F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する   作:ゆーき@書籍発売中

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第十三話 レントの祝福(あ、9歳になった)

 更に2年が経ち、俺は9歳になっていた。

 そして、今日は待ちに待った……と言う程でもないが、弟レントの5歳の誕生日なのだ。

 さて、レントは一体どんな祝福(ギフト)を授かるのだろうか……

 

「……お、教会に着いたか」

 

 都市中に配置したスライムの視覚に移り続けることによって、馬車の動向を常時監視していた俺はぼそりと呟いた。

 そして、教会に入るガリア、ミリア、レントを確認すると、俺は視覚を教会内部に潜入させているスライムに移した。

 

「ようこそおいで下さいました。ご子息のお誕生日、まことにおめでとうございます」

 

 教会の上から見下ろすようにして、俺は前と変わらぬ挨拶をする司教を見る。

 そして、それに対してガリアが応えると、早速レントを主神エリアス様の像の下へと送る。

 レントはどこか堂々とした立ち居振る舞いを見せながら主神エリアス様の像の所までくると、膝をつき、手を組む。

 レントはあれだね。良くも悪くも堂々としてるって感じなんだよね。

 確かに貴族なら、堂々とするのは正しい行為だ。消極的な仕草では、嫌でも侮られるからね。ただ、レントってリディアに唆されたのか、ガリアから聞いたのかは分からんが、俺に堂々と嫌がらせをしてくるんだよね。リディアは多少なりとも周りの目を考えているのだが、レントはもう……本当に色々とやってくる。

 隠す気も無く、正面から水ぶっかけてきたり、祝福(ギフト)について言ってきたりと、ある意味リディアより厄介だ。

 一応幼い子供だと思い、優しく諭そうと思った時期もあったのだが、「えふきゅーの祝福(ギフト)持ちが僕に逆らうな!」って言われたことで、プチッと静かにキレると共に諦めた。

 幼い子供相手に怒るなんて大人げないだろうが……まあ、仕方ないね。

 そんなことを思っていたら、レントの体がうっすらと光に包まれた。

 

「お、授かったか」

 

 祝福(ギフト)を授かった時に生じる光を確認した俺は、そう呟いた。

 すると、そんなレントにガリアとミリアが歩み寄る。

 

「レントよ。どのような祝福(ギフト)を授かったのだ?」

 

 俺の時とは違い、どこか祈るような口調でガリアはレントにそう問いかける。

 レントが俺の二の舞になろうものなら、レントも俺のような扱いへと変わり、更に下にいる3歳の弟へと関心が移ることだろう。

 こうして考えると、ガリア――というよりは、貴族のほとんどが、子供のことを駒としか思ってないな。まあ、甘い考えを捨てなければ、貴族社会は生き残れないのだろうけど。

 すると、手を下ろし、立ち上がったレントが口を開いた。

 

「はい。父上。僕は”剣士”の祝福(ギフト)を授かりました」

 

 はきはきとしたレントの言葉に、俺はなるほどと頷いた。ガリアとミリアも同じような反応だ。

 ”剣士”の祝福(ギフト)を持つ人は、結構多い。”テイム”の祝福を持つ人の約10倍と言えば、その多さが分かるだろう。いや、70人に1人が持っているの方が分かりやすいか。

 それで、”剣士”の祝福(ギフト)の主な効果は剣を持った時の身体能力上昇だ。これに関しては、F級であろうが持っている。それ以外となると、空間把握能力や、戦闘勘、見切りの瞳等が有名どころだな。まあ、大まかに言ってしまえば、剣に関することが軒並み上昇すると言ったところか。

 

「さて、”剣士”は階級が顕著に強さとして現れる最たる例だからな。レントの階級はどのくらいなのだろうか……?」

 

 最も多く出るのは、真ん中のC級。時点でB級とD級だ。

 このことから、俺は順当にこの3つの内のどれかであると予想している。

 これでE級とかいう微妙なやつが来たら、どんな反応するんだろうか……

 そんなことを考えていたら、レントが大理石の台の上に手を置いた。

 すると、その上にホログラムのように階級が映し出される。

 

「どれどれ……?」

 

 俺は目を凝らして、そこに映し出された階級を見る。

 そして、思わず「マジか……!」と感嘆の息を漏らした。

 

「へぇ。まさかA級とは……」

 

