★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)   作:埴輪庭

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8.遊星X015⑧

 ◆

 

 糞火を眺め続けること20分か30分か、案外にも君は飽きずにその光景を楽しんで見ていた。

 

 内実はともかくとして。 見た目だけはどこか幻想的で美しいのだ。

 

 暗黒の虚空に、色とりどりの宝石が散らばっていくようにも見える。

 

『ケージ、この光景をデータとして 記録しておきたいので、私をもう少し持ち上げてもらえますか?』

 

 自分で浮けるじゃんと思いながら、君はミラを持ち上げた。

 

 カシャカシャと音がする──……ミラが記録をとっているのだろう。

 

『もういいですよ』そんなミラの言葉に、君は膝の上にミラを置き、糞火が収まるのを待った。

 

 それから更に数十分後、噴出物は鳴りを潜め、また元の静寂が戻った。

 

「もう良さそうだな」

 

 君が言うと、ミラはモノアイを2度、3度と光らせた。

 

 まるでうんうんと頷いている様だ。

 

『あと二箱分です』

 

 大体半トンほどだ。

 

 君は頷き、再びシルヴァーの外へと出る。

 

 ◆

 

 それからの作業は特に何事もなく進んだ。

 

 結局やることは単純なのだ。

 

 肉を切り取りケースへとしまう──その繰り返しである。

 

 アクシデントはなかった。

 

 ただ、一つの感覚が拭いきれない。

 

 ──なんだかなぁ

 

 君は内心、"誰かから見られている"という感覚を覚えていた。

 

 それが君の心をどうにも騒めかせる。

 

 場合によっては、視線そのものが凶器となる事を君は知っているからだ。

 

 視線というものがある。

 

 よく「視線を感じる」などと言うが、視線には実態がない。実態がないなら存在しない、あくまでも言葉だけのものだ──……と考えられていたのは随分昔の話である。

 

 何らかの意思が込められた視線には実態がある。

 

 この世界のすべてがニュートリノという極小の素粒子で構成されていることが証明されてから、この素粒子の振る舞いは徹底的に暴かれ、解明された。

 

 結果、この素粒子は意識を向けられるだけでも状態を変化させるという事が分かったが、この分野の研究が進むにつれ、いくつかのオカルトが暴かれる事になった。

 

 例えば "邪眼" である。

 

 邪眼とは特定の人物が他人に向ける視線が、実際に相手に物理的または心理的な影響を与えるとされる現象である。

 

 この現象はかつては迷信や民間伝承の範疇にあったが、現代科学におけるニュートリノやその他の微粒子研究の進展によって再解釈された。すなわち意識的な視線、つまり意図を持って他者に注がれる視線が微粒子レベルで物質の状態変化を誘発する事がありうる、と。

 

 要するに悪意ある視線、敵意ある視線は時に不可視のナイフとなって胸に突き刺さってくるという事だ。

 

 もちろんそんな事を誰でもできるわけではないが、科学的に説明できる一現象として存在する事は事実である。

 

 ・

 ・

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『どうしましたか、ケージ』

 

 傍らに浮遊するミラの問いかけに、君は確とした返事を返せない。

 

「いや、なんていうか、誰かから見られているような気がして」

 

 君がそう言うとミラは少し高く浮き上がり、くりくりとしたモノアイをひときわ大きく光らせた。

 

 光子探査(Photon Scanning)と呼ばれる手法で、光の粒子を利用した周辺探査技術である。

 

 

『周辺に生命反応はありません。もちろん、この遊星X015は別ですが。つまり、論理的に判断すればケージが感じたという気配はこの遊星X015のものと考えられます』

 

 しかし遊星X015が自律行動、特に他生命体への干渉をした記録はない。

 

 この巨大な肉の塊は観測を始めてから少なくとも1000年以上は、ずっとこの宙域で静かに鎮座したままなのだ。

 

 君はネガティブな視線を受ける事にかけてはちょっとした経験がある。

 

 下層居住区で君これまで疑念に満ちた、ときには軽蔑を帯びた視線を雨あられと受けてきた。

 

 人々は互いに互いを信じず、疑心暗鬼の表情を浮かべながら日々を過ごしている。

 

 君の服装、君の歩き方さえもが隣人の評価の対象となる。

 

 貧しさが常に人々の間に隔たりを作り出し、猜疑心の苦味が吸う空気にさえも溶け込んでいた。

 

 そんな環境で育った君であるので、視線に込められたその意味を探ることに慣れている。

 

 そんな君が先ほどからの視線から感じたモノは──……

 

 ◇

 

 惑星C66、某所。

 

 惑星開拓事業団、惑星C66管理局の幹部職員であるローレン・ナイツは自室の端末で君の情報を閲覧していた。

 

 君の経歴、これまでの仕事の成果──……それらを見て、ローレンは君に強く興味を持つ。

 

「下層居住区上がりっていうのもドラマがあっていいね」

 

 恵まれない環境に生まれながらも、自身の才覚や天運でなりあがっていく……創作物ではよくある設定だが、現実では中々ある事ではない。

 

 それをローレンはよくよく知っているのだ。

 

 下層居住区上がりの団員など大抵は半年以内に死ぬ。それもろくな成果も残せずに。

 

 しかし、そうじゃない例もあるにはある。

 

 ローレンは自身の身でそれを証明している。

 

 

 ──────────────────────────

 

 ・ローレン・ナイツ

 

【挿絵表示】

 

 20代男性。アースタイプ。惑星C66管理局の幹部職員。惑星U101⑧参照

 

 

 ・この作品のあらゆる原理・原則

 なんちゃってSFなので全部適当です。突っ込みは無しで! 

 

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