私は問う   作:Cross Alcanna

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次話で完結となります。

話の区切りの関係上、今回は短くしています。ご了承下さい。



私の終着、アナタの始発

 

倒れるカタリを、私はただ、見つめ続けていた。

 

神秘も薄れているのが分かるし、身体の所々がボロボロになっている。倒れているカタリを見れば、生気は感じられない。

 

私は、カタリを撃った。

 

地面が揺れ、空が揺れ、空気が揺れて。そして、世界が揺れていた。それは、世界の崩壊を示しているとも見て取れた。そして、足元に浮かび上がった謎の紋様。魔法陣の様でもあり、ヘイローっぽさもあった。

 

何が起こるか分からないあの状況。そして、脳裏にチラつく世界の崩壊。それらが齎す焦りは、私の指を動かすのに十分だったと言える。

 

だからと言って、言い訳をするつもりは無い。私がカタリを撃ったし、私がカタリを殺した事になる。

 

決着は、いつかつくもの。だけど、その瞬間が訪れると、こうも脱力感が身体を支配するものなのか。

 

勿論、後悔や罪悪感が皆無という訳では無い。

 

親友を撃ったこの腕は、今もカタカタと震えている。筋肉の内側から、まるで本能がそうさせている様に。いつも出来てる笑顔だって、今では口角がおかしくなってる様な自覚があるくらい。

 

 

「…カタリ……」

 

 

一足遅れて、駆け寄る。項垂れた身体をそっと持ち上げる。

 

弱々しい。そんな印象が、第一を支配する。

 

これから朽ち果てていくのではないか、そんな様子に感じられる。

 

肌が、白い。うっすら見えている瞳は、気持ち色褪せていく様な気がして。

 

 

「カタリ…………ゴメン……ごめん…ね……」

 

 

そんなカタリを前に、私はただただ謝意を示す他出来なかった。

 

どうにか分かり合える世界線があったんじゃないのか、そもそもあの時に、カタリを止める事は出来たのでは無いか。そんなたらればばかりが、脳を蝕む。

 

だが、それも無意味。それを、他ならぬカタリの有様が映し出していた。

 

 

「………………ホシ……ノ」

 

「っ!カタリ!」

 

 

長い間聞く事の出来なかった、正真正銘あの頃と変わらないカタリの声。それは、とても弱々しいものとなって再度聞く事になる。

 

 

「……貴女は」

 

「…うん」

 

「………どう…して」

 

「…うん」

 

 

相槌を打ちながら、この瞬間を噛み締める様にして聞く。この場における一言一句を、絶対に聞き逃さないと思いながら。

 

 

「どうして………前を…向けたので……すか」

 

「…………たまたまだったんだよ」

 

 

本当に、この一言に尽きるのだ。

 

後輩との巡り合わせも、先生との出会いも、アビドスで生きてくのも悪くないと思ったのも。

 

何か一つ欠けていたら、どうなっていたのか分からない。言ってしまえば、落ちる寸前の鉄骨を渡っている様な。危ないと分かっていて尚、乗り越えられるという謎の安心感。

 

そのどれもが、たまたま私の道には転がってきた。有り体に言えば、神様のイタズラ、ってヤツかな。

 

 

「……でもね。私の道に、カタリがいなかった」

 

 

そんな一方で、カタリは違う道を行ってしまった。一緒に歩みたかった道に、カタリはいなかった。何度、”もし今カタリがいたら”なんて考えた事か。

 

カタリと笑い合いたかった毎日。カタリに紹介したかった後輩達。悪いだけじゃないと教えてくれた先生。そのどれが、私の夢幻(ゆめまぼろし)で終わって。

 

酷く、悲しかった。虚無感こそなかったかもしれないけど、カタリと過ごしたかったアレコレは、二度と戻ってこないしやってこない。

 

 

「カタリと一緒に笑いたかった。カタリと一緒に苦難を乗り越えていきたかった」

 

 

もしかしての最後の希望も、私が絶って。

 

 

「………良かったです」

 

「…………カタリ?」

 

 

何を言うかと思ってみれば、チグハグな返答。

 

良かったとは、何に対してなのか。

 

 

「貴女が……私と同じ…道を歩んでいないようで」

 

 

嗚呼。カタリは、自覚していたんだ。自分の道が、酷く荒んでいた事を。それでも尚、たった一つの信条をもってして進んできたんだ。

 

最後に私の心配するなんて……不器用なんだから。

 

 

「………ホシノ」

 

「……何?」

 

 

少しだけ凛とした、声。今までの朧気な声色とは違う、何かを決めている声。

 

そんな声掛けに、私は応える。

 

 

「……アビドスを…頼みましたよ」

 

「………うん」

 

 

私が応えると、プツリと糸が切れた様にして、カタリの身体から力を感じられなくなった。瞳も、閉じている。

 

 

「…………ホシノ……」

 

「………先生」

 

 

静かな足音と共に、先生が私の傍に歩み寄る。その声は、いつも以上に優しかった。

 

 

「先生……うぅ…………」

 

 

我慢の、限界だった。

 

今まで抑えていた心の中のイロイロが、涙となって溢れ出す。手で拭う事すら忘れて、私は泣きじゃくった。

 

それを、先生は静かに抱き寄せる。

 

温かい。

 

だけど、その温もりが、私の心に突き刺さる。

 

 

 

─涙はまだ、零れている。

 

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