 そこには、確かにA級の文字が映し出されていた。

 こりゃもう当たりだな。1000人に1人と言われるA級を引き当てるとは、随分と運のいいやつだな。

 まあ、それを言ったら、俺も1000人に1人と言われるF級を引き当ててるんだけどね。

 そうしてレントの祝福(ギフト)がA級だったことに思わず乾いた笑いをしていると、ガリアが声を上げた。

 

「素晴らしい! よくぞA級の祝福(ギフト)を授かってくれた。次期フィーレル家当主はレントで決まりだな」

 

 ガリアは今までに見たこと無いぐらい上機嫌に笑いながら、レントの頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

「流石私の息子ね。誇りに思うわ」

 

 ミリアも凄く上機嫌に笑みを浮かべながら、レントの頭を優しく撫でる。

 そして、その様子を俺は上から複雑そうな表情で見ていた。

 

祝福(ギフト)1つでここまで扱いに差が出る……か。知ってはいたものの、いざこうやって比較してみると、本当に酷いものだな」

 

 フィーレル家の長男がF級の祝福(ギフト)を持っていることが、貴族社会において非常にマズいということは、俺もよく理解している。だが、納得は出来ない。

 ここ4年間は本当にストレスの溜まる生活だった。ネムという癒しがなければ、結構危うかったかもしれない。しかも、俺は精神的にはもう大人だ。そんな俺でさえ、ここまでストレスを感じたのだ。もし俺の精神までもが子供だとしたら、ネムがいなかったとしたら……

 うん。考えるだけでも恐ろしいね。

 

「ま、あの様子なら、家に帰ったら俺抜きのパーティーでもやるんだろうな。で、それを期に俺も追放されるのかな……?」

 

 この世界では、9歳で働いている人も珍しくない。恐らく俺もそんな感じの理由をつけられてぽいっと屋敷から放り出されるのではないだろうか。まあ、こんな屋敷からは一刻も早く出たいと思っているから、俺としてはありがたいんだけどね。

 貴族家にしかないような貴重な書物等があるせいで、今までは出たくないと思っていたのだが、ここ最近ようやく読みたいと思っていた本をあらかた読みつくしてしまったので、もう未練はないんだよね。

 強いて言うなら、衣食住が保障されたある意味安全な場所でもう少し強くなっておきたかったのだが……まあ、いいか。

 

「さてと。そろそろやるか。”テイム”」

 

 俺は視覚を自身の体に戻すと、勧誘用スライム()()の視覚を見る。

 色々とごっちゃごちゃだが、気にすることなく俺は即座に”テイム”を使う。すると、一気に数百と繋がりが増えたように感じた。

 そして、即座に視覚を自身に戻す。

 

「ふぅ。流石に頭が痛いな」

 

 膨大な情報量に頭を痛め、俺はベッドに仰向けで寝転がると、頭に手を当てる。すると、そこにネムがやってきて、ぺとっと額に覆いかぶさった。

 ああ、気持ちいい……

 

「あーありがとな。やはり、この方法は疲れる。だが、”テイム”を使う頻度は以前よりもだいぶ減らせるし、それでいて効率もいいからな」

 

 そう。さっきやったのは、テイム勧誘用のスライム()()の視覚を同時に見ながら、”テイム”を使ったのだ。こうすることで、たった1回”テイム”を使うだけで、数百近くのスライムを同時にテイム出来るのだ。ただ問題もあり、同時に何百という景色を見るものだから、情報過多で頭が痛くなる。同時に見る景色が多すぎれば、最悪死ぬかもしれない。まあ、そこはしっかりと検証を重ね、耐えられるラインをきちんと理解しているから問題ない。

 

「さてと。暇になったし、魔法の鍛錬でもするか」

 

 魔法――その中でも空間属性はマジで慣れが必要だ。

 4年間欠かさず鍛錬してきたお陰でだいぶ使いこなせるようになってきたが、それでもまだ足りない。

 何せ、俺の魔力容量と魔力回路強度は平均より少し上程度なのだ。あれだけ魔力枯渇をして、魔力容量と魔力回路強度を増やす特訓をしたにもかかわらずだ。

 そんな俺が強者と渡り合うには、技量を鍛えるしかない。少しでも魔法の無駄をなくして、魔力の消費を抑えないと、自分よりもその2つが上の相手には地力の差で負けてしまうのだ。

 一応今の魔法の技量は、同年代で考えればトップクラスだと思っている。だが、それは同年代。つまりは子供の間では……という意味で、全体的に見れば全然上には上がいる。

 

「頑張らないとな」

 

 俺は気合を入れると、お得意の空間属性魔法の鍛錬を始めた。

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