先日、ふと気になってランキングを見てみた所、本小説が”二次創作日間ランキング”第11位にランクインしていました。あまりに想定外だった事もあり、目を何度も疑いました。
ここまでこの小説が愛されている事は、非常に嬉しいです。普段から愛読して下さっている皆様、そして、少しでも見て下さった皆様、誠にありがとうございます。
本小説は、完結まで書き続けようと思っておりますので、最後までご愛読お願いします。
では、どうぞ。
「ッ!攻撃が当たらない……!」
戦闘を始めて数分、ホシノがそうボヤく。私含めて、恐らく私が感じている事だ。
当たらない。
少しは当たるとかであれば、活路が見い出せるというのに。
それだけならまだしも、周りの”奇形”はこちらだけを攻撃してくる。まるで、
攻撃に徹さないヨグはさて置くとしても、あの”奇形”をどうにかしないといけない。だが、ヨグを倒さないと”歪み”は収まらない。見事なまでの無限機構が出来上がっている。
分析を試みている黒服は、どうやら渋い表情を浮かべている……ように見える。
「……1つ、仮説が」
「話して。今のままだと、埒が明かない……!」
こうして考えを巡らせている間も、こちらの身体も精神も磨り減っている。いつものような悠長な会話は出来そうにない。
それを汲んでか、黒服は告げた。
「彼女、
「…………は?」
時間を弄る?文字通りの、反則級能力じゃないか。
黒服から聞いた、ヨグ=ソトースの存在。確か、どの時間軸にも存在するのだとか。ヨグ=ソトースの力を取り込んでるから、そんなトンチな能力が使えるようになったとでも?
……なんだって、そんな事が出来るんだ。
だとして。並々ならない負荷が掛かってもおかしくない。こんな能力の乱用なんて、出来るはずがないだろうに。
…いや、出来るのか。
「ですが、ノーリスクでは無いはずでしょう。何としても、弱点を突き止めねばなりません」
こうは言うものの、それを得るにはとんでもない観察眼を必要とする。単なる挙動だけでなく、時間と空間等も踏まえて捉えなければいけない。それは、想像よりもずっと困難だ。
攻撃してこない事は、私も引っ掛かっている。言葉にこそしてないけど、黒服も感じてはいる事だろう。確証が無いから話さない、およそ私と似た心境なのだと思う。
時間を弄る為に、何かしらの要因で攻撃出来ない。そう考えるのが妥当ではあるにしろ。確証が無い状態でこれを共有した時が問題だ。
もし、その読みが外れていた時。その時には、私達は大きな隙を晒す事になる。あんな相手に大きな隙を見せるのは、間違いなく敗北に直結する事だろう。
だから、出来ない。少なくとも、何らかの根拠が見えてこない限りは。
「…皆……」
戦線に出る皆が、心配だ。
そして、あの様な気概で闘い続けるヨグも、心配だ。
私には、ヨグのこれまでや辛酸を理解しきる事は叶わない。理解出来たと思ったとて、それは彼女にとっての”全てを理解できた”事とは程遠いだろう。
ホシノがあそこまで反応しているという事は、アビドスと深い関係があったに違いない。……生徒名簿になかったけど、もしかしたら元アビドスだった可能性だって。
分からないなりの妄想。分かりたいが故の想像。
彼女達が背負う、重い重い運命。それを背負えない自分が、えも言えぬ程に悔しかった。
────────
「……ッ!カタリッ!」
「そんな余裕があるとお思いですか?」
「……クソッ!」
私は、いつもとは人が変わった様に冷静を欠いていた。長い間姿形もなかった
その上、私達の攻撃は何一つ当たっていない。確実に当たるであろう弾道すらも、気付けば何食わぬ顔でカタリがそこにいるだけ。出血はおろか、傷一つ付いていない。
対してカタリは、攻撃の一つもしてこない。
……ムカつく。まるで、私とはマトモに向き合うつもりが無い、と言われている気分だ。
確かに、今のカタリは私達よりもずっと強いだろうし、私達の手が届かない所まで行ってしまったのかもしれない。カタリの心境に気付いてあげられなかった私がこうしてカタリを気にかける資格もないのかもしれない。
でも。私の親友なんだ。かつては、苦楽を共にしたんだ。ああなってしまった友を、どうして憂えないでいられるだろうか。
あわよくば、もう一度。
あの頃のように、楽しく過ごしたい。
「事急いてますね。貴女らしくもない」
吐き出される、冷たい声。かつての面影はある。が、それ以上に。変貌してしまったと思わせる程の冷たさ。放たれる言葉に、相手への情は一切感じられない様に、私は感じる。
ただただその場の事実を並べて言い放つ、無機質な文。それはどうも、
だからだろうか。
湧き上がる怒りが、収まる気配を見せないのは。
「いっぱい、話したい事がある」
「奇遇ですね、私も話をしたいと思っていまして」
嬉しい言葉の、はずなのに。酷く、鋭い。
身体が感じている疲労感が、非常な質量を持ってのしかかっている感じが、一層強まる。あれだけ満足に動いていた身体も、今ではマトモに動かせる様に取り繕うだけで手一杯。
動け、動けと。これでもかと、身体に鞭を打つ。まだ倒れる時じゃない、と。
遠くに行ってしまった友の、手を取る為に。
「……どうして、カタリは私に何も言わなかったのさ」
「貴女は、こんなやり方を許さないでしょう。荒れたあの時ですら、心のどこかで”やり過ぎではないか”と思うでしょう」
そう語るカタリは、幾つもの感情を顔に浮かべている。
諦観、悲哀、憐憫、義憤。それらは、あらゆるベクトルを向いていて。
「どうして、ここを去ったのさ」
「何かを知る為なら、ここは適さないでしょう。知り尽くすには、1つの場所に留まるのはよくないですから」
淡々と、機械的に。次々に告げられる、カタリの内情。かつての私が知り得なかった、彼女の心の内。
……ここまで合理的だったかと、疑いがある生まれる。確かに、合理的な思考をする性格は昔さながらだけど、ここまで超合理主義的だったかと言われれば、そうではない様に思う。
私とは別の道を歩んでいたカタリ。その道で、”情”を置き捨ててきたのだろうか。
「……お説教が、必要みたいだね」
「…………そうですか」
構える。それに呼応する様に、後ろからも構える音が聞こえる。
……あぁ、後輩達に、らしくない所を見られちゃったな。のんびりとした
そして、私に何も言わないで全部を背負い込もうとしたカタリ。
─勝って、話をつけないとね。