★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)   作:埴輪庭

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ネトフリのグッドドクターって海外ドラマにハマってて更新さぼり倒してました


14.惑星C66、マッチング・システム④~惑星D80~

 ◆

 

 マッチングした相手がどんな者たちかはわからなかったが、少なくとも開示されているデータからは特に問題は感じられなかった。

 

 ──良かった、知ってる奴はいないな

 

 名前、性別、種族。特に見覚えがある者はいない。

 

 君の交友関係はお世辞にもマトモとは言い難く、中にはとんでもない札付きもいる。

 

 君はマッチングを受け入れ、その旨が残る二人にも通知された。

 

 それは夕方のことだったが、その日の夜には事業団の通信ネットワークを介して二人から連絡が来た。

 

 テキストデータでの通信だったが内容は無難なもので、「よろしく」だとか「一度顔を合わせよう」だとかそういう感じだ。

 

 ちなみに事業団が斡旋するのはこのマッチングまでで、実際にどのような仕事をするかまでは決めてはくれない。

 

 だからマッチングするだけして仕事はしない、要するに人間関係の構築のみを目的とした利用を目論む者もいないわけではないが、そういったものは当然開拓事業団にマークされ、次回からはマッチングの利用を制限される。

 

 ともあれ、君は相手方のメッセージに返信することにした。

 

「えーと、はじめまして、早速の返信ありがとうございます。ケージと申します。まだまだ若輩者ですが……と」

 

 君は相手を混乱させて不利な契約を結ばせるような文章を書くのが大の得意だ。だから、単純な挨拶などはろくすっぽ考えなくともいくらでも書くことが出来る……褒められた話ではないが。

 

 そしてそんなやり取りを何度か行った後、まずは顔合わせがてらにミーティングをすることになった。

 

 ただ挨拶をするだけでなく、どんな仕事を受けるか、そういったことも決めるということになり──……

 

 翌日。

 

 ◆

 

 アサミ。

 

 女は君にそう名乗った。

 

【挿絵表示】

 

 髪も瞳も、目が覚める様に色々と青い女だった。

 

 ──地球は青かったって言葉があったな。随分昔のナントカっておっさんの言葉だっけか

 

「短い間だけどよろしくね」とアサミが言い、君はうなずく。

 

 それよりも、と君の視線はアサミの左に立つ、異様に背の高い男に向けられた。

 

 背丈はおそらく2メートルはあるだろう。一目でアースタイプではないとわかる。

 

 なぜって、全身が緑色の植物の蔦のようなもので覆われているからだ。

 

 これはベルトラン外星人の典型的な外見である。

 

 ちなみに彼らは原則的に全裸だ。服を着てしまうと、光合成が出来なくなるからだ。

 

「ああ、彼?共通言語は話せるけど、話すことがあまり好きじゃないみたい。名前はギュルグゥイエラ・ラムラム・レミラムさんだったっけ。レミーでいいってさ」

 

 アサミが説明する。

 

「そうなの?」と君が問うと、レミーは頷いた。表情からはまったく感情がわからない。

 

 目は口ほどにモノを言うという言葉があるが、レミーの目は言ってしまえば()なのだ。顔に二つの瞳大の穴が空いている。

 

「分かった、無理には話しかけないさ」そう君が言うと、そのレミーは体を一度震わせた。

 

 アサミ曰く、「多分、ありがとうって言ってるんじゃないかな」との事だった。

 

「なんでわかるんだ?」

 

 君が尋ねると、アサミは「グレイ・タイプほどではないけれど、私も少し相手の考えが分かるんだ」などと言う。

 

 ──エンパシストってやつか

 

 エンパシストとは、他人の感情や思考を感じることができる特異な能力を持つ者たちのことである。

 

 この時代、いわゆる"超能力者"はそこまで珍しくはない。

 

 前時代ならばともかく、この大宇宙時代に於いては脳科学の研究が進んでおり、超能力はもはや()能力ではなく、ただの能力、個性の一つとして受け止められている。

 

 脳の特定領域の活性化によって超感覚的な能力を持つ者が現れるというのは、今では一般的な知識だ。

 

 エンパシストはその一例で、特に人間関係の築き方やコミュニケーションの技術において重宝される存在となっている。

 

 アサミの能力はそれほど強力ではないが、彼女は感情の機微を読み取るのに長けている。

 

「あなたは……えっと、ケージって呼んでいい?そう、ありがと。あなたは何か特別な能力はあるの?」とアサミが質問する。

 

