F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する   作:ゆーき@書籍発売中

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第十一話 僕の秘めたる厨二心

 1か月後の朝。

 朝食を食べた俺はネムを膝の上に乗せながら、椅子の上に座っていた。

 そして、いつものように空間把握(スペーショナル)を使う。

 すると、この部屋がどの程度の広さなのかや、置かれている家具の位置と大きさが感覚的に、すっと頭の中に入って来た。

 

「よし。だいぶ空間把握(スペーショナル)が使えるようになってきたな。これだけ使えれば、他の空間属性の魔法も使えるようになるんじゃないかなぁ……」

 

 何度も何度も反復練習し、ようやく空間把握(スペーショナル)が手足のように使えるようになったことに、俺は頬を緩ませる。

 すると、ふと頭の中に鳴き声が響き渡る。

 

『きゅきゅ!』

 

 その鳴き声を聞いた俺は、すぐさま繋がりを辿って、視覚をそのスライムに移す。

 あれから更に沢山テイムし、今や1000匹を超えている。お陰で自身を呼ぶスライムがどこのスライムなのか判別するのにちょっと手間がかかるんだよね。

 

「”テイム”」

 

 視覚が移ったことを確認した俺は、即座に”テイム”を使うと、繋がりが出来たことを確認すると同時に視覚を元に戻す。

 この動作も慣れたもので、今では10秒もかからずにこの動作を済ますことができる。

 

「は~あ……ん?」

 

 ふと、また別のスライムから連絡が入る。

 このスライムは屋敷の入り口にある木の上に監視カメラみたいな感じで設置したやつだな……

 

「ああ、父……いや、ガリアが帰って来たのか」

 

 俺は一瞬敵意を露わにすると、底冷えするような声で言う。

 そして、即座にそのスライムに視線を移した。

 すると、そこには馬車から降りるガリアの姿があった。

 

「ちっ 面倒だ。まあ、今の俺には仲間がいる。1人じゃないんだ」

 

 視覚を戻すと、俺は膝上のネムを優しく撫でる。

 

「きゅきゅ!」

 

 すると、ネムは甘えるように体を俺に押し付けた。

 相変わらず可愛い奴だ。

 他のスライムと比べると扱いには天と地ほどの差があるが……まあ、1000を超えるスライムたちに分け隔てなく接するのは無理があるからね。

 

「この調子でどんどんスライムをテイムしていけば、なんだかんだ言って結構強くなれるんじゃないかな?」

 

 いや、それよりも――

 

「世界中にスライムを配置して、世界中のあらゆる情報を握り、世界を裏から支配する。そんな厨二っぽいことも出来たりして」

 

 誰かが聞いたら痛いと言われるような夢を、俺はニヤリと笑みを浮かべながら口にした。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 一方その頃。

 シンの父、ガリアは供を連れて屋敷に入った。すると、そこには頭を下げる家宰ギュンターの姿があった。

 

「屋敷の管理、ご苦労であった。して、何か問題はあったか?」

 

「ありがとうございます。それで、問題は特にございませんでした」

 

「そうか。ならよい」

 

 ガリアは厳格さを見せながら、ギュンターの言葉に頷いた。

 そして、そのまままっすぐとした足取りで執務室へと向かう。

 

「……ああ。魔法師団副団長、エリーを連れてこい。シンの結果が知を知りたいからな」

 

 途中、思い出したかのようにガリアは横を歩くギュンターに命令を下す。するとギュンターは「かしこまりました」と言って、近くにいたガリアの供の1人に至急エリーを連れてくるよう命じる。

 その後、執務室に着いたガリアはそこで供と別れると、ギュンターと2人だけで執務室の中に入った。

 そして、執務机の椅子にガリアが座り、その横にギュンターが控える。

 

「……は~疲れた」

 

 ギュンター以外、誰もいなくなったことを確認したガリアは途端に破顔させると、どこか気の抜けた声でそう言う。

 

「ははは。お疲れ様でしたな。やはり、貴族会議は大変ですか?」

 

「ああ。もう大変ったらありゃしない。どいつもこいつも派閥争いばかりして、今や両方弱っていやがる。まあ、お陰で私のような中立派が1番利益を得ているのだから、どういう顔をしたらいいのやら。だが、あれで国が崩壊したら、利益どころではないな……」

 

