料集』
 HTMLで作成した設定資料集・フレーバーページです。自分のパソコンにあるWebサイトのフォルダ(HTMLやCSSなど)を、Netlify、もしくはクラウドフレアの画面にドラッグ&ドロップするだけで、数秒でURLが発行され公開されるので超便利です。元々こういうのがつくりたくて書いた作品です。


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