大変な数の好評を頂いている本作品ですが、先日ふとランキングを眺めていたのですが、日間ランキング34位にランクインしていました。
この小説がこれ程愛されている事を知る事が出来、一層の励みを頂きました。ありがとうございます。
今回は短めとなっております。
では、どうぞ。
─決断の時か。
「…………ええ。もう、思い残す事はありません」
黒服の元から去って、ここはあの時の夢。初めての対面時に、この場を整える手段を教えてもらった。そして、今に至る。
私は、覚悟してここにいる。その結果どうなるかも、言わずもがな。どれだけの敵を作るのかも、理解している。それでも、やらなければ。
私の野望を叶えるのには、”私の格”が足りない。それこそ、神に匹敵する程の格が必要になる。時間演算……主に、それに追従する業を成し遂げるには、私はあまりにもちっぽけ過ぎる。
”キヴォトス最大の神秘”とか言われる彼女に、大それた荒業が出来ない理由も、それがあるだろう。
─未練は無いな?
「ありませんよ」
即答する。
未練なり心残りなりは、全部捨ててきた。
絆も、情も、後悔も。全て、今までの道に捨て去った。
─接続が切れれば、今のお前の状態に戻る。ゆめ、忘れるな。
「ええ。理解してます」
瞬間、ナニカが流れ込む。
冷たく、昏い。気を抜けば心がおかしくなりそうで、心の底から不快感を覚える。鉄の様な重さで、漆黒の様に黒くて。まるで、この世の邪悪を詰めた様な。
これが、ヨグ=ソトースの格なのか。異界の生命が定めた、邪で敬虔なる、生命としての位。圧倒的で、絶対的。
今まで知る由も無かった様な未知の知識や技術が、流れ込んでくる。
同時に、驕りが沸き上がる。
「私ならば出来る」、「私でしか成し遂げられない」と。呑まれてはいけないと理解しつつも、誘惑は甘美。気を保たなければ、どうなる事か。
等と思えば、いつの間にか流れはなくなり、身体が馴染み始める。
─どうだ?
「……変わりましたね、私」
その感想が、第一。
力も神秘も、格も。はて、本当に同じ人物なのかも疑う程に。格が違うだけで、ここまでの差が現れるとは。
─お前の力は、増幅されている筈。演算を基にした
そう。私が本当に手にしたかった能力。”過去”と”
正しく、”神”の為す所業。
これで。これで。
─行くのか。
「ええ。あちらにも降り立つ必要があるので」
幾ら今の私が神格に至ったとしても、アチラで作業等をする必要がある。万一コチラで行ったとして、■■■■がコチラの常識に引っ張られる可能性もある訳だ。
勿論、アチラに現界した時には、あらゆる者が敵として立ち塞がるだろう。が、やらねばならない。
─さぁ、始めましょうか。
────────
「……先生、態々ここまで足を運んで下さり、ありがとうございます」
「ううん、大丈夫だよ。……何か、あったの?」
「はい。と言いましても、現状では”何かが起こるかもしれない”と言わざるを得ないですが」
いつも通り書類に忙殺されていたとある日。急用でリンちゃんから呼び出しのメールが。それに応じて執務室に来たものの、いつも以上に緊張した面持ちだった。
そんな雰囲気から沈黙が生まれ、数瞬。それを切ったのは、リンちゃんだった。
曰く、空間の歪みと謎の高エネルギーを感知したらしい。それはしかも、今も尚留まる事を知らないようで、収まる気配が無いとも。
それに呼応するように、今までに見ないタイプの敵も出現する様になったらしい。場所は特に問わず、各学園にもチラホラ湧いているみたいだ。
「先生がここに来るまでに、各学園への勧告は済ませましたが……これで収まるとも考えにくいと私達はみています」
「そこでシャーレの出番……って事?」
「はい。先生には幸い、色々な学園とのコネクトもある様なので」
自由に動く事もままならない彼女達にとって、超法規的な権限を持っている私は都合がいいのだろう。
どちらにせよ、私はその敵について調査に向かおうとは思っていたので、お互い渡りに船な状態。
「その敵の情報は、掴めてたりするの?」
「はい。とは言っても、事細かに把握している訳ではありませんが……」
リンちゃん曰く、倒すとその場で消え去るタイプの敵らしい。敵の姿は様々で、四足歩行の獣の姿もあれば人型の姿も、そして翼獣型も確認されているらしい。
そう考えると、
戦闘力はそこまで高くはないようで、集団になると連携を取る個体もいるという情報もあったそうな。
……そして、これが最大の特徴。
例を挙げるとすれば、腹部に口が付いた人型であるとか2つ首の四足歩行型、下手をすればトラウマになりかねない程のおぞましい姿をした個体も、それなりに確認されている。
ただ、戦闘力の高い個体…所謂ボス個体と思わしき個体はまだ確認されていないのが、不幸中の幸いとも言えるだろう。対策を講じるなら、今のうちの様に感じる。
「だとしたら……色んな学園とも共有して対策した方が良さそうだね」
「はい。悔しいながら私達では及ばないので、先生にお願いしたいんです」
「勿論、任せて」
今回の問題も、そもそも黒幕が誰なのかすら分かっていない。敵の規模も、キヴォトスへの影響も。下手をすれば、私達が手に負えなくなる可能性も否めない。
……しっかり、しないと。
────────
「…始まりましたか」
「ベアトリーチェの件といい……何故、あのように賢い彼女が」
「賢いが故、でしょう。物事を理解し続けてしまえば、辿り着くのはあの様な結論でしょう」
それは、我々も同様でしょうね。そう付け足すのは、ゴルコンダ。恐らく彼女が現界したであろうタイミングでの、高エネルギーの検出と時空の歪み。
今でこそ、その範囲は僅かなものに留まっている。しかし、これを無視した結果は、態々言うまでもないでしょうね。
本体でないにしろ、彼女はアレの依代として存在していると言って問題ない状況。言わば、擬似的なアレの招来。
アレの影響に、この世界が耐えられるとは思えません。となるならば。
─貴方達の、お好きに。
…………。
「……さて、どうにかする手段を立てねばなりませんね」
普段は、およそ何事も淡々と進め続ける私ですが。この様な気持ちを抱く事も、恐らく過去未来無いのですが。
……心苦しい、ものです。