 そう言って、ガリアは深くため息をつく。

 ガリアにとって、1番大切なのは己の利益。故に、その利益を得る場所が減ってしまうのは避けたいのだ。

 それに国が崩壊すれば、民の不信感から、最悪の場合革命などが発生して、命を狙われる可能性すらある。

 

 コンコン

 

 すると部屋の扉がノックされた。

 ガリアは即座に顔を引き締めると、低い声で「入れ」と言う。

 直後、扉が開き、1人の女性が入って来た。

 その女性――エリーは1歩前へ進んで礼をすると、前へと進む。

 そして、執務机から数歩分離れた場所で立ち止まると、頭を下げ、口を開いた。

 

「魔法師団副団長エリー。ただ今参りました」

 

「ああ、よく来たな。では、早速本題に入ろう。シンの魔法はどうだった?」

 

 一瞬ガリアの瞳が冷ややかなものになる。それを敏感に察知したエリーはぶるりと体を震わせるが、魔法師としての心で即座に落ち着かせると、口を開く。

 

「はっ こちらが初日の測定結果をまとめたものになります」

 

 そう言って、エリーは手に持っていた1枚の紙を差し出す。

 

「では、受け取りますね」

 

 傍に控えるギュンターが数歩前に出て、エリーから紙を受け取ると、それをガリアに手渡した。

 紙を受け取ったガリアは、何か忌々しいものを見るような目で紙を広げ、内容を確認する。

 

(ちっ 平凡もいい所だな。祝福(ギフト)が酷過ぎた分、魔法は優れているかもと淡い期待を抱いた私が馬鹿だった。あいつはゴミだ。レントの代わりとして、念のため置いてはおくが、いずれ我がフィーレル家から抹消してやる)

 

 怒りをぶつけるかのように、ぐしゃ……とガリアは測定結果の紙を握りしめた。

 

「もういい。シンにこれ以上魔法の指導はさせない。無駄だからな」

 

 無駄……という言葉にエリーはぴくりと反応し、声を出そうとする……が、寸でのところで飲み込む。

 ここで意見した場合、どう考えても碌な目に遭わないと、本能が告げたからだ。

 

「武術も教えようかと思ったが、どうせ無駄だな。これからはレントに期待するとしよう。下がれ」

 

「……はい。失礼しました」

 

 エリーはそう言って頭を下げると、もやもやとした心持ちのまま、部屋から出て行った。

 

(シン様はとてもお出来になる方だ。そもそも、魔力容量と魔力回路強度は強さを測る上での指標の1つでしかない。その2つが平凡でも、強者と呼ばれた魔法師は少なくないことぐらい、ガリア様なら分かる筈なのに何故……)

 

 エリーは廊下を歩きながら、そう疑問に思う。

 今思えば、測定結果を受け取ろうとした時から、ガリアの機嫌は悪かった。

 もしかして、シンとガリアは仲が悪いのだろうか。

 でも、まだ5歳であるシン相手に怒ることとは一体……

 

「分からない……わね。出来ればもっとシン様には色々とお教えしたかったけど……流石に逆らえないからね」

 

 物覚えが良く、どんどん成長していくシンの行く末をもっと見たい……という気持ちを心の中に押しとどめたエリーは、人知れず深く息を吐いた。

 一方その頃、ガリアはギュンターに書類を取ってくるよう命じると、誰もいなくなったことを今一度確認してから、鍵付きの引き出しに手をかける。これは魔力認証型の鍵で、本人以外が開けることは絶対に出来ない。まあ、引き出しなので、壊すのは結構簡単だが……

 ガリアは手をかざしてロックを解除すると、引き出しを引く。そして、中から紙に包まれた何かを取り出すと、手際よくそれに火をつけ、煙を口から吸う。

 

「すぅー……はぁ。すぅー……はぁ。やはり、ストレスが溜まった時はキルの葉を吸うに限るな」

 

 ガリアは途端に上機嫌になりながらそう呟くと、吸い殻もろとも引き出しの中に戻し、ロックをかける。

 ”キルの葉”は世界的に悪名高い中毒性のある麻薬で、吸うと気分が高揚したり、一時的に脳の回転が速くなるが、吸い過ぎると脳が縮んだり、魔力回路系の疾患を引き起こしやすくなる。故に、グラシア王国では違法薬として、所持していれば、誰であろうと処罰の対象だ。

 だが、ガリアは持っている。それが違法であると知りながら――

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