 君は首を振り、「いや、何も。体を動かすのは得意かな」と答えた。

 

 これでいて空気が読める君だ、デカい賭けに負けて全身を改造されたなどとは言わない。

 

 そんな事をいえば、アサミがドン引いてしまう事は目に見えている。

 

 ◆

 

 君の答えを聞いて、アサミはどこか小悪魔めいた挑発的な笑みを浮かべた。

 

「そんな感じには見えないけど。まぁ初対面であんなことやこんなことを明かす人なんていないか」

 

 それにしても、とアサミはあたりを見回す。

 

【挿絵表示】

 

 君たちがいるのは宇宙港周辺の商業区画だ。ここは大きな広場で、多くの宇宙商人たちが出店を並べて賑わっている。

 

 君たちはその出店の中の一つ、飲み物と軽食が食べられ、座りながら話せるような店に来ていた。

 

 店と言ってもガーデンテーブルが並べられ、天井もない開放的な場所だ。

 

「ここはいつもこんな感じだよ。落ち着いて話すっていう感じじゃないけれど、初対面だしな。このくらい雑音があった方が話しやすいんじゃないかなと思って提案したんだけど」と君が言うと、アサミは「そうだね」と同意した。

 

 まあ他にも理由はある。

 

 落ち着いて話せるようなお上品な店というのは基本的に客を選ぶものだ。

 

 茶一杯、水一杯にしても割高だし、事業団の人間だと知られれば嫌がられる恐れもある。

 

「まあでも普通そうな人でよかったよ。あなた……えっとケージって呼んでいいかな。ありがと、ケージも知ってると思うけど、この仕事をしてる人って、えーと、そのユニークな人が多いからさ」とアサミが苦笑しながら言った。

 

 その笑みにどこか自嘲めいたものが含まれているのは、その"ユニークな人"の中に自分たちも入っていると自覚してのことだろう。

 

 君とアサミ、レミーの3人はそれから他愛ないことを話していたが、やがて誰からともなく仕事の話をしようということになった。

 

「知ってるかもしれないけど、俺はこの等級の仕事は初めてで」と君が言うと、アサミは大丈夫大丈夫という風に頷きながら言った。

 

「基本的にやることはあまり変わらないよ。仕事の内容をよく見て指示通りにするだけ。内容にしてもDとかEほど危険なものはそれほどないんじゃないかな」

 

「それも結構珍しいよな。普通、等級が上がるほど仕事の内容が難しくなっていくものだと思うんだけど」と君が言うと、アサミもレミーも頷いた。

 

「確かにそうだね。ただあまり大きな声では言えないけど、惑星開拓事業団の仕事ってある種の間引きみたいなところがあるから。上に行けば行くほど、楽で大きく稼げるんだよね。Aとかまで等級が上がると、事業団の職員に引き抜かれることもあるらしいよ」

 

 惑星開拓事業団には共同体に不利益を与える無能者をこの広い大宇宙に始末させるという面がないわけではない。

 

「それは聞いたことがあるけど、間引かれる連中だって危ない仕事なんてやろうとはしないんじゃないか」と君は言いかけて、何かに気づいたように「ああ……」とつぶやいた。

 

 そういうこと、とアサミが頷きながら言う。

 

「逃げたって死ぬからね。そういう人たちは組織とか何かに売られて事業団の仕事をしていることが多いから。逃げたら追手を出されて殺されちゃうよ」

 

「世知辛いねえ」と君は端末に表示させ、とある仕事内容を二人に見せた。

 

「どれどれ」とアサミが端末を覗き込む。

 

 惑星D80、遺棄された建築物の清掃業務。瓦礫の除去、単純清掃、最低限の修繕など。

 

 期限は30日。

 

「何も30日間そこで暮らせっていうわけじゃなくて、最低限の作業をした後は切り上げて良いみたいだ」

 

「これって専門機器とかの修理もしなきゃいけないのかな。あ、概要に書いてあるね。何々、専門知識不要、単純な肉体労働。ただし建築物内のいかなる物品も持ち出し不可。悪くないね。ただの掃除か。えーと、惑星D80って確か……」

 

 惑星D80は一言で言えば遺棄された文明の星である。かつてその星には何がしかの文明が栄えていたが、現在では荒れ果てた荒野と無人の建築物が立ち並ぶ。

 

 

【挿絵表示】

 

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