F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する   作:ゆーき@書籍発売中

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第十二話 今後に向けての鍛錬(あ、7歳になったよ)

 あれから更に2年経過し、俺は7歳になっていた。

 両親とはもうほとんど会っていない。食事も、今や自室で1人。だが、あいつらとは顔を合わせるたびに嫌な顔をされるので、むしろありがたかった。

 兄弟はというと、弟のレントがつい最近3歳になったようで、盛大なパーティーが開かれたらしい。因みに、その1か月前にあった俺の誕生日の時はなんも無かったよ。祝ってくれたのはネムだけだ。

 べ、別に悲しくなんかないぞ!

 ……ゴホン。で、問題は姉のリディアだ。

 あいつは俺の祝福(ギフト)がしょぼいことを知ったのか、よくバカにしに来るんだよね。ガリアとミリアが見て見ぬふりをしていることが、その行動に拍車をかけている。

 ほら、今日も来た。

 剣術の鍛錬をしようと廊下を歩き、庭へ向かっていたら、後ろから忍び足でリディアが近づいてくるのを感じた。

 空間把握(スペーショナル)を使わずとも分かるぐらい、幼稚な忍び足だ。

 ポタッと雫が垂れる音が数回聞こえたことから、多分リディアは水が入ったグラスを持っている。

 どうせそれを後ろからかけて、俺をびしょ濡れにして笑う算段だ。

 

「怠いな」

 

 俺はボソリと呟く。

 魔法を使えば防げるのだが、こんなやつの為に魔力を使うなんてもったいない。

 魔力容量を増やす特訓は暇さえあればずっとやっているのだが、それでも平凡の域から抜け出すことは出来ていない。だから、そうほいほいと魔法は使えないんだよ。

 現に、ついさっきまで部屋で空間属性魔法の特訓をしてたせいで、魔力がほとんどないのだ。

 まあ、この状況でなにやってんのって聞けばいいのだろうが、どうせしらばっくれるだけだろうし。

 すると、ばしゃっと頭から水が降って来た。

 髪の毛と服がびっしゃびしゃに濡れて、気分が悪い。

 

「あら、ごめんなさいね。ちょっと手が滑ってしまったわ」

 

 リディアはわざとらしくそう言うと、イラつく笑い方をする。

 だが、俺は無視して歩き続けた。鍛錬用の服が濡れたところで、どうということは無い。髪もそうだ。

 どうせ後で汗だくになるんだ。

 俺はそう思いながら、歩き続ける。

 

 パリン!

 

「あー私が大切にしているグラスを壊すなんて、兄様酷いですわ!」

 

 何か後ろから聞こえてきたが、構わず歩く。

 ああいうのは、構うだけ無駄なんだ。

 だが――

 

「いつか潰す」

 

 誰にも聞こえない声で、俺は怒りを露わにしながらそう言った。

 

 人がほとんど来ない、裏庭に辿り着いた俺は、袋にしまっていた木剣を取り出すと、素振りを始める。

 これでも俺は中学高校の6年間、剣道部に所属していた。強さで言えば3段――まあ、順当に段位を重ねた結果だな。

 因みに、同年代で比べると、上の下。意外と悪くないんだよね。

 

「はっ! はっ! はっ!」

 

 竹刀とはまた違った感触を持つ木剣を、俺は黙々と振り続ける。

 そして、本を元に型の練習をやる。

 本当は相手が欲しいのだが、残念なことにいない。

 まあ、無いものねだりをしても仕方がない。

 今はとにかく力を蓄えて、今後に備えないと。

 そして、いつの日かここを追い出された時に、前世からの憧れである冒険者になるんだ。

 

 

 

 

「は~あ。疲れた」

 

 俺はベンチに座りながら、タオルで汗を拭った。

 やっぱ適度に体を動かすのは楽しいね。何か頭がすっきりする感じ。

 まあ、これを前世の部活の時みたいに4時間とかやってると、だいぶ辛く感じるのだろうけど。

 

「さて、戻るか」

 

 俺は木剣を袋にしまうと、詠唱を唱える。

 

「魔力よ。空間へ干渉せよ。空間と空間を繋げ。我が身をかの空間へ送れ」

 

 直後、俺の足元に白い魔法陣が現れた。直後、その魔法陣が淡く光り出したかと思えば、俺の体は自室に移動していた。

 これはここ最近になって、ようやく使えるようになった空間転移(ワープ)だ。その名の通り、指定した場所へ一瞬で転移できる。

 ただ条件もあり、転移できる場所は過去に転移座標記録(ワープ・レコード)でその空間の座標を把握してないと転移できないのだ。

 

「さてと。着替えるか」

 

 そう呟くと、俺は服を脱ぎ、籠に入れる。そして、いつもの貴族用の服に着替えた。

 

「はぁ……ネム。出て来ていいよ」

 

 ベッドの淵に腰かけた俺は、虚空に向かってそう言う。すると、天井の隙間から1匹のスライム――ネムが出て来た。

 ネムはそこから勢いよく跳び出ると、俺の肩に跳びつく。

 

「おうっと。ははは。寂しかったか?」

 

「きゅきゅ!」

 

 当然とでも言いたげなネムを、俺は朗らかな笑みを浮かべながら優しく撫でる。

 やっぱ日常に癒しは必要不可欠だな。

 

「あ、それで、俺が鍛錬している間に他のスライムから連絡来た?」

 

「きゅきゅきゅ!」

 

 俺の質問に、ネムは元気よく頷く。やっぱり連絡は来てたか。

 まあ、それもそのはず。何せ、現在俺がテイムしているスライムの数は15万匹を超えた。

 テイム勧誘用のスライムはかなり限定しているが、それでもここ最近は1日200件以上来る。そして、それらの連絡は全てネムにするよう言ってあるのだ。

 さて、鍛錬していた2時間ちょいで、何件ぐらい来たのだろうか……

 

「よし。連絡したスライム。俺との距離が近い奴から順に報告してくれ」

 

 俺は繋がっているスライム全てに命令を下す。すると、直ぐに1匹のスライムから「きゅきゅ!」と連絡が来た。

 その連絡を聞いた俺は即座に繋がりを辿って視覚をそのスライムに移す。そして。即座に”テイム”を使うと次に連絡が来たスライムの視覚へ移動する。

 1匹あたりにかかる時間は驚異の1秒弱。そんな早業を何十回とやり、連絡が来なくなったことを確認すると、視覚を元に戻す。

 そして、視覚を戻した俺は今テイムしたスライム全てに”生存を第一に考えて、その周辺にいてくれ”と命令した。

 

「よし。こんなとこか」

 

 俺はそう呟くと、ネムを胸に抱いたまま、ベッドに仰向けで倒れ込む。

 この2年間で、大分成長したな。今やスライム配置場所はシュレインとその近くにある森だけにとどまらず、王都ティリアンやその近くにある他の街にも配置して、情報を収集している。

 偶に貴重な情報――例えば貴族家の弱みを握るようなものもあり、やりようによっては多分いくつかの貴族家を傀儡にすることだって出来るだろう。流石にこれを知った時は思わずニヤリとしてしまった。

 ただ、弱みを握っているってバレたら殺される可能性が大いにあるから、いざという時の最終手段にとどめておくとしよう。

 

「さて、多分俺がここにいれるのは短くて2年。長くても4年かな……?」

 

 俺はボソリと呟く。

 何せ、あと2年でレントが5歳になり、祝福(ギフト)を授かるのだ。

 その時に、ついでみたいな感じで厄介払いされる可能性も大いにあるんだよね。それで、なんで長くても4年なのかと言うと、貴族は12歳になったら、誰であろうと強制的に王都にある学園に6年間ぶち込まれるんだよね。で、そこで色々と繋がりを作ったりするそうだ。

 そんな色々と大切な学園に、F級の祝福(ギフト)を持った子供を入れようものなら、何かの拍子にバレた時、とんでもないことになる。

 それを回避する手っ取り早い方法が、それまでに勘当する……というわけだ。病気等の理由をつけて行かせない方法もあるが、侯爵家であるが故に、それが原因で良からぬ噂が立つ可能性も高い。

 

「それまでに、少しでも強くならないとな。俺最大の強みは15万を超える大量のスライム。これを生かして他にも何か出来ないだろうか……?」

 

 俺は顎に手を当てるとそう呟いた。

 そして、そんな俺を、ネムは「きゅ?」と不思議そうに見ていたのであった